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雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかったもの


(205) 雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定) (項)失業給付費
部局等の名称 北海道ほか17都府県(支給庁)
札幌公共職業安定所ほか95公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方 225人
失業給付金の支給額の合計 131,864,729円
不適正支給額 62,518,650円
 失業給付金(基本手当及び再就職手当)の支給決定に当たり、受給資格者からの申告等に対する調査確認が十分でなかったため、上記の225人に対して62,518,650円(基本手当26,752,000円、再就職手当35,766,650円)が不適正に支給されていた。これらについては、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

1 保険給付の概要

(雇用保険)

 雇用保険は、工場、事務所、商店等に雇われる労働者を被保険者とし、被保険者が失業したときにその生活の安定を図るなどのため失業給付金の支給を行うほか、雇用安定事業、能力開発事業及び雇用福祉事業を行う保険である。

(失業給付金の支給)

 失業給付金には基本手当及び再就職手当のほか9種の手当等がある。このうち、基本手当は、受給資格者(注) が失業している日について所定給付日数を限度として支給されるものであり、再就職手当は、受給資格者が、基本手当を受給できる日数を所定給付日数の2分の1以上又は100日以上残して安定した職業に就いた場合に支給されるものである。基本手当及び再就職手当は、公共職業安定所が、次のように支給を決定し、これに基づいて、各都道府県が支給することとなっている。

(ア) 基本手当については、受給資格者から提出された失業認定申告書に記載されている就職、就労(臨時的に短期間仕事に就くこと)の有無等の事実について確認のうえ失業の認定を行って支給を決定する。

(イ) 再就職手当については、受給資格者から提出された再就職手当支給申請書に記載されている雇入れ年月日等について調査確認を行って支給を決定する。

(注) 受給資格者 離職した被保険者で、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6箇月以上あり、労働の意思及び能力があるにもかかわらず職業に就くことができない状態にあることの要件を満たしていて、公共職業安定所において、基本手当を受給する資格があると決定された者

2 検査の結果

(検査の対象)

 北海道ほか19都府県(支給決定庁 札幌公共職業安定所ほか164公共職業安定所)から失業給付金の支給を受けた者のうち、再就職した者12,463人について、公共職業安定所における失業給付金の支給決定の適否を検査した。

(不適正支給の事態)

検査したところ、次のとおり基本手当及び再就職手当が不適正に支給されていた。

ア 基本手当

 北海道ほか17都府県で、本院が調査した8,395人に対する基本手当の支給のうち223人に対する支給(支給額96,098,079円)について、26,752,000円が不適正に支給されていた。これは、札幌公共職業安定所ほか95公共職業安定所において、受給者が誠実でなく、再就職、就労していながらその事実を失業認定申告書に記載していないため、申告書の内容が事実と相違していたのに、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行っていたことなどによるものである。

イ 再就職手当

 北海道ほか17都府県で、本院が調査した3,926人に対する再就職手当の支給のうち106人に対する支給について、35,766,650円が不適正に支給されていた。これは、札幌公共職業安定所ほか66公共職業安定所において、受給者が誠実でなく、再就職手当支給申請書に事実と相違した雇入れ年月日を記載していたのに、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行っていたことなどによるものである。

 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

 これらの不適正支給額を都道府県別に示すと次のとおりである。

都道府県名 公共職業安定所 本院が調査した受給者数 不適正受給者数 左の受給者に支給した失業給付金 左のうち不適正失業給付金
千円 千円
北海道 札幌ほか11 1,038 28 15,240 3,331
札幌ほか5 406 11 4,316 4,316
小計 19,556 7,647
青森県 青森ほか4 593 14 4,557 2,039
青森ほか3 328 6 1,661 1,661
小計 6,218 3,701
宮城県 仙台ほか1 180 5 3,552 347
仙台ほか1 151 2 282 282
小計 3,834 629
山形県 米沢ほか3 453 13 3,411 1,317
米沢ほか3 173 6 1,925 1,925
小計 5,337 3,243
福島県 福島ほか4 522 7 4,268 679
会津若松 57 1 440 440
小計 4,708 1,119
埼玉県 川口ほか5 600 9 5,735 713
川口ほか3 309 5 1,922 1,922
小計 7,658 2,636
千葉県 千葉ほか2 248 4 1,762 679
千葉 120 1 768 768
小計 2,531 1,448
東京都 五反田ほか5 576 16 5,131 2,771
五反田ほか5 391 11 4,580 4,580
小計 9,712 7,352
神奈川県 横浜ほか8 746 20 10,215 4,026
横浜ほか6 430 11 4,130 4,130
小計 14,346 8,157
長野県 松本ほか7 500 13 8,125 1,040
飯田ほか4 147 6 2,273 2,273
小計 10,398 3,314
岐阜県 岐阜ほか6 570 12 2,501 1,221
岐阜ほか3 218 6 3,084 3,084
小計 5,585 4,306
滋賀県 彦根ほか2 249 10 5,078 597
八日市 20 1 130 130
小計 5,209 727
京都府 宇治ほか1 63 2 1,335 215
宇治ほか1 45 2 821 821
小計 2,157 1,037
和歌山県 和歌山ほか3 240 8 2,693 565
和歌山ほか3 152 7 1,331 1,331
小計 4,025 1,897
福岡県 飯塚ほか4 506 19 5,493 2,419
飯塚ほか3 303 12 3,218 3,218
小計 8,712 5,637
長崎県 長崎ほか3 352 9 3,526 536
長崎ほか3 260 5 652 652
小計 4,179 1,189
熊本県 熊本ほか5 486 23 8,281 3,422
熊本ほか3 200 6 1,634 1,634
小計 9,915 5,056
鹿児島県 鹿児島ほか4 473 11 5,185 825
鹿児島ほか3 216 7 2,590 2,590
小計 7,775 3,415
96箇所 8,395 223 96,098 26,752
67箇所 3,926 106 35,766 35,766
合計 131,864 62,518

(注1)  上段は基本手当に係る分、下段は再就職手当に係る分である。

(注2) 公共職業安定所のうち、基本手当と再就職手当の双方について不適正な支給があったものが67、基本手当のみのものが29あり、したがって、公共職業安定所の実数は96である。

(注3) 不適正受給者のうち、基本手当と再就職手当の双方に係る者が104人、基本手当のみの者が119人、再就職手当のみの者が2人おり、したがって、不適正受給の実人員は225人である。