ページトップ
  • 平成3年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第13 北海道旅客鉄道株式会社、第14 東日本旅客鉄道株式会社、    第15 東海旅客鉄道株式会社、第16 西日本旅客鉄道株式会社、    第17 九州旅客鉄道株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項|
  • (東海旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社)

軌道整備工事における遊間整正費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの


(4)−(6) 軌道整備工事における遊間整正費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの

会社名 (1) 東海旅客鉄道株式会社
(2) 西日本旅客鉄道株式会社
(3) 九州旅客鉄道株式会社
科目 (1) (款)鉄道事業営業費 (項)線路保存費
(款)建設勘定 (項)老朽設備取替
(2) (款)鉄道事業営業費 (項)線路保存費
(3) (款)鉄道事業営業費 (項)線路保存費
部局等の名称 (1) 東海旅客鉄道株式会社本社
(2) 西日本旅客鉄道株式会社本社
(3) 九州旅客鉄道株式会社本社
工事名 (1) 「名古屋保線区管内軌道整備その他その1」ほか29工事
(2) 「草津保線区管内軌道整備他」ほか44工事
(3) 「行橋管理室軌道整備1」ほか35工事
工事の概要
列車運転の安全性を保持するために行う軌道工事の一環として、レールの遊間整正、枕木(まくらぎ)交換、道床整理等を内容とする軌道整備工事

工事費 (1) 3,625,080,018円
(2) 5,244,666,305円
(3) 448,411,412円
9,318,157,735円
請負人 (1) 中部施設工業株式会社ほか4会社
(2) 大鉄工業株式会社ほか4会社
(3) 九鉄工業株式会社ほか1会社
契約 (1) 平成3年3月〜9月 随意契約
(2) 平成3年3月、4月 随意契約
(3) 平成3年3月〜12月 随意契約
過大積算額 (1) 4830万円
(2) 6290万円
(3) 1190万円
1億2310万円

<検査の結果>

 上記の各工事において、遊間整正費の積算(積算額計6億2058万余円)が適切でなかったため、積算額が約1億2310万円過大になっていた。

 このように積算額が過大となっていたのは、近年、施工性に優れた遊間整正器が使用されたり、軌道状態も改善されたりしているにもかかわらず、上記の各会社において、その実態を十分把握することなく、積算の基準に定める歩掛かりの見直しを行わないまま、遊間整正費の積算を行っていたことによると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、東海、西日本、九州各旅客鉄道株式会社では、平成4年11月に、遊間整正費の積算が施工の実態に即したものとなるよう積算の基準を改正し、同月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。

1 工事の概要 

(軌道整備の工事)

 東海旅客鉄道株式会社(以下「JR東海」という。)、西日本旅客鉄道株式会社(以下「JR西日本」という。)及び九州旅客鉄道株式会社(以下「JR九州」という。)では、列車運転の安全性を保持するために行う軌道工事の一環として、レールの継目部の隙間 (以下「遊間」という。)の整正、枕木交換、道床整理等を内容とする軌道整備工事を毎年多数実施している。そして、平成3年度に、遊間整正を含む軌道整備工事を、JR東海では30工事(工事費36億2508万余円)、JR西日本では45工事(工事費52億4466万余円)、JR九州では36工事(工事費4億4841万余円)、計111工事(工事費総額93億1815万余円)施行している。

(遊間整正の内容)

 遊間整正は、レール温度の変化等により、レールが損傷したり張り出したりすることがないよう、遊間整正器を用いて適切な遊間距離を確保するために施工するもので、その作業手順は次のとおりである(参考図参照)

軌道整備工事における遊間整正費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたものの図1

(遊間整正費の積算方法)

 各会社では、遊間整正費の積算に当たっては、各会社制定の「営業線軌道工事積算要領(在来線用)(案)」(以下「積算要領」という。)等に基づいて行うこととしている。これにより、遊間整正の歩掛かり(レール延長100m当たりの所要人工数)に施工レール延長を乗じて所要人員を算出し、これに労務単価を乗じるなどして遊間整正費を、JR東海では2億5333万余円、JR西日本では3億0951万余円、JR九州では5773万余円、計6億2058万余円と算定している。

2 検査の結果

(調査の経緯)

 本件の積算要領は、昭和40年代前半に制定され、日本国有鉄道の民営化後も各会社がそのまま使用しているものであるが、近年、軌道工事についても、作業員(軌道工)の量的確保が困難になっている状況の中で、遊間整正器等について種々改良が加えられたものが使用されてきている。

 そこで、遊間整正費の積算が施工の実態に即して適切に行われているかを調査した。

(調査の結果)

 各会社が平成3年度に施行した前記の111工事について調査したところ、次のような事態が見受けられた。

 すなわち、積算要領では、前記〔5〕 の遊間整正作業については、衝撃式遊間整正器(重量300kg)によりレールに衝撃を加えてレールを移動させることにより、遊間を整正することを想定している。そして、遊間整正の歩掛かりは、レールの移動に、100m当たり作業員7人で40分を要することとして算出されたものである。

 しかし、遊間整正の施工の実態についてみると、積算要領で想定していない油圧式又はネジ式の遊間整正器が使用されていたり、衝撃式遊間整正器が使用されている場合でも改良型が使用されていたりしている状況であった。そして、油圧式又はネジ式の遊間整正器は、衝撃式遊間整正器に比べて軽量(重量50〜100kg)で取扱いが容易なうえ、1mm単位の施工が可能であるなど微調整に優れ、騒音も少ないなど、積算要領で想定している衝撃式遊間整正器に比べて施工性において優れている。また、改良型の衝撃式遊間整正器も、従前に比べてレールとの脱着が容易になっているなど施工性が向上している。

 また、歩掛かりの制定時と比べて高性能保線機械の導入、レール締結装置や枕木の改良等により軌道状態が改善され、遊間整正の際のレール移動量が少なくなっている状況である。

 そこで、本院が前記111工事の一部を抽出して、作業日報等により遊間整正に要する人工数の実績を調査したところ、大多数の工事において、積算上の所要人工数を相当程度下回る人工数で所定の作業を行っている状況であった。

 上記の本院の調査の趣旨を受けて各会社が実施した調査結果によれば、レールの移動は、100m当たり作業員4人程度で約25分で作業が可能な状況となっていた。そして、これらの調査の結果、前記のとおり、施工性に優れた遊間整正器を使用したり軌道状態が改善されたりしたことにより、遊間整正の歩掛かりは2割程度低減していた。

 このように、積算要領に定められた歩掛かりは、遊間整正の施工の実態とかい離しているのに、これを長期間見直すことなく使用して積算しているのは、適切とは認められない。

(低減できた積算額)

 いま、前記の111工事について、各会社の調査結果に基づいて遊間整正費を修正計算すると、積算要領に定められていなかった遊間整正器の機械損料等を考慮しても、積算額をJR東海で約4830万円、JR西日本で約6290万円、JR九州で約1190万円、計約1億2310万円低減できたと認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、各会社では、4年11月に、遊間整正費の積算が施工の実態に即したものとなるよう積算要領を改正し、同月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。

(参考図)

(参考図)