会計名及び科目 | 一般会計 (組織)農林水産本省 | (項)家畜伝染病予防費 |
(項)畜産振興費 | ||
(項)牛肉等関税財源畜産振興費 |
補助の根拠 | (1) | 家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号) |
(2) | 予算補助 |
補助事業 | (1) | 家畜伝染病予防事業 |
(2) | 家畜衛生対策事業 | |
事業の概要 | (1) | 家畜の伝染性疾病の発生を予防するなどのため、家畜保健衛生所等において家畜に対する検査等を行うもの |
(2) | 家畜衛生の向上を図るため、家畜保健衛生所等において畜産農家に対する巡回指導等を行うもの |
補助対象経費 | (1) | 6億2720万余円 | (平成4年度) | |
(2) | 6億9,011万余円 | (同) | ||
計 | 13億1,731万余円 | |||
上記に対する国庫補助金等交付額 | (1) | 4億4,086万余円 | ||
(2) | 3億4,504万余円 | |||
計 | 7億8,591万余円 | |||
適切でない国庫補助金等相当額 | (1) | 5,623万余円 | ||
(2) | 9,730万余円 | |||
計 | 1億5,353万余円 |
<検査の結果> |
上記の2補助事業において、その経費を事業ごとに区分して経理しておらず、各事業の実績額を把握することなく実績報告が行われていたり、事業と関係のない経費などを補助の対象としていたりしていて、国庫補助金等相当額1億5,353万余円の交付が適切でないと認められた。 このような事態が生じていたのは、県の補助事業に対する認識や理解が十分でなかったことにもよるが、農林水産省において、県が事業ごとの実績額を的確に把握していなかったのにこれに対する指導が十分でなかったこと、補助対象経費の範囲を明確に示していなかったことなどによると認められた。 |
<当局が講じた改善の処置> |
本院の指摘に基づき、農林水産省では、平成6年11月に都道府県に対して通達を発し、事業ごとに経理を区分し、事業実績額を的確に把握するよう指導の徹底を図るとともに、補助対象経費の範囲を明確に示すなどの処置を講じた。 |
1 事業の概要
農林水産省では、家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号。以下「予防法」という。)等に基づき、畜産の振興を図ることを目的として、家畜伝染病予防事業(以下「予防事業」という。)及び家畜衛生対策事業を実施する都道府県に対し、その事業に要する経費の一部について、国庫負担金又は国庫補助金(以下「補助金等」という。)を交付している。これらの事業の内容は、次のとおりである。
(1) 予防事業は、予防法に基づき、家畜の伝染性疾病の発生を予防し、そのまん延を防止するため、都道府県が設置している家畜保健衛生所、家畜衛生研究所等(以下「家畜保健所等」という。)の家畜防疫員等が家畜に対する検査、注射、薬浴又は投薬を行ったり、家畜市場・畜舎への立入検査等を行ったりするものである。
(2) 家畜衛生対策事業は、畜産活性化総合対策基本要綱(平成4年4畜B第709号農林水産事務次官通達)等に基づき、畜産活性化総合対策事業の一環として、疾病による家畜の損耗を防止するなどの家畜衛生の向上を図るために実施するもので、家畜衛生技術指導、動物用医薬品耐性菌特別対策等の7事業が実施されている。このうち家畜衛生技術指導事業ほか4事業(注1) (以下「衛生事業」という。)は、家畜保健所等の職員が畜産農家に対する巡回指導、衛生検査等を行うものである。
上記の予防事業及び衛生事業の実施に要する経費のうち、補助金等の交付の対象となる経費(以下「補助対象経費」という。)及び補助金等の交付額については、次のとおり定められている。
(1) 予防事業における補助対象経費は、予防法第60条の規定により、都道府県知事又は家畜防疫員等が予防法を執行するために必要な経費のうち、次に掲げるものなどとなっており、国庫負担金の交付額はその全額又は2分の1となっている。
〔1〕 家畜防疫員の旅費(全額)
〔2〕 雇い入れた獣医師に対する手当(2分の1)
〔3〕 農林水産大臣の指定する薬品の購入費(全額)
(2) 衛生事業における補助対象経費は、畜産活性化総合対策関係補助金交付要綱(平成4年4畜B第711号農林水産事務次官通達)により、当該事業に要する経費のうち、次に掲げるものなどとなっており、国庫補助金の交付額はその2分の1以内となっている。
〔1〕 家畜衛生推進等の会議の開催に要する経費
〔2〕 畜産農家等への巡回指導に要する経費
〔3〕 衛生検査等に要する経費
そして、平成4年度の予防事業及び衛生事業に係る補助金等の交付額は、それぞれ8億3,470万余円、6億2,114万余円、計14億5,585万余円となっている。
2 検査の結果
青森県ほか24県(注2) における4年度の予防事業(補助対象経費6億2,720万余円、国庫負担金交付額4億4,086万余円)及び衛生事業(補助対象経費6億9,011万余円、国庫補助金交付額3億4,504万余円)について、これらの事業を実施している137家畜保健所等を調査した。調査に当たっては、家畜保健所等において、上記のように目的、補助率等の異なる事業を同時に実施していることから、これらの事業がそれぞれ適正に区分して経理されているかなどの観点から行った。
調査の結果、青森県ほか24県のうち、21県(注3)
における家畜保健所等においては、予防事業、衛生事業及び県が単独で行う事業を一括して経理していて、事業ごとに区分して経理しておらず、実際に要した各事業の経費の額を的確に把握していなかった。そして、県は両事業の実績報告書において、交付申請書における事業費の予定額をそのまま事業に要した実績額であるとして記載し、これを国に提出して、補助金等の額の確定を受けていた。
また、区分経理をしていた4県においても、実際に要した各事業の経費の額を的確に把握しないまま実績報告書を提出していた。
そこで、上記の25県について、両事業に係る経費の関係書類の提出を求め、その内容を調査した。
その結果、各県が実際に事業に要したとしている経費の中には、予防事業又は衛生事業と全く関係がない経費、又は関係が極めて少ない経費が含まれており、これを補助金等の交付の対象としていたのは適切とは認められない。そして、その額は予防事業で5,920万余円、衛生事業で2億2,177万余円、計2億8,097万余円となっていた。
これらについて、その態様を示すと、次のとおりである。
(1) 予防事業において、家畜防疫員が獣医師会や農業協同組合の総会、研修会、講習会等に出席するなどのための旅費を対象としているもの
20県 | 5,839件 | 5,920万余円 |
(2) 衛生事業において、
〔1〕 光熱水費及び通信費等の家畜保健所等の管理運営費等を対象としているもの
23県 | 6,657件 | 1億6,923万余円 |
〔2〕 家畜保健所等の職員が獣医師会や農業協同組合の総会、研修会、講習会等に出席するなどのための旅費を対象としているもの
23県 | 5,598件 | 5,253万余円 |
したがって、予防事業及び衛生事業において実際に要した経費の額を把握することなく、事業の実績報告が行われていたり、事業と関係がない経費などを補助金等の交付の対象としていたりしているのは適切とは認められず改善の要があると認められた。
各県における前記事業に実際に要したとしている経費の額から、事業と関係がない経費などを除いて、各事業の補助対象経費を算定すると、実績報告による実績額を下回ることになる。そして、その開差額は、予防事業において、5,765万余円(国庫負担金相当額5,623万余円)、衛生事業において、1億9,460万余円(国庫補助金相当額9,730万余円)、計2億5,225万余円(国庫補助金等相当額1億5,353万余円)となり、これを本件事業の経費として、補助金等の交付の対象としているのは適切でないと認められた。
このような事態が生じていたのは、県の補助事業に対する認識や理解が十分でなかったことにもよるが、農林水産省において、次のように適切でない点があったことによると認められた。
(ア) 各県が、家畜保健所等に対して、予防事業及び衛生事業の予算額を一括して配賦し、各事業ごとの内訳を明示していなかったなどのため、家畜保健所等が両事業を区分して経理していなかったり、実際に要した各事業の経費を的確に把握していなかったりしているのに、これに対する指導が十分でなかったこと
(イ) 各事業の補助対象経費について、その範囲を明確に示していなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省では、6年11月に都道府県に対して通達を発し、各事業ごとに経理を区分し、事業実績額を的確に把握するよう指導の徹底を図るとともに、補助対象経費の範囲を明確に示すなどの処置を講じた。
(注1) 家畜衛生技術指導事業ほか4事業 家畜衛生技術指導事業、動物用医薬品耐性菌特別対策事業、産業動物診療体制促進対策事業、牛の異常産ウイルスサーベイランス事業、吸血昆虫媒介疾病防疫対策強化事業
(注2) 青森県ほか24県 青森、岩手、宮城、山形、福島、栃木、群馬、千葉、石川、福井、静岡、三重、兵庫、和歌山、島根、岡山、山口、徳島、香川、愛媛、高知、長崎、熊本、宮崎、沖縄各県
(注3) 21県 (注2)による25の県のうち青森、福井、兵庫、島根を除く各県