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雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかったもの


(197) 雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定) (項)失業給付費
部局等の名称 北海道ほか17都府県(支給庁)
札幌公共職業安定所ほか114公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方 297人
失業給付金の支給額の合計 151,332,577円
不適正支給額 82,288,357円

 失業給付金(基本手当及び再就職手当)の支給決定に当たり、受給資格者からの申告等に対する調査確認が十分でなかったため、上記の297人に対して82,288,357円(基本手当35,336,157円、再就職手当46,952,200円)が不適正に支給されていた。これらについては、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

1 保険給付の概要

(雇用保険)

 雇用保険は、工場、事務所、商店等に雇われる労働者を被保険者とし、被保険者が失業したときにその生活の安定を図るなどのため失業給付金の支給を行うほか、雇用安定事業、能力開発事業及び雇用福祉事業を行う保険である。

(失業給付金の支給)

 失業給付金には基本手当及び再就職手当のほか9種の手当等がある。このうち、基本手当は、受給資格者(注) が失業している日について所定給付日数を限度として支給されるものであり、再就職手当は、受給資格者が基本手当の所定給付日数の2分の1以上を残して安定した職業に就いた場合に支給されるものである。基本手当及び再就職手当は、公共職業安定所が、次のように支給を決定し、これに基づいて、各都道府県が支給することとなっている。

(ア) 基本手当については、受給資格者から提出された失業認定申告書に記載されている就職、就労(臨時的に短期間仕事に就くこと)の有無等の事実について確認のうえ失業の認定を行って支給を決定する。

(イ) 再就職手当については、受給資格者から提出された再就職手当支給申請書に記載されている雇入れ年月日等について調査確認を行って支給を決定する。

 (注)  受給資格者  離職した被保険者で、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6箇月以上あり、労働の意思及び能力があるにもかかわらず職業に就くことができない状態にあることの要件を満たしていて、公共職業安定所において、基本手当を受給する資格があると決定された者

2 検査の結果

(検査の対象)

 北海道ほか19都府県(支給決定庁 札幌公共職業安定所ほか192公共職業安定所)から失業給付金の支給を受けた者のうち、再就職した者15,527人について、公共職業安定所における失業給付金の支給決定の適否を検査した。 

(不適正支給の事態)

 検査したところ、次のとおり基本手当及び再就職手当が不適正に支給されていた。

ア 基本手当

 北海道ほか17都府県で、本院が調査した10,278人に対する基本手当の支給のうち294人に対する支給(支給額104,380,377円)について、35,336,157円が不適正に支給されていた。これは、札幌公共職業安定所ほか113公共職業安定所において、受給者が誠実でなく、再就職、就労していながらその事実を失業認定申告書に記載していないため、申告書の内容が事実と相違していたのに、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行っていたことなどによるものである。

イ 再就職手当

 北海道ほか17都府県で、本院が調査した5,014人に対する再就職手当の支給のうち150人に対する支給について、46,952,200円が不適正に支給されていた。これは、札幌公共職業安定所ほか78公共職業安定所において、受給者が誠実でなく、再就職手当支給申請書に事実と相違した雇入れ年月日を記載していたのに、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行っていたことなどによるものである。

 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。 これらの不適正支給額を都道府県別に示すと次のとおりである。

都道府県名 公共職業安定所 本院が調査した受給者数 不適正受給者数 左の受給者に支給した失業給付金 左のうち不適正失業給付金
千円 千円
北海道 札幌 ほか8 1,000 21 6,706 1,822
札幌 ほか7 717 14 4,483 4,483
小計 11,189 6,305
青森県 青森 ほか6 812 20 5,431 1,831
青森 ほか5 550 12 3,495 3,495
小計 8,927 5,326
秋田県 秋田 ほか6 663 25 7,575 1,720
秋田 ほか3 191 9 1,961 1,961
小計 9,537 3,682
埼玉県 川口 ほか8 525 18 6,384 2,900
川口 ほか5 251 11 3,184 3,184
小計 9,569 6,084
東京都 飯田橋 ほか11 1,120 29 11,944 5,317
大森 ほか6 529 16 6,075 6,075
小計 18,020 11,393
神奈川県 横浜 ほか9 709 16 5,296 2,709
横浜 ほか6 394 10 4,759 4,759
小計 10,056 7,468
岐阜県 岐阜 ほか2 359 11 2,372 1,135
岐阜 ほか3 286 8 2,812 2,812
小計 5,185 3,947
静岡県 静岡 ほか7 539 9 5,175 1,261
静岡 ほか3 183 5 1,765 1,765
小計 6,940 3,027
愛知県 名古屋東 ほか12 1,017 38 12,022 4,048
名古屋東 ほか9 469 18 4,447 4,447
小計 16,469 8,496
京都府 京都西陣 ほか1 115 3 791 427
京都西陣 61 1 99 99
小計 890 526
大阪府 茨木 110 3 496 297
茨木 67 2 614 614
小計 1,111 912
島根県 松江 ほか3 420 10 3,994 985
松江 ほか2 102 3 1,110 1,110
小計 5,105 2,096
岡山県 岡山 ほか6 627 23 10,249 3,903
岡山 ほか4 308 15 5,063 5,063
小計 15,312 8,967
広島県 ほか1 240 9 4,740 1,537
ほか1 126 2 424 424
小計 5,165 1,962
高知県 高知 ほか1 180 4 1,449 347
高知 100 2 331 331
小計 1,780 678
福岡県 福岡中央 ほか6 839 20 8,520 2,035
福岡中央 ほか3 385 10 3,563 3,563
小計 12,084 5,598
佐賀県 佐賀 ほか5 450 25 7,505 2,580
佐賀 ほか3 147 9 2,342 2,342
小計 9,847 4,922
大分県 大分 ほか4 553 10 3,722 473
大分 ほか1 148 3 416 416
小計 4,138 890
114箇所 10,278 294 104,380 35,336
79箇所 5,014 150 46,952 46,952
合計 151,332 82,288
(注1)  上段は基本手当に係る分、下段は再就職手当に係る分である。
(注2)  公共職業安定所のうち、基本手当と再就職手当の双方について不適正な支給があったものが78、基本手当のみのものが36、再就職手当のみのものが1あり、したがって、公共職業安定所の実数は115である。
(注3)  不適正受給者のうち、基本手当と再就職手当の双方に係る者が147人、基本手当のみの者が147人、再就職手当のみの者が3人おり、したがって、不適正受給の実人員は297人である。