科目 | (雑収入)雑益 | |
部局等の名称 | 北海道支店ほか9支店 | |
貸付けの根拠 | 住宅金融公庫法(昭和25年法律第156号) | |
貸付金の種類 | 優良分譲住宅購入資金(平成2年度以前は団地住宅購入資金)、マンション購入資金、市街地再開発等購入資金 | |
貸付けの内容 | 民間事業者により計画的、集団的に建設された分譲住宅又は中高層共同住宅及び市街地再開発事業等により新たに建設された建築物内の住宅を、自ら居住するために購入する者に対する資金の貸付け | |
貸付件数 | 85件 | |
貸付金の合計額 | 1,268,000,000円 | |
徴収できた違約金相当額 | 5418万円 | |
<検査の結果>上記85件の貸付けにおいて、借入者が貸付対象住宅に自ら居住せず第三者に賃貸するなど貸付要件に違反していたが、このうち28件については、繰上償還請求と併せて違約金の請求が行われていたのに、違約金相当額約5418万円が徴収されていなかった。また、57件については、繰上償還請求及び違約金の請求に至る前に借入者が任意の繰上償還を行った結果、違約金徴収の対象とされていなかった。 このような事態が生じていたのは、住宅金融公庫及び受託金融機関において、繰上償還請求及び違約金の請求に当たり、その取扱いに次のように適切でない点があったことなどによると認められた。 (ア) 繰上償還請求及び違約金の請求を行っているのに、その支払期限までに借入者から返済があったときは、これを借入者からの任意の繰上償還であるとして、違約金を徴収しない取扱いとしていたこと (イ) 貸付要件違反の事実が判明しているのに、その始期の認定等、繰上償還請求及び違約金の請求の手続に相当の日時を費やしていたこと <当局が講じた改善の処置>本院の指摘に基づき、同公庫では、平成4年11月に通ちょうを改正し、支払期限までに返済があったときにも違約金を徴収することとし、5年3月以後に違約金の請求をしたものから適用することとするとともに、繰上償還請求及び違約金の請求の手続を迅速に行うこととして、違約金制度の運用を適切なものとする処置を講じた。 |
1 違約金制度の概要
住宅金融公庫(以下「公庫」という。)では、貸付業務の一環として、自ら居住するため住宅を必要とする者に対し、民間事業者が計画的、集団的に建設した分譲住宅又は中高層共同住宅等の購入に必要な資金の一部として、優良分譲住宅購入資金(平成2年度以前は団地住宅購入資金)又はマンション購入資金等(以下「購入資金」という。)を、それぞれ長期かつ低利で貸し付けている。
そして、購入資金の貸付業務については、貸付けの決定は公庫の支店(以下「支店」という。)が行っているが、借入申込みの受付、審査、金銭消費貸借抵当権設定契約(以下「貸付契約」という。)の締結、資金の交付、貸付後の債権の管理及び回収等に関する業務は、公庫から委託を受けた金融機関(以下「受託金融機関」という。)が行っている。
購入資金の貸付契約においては、公庫は、借入者が公庫の承諾を得ないで貸付けの対象となった住宅(以下「貸付対象住宅」という。)に自ら居住しなかった場合などには、貸付金を弁済期日の到来する前に償還させることができることとなっている。そして、公庫では、借入者が自ら居住するなどの要件(以下「貸付要件」という。)に違反して貸付対象住宅を第三者に賃貸したときなどには、従来から上記の繰上償還請求により措置してきたところである。
しかし、本院は、昭和59年、62年及び平成元年に購入資金の貸付けについて検査した結果、貸付要件に違反していた事態が多数見受けられたことから、その防止に努めるよう指摘を行った。これを受けて、公庫では、昭和63年度から平成2年度までに、それぞれの購入資金について、借入者の不誠実な行為を抑制し第三者賃貸等の悪質な違反事態の防止を図ることを目的として、借入者が貸付要件に違反した場合には違約金を徴収できる制度を導入してきている。
違約金は、転勤等のやむを得ない事由により貸付対象住宅に一時的に居住しなくなった者など特別の事情のある者を除き、借入者が公庫の承諾を得ないで、〔1〕 貸付対象住宅を第三者に譲渡したとき、〔2〕 貸付対象住宅に自ら居住しなかったとき、〔3〕 貸付対象住宅を住宅以外の用途に供したとき、その者に対し請求することとされている。
違約金の請求に至るまでの手続としては、貸付後に受託金融機関等が行う実態調査等によって貸付要件違反の事実が判明した場合、支店が、違反事実の認定を行うとともに、これに対する措置を決定し、受託金融機関に指示することとなっている。そして、受託金融機関は、支店から繰上償還請求及び違約金の請求の指示を受けた場合には、借入者に対して、貸付現在高の全額、利息、違約金等を公庫の指定した期限(以下「支払期限」という。)までに支払うことを求める催告書により繰上償還請求に併せて違約金を請求することとなっている。
そして、公庫から繰上償還請求を受けた借入者は、貸付要件違反に該当した日の貸付現在高に、当該日から繰上償還請求金額を完済した日までの期間に応じ、年7.3%の割合を乗じて算出した額を違約金として支払うことになっている。
なお、公庫は、借入者に情状を酌量すべき特別の理由があると認める場合においては、違約金を減免することができることとされている。
貸付契約においては、借入者が、約定どおりの償還方法によることなく、弁済期日の到来する前に自発的に償還するいわゆる任意の繰上償還もできることとなっている。この場合には、違約金は徴収されないこととなる。
2 本院の検査結果
北海道支店ほか9支店(注) において、3年度に繰上償還が行われた貸付けのうち、受託金融機関が行った実態調査等により貸付要件に違反する事態が判明し、それを契機として繰上償還が行われた116件の貸付け(貸付金額17億1210万円)を対象として、違約金の徴収状況を調査した。
調査の結果、上記116件の貸付けのうち違約金が徴収されたのは、公庫が繰上償還請求を行い、借入者が支払期限以後に返済した22件(貸付金額3億1600万円、違約金額3306万余円)であった。また、9件(貸付金額1億2810万円)については、借入者に特別の理由があったとして違約金の減免措置が講じられていた。
しかし、残る85件(貸付金額12億6800万円)については、次のとおり、借入者から任意の繰上償還が行われたとして違約金が徴収されていなかった。
(1) 催告書により繰上償還請求及び違約金の請求が行われているのに、違約金が徴収されていなかったもの
28件(貸付金額3億8960万円)
この事態は、公庫が貸付要件違反の事実の認定を行い、催告書により繰上償還請求及び違約金の請求を行っているのに、借入者が支払期限の到来前に繰上償還を行ったので、これを任意の繰上償還として取り扱い、違約金が徴収されていなかったものである。
(2) 繰上償還請求及び違約金の請求に至る前に借入者が任意の繰上償還を行った結果、違約金徴収の対象とならなかったもの
57件(貸付金額8億7840万円)
この事態は、公庫及び受託金融機関が貸付要件違反の事実の認定等に日時を費やしたなどのため、その間に借入者が任意の繰上償還を行ったことにより、結果的に違約金が徴収できなかったものである。このうち違反事実が判明してから任意の繰上償還が行われるまでの間に、1ヶ月以上経過していたものが29件見受けられた。
上記(1)及び(2)のように、貸付要件違反の事実が判明しているのに違約金が徴収されていないのは、借入者の不誠実な行為を抑制し、第三者賃貸等の悪質な違反事態の防止を図ることを目的として設けられた違約金制度の趣旨に沿った適切な運用がなされているとはいえず、改善を必要とすると認められた。
いま、公庫が繰上償還請求及び違約金の請求を行っていた上記(1)の28件の貸付けについて、当該借入者が繰上償還した時点における違約金相当額を計算すると、約5418万円が徴収できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、借入者の不誠実にもよるが、公庫及び受託金融機関において、繰上償還請求及び違約金の請求に当たり、その取扱いに次のように適切でない点があったことなどによると認められた。
(ア) 公庫において、貸付要件違反の事実の認定がなされており、繰上償還請求と併せて違約金の請求を行っているにもかかわらず、その支払期限までに借入者から返済があったときは、これを借入者からの任意の繰上償還であるとして、違約金を徴収しない取扱いとしていたこと
(イ) 実態調査等により公庫及び受託金融機関において貸付要件違反の事実が判明しているのに、その始期の認定等、繰上償還請求及び違約金の請求の手続に相当の日時を費やしていたこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、公庫では、次のとおり、4年11月に通ちょうを改正し、個人に対する貸付金債権に係る違約金制度の運用を適切なものとする処置を講じた。
(ア) 繰上償還請求及び違約金を請求した場合においては、その支払期限までに借入者から返済があったとしても、借入者からの任意の繰上償還としてではなく繰上償還請求に基づく返済として取り扱い、違約金を徴収することとし、5年3月以後に違約金の請求をしたものから適用することとした。
(イ) 公庫及び受託金融機関における貸付要件違反の事実の認定、繰上償還請求及び違約金の請求の手続を迅速に行うこととした。
(注) 北海道支店ほか9支店 北海道、東北、北関東、東京、南関東、名古屋、大阪、中国、福岡、南九州各支店