会計名及び科目 | 港湾整備特別会計(港湾整備勘定) | (項)港湾事業費 (項)離島港湾事業費 |
部局等の名称 | 第二、第三、第四各港湾建設局 |
補助の根拠 | 港湾法(昭和25年法律第218号)、離島振興法(昭和28年法律第72号) 奄美群島振興開発特別措置法(昭和29年法律第189号) |
事業主体 | 県3、市1、町3、村1、計8事業主体 |
補助事業 | 茨城県日立港ほか14港の港湾整備事業 |
補助事業の概要 | 港湾の整備を計画的に推進するため、港湾施設の整備を行う事業 |
事業費 | 平成4年度 | 697,090,500円 |
平成5年度 | 3,532,216,790円 | |
計 | 4,229,307,290円 | |
上記に対する国庫補助金交付額 | 平成4年度 | 533,670,950円 |
平成5年度 | 2,818,726,556円 | |
計 | 3,352,397,506円 |
過大積算額 | 9,360万円 |
上記に対する国庫補助金相当額 | 7,410万円 |
<検査の結果> |
上記の補助事業において,岩盤の浚渫工事における破砕岩の運搬費の積算(積算額3億7,150万余円)が適切でなかったため,積算額が約9,360万円(国庫補助金相当額約7,410万円)過大になっていた。 このように積算額が過大になっていたのは,積算の基準において,浚渫した破砕岩の運搬作業に使用する土運船及び引船の規格が砕岩浚渫船の作業能力等に即したものとなっていなかったことによるものと認められた。したがって,岩盤の浚渫工事の運搬費の積算に当たっては,砕岩浚渫船の作業能力等に即した土運船及び引船の規格を定め,これに基づき積算すべきであると認められた。 |
<当局が講じた改善の処置> |
本院の指摘に基づき,運輸省では,平成6年11月に,岩盤の浚渫工事における土運船及び引船の規格が適切なものとなるよう積算の基準を改正し,同年12月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。 |
1 工事の概要
運輸省では、港湾整備事業を実施する地方公共団体等の港湾管理者(以下「事業主体」という。)に対して毎年度国庫補助金を交付している。
そして、茨城県ほか7事業主体(注1)
では、平成4、5両年度に日立港ほか14港において、泊地(−7.5m)浚渫埋立工事ほか27工事を工事費42億2,930万余円(国庫補助金33億5,239万余円)で施行している。
上記の各工事は、事業主体が港湾整備事業の一環として、海底の地質が岩盤となっている航路や泊地等の浚渫、防波堤の築造等を実施したものである。このうち、岩盤の浚渫工事は、砕岩兼用グラブ浚渫船(注2)
(以下「砕岩浚渫船」という。)に備え付けた鋼鉄製の棒状のおもりで岩盤を破砕し、破砕した岩(以下「破砕岩」という。)をグラブバケットで浚渫して土運船に積み込み、この土運船を引船で土捨場所までえい航して破砕岩を処分するまでの作業を行う工事である(参考図参照)
。
浚渫工事費は、運輸省制定の「港湾・空港請負工事積算基準(港湾)」(以下「積算基準」という。)により積算している。積算基準では、浚渫船の船種は、土砂を浚渫する場合はグラブ浚渫船(注3) を、破砕岩を浚渫する場合は砕岩浚渫船を用いることとしている。そして、浚渫船と組み合わせて使用する土運船及び引船の規格は、浚渫船の船種別、規格別に定められており、砕岩浚渫船の場合は、500m3 積みの土運船、1,000馬力の引船を組み合わせることとなっている。そして、引船の隻数は、浚渫場所から所定の土捨場所までの運搬距離、運搬速度等を基に算出することとなっている。また、土運船の隻数は、引船にえい航された土運船が浚渫場所と土捨場所を往復している間も、土砂や破砕岩の積込作業が連続して行われるよう引船の所要隻数に1隻を加算して算出することとなっている。
本件各工事では、土運船及び引船が破砕岩を運搬するために浚渫場所と土捨場所との間の往復に要する経費(以下「運搬費」という。)を次のとおり算定している。すなわち、積算基準により、500m3 積みの土運船を2隻、1,000馬力の引船を1隻と算出し、これらの作業船の1日当たりの運搬費を各工事の1日当たりの破砕岩の浚渫量で除して1m3 当たりの運搬費を算出している。そして、これに各工事の破砕岩の浚渫量1,373m3 から29,019m3 を乗じて、28工事分の岩盤の浚渫工事の運搬費を計3億7,152万余円と算定していた。
2 検査の結果
積算基準では、砕岩浚渫船と組み合わせる土運船及び引船の規格をグラブ浚渫船の場合と同様なものと定めている。しかし、砕岩浚渫船については、破砕岩を浚渫することから、土砂を浚渫するグラブ浚渫船に比べて作業能力を3分の1程度と著しく低く定めている。そこで、砕岩浚渫船と組み合わせている土運船及び引船の規格は適切なものとなっているかについて調査した。
本件各工事について、岩盤の浚渫工事における運搬の施工の実態を調査したところ、次のとおりとなっていた。
すなわち、砕岩浚渫船の作業能力は、上記28工事の現場作業条件を考慮して、前記の積算基準により算出すると、平均1時間当たり81.3m3
となっていた。
また、土捨場所までの運搬距離は、浚渫した破砕岩を岸壁の裏込材として利用するなどのため、平均2.3kmと近距離となっていた。そして、運搬速度等を基に、土運船の浚渫場所から土捨場所までの往復時間を算出すると、平均0.8時間となっていた。
そこで、上記の砕岩浚渫船の作業能力等を基に、土運船の往復時間内にもう1隻の土運船に積み込むことができる破砕岩の量を算出すると、平均65m3
となる。このため、土運船の容量が500m3
の場合、その容量の平均13%程度しか積み込まないうちに、運搬作業を終えた土運船が浚渫場所に戻ることとなることから、積算基準の500m3
積みの土運船の容量は著しく過大と認められた。
したがって、岩盤の浚渫工事の運搬費の積算に当たっては、砕岩浚渫船の作業能力、土捨場所までの運搬距離等に即した土運船及び引船の規格を定め、これに基づき積算すべきであると認められた。
そして、本件各工事の積込量に対応する土運船の規格を選定すると、全国的に普及しているものとしては最小規格の120m3
積みのものとなる。しかし、積込作業を効率的に行うためには、土運船の船体幅は砕岩浚渫船のグラブバケットの大きさに対応する必要があり、これを満足する最小規格の土運船は300m3
積みのものとなる。また、これに対応する引船は、けん引力等を考慮すると500馬力の引船を組み合わせれば足りると認められる。
上記により、本件各工事の岩盤の浚渫工事の運搬費を計算すると、28工事分で計2億7,792万余円となり、積算額を約9,360万円(国庫補助金相当額約7,410万円)低減できたと認められた。
3 当局が講じた改善の処置
本院の指摘に基づき、運輸省では、6年11月に、岩盤の浚渫工事における土運船及び引船の規格が適切なものとなるよう積算基準を改正し、同年12月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。
(注1) 茨城県ほか7事業主体 茨城、島根、鹿児島各県、佐世保市、屋久、和泊、知名各町、十島村
(注2) 砕岩兼用グラブ浚渫船 砕岩用の鋼鉄製の棒状のおもりと浚渫用のグラブバケットを兼ね備えた破砕岩を浚渫する作業船
(注3) グラブ浚渫船 浚渫用のグラブバケットを備えた土砂を浚渫する作業船