科目 | (住宅・都市整備勘定) (項)住宅管理費 |
部局等の名称 | 東京、関東、中部、関西、九州各支社 |
事業の概要 | 既存の賃貸住宅の居住水準の向上に資することを目的として、既設の浴室設備等を改良する事業 |
撤去品の数量 | シャワー付風呂釜1,419台 |
不経済になっていた撤去品の価額 | 9760万円 |
<検査の結果>上記の各部局において、浴室設備の改良を行うに当たり、設置後短期間に、シャワー付風呂釜が多数撤去されていて、その価額約9760万円が不経済になっていると認められた。 このような事態が生じていたのは、既にシャワー付風呂釜を設置している住宅の居住者が、その設置後短期間のうちに更に大型浴槽セットヘの改良を申し込んでいたのに、公団の実施要領に特段の定めがなかったため、この申込みをそのまま受け付けていたことによると認められた。 <当局が講じた改善の処置>本院の指摘に基づき、住宅・都市整備公団では、平成4年4月に実施要領を改正し、浴室設備の改良の申込みに制限を設けることとし、同年5月以降の募集から適用することとする処置を講じた。 |
1 住戸内設備改良事業の概要
住宅・都市整備公団(以下「公団」という。)では、主として昭和40年代に建設した賃貸住宅を対象とし、その居住水準の向上に資することを目的として、浴室又は台所設備の改良を行う住戸内設備改良事業を実施している。
このうち浴室設備の改良は、62年度から、既設の浴槽はそのまま使用し風呂釜のみをシャワー付の風呂釜に取り替える方法により実施している。そして、63年度からはこの方法に加えて、浴槽及び風呂釜を、専用のシャワー付風呂釜がセットされた大型の浴槽(以下「大型浴槽セット」という。)に取り替える方法も採用することとして、実施している。
平成3年度において、公団が設置した大型浴槽セットは9,592台となっている。
公団では、この住戸内設備改良事業の実施に当たり、実施要領を定めており、これによると、大型浴槽セットの設置については、原則として1年に2回居住者からの申込みを受け付け、抽選により実施する住宅を選定することになっている。
そして、この大型浴槽セットヘの取替えについては、既にシャワー付風呂釜を設置している住宅もその対象にしている。
2 検査の結果
この大型浴槽セットは、風呂釜と浴槽とがセットになっているため、それまで使用していた風呂釜は撤去しなければならないことになる。そこで、シャワー付風呂釜の設置後短期間に大型浴槽セットに切り替えられるなどの不経済な事態が生じていないかを調査した。
調査したところ、東京支社ほか4支社(注) において、前記の大型浴槽セット9,592台の設置に伴い、既設のシャワー付風呂釜5,889台が撤去されており、このうち4,264台は設置後、この種機器の耐用年数である6年が経過しないうちに撤去されていたものであった。そして、このうち1,419台は、耐用年数の2分の1にも満たない3年未満に撤去されていたもので、撤去後は、そのまま廃棄処分としたり、使用見込みのないまま公団において保管されたりしていた。
このような事態は、撤去されたシャワー付風呂釜に係る多額の未回収の経費が発生していることになり、特に、上記のような使用期間が耐用年数の2分の1に達していない(3年未満)シャワー付風呂釜はその設置費用の大半が回収されていないことから、居住水準の向上という本件事業の目的を考慮したとしてもなお適切とは認められない。
いま、上記1,419台のシャワー付風呂釜について、設置後、撤去されるまでの期間の償却費相当分を控除しても、約9760万円が不経済となっている。
このような事態が生じていたのは、既にシャワー付風呂釜を設置している住宅の居住者が、大型浴槽セットの設置を申し込む事例が多数見受けられているのに、公団の実施要領にこれを制限する規定がなかったため、この申込みをそのまま受け付け、事業を実施していたことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、公団では、4年4月に実施要領を改正し、大型浴槽セットの設置申込みに制限を付するなどして同年5月以降の募集から適用することとする処置を講じた。
(注) 東京支社ほか4支社 東京、関東、中部、関西、九州各支社