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国民健康保険の普通調整交付金の交付が不当と認められるもの


(157)−(160) 国民健康保険の普通調整交付金の交付が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生本省 (項)国民健康保険助成費
部局等の名称 厚生本省(交付決定庁)
大分、栃木、滋賀各県(支出庁)
交付の根拠 国民健康保険法(昭和33年法律第192号)
交付先 別府市ほか3市町(保険者)
普通調整交付金の概要 市町村等の国民健康保険に係る財政力の不均衡を調整するため、一定の基準により財政力を測定し、その程度に応じて交付するもの
上記に対する交付金交付額の合計 6,746,640,000円 (昭和63年度〜平成5年度)
不当と認める交付金交付額 505,762,000円 (昭和63年度〜平成5年度)
 上記の4市町において、普通調整交付金の交付額の算定の基礎となる保険料(又は保険税)の収納割合を事実と相違した高い割合で交付申請を行っていたこと、及びこれに対する上記3県の審査が十分でなかったことなどのため、交付金505,762,000円が過大に交付されていて不当と認められる。

1 普通調整交付金の概要

(国民健康保険の普通調整交付金)

 国民健康保険は、市町村等が保険者となって、被用者保険の被保険者及びその被扶養者等を除き、当該市町村の区域内に住所を有する者等を被保険者として、その疾病、負傷、出産又は死亡に関し、療養の給付、助産費、葬祭費の支給等の給付を行う保険である。
 国民健康保険につぃては各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村が行う国民健康保険について普通調整交付金(以下「交付金」という。)が交付されている。この交付金は、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)等に基づいて、市町村間で医療費の水準や住民の所得水準の差異により生じている国民健康保険の財政力の不均衡を調整するため、一定の基準により算定される収入額(調整対象収入額(注1) )が同じく一定の基準により算定される支出額(調整対象需要額(注2) )に満たない市町村に対し、その不足を公平に補うことを目途として交付するものである。
 交付金の交付額は、調整対象需要額が調整対象収入額を超える額に別に定める率を乗じて得た額となっている。ただし、市町村における保険料又は保険税(以下「保険料」という。)の収納努力を交付額に反映させるため、徴収の決定を行って納付義務者たる世帯主に賦課した保険料の額(以下、徴収の決定を「調定」、その額を「調定額」という。)に対する収納した額の割合が所定の率を下回る市町村については、その下回る程度に応じて段階的に5%から20%の率で交付額を減額することとなっている(以下この率を「減額率」という。)。  この減額の基準となる保険料の収納割合は、全被保険者から退職被保険者(被扶養者を含む。)を除いた一般被保険者に係る保険料について計算した次の〔1〕 、〔2〕 の収納割合のうちいずれか高い方の割合(以下「保険料収納割合」という。)とされている。

〔1〕 当該年度分の保険料で1月31日までに納期が到来している分の調定額に対する同日までの収納額の割合

〔2〕 前年度分の保険料の調定額に対する前年度の収納額の割合(以下「前年度収納割合」という。)

 また、保険料収納割合による交付額の減額率は、次の減額率表のとおりとなっている。

<減額率表>

保険料収納割合 減額率(%)
一般被保険者数1万人未満である市町村

(%)

一般被保険者数1万人以上5万人未満である市町村

(%)

一般被保険者数5万人以上である市町村

(%)

92以上94未満 91以上93未満 90以上92未満 5
87以上92未満 86以上91未満 85以上90未満 10
80以上87未満 80以上86未満 80以上85未満 15
80未満 80未満 80未満 20

 (交付手続)

 交付金の交付手続は、〔1〕 交付を受けようとする市町村は都道府県に交付申請書を提出し、〔2〕 交付申請書を受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査のうえ、これを厚生省に提出し、〔3〕 厚生省はこれに基づき交付決定を行い交付することとなっている(注3)

(注1)  調整対象収入額 本来徴収すべきとされている保険料の額で、医療費を基に算定される応益保険料額と被保険者の所得を基に算定される応能保険料額の合計額

(注2)  調整対象需要額 本来保険料で賄うべきとされている額で、医療費、老人保健医療費拠出金及び保健施設費の合計額から患者の一部負担金及び療養給付費等負担金等の国庫補助金等を控除した額

(注3)  交付金の交付については、国の予算措置の都合により、昭和57年度から特例として、当年度分の交付金の一部は翌年度に交付するとされている。したがって、交付額は、当年度分として算定された交付金の額から翌年度に交付される額を控除した額に前年度分の交付金の額のうち当年度に交付される額を加えた額となる。

2 検査の結果

 交付金の交付について検査した結果、別府市ほか3市町において、交付金505,762,000円が過大に交付されていて不当と認められる。
 これは、別府市ほか3市町が保険料収納割合を事実と相違した高い割合で交付申請を行っていたこと、大分県ほか2県のこれに対する審査が十分でなかったことなどのため、交付金が減額を全部又は一部免れて過大に交付されていたものである。
 これを、県別に示すと次のとおりである。


県名 交付先(保険者) 年度 交付金交付額 左のうち不当と認める額

(157)

大分県

別府市

昭和63〜平成5
千円
6,276,729
千円
475,158

 別府市では、昭和63年度から平成4年度までの各年度分の交付金の算定に当たり、表1の各年度(交付申請)のとおり、保険料収納割合は前年度収納割合で、88%又は89%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同市は一般被保険者数が1万人以上5万人未満であることから、減額率表により各年度分とも10%の減額になるとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて昭和63年度から平成5年度までの交付申請を行い、計6,276,729,000円の交付を受けていた。
 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった前年度分の保険料の調定額及び収納額についてみると、同市では、保険料収納割合を事実と相違して高くすることにより交付金の減額を一部免れるなどのため、次のように操作していた。

(ア) 昭和63年度から平成2年度までは、一般被保険者について賦課する1年分の保険料の額を集計のうえ一括して調定する際に、その集計額を不当に減額して調定額を過小にしていた。

(イ) 3年度及び4年度は、保険料を滞納している被保険者の一部について、保険料の所得割額を賦課しているのに、これを賦課していないこととして調定額を過小にしていた。

(ウ) 保険料収納割合の計算上収納額に含めないことになっている前々年度以前分の滞納保険料に係る収納額を含めるなどして、収納額を過大にしていた。

 そして、実際の賦課に基づく適正な調定額及び収納額は表1の各年度(修正)のとおりであり、これによれば保険料収納割合は前年度収納割合で76%から81%となり、交付金の減額率は、昭和63年度から平成2年度までの各年度分は20%、3年度及び4年度分は15%となる。

表1

年度 前年度分の保険料の調定額(A)

百万円

左に対する前年度の収納額(B)

百万円

保険料収納割合(B/A)

%

減額率

%


(交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正)
昭和63 2,145 2,332 1,896 1,821 88 78 10 20
平成元 2,112 2,287 1,880 1,796 88 77 10 20
2 2,161 2,295 1,926 1,763 89 76 10 20
3 2,139 2,218 1,909 1,789 89 80 10 15
4 2,170 2,276 1,939 1,850 89 81 10 15

 したがって、交付金の適正な交付額は、表2のとおり、昭和63年度から平成5年度までで計5,801,571,000円となり、計475,158,000円が過大に交付されていた。

表2

年度 交付金交付額 適正な交付額 過大交付額

昭和63
千円
1,097,868
千円
991,763
千円
106,105
平成元 1,068,497 949,776 118,721
2 1,092,267 970,904 121,363
3 1,020,199 956,630 63,569
4 1,051,910 993,471 58,439
5 945,988 939,027 6,961
6,276,729 5,801,571 475,158

(注) 平成5年度については、(注3)参照

県名 交付先(保険者) 年度 交付金交付額

左のうち不当と認める額

(158) 栃木県 矢板市 平成5 千円
58,507
千円
2,850

 矢板市では、平成5年度分の交付金の算定に当たり、表1(交付申請)のとおり、保険料収納割合は前年度収納割合で、92%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同市は一般被保険者数が1万人未満であることから、減額率表により5%の減額になるとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて5年度の交付申請を行い、58,507,000円の交付を受けていた。
 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった前年度分の保険料の調定額及び収納額についてみると、同市では、次のように調定額を過小にしたり、収納額を過大にしたりしていた。このため、保険料収納割合が事実と相違して高くなっていて、交付金の減額を一部免れていた。

(ア) 交付金の交付申請に当たり、被保険者資格を有する者のうち所得の申告のない者について、資格を喪失していないのに喪失した者と誤認して、その者に係る調定額を減額していた。

(イ) 保険料収納割合の計算上収納額に含めないことになっている保険料の過大納付に係る還付未済額を含めて、収納額を過大にしていた。

そして、実際の賦課に基づく適正な調定額及び収納額は表1(修正)のとおりであり、これによれば保険料収納割合は前年度収納割合で91%となり、交付金の減額率は10%となる。

表1

年度 前年度分の保険料の調定額(A)

百万円

左に対する前年度の収納額(B)

百万円

保険料収納割合(B/A)

%

減額率

%


(交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正)
平成5 732 733 675 675 92 91 5 10

 したがって、交付金の適正な交付額は、表2のとおり、55,657,000円となり、2,850,000円が過大に交付されていた。

表2

年度 交付金交付額 適正な交付額 過大交付額

平成5
千円
58,507
千円
55,657
千円
2,850

(159) 滋賀県 八日市市 平成4、5 82,346 2,200

 八日市市では、平成4年度分の交付金の算定に当たり、表1(交付申請)のとおり、保険料収納割合は前年度収納割合で、94%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同市は一般被保険者数が1万人未満であることから、減額率表により減額の対象にならないとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて4年度及び5年度の交付申請を行い、計82,346,000円の交付を受けていた。 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった前年度分の保険料の調定額及び収納額についてみると、同市では、次のように調定額を過小にしたり、収納額を過大にしたりしていた。このため、保険料収納割合が事実と相違して高くなっていて、交付金の減額を免れていた。

(ア) 保険料の賦課額の増額修正が年度途中に行われ、納付額が多くなる被保険者の一部について、その負担を緩和するためとして、保険料の減免を行うことができる場合(注) に該当しないのに保険料の賦課額を減額していて、調定額を過小にしていた。

(注) 保険料の減免を行うことができる場合

〔1〕  世帯の所得が地方税法(昭和25年法律第226号)第314条の2第2項に規定する基礎控除額以下である世帯等を対象として減額する場合

〔2〕  市町村が条例で規定する事由に該当する世帯主からの申請に基づいて減免する場合

(イ)保険料収納割合の計算上収納額に含めないことになっている保険料の過大納付に係る還付未済額を含めて、収納額を過大にしていた。

 そして、適正な賦課に基づく調定額及び収納額は表1(修正)のとおりであり、これによれば保険料収納割合は前年度収納割合で93%となり、交付金の減額率は5%となる。

表1

年度 前年度分の保険料の調定額(a)

百万円

左に対する前年度の収納額(b)

百万円

保険料収納割合(b/a)

%

減額率

%


(交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正)
平成4 691 692 650 649 94 93 減額の対象外 5

 したがって、交付金の適正な交付額は、表2のとおり、4年度及び5年度で計80,146,000円となり、計2,200,000円が過大に交付されていた。

表2

年度 交付金交付額 適正な交付額 過大交付額

平成4
千円
45,237
千円
43,298
千円
1,939
5 37,109 36,848 261
82,346 80,146 2,200

(注) 平成5年度については、(注3)参照

(160) 滋賀県 伊香郡木之本町 平成元〜5 329,058 25,554

 木之本町では、平成元年度分から4年度分までの各年度分の交付金の算定に当たり、表1の各年度(交付申請)のとおり、保険料収納割合は前年度収納割合で、95%又は96%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同町は一般被保険者数が1万人未満であることから、減額率表により各年度分とも減額の対象にならないとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて元年度から5年度までの交付申請を行い、計329,058,000円の交付を受けていた。 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった前年度分の保険料の調定額及び収納額についてみると、同町では、次のようにして、保険料収納割合を事実と相違して不当に高くしていて、交付金の減額を免れていた。

(ア) 一般被保険者について賦課する1年分の保険料の額を集計のうえ一括して調定する際に、その集計額を減額する事由がないのに減額するなどして調定額を過小にしていた。

(イ) 保険料収納割合の計算上収納額に含めないことになっている前々年度以前分の滞納保険料に係る収納額を含めて、収納額を過大にしていた。

 そして、実際の賦課に基づく適正な調定額及び収納額は表1の各年度(修正)のとおりであり、これによれば保険料収納割合は前年度収納割合で88%から90%となり、交付金の減額率は、いずれの年度分とも10%となる。

表1

年度 前年度分の保険料の調定額(a)

百万円

左に対する前年度の収納額(b)

百万円

保険料収納割合(b/a)

%

減額率

%


(交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正)
平成元 139 144 132 128 95 88 減額の対象外 10
2 140 147 133 131 95 89 減額の対象外 10
3 140 147 133 132 95 89 減額の対象外 10
4 147 154 142 140 96 90 減額の対象外 10

 したがって、交付金の適正な交付額は、表2のとおり、元年度から5年度までで計303,504,000円となり、計25,554,000円が過大に交付されていた。

表2

年度 交付金交付額 適正な交付額 過大交付額

平成元
千円
66,074
千円
60,354
千円
5,720
2 61,186 55,067 6,119
3 65,079 58,572 6,507
4 64,459 58,013 6,446
5 72,260 71,498 762
329,058 303,504 25,554

(注) 平成5年度については、(注3)参照

(157)-(160) の計 6,746,640 505,762