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  • 平成3年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第12 日本電信電話株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

異経路の専用回線の設備費等の収納額を適切に算定するよう改善させたもの


(1) 異経路の専用回線の設備費等の収納額を適切に算定するよう改善させたもの

科目 営業収益
部局等の名称 日本電信電話株式会社本社
異経路の専用回線の概要 事故発生時等における通信確保のため、別途異なる経路により設置する専用回線
設備費等の概要 異経路の専用回線のケーブルを通すための管路、とう道等地中設備の設置に要する費用相当額として収納する設備費及び当該設備に係る回線専用料の加算額
東京都23区内の異経路の専用回線に係る設備費 平成2年度 161,371,325円
平成3年度 68,444,488円
229,815,813円
上記に係る回線専用料の加算額(年額) 平成2年度契約分 19,011,326円
平成3年度契約分 8,063,518円
27,074,844円
増収できた設備費 平成2年度 1570万円
平成3年度 1280万円
2850万円
増収できた回線専用料の加算額(年額) 平成2年度契約分 180万円
平成3年度契約分 150万円
330万円

<検査の結果>

 上記の異経路の専用回線の契約において、既設の地中設備を利用する場合の設備費の算定に用いる単位距離当たりの費用(以下「地中設備単価」という。)の設定が適切でなかったため、設備費の収納額が約2850万円、回線専用料の加算額の収納額が年間約330万円低額となっていた。

 このような事態が生じていたのは、支社において長期間にわたって地中設備単価の見直しを行っていなかったことにもよるが、本社において、地中設備単価の具体的な算定方法を示していなかったこと、支社の設備費算出の実態を十分把握しておらず、適切な指導を欠いていたことなどによると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、日本電信電話株式会社では、平成4年11月に、支社に対して指示文書を発し、地中設備単価の具体的な算定方法を示すとともに、この方法により現行の単価を見直し、5年1月以降の契約に係る設備費等の算定から適用することとするなどの処置を講じた。

1 専用サービスの異経路回線の概要

(専用サービスの異経路回線)

 日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)では、専用サービス契約約款(昭和60年4月電経本第8号。以下「契約約款」という。)の定めるところにより、特定区間を直通で結んだ電気通信回線(以下「専用回線」という。)を専有して通話、データ伝送等を行う専用サービスを提供している。

 専用回線の区間のうち、専用サービスの契約者と中継装置のあるNTTの専用サービス取扱所(以下「取扱所」という。)とを結ぶ端末区間は単一の経路しかないので、この間においてケーブルの切断事故等が生じると、専用回線による通信が途絶するおそれがある。 

 このため、NTTでは、昭和60年5月から、専用サービスの契約者の申込みに応じて、別の取扱所と結ぶなどした異なる経路の専用回線(以下「異経路回線」という。)を設置して、専用回線による通信の信頼性を高めることとしている(下図参照)

異経路の専用回線の設備費等の収納額を適切に算定するよう改善させたものの図1

(異経路回線の設備費等) 

 NTTでは、契約約款により、異経路回線の契約者から、その契約時に設備費を、また毎月回線専用料、回線専用料の加算額、配線設備専用料等を収納することとしている。このうち、回線専用料、配線設備専用料等については、契約約款で専用サービスの種類、品目ごとに専用回線の距離に応じた金額が全国一律に定められているが、設備費及び回線専用料の加算額については、契約約款では具体的な金額を定めておらず、別に算定する実費としている。

 そして、設備費及び回線専用料の加算額については、NTT本社が各支社に発した指示文書(「異経路による専用回線等の提供について(指示)」(昭和60年5月))等に基づき、次のように算定することとしている。

(ア) 設備費については、異経路回線の区間を取扱所の取扱区域内の部分と区域外の部分に区別し、そのうち取扱区域内の部分の設備費は、通常の専用回線の設置に要する費用として契約約款で定めている施設設置負担金と同額とする。また、取扱区域外の部分の設備費は、異経路回線を設置するために要したケーブル、接続用品等の物品費に、ケーブルを通すための管路、とう道等地中設備の設置に要する費用(以下「地中設備費」という。)、ケーブルの取付費等を加えた額とする。

(イ) 回線専用料の加算額は、取扱区域外の部分について回線専用料に加算されるもので、当該部分の設備の減価償却費に、保守費、営業費を加えた額とする。

(地中設備費の積算)

 上記のうち、取扱区域外の地中設備費については、地中設備を新設する場合は実際に工事に要した費用をその都度積算することになっているが、既設の地中設備を利用する場合は、当該設備を新設したものとみなして各支社があらかじめ設定している地中設備単価に、地中設備の距離を乗じて算出することとなっている。

 そして、各支社では、これに基づき地中設備単価を設定して地中設備費を算出しており、その平成2、3両年度の合計額は、東京支社ほか2支社(注) の10契約分、3億1334万余円となっている。また、この10契約の既設の地中設備に係る回線専用料の加算額の年額は、計3691万余円となっている。

2 本院の検査結果

(調査の対象と観点、方法)

 NTT東京支社管内の東京都23区内における2、3両年度契約分の異経路回線で利用している取扱区域外の既設の地中設備に係る地中設備費の額は、6契約分で計2億2981万余円、また、これに係る回線専用料の加算額の年額は計2707万余円となっており、全国の大部分を占めている。そして、同支社では、この23区内に適用する地中設備単価を、異経路回線による専用サービスを開始した昭和60年度に、100 m当たり2,709,000円と設定し、以来この単価を適用してきている。

 このように、地中設備単価を設定してから相当の年月が経過し、この間建設費も上昇していることから、23区内の異経路回線について、設定した地中設備単価が実態に即しているか調査した。この調査に当たっては、東京支社が100m当たり2,709,000円と設定した根拠や経緯、算定方法が、必ずしも明らかでなかったので、この地中設備単価の妥当性を検証する方法として、固定資産簿等により算出した地中設備の取得価額と比較することとした。 

(調査の結果)

 調査したところ、平成2、3各年度における東京都23区内の地中設備の1m当たりの取得単価は、次表のとおり、地中設備単価(1m当たり27,090円)を大きく上回るものとなっていた。

区分・年度 2年度 3年度

管路、マンホール等の管路部分

33,458

36,971
とう道、とう道用電気設備等のとう道部分 31,371 35,080
管路部分及びとう道部分の設置距離による加重平均額 32,308 36,381

 そして、これらの地中設備の建設に長期間を要することがあることなどを考慮して、2年度又は3年度以前3箇年度に取得した地中設備の加重平均取得単価を取ってみても、2年度では29,732円、3年度では、32,174円となり、同じく地中設備単価を相当上回るものとなっていた。 

 したがって、東京支社が設定している地中設備単価は、実態に即したものとなっておらず、地中設備の設置に要する費用の実費の収納がなされていないと認められ、改定の要があると認められる。

(増収できた地中設備費等)

 いま、前記の東京都23区内における6契約の異経路回線において利用している取扱区域外の既設の地中設備について、固定資産簿等を基に調査した上記の3箇年度の加重平均取得単価により地中設備費を計算すると、計2億5839万余円となり、前記収納額2億2981万余円との差額約2850万円増収できた計算となる。

 また、これに伴い、当該地中設備の減価償却費も増加することなどから、回線専用料の加算額も年間3044万余円となり、前記収納額2707万余円との差額約330万円増収できたことになる。

(発生原因)

 このような事態が生じたのは、支社において長期間にわたって地中設備単価の見直しを行っていなかったことにもよるが、NTT本社において、地中設備単価の具体的な算定方法を示していなかったこと、前記のような支社の地中設備費算出の実態を十分把握しておらず、適切な指導を欠いていたことなどによると認められる。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、NTTでは、4年11月に、各支社に対して指示文書を発し、地中設備の取得価額等を基にして地中設備単価を算定する具体的な方法を示すとともに、この方法により現行の地中設備単価を見直し、5年1月以降の契約に係る異経路回線の設備費等の算定から適用することなどの処置を講じた。

(注)  東京支社ほか2支社  東京、関東、関西各支社