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  • 平成5年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第5 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

ブルドーザによる掘削押土費の積算が適切に行われるよう改善させたもの


(2)ブルドーザによる掘削押土費の積算が適切に行われるよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)林野庁 (項)林業振興費
(項)林道事業費
(項)北海道林道事業費
(項)農林漁業用揮発油税財源身替北海道農道等整備事業費
国有林野事業特別会計(治山勘定) (項)治山事業費
(項)北海道治山事業費
部局等の名称 林野庁
補助の根拠 森林法(昭和26年法律第249号)
林業基本法(昭和39年法律第161号)
事業主体 北海道ほか7県、74市町村、計82事業主体
補助事業 林道開設事業ほか5事業
補助事業の概要 林産物の搬出などに利用される林道等を開設する事業
事業費 平成4年度 4,726,837,450円
平成5年度 6,127,993,710円
10,854,831,160円
上記に対する国庫補助金交付額 平成4年度 2,464,077,097円
平成5年度 3,180,898,000円
5,644,975,097円
過大積算額 1億2,170万円
上記に対する国庫補助金相当額 6,300万円
<検査の結果>
 上記の補助事業において、ブルドーザによる掘削押土費の積算(積算額4億7,582万余円)が適切でなかったため、積算額が約1億2,170万円(国庫補助金相当額約6,300万円)過大になっていた。
このように積算額が過大になっていたのは、積算の基準において、ブルドーザにより掘削押土作業を行う場合、掘削と押土の各作業を一連の作業として積算することが明確でなかったことなどによると認められた。
<当局が講じた改善の処置>
 本院の指摘に基づき、林野庁では、平成6年10月に、ブルドーザにより掘削押土作業を行う場合、掘削と押土の各作業を一連の作業として積算することを明確にして、掘削押土費の積算が適切に行われるよう積算の基準を改正し、同年11月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

1 工事の概要

(林道開設工事)

 林野庁では、森林法(昭和26年法律第249号)等に基づき林道等の整備を計画的に推進するため、林道開設事業ほか5事業(注1) により、林道及び保安林管理道の開設工事(以下「林道開設工事」という。)を実施する都道府県、市町村等に対して毎年度国庫補助金を交付している。
 林道開設工事は、切土・盛土・法面仕上げなどの土工事、土留め用のコンクリート擁壁の築造等が工事の主体となっている。

(ブルドーザによる掘削押土費の積算)

 林道開設工事の工事費の積算は、林野庁制定の「民有林林道事業設計書作成要領」及び「治山事業設計標準歩掛」(以下、これらを「積算要領」という。)等に基づき算定している。積算要領では、機械による土工については、地山勾配が2割(注2) より緩い場合作業機械を次表のとおり定めている。

土質

土工方式 

掘削(地山)

掘削積込・運搬・押土(ルーズ)
60m以内 60m超える
岩石 リッパ、又は大型ブレーカ ブルドーザ バックホウダンプトラック
土石 ブルドーザ又はバックホウ

 このうち、土質が土石で掘削箇所から盛土箇所までの押土距離が60m以内の場合は、ブルドーザによる施工が経済的であることから、上記の表の「掘削」と「掘削積込・運搬・押土(60m以内)」の欄を適用し、ブルドーザにより掘削し盛土箇所まで押土することとしている(参考図参照) 。そして、これらの掘削及び押土の作業に係る費用(以下「掘削押土費」という。)を次の順序で算出することとしている。

(ア) 1時間当たりの掘削押土量(掘削し押土する土石量)の算出

〔1〕  ブルドーザが掘削作業を始めてから盛土箇所までの押土作業を終えて、再び掘削作業につくまで(以下「1サイクル」という。)に要する時間(以下「サイクルタイム(Cm)」という。)を次の算定式により算出する。

〔1〕ブルドーザが掘削作業を始めてから盛土箇所までの押土作業を終えて、再び掘削作業につくまで(以下「1サイクル」という。)に要する時間(以下「サイクルタイム(Cm)」という。)を次の算定式により算出する。

l:平均掘削押土距離(掘削箇所から盛土箇所までの押土距離を平均したもの)

0.79:ブルドーザの方向転換などに要する固定の時分

〔2〕 〔1〕 により算出したサイクルタイムにより1時間当たりのサイクル数を算出し、このサイクル数に1サイクル当たり掘削押土量等を乗じて1時間当たりの掘削押土量を算出する。

(イ) 1m3 当たりの掘削押土単価の算出

積算要領に基づき算出したブルドーザの1時間当たり運転経費を、(ア)により算出した1時間当たりの掘削押土量で除して、1m3 当たりの掘削押土単価を算出する。

(ウ) 掘削押土費の算出

(イ)により算出した1m3 当たりの掘削押土単価に総掘削押土量を乗じて、掘削押土費を算出する。

2 検査の結果

(調査の対象)

 平成4、5両年度に、北海道ほか7県(注3) 及び北海道ほか8県(注4) 管内の74市町村計82地方公共団体が事業主体となり実施している、掘削押土量が3,000m3 以上の比較的大規模な林道開設工事212件、工事費総額10,854,831,160円(国庫補助金5,644,975,097円)を対象として、これらの工事の掘削押土費の積算額計4億7,582万余円について調査した。

(調査の結果)

 調査の結果、上記各工事のブルドーザによる掘削押土費の積算において、次のような事態が見受けられた。
 すなわち、事業主体では、積算要領(参照) において、土質が土石で押土距離が60m以内の場合、「掘削」と「掘削積込・運搬・押土(60m以内)」の欄にそれぞれブルドーザが記載されていたので、「掘削」と「押土」の各作業についてサイクルタイムを別々に計算するものと誤解していた。そして、次のように各作業のサイクルタイムを算出して(下の算定式参照) 、1時間当たり掘削押土量を算出していた。

(1) 掘削作業ブルドーザによる掘削押土費の積算が適切に行われるよう改善させたものの図1

(2) 押土作業ブルドーザによる掘削押土費の積算が適切に行われるよう改善させたものの図2

平均掘削押土距離が50mで、掘削作業に要する距離を5m、押土作業に要する距離を45mとした場合

 しかし、ブルドーザによる掘削と押土の作業は、掘削と押土が一連の作業として行われている。このため、サイクルタイムの算定式は、前記のとおり、ブルドーザが掘削作業を始めてから盛土箇所までの押土作業を終えて、再び掘削作業につくまでに要する時間を算出することとして定められており、算定式中の0.79分は、ブルドーザが1サイクルの作業において方向転換などに必要となる固定の時間となっている。
 このため、一連の作業として行われる掘削と押土を掘削作業と押土作業に区分し、それぞれにサイクルタイムの算定式を適用すると、固定の時間0.79分が重複して算定されるため、これを基に掘削押土費を積算した場合には、固定の時間に係る費用が重複して計上されることとなる。
 したがって、ブルドーザによる掘削押土費の積算に当たっては、掘削と押土の各作業を区別することなく一連の作業としてサイクルタイムを算出すべきであると認められた(下の算定式参照)

掘削押土作業ブルドーザによる掘削押土費の積算が適切に行われるよう改善させたものの図3

     〔上記の算出例による場合〕

(低減できた積算額)

 ブルドーザによる掘削押土費について、掘削と押土を一連の作業として積算したとすれば、積算額を約1億2,170万円(国庫補助金相当額約6,300万円)低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、事業主体において積算要領に記載されているブルドーザによる掘削押土費の積算方法を十分理解することなく積算していたことにもよるが、積算要領において、ブルドーザにより掘削押土作業を行う場合、掘削と押土を一連の作業として積算することが明確でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、林野庁では、6年10月に、ブルドーザにより掘削押土作業を行う場合、掘削と押土を一連の作業として積算することを明確にして、掘削押土費の積算が適切に行われるよう積算要領を改正し、同年11月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

(注1)  林道開設事業ほか5事業 林道開設、林業地域総合整備、高密度林道網整備、峰越連絡林道、林業構造改善、保安林管理道整備各事業

(注2)  勾配2割 土木工事においては、勾配は通常斜面を斜辺とする直角三角形の縦の辺の長さに対する横の辺の長さの比で表わされ、例えば高さ1mに対して水平方向の長さが2mの場合を「2割」という。

(注3)  北海道ほか7県 北海道、青森、岩手、宮城、岐阜、静岡、福岡、鹿児島各県

(注4)  北海道ほか8県 北海道、青森、岩手、宮城、岐阜、静岡、愛知、福岡、鹿児島各県

(参考図)

(参考図)