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  • 平成5年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 運輸省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

地下高速鉄道建設費補助金の算定を適切に行うよう改善させたもの


(1) 地下高速鉄道建設費補助金の算定を適切に行うよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計(組織) 運輸本省
(項)地方鉄道軌道整備助成費(昭和60、61両年度)
(項)鉄道軌道整備助成費(昭和62年度〜平成3年度)
(項)鉄道整備基金助成費(平成4、5両年度)
鉄道整備基金 (鉄道整備助成勘定)
(項)鉄道整備助成事業費(平成3年度〜5年度)
部局等の名称 運輸本省
鉄道整備基金(平成3年度以降)
補助の根拠 予算補助
事業主体 東京都、横浜市、京都市、大阪市
補助事業 地下高速鉄道の新線建設事業
補助事業の概要 地下高速鉄道事業を営む地方公共団体等に対し、新線建設費の一部を補助するもの
国庫補助金交付額の合計 115,183,603,247円
(昭和60年度〜平成5年度)
過大に交付された国庫補助金相当額 4億0758万円
(昭和60年度〜平成5年度)
<検査の結果>
 上記の補助事業において、補助対象建設費の算定に当たり、控除することとされている土地の売却収入を控除していなかったなどのため国庫補助金4億0758万余円が過大に交付されていると認められた。
 このような事態が生じていたのは、運輸省において、地上権を設定して売却した場合などの土地の売却収入の取扱いを明確に定めていなかったことなどによると認められた。
<当局が講じた改善の処置>
 本院の指摘に基づき、運輸省では、平成6年11月に通達を発し、土地の売却収入の取扱いを明確に定めるとともに、審査体制の整備、制度の趣旨の周知徹底を図るなどの処置を講じた。

1 補助金の概要

(地下高速鉄道建設費補助金の概要)

 運輸省では、大都市圏における通勤通学輸送の需要への対応と交通の円滑化を図ることを目的として、地下高速鉄道(以下「地下鉄」という。)を建設し地下鉄事業を営む東京都ほか8市及び帝都高速度交通営団(以下「地下鉄事業者」という。)に対し、毎年度、地下高速鉄道建設費補助金(以下「補助金」という。)を鉄道整備基金(平成3年10月設立。以下「基金」という。)を通じて交付している(平成2年度以前は、運輸省が地下鉄事業者に補助金を交付している。)。

(補助金の交付)

 運輸省では、補助金の交付に当たり、「地下高速鉄道建設費補助金交付要綱」(平成4年2月鉄財第24号。平成2年度以前は「地下高速鉄道建設費補助金交付規則」(昭和37年12月運輸省令第64号)。)及び「地下高速鉄道建設費補助金に関する運用方針」(平成4年2月鉄財第25号。平成2年度以前は昭和53年12月鉄財第250号。以下「運用方針」という。)を定めている。
 これらによれば、補助金の交付額は補助対象建設費の額に35%を乗じた額を限度として、平成2年度以前に、補助対象として選定された路線(以下「補助対象路線」という。)については、元年度以前の各建設事業年度分はその翌年度から、2年度以降の各建設事業年度分はその年度から、それぞれ10年間に分割して交付することとなっている。また、3年度以降の補助対象路線については、各建設事業年度分をその年度に一括して交付することとなっている。

(補助対象建設費の算定)

 上記の補助対象建設費の算定については、運用方針によれば、補助対象路線の新線建設のために支出した費用(以下「新線建設費」という。)を基に算出することとなっているが、地下鉄建設工事に伴って取得した土地を後年度に売却した場合には、その売却収入を当該年度の新線建設費から控除して算出することとなっている。

2 検査の結果

(検査の対象)

  前記の10地下鉄事業者のうち、東京都、横浜市、京都市及び大阪市に対して、昭和59建設事業年度から平成5建設事業年度までの間に施行した地下鉄建設事業に係る費用の一部として、昭和60年度から平成5年度までの間に交付した補助金は1,151億8,360万余円となっている。
 そこで、これらの地下鉄事業者において、土地の売却収入が新線建設費から控除され、補助対象建設費が適切に算定されているか検査した。

(検査の結果)

 検査の結果、上記の4地下鉄事業者において、昭和59建設事業年度から平成5建設事業年度までの間に、地下鉄建設工事に係る土地を売却したものが124件(売却面積70,156.78m2 )あり、これらに係る売却収入は14,203,553,015円となっていた。

 そして、これらに係る売却収入の取扱いについて検査したところ、上記の4地下鉄事業者が、地上権(注) を設定して売却した駅出入口等の土地の売却収入を新線建設費から控除していなかったり、売却価格より低額な取得価格で控除したりなどしていたものが、16件(売却面積2,366.27m2 )見受けられた。このため、これらに係る売却収入3,383,466,775円のうち3,308,127,716円が控除不足となっており、補助対象建設費の算定が適切でないと認められた。

 これらを態様別に示すと、次のとおりである。

(1) 土地売却に際し、地下鉄事業者が駅出入口やトンネル等の施設の所有のために地上権を設定したものについて、土地の売却収入を控除していなかったり、売却価格より低額な取得価格で控除していたりしたもの

地下鉄事業者 件数 面積 売却収入 控除不足額
東京都、京都市、大阪市 8 1,519.69m2 2,668,145,068円  2,610,674,669円

(2) 都市計画街路等の公共事業用地として地下鉄事業者内の他部局へ有償所管換したものについて、土地の売却収入を控除していなかったもの

地下鉄事業者 件数 面積 売却収入 控除不足額
東京都、京都市、大阪市 5 982.62m2 464,491,452円 464,491,452円

(3) 土地売却に際し、地下鉄事業者が将来維持管理のために使用することができる旨の条件を付して売却したものなどについて、土地の売却収入を控除していなかったり、売却価格より低額な取得価格で控除していたりしたもの

地下鉄事業者 件数 面積 売却収入 控除不足額
東京都、横浜市、大阪市 6 456.22m2 503,087,828円 485,219,168円

 

上記のうちには(1)と(2)の間で重複しているものが3件、面積592.26m2 あり、これらの売却収入と控除不足額は252,257,573円となっている。

 上記の事態は、いずれも、補助対象建設費の算定に当たり、地下鉄建設工事に伴って取得した土地を後年度に売却したものについて、売却収入の取扱いが適切を欠いており、ひいては補助金の交付額が過大に算定されることになるもので、改善の要があると認められた。

(過大交付額)

 上記の(1)から(3)について、土地の売却収入に係る控除不足額33億0812万余円を適切に新線建設費から控除して補助対象建設費を算出して、これに35%を乗じて補助金の額を修正計算すると、9億2,627万余円が過大に算定されていたことになる。このうち、昭和60年度から平成5年度までの間に4億0758万余円が過大に交付されていると認められた。

(参考) 本件に係る補助金は、10年間に分割して交付されるものであることから、本件事態が是正されないまま推移した場合は、今後、平成6年度から14年度までに、5億1,869万余円が過大に交付される計算となる。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、地下鉄事業者において土地の売却収入を控除することについての理解が十分でなかったことにもよるが、主として次の理由によると認められた。

(ア) 運輸省において、補助対象建設費の算定において地上権を設定して売却した場合などの土地の売却収入の取扱いを明確に定めていなかったこと、地下鉄事業者への制度の趣旨の周知徹底等が十分でなかったこと

(イ) 基金において、地下鉄事業者に対する指導及び補助金交付申請書等の審査が十分でなかったこと
3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、運輸省では、6年11月に通達を発し、土地の売却収入の取扱いを明確に定めるとともに、基金における審査体制を整備し、地下鉄事業者に対し、制度の趣旨の周知徹底を図るなどの処置を講じた。

(注) 地上権 他人の土地について、地上又は地下の一定範囲を限定して使用する権利。本件の場合、土地の売却に際して、駅出入口やトンネル等の構造物の所有を目的として設定されている。