会計名及び科目 | 一般会計 (組織)文部本省 (項)公立文教施設整備費 |
部局等の名称 | 文部本省 |
負担の根拠 | 産業教育振興法(昭和26年法律第228号) |
事業主体 | 秋田県ほか9県 |
負担事業 | 高等学校産業教育施設整備事業(特別装置整備事業) |
負担事業の概要 | 公立の高等学校における産業教育のための実験実習施設と一体として使用される実験実習に必要な装置等を整備する都道府県等に対して、国庫負担金を交付する事業 |
負担対象経費 | 8,153,365,643円(平成3年度〜5年度) |
上記に対する国庫負担金交付額 | 2,717,692,000円(平成3年度〜5年度) |
過大となっていた負担対象経費 | 159,060,492円(平成3年度〜5年度) |
過大となっていた国庫負担金相当額 | 53,057,000円(平成3年度〜5年度) |
<検査の結果> |
上記の負担事業において、契約業者からの購入価格に一定の率を乗じるなどした額(加算額)を購入価格に加えた額により負担対象経費を算定していたため、国庫負担金が53,057,000円過大に交付されていた。 このような事態が生じていたのは、文部省において、都道府県に対し、負担対象経費の算定方法について明確に指示していなかったことなどによると認められた。 |
<当局が講じた改善の処置> |
本院の指摘に基づき、文部省では、平成6年10月に都道府県に対して通達を発し、負担対象経費は、都道府県等が購入のために契約業者に支払う経費として、加算額は除外することとする処置を講じた。 |
1 特別装置整備事業の概要
文部省では、産業教育振興法(昭和26年法律第228号)等に基づき、産業教育の振興の円滑な実施に資することを目的として、昭和58年度から高等学校産業教育のための特別装置整備事業を行う都道府県等に対し、公立学校施設整備費負担金(以下「負担金」という。)を交付している。
この負担金は、公立の高等学校(以下「高校」という。)の設置者である都道府県等が、高校における産業教育のための実験実習施設と一体として使用される、自動設計製図装置等の実験実習に必要な装置等(以下「特別装置」という。)で、整備事業費の合計額が高校ごとに1000万円以上のものを整備する場合に、これに要する経費の一部を国が負担するものである。
この負担金の交付額は、特別装置の購入に要する経費及び特別装置を設置する際の施設改修工事に要する経費の合計額(以下「負担対象経費」という。)に、国庫負担率3分の1(ただし、沖縄県にあっては10分の6)を乗じて算定することとなっている。
都道府県が特別装置を整備する場合の購入方式は、主として次のとおりである。
(ア) 高校が自ら購入を行う場合は、それぞれカリキュラムに応じた特別装置を選定し、都道府県から通知を受けた予算の範囲内で、契約業者から購入して設置している。
(イ) 都道府県に物品を集中して購入するための部局(以下「調達実施部局」という。)が設けられていて、調達実施部局が各部局等で使用する物品の購入を行う場合は、高校が上記(ア)と同様に特別装置を選定のうえ、購入の要求を行い、これにより、調達実施部局が契約業者から購入して、高校に設置している。
2 検査の結果
文部省が、平成3年度から5年度までの間に、北海道ほか29都府県(注1) に交付した特別装置整備事業に係る負担金の総額9,929,483,000円を対象として、負担対象経費の算定が適切に行われているかなどの観点から調査した。
調査の結果、調達実施部局において特別装置の購入を行っている都道府県が14県(注2)
あり、このうち、秋田県ほか9県(注3)
では、負担対象経費が過大に算定され、ひいては負担金が過大に交付されていて適切とは認められない事態が見受けられた。
すなわち、上記10県では、物品の購入及び管理を集中して行うことにより、購入価格の低減化、事務の効率化等を図ることを目的として、県の条例等により物品購入のための基金又は特別会計(以下「基金等」という。)を設置している。そして、物品調達の取扱規則等により、調達実施部局が、各部局等の要求により物品の購入を基金等で行い、購入の要求を行った部局等に交付しているが、その価格は、契約業者からの購入価格に一定の率(2%から5%)を乗じるなどした額(以下「加算額」という。)を購入価格に加えた額(以下「交付価格」という。)とすることとしている。本件特別装置を基金等で購入する場合においても、各高校が調達実施部局に対して購入の要求を行い、これにより、調達実施部局では契約業者から特別装置を購入して、他の物品と同様に交付価格で高校に設置している。
そして、本件事業の負担金の算定に当たり、負担対象経費を契約業者からの購入価格によらず、調達実施部局の交付価格で算定していた。
しかし、本件事業の負担対象経費について交付価格により算定することは、次のとおり、加算額は本件事業の特別装置の購入に直接要する経費とは認められないことなどから、適切とは認められない。
(ア) 交付価格と契約業者からの購入価格との差額については、基金の場合は、その収益として一般会計に繰り入れられて、一般財源として使用されるなどしていること、また、特別会計の場合は当該会計所属の職員の給与、需品費等に使用されるなどしていること
(イ) 上記のような負担対象経費の算定を行わず、契約業者からの購入価格をもって負担対象経費を算定している都道府県との間に取扱いに差異が生じていて不均衡となっていること
なお、特別装置は、高校のカリキュラムに応じて使用される専門的物品であり、各高校の要求に基づき個別に購入されることから、基金等で特別装置を購入しても、一般には価格の低減を図るための大量購入による利点があるとは認められない。
したがって、本件事業の国庫負担対象経費については、交付価格によらず、契約業者からの購入価格により算定する要があったと認められた。
前記の10県では、3年度から5年度までの間の本件事業の負担金の算定に当たり、加算額を含めた負担対象経費を総額81億5336万余円として、これにより国庫負担金総額27億1769万余円の交付を受けてた。
これを上記により加算額を除外して修正計算すると、国庫負担金は26億6463万余円となり、差し引き5305万余円が過大に交付されていると認められた。
このような事態が生じていたのは、前記の各県において、負担事業に対する認識が十分でなかったことにもよるが、文部省において、都道府県に対し、負担対象経費の算定方法について明確に指示していなかったことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、文部省では、6年10月に都道府県に対して通達を発し、負担対象経費は、都道府県等が購入のために契約業者に支払う経費として、加算額は除外することとする処置を講じた。
(注1) 北海道ほか29都府県 北海道、東京都、京都、大阪両府、宮城、秋田、山形、福島、栃木、埼玉、千葉、神奈川、新潟、富山、石川、静岡、三重、滋賀、兵庫、奈良、和歌山、岡山、徳島、香川、愛媛、福岡、長崎、熊本、大分、宮崎各県
(注2) 14県 秋田、山形、福島、新潟、富山、奈良、和歌山、岡山、徳島、香川、長崎、熊本、大分、宮崎各県
(注3) 秋田県ほか9県 秋田、山形、和歌山、岡山、徳島、香川、長崎、熊本、大分、宮崎各県