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  • 平成3年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第13 北海道旅客鉄道株式会社、第14 東日本旅客鉄道株式会社、    第15 東海旅客鉄道株式会社、第16 西日本旅客鉄道株式会社、    第17 九州旅客鉄道株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項|
  • (東日本旅客鉄道株式会社)

公共下水道への汚水排出量を把握することにより下水道料金の支払を適切なものにするよう改善させたもの


(3) 公共下水道への汚水排出量を把握することにより下水道料金の支払を適切なものにするよう改善させたもの

科目 (款)鉄道事業営業費 (項)車両保存費(車両工場)
(項)車両保存費
(項)運転費
(項)運輸費
部局等の名称 東京、上野両駅、上野新幹線第一運転所、大井工場、新潟車掌区、新潟新幹線第一運転所
契約の概要 東京駅等において汚水を排除するため東京都及び新潟市の公共下水道を使用するもの
契約の相手方 東京都及び新潟市
支払 平成2年4月〜4年3月
支払金額 平成2年度 446,779,209円
平成3年度 437,574,384円
884,353,593円
節減できたと認められる支払額 平成2年度 7700万円
平成3年度 8080万円
1億5780万円

<検査の結果>

 東京駅等において、下水道料金の支払に当たり、水道水の使用量から列車給水等による減水量を控除したものを公共下水道への汚水排出量として関係地方公共団体の認定を受けたとすれば、下水道料金を平成2年度約7700万円、3年度約8080万円、計約1億5780万円節減できたと認められた。

 このような事態が生じていたのは、東京駅等において関係地方公共団体の下水道条例を十分理解しておらず、汚水排出量の実態を把握してその認定を受ける手続を執っていなかったことなどによると認められた。

 したがって、下水道料金の支払に当たっては、列車給水等による減水量を把握して汚水排出量の認定を受け、下水道料金の支払を適切なものにする要があると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、東京駅等では、4年3月に発せられた東日本旅客鉄道株式会社の文書に基づき汚水の排出の実態を把握したうえ、同年9月までに関係地方公共団体から汚水排出量の認定を受けた。

1 下水道料金支払の概要

(下水道料金の支払)

 東日本旅客鉄道株式会社(以下「JR東日本」という。)管内の東京駅、上野駅、上野新幹線第一運転所、大井工場、新潟車掌区及び新潟新幹線第一運転所(以下「東京駅等」という。)では、公共下水道を管理する東京都及び新潟市(以下「関係地方公共団体」という。)に対し下水道料金を支払っている。そして、その下水道料金は、平成2年度446,779,209円、3年度437,574,384円、計884,353,593円となっていた。  

(下水道料金の算定及び汚水排出量の認定)

 下水道料金の算定は、関係地方公共団体が、その下水道条例に基づき、使用者が公共下水道に排除した汚水の排出量を定められた期間ごとに認定し、その量に所定の1m3 当たり単価を乗じるなどして行っている。

 このうち、汚水排出量の認定は次のように行うこととなっている。 

(ア) 原則として水道水の使用量をもって汚水排出量とみなす。

(イ) 営業に伴い使用する水道水の水量が公共下水道に排除する汚水量と著しく異なる場合には、使用者の申告により、水道水の使用量から公共下水道に排除されない水量(以下「減水量」という。)を控除して汚水排出量を認定する。

2 検査の結果

(調査の対象)

 東京駅等では、水道水により〔1〕 旅客車に設置されている水タンク(容量350l〜 1,000l)への給水(以下「列車給水」という。)及び〔2〕 ボイラー設備及び冷房設備への給水を行っているが、これら水道水の公共下水道への排出実態及び減水量の認定状況について調査した。

(調査の結果)

 調査したところ、東京駅等においては、次のとおり、列車給水量等に比べ汚水排出量が著しく少ない状況であった。

(ア) 東京駅ほか4機関(注1) における列車給水の実績は、2年度467,310両、3年度502,912両となっている。

 そしてこれらの車両に積み込まれた水は、車内において旅客の飲料用及び洗面用に使用され、使用後の水は走行途中に排水処理されている状況であるので、定期的に抜き取る水タンクの残留水を除き、列車給水された水は、公共下水道に排除されないものと認められた。

 上記の5機関では列車給水量の実績を把握していなかったので、本院において他の駅の給水実績を参考にして算出したところ、列車給水量は2年度239,124m3 、3年度254,142m3 となる。

(イ) 大井工場ほか2機関(注2) におけるボイラー設備への給水の実績は、2年度52,426m3 、3年度48,922 m3 、また、新潟車掌区ほか1機関(注3) における冷房設備への給水の実績は、2年度及び3年度とも29,959m3 となっている。

 そして、これらの給水された水は、設備の稼働に伴って相当量が蒸発している状況であるので、この蒸発量相当の水は、公共下水道に排除されないものと認められた。

 上記の3機関では蒸発量の実績をほとんど把握していなかったので、本院において給水量等を基に各設備の残留水等を考慮して算出したところ、蒸発量は、ボイラー設備で2年度48,297m3 、3年度45,337m3 、冷房設備で2年度及び3年度とも22,950m3 となる。

 上記の(ア)及び(イ)により、公共下水道に排除されない水は、関係地方公共団体の下水道条例による減水量として取り扱うことができるのに、東京駅等では、下水道条例を十分理解しておらずその申告を行っていなかった。このため、水道水の使用量をもって汚水排出量と認定され、これにより下水道料金を支払っていたことは適切とは認められない。 

 したがって、汚水の排出の実態を十分に把握し、関係地方公共団体から適正な汚水排出量の認定を受けるよう所定の手続を執り、下水道料金の支払を適切なものにする要があると認められた。

(節減できたと認められる下水道料金)

 いま、汚水排出量について、列車給水については前記の給水量が、ボイラー設備及び冷房設備への給水については前記の蒸発量が生じたものとして、その場合の減水量を控除して下水道料金を修正計算すると、2年度において約7700万円、3年度において約8080万円、計約1億5780万円が節減できたと認められた。

3 当局が講じた改善の処置 

 上記についての本院の指摘に基づき、東京駅等では、4年3月に発せられたJR東日本の文書に基づき汚水の排出の実態を把握したうえ、同年9月までに関係地方公共団体から汚水排出量の認定を受けた。

(注1) 東京駅ほか4機関 東京、上野両駅、上野新幹線第一運転所、新潟車掌区、新潟新幹線第一運転所
(注2) 大井工場ほか2機関 大井工場、新潟車掌区、新潟新幹線第一運転所
(注3) 新潟車掌区ほか1機関 新潟車掌区、新潟新幹線第一運転所