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  • 平成5年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
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労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったもの


(208) 労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(労災勘定)(項)保険給付費
部局等の名称 労働本省(支出庁)
北海道労働基準局ほか13労働基準局(審査庁)
支払の相手方 325医療機関
不適正支払額 88,150,477円
 労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払に当たり、医療機関からの請求に対する審査が十分でなかったため、上記の325医療機関に対して88,150,477円が不適正に支払われていた。

1 保険給付の概要

(労働者災害補償保険)

 労働者災害補償保険は、工場、事務所、商店等に雇われる労働者の業務上の事由又は通勤による負傷、疾病等に対し療養の給付等の保険給付を行うほか、労働福祉事業を行う保険である。

(療養の給付に要する診療費の支払)

 療養の給付は、保険給付の一環として、都道府県労働基準局長の指定する病院若しくは診療所又は労働福祉事業で設置された病院において、負傷又は発病した労働者に対し診察、薬剤の支給等(以下「診療」という。)を行うものである。そして、診療を行ったこれらの医療機関は、都道府県労働基準局に対して診療に要した費用(以下「労災診療費」という。)を請求することとなっており、都道府県労働基準局では請求の内容を審査し、その結果に基づき、労働本省において労災診療費を支払うこととなっている。
 労災診療費は、労働省労働基準局長が定めた「労災診療費算定基準について」(昭和51年基発第72号。以下「算定基準」という。)に基づき算定することとなっている。この算定基準によれば、労災診療費は、労災診療の特殊性などを考慮して、〔1〕 健康保険法(大正11年法律第70号)に基づく診療報酬点数表の点数(以下「健保点数」という。)に12円(法人税等が非課税となっている公立病院等については11円50銭)を乗じて算定すること、〔2〕 初診料、再診料等特定の診療項目については、健保点数とは異なる点数又は金額を別に定めこれにより算定することとなっている。

2 検査の結果

(検査の対象)

 北海道労働基準局ほか13労働基準局において、労災診療費の請求に対する支払の適否について検査した。

(不適正支払の事態)

 検査したところ、上記の14労働基準局において、労災診療費が不適正に支払われていたものが、325医療機関について88,150,477円あった。これは、14労働基準局において、医療機関が労災診療費を誤って算定し請求していたのに、これに対する審査が十分でないまま支払額を決定していたことによるものである。

(主な態様)

 上記の労災診療費が不適正に支払われていた事態について、その主な態様を診療報酬の別に示すと次のとおりである。

ア 手術料に関するもの

 一回の皮切により手術を行い得る範囲(以下「同一手術野」という。)の手術につき、2以上の手術を同時に行った場合の手術料は、主たる手術の所定点数のみにより算定することとなっており、指については特定の手術を除いて、左右の手、足ごとに同一手術野とみなすこととなっている。また、手足の傷病に対して傷口を縫合するなど創傷処理等の手術を行った場合には、労災診療費では、健保点数の1.5倍の点数で算定できることとなっている。
 しかし、北海道労働基準局ほか12労働基準局において、手術料が162医療機関に対し651件、35,536,746円不適正に支払われていた。その主なものは次のとおりである。

(ア) 指の同一手術野につき2以上の手術を同時に行っているのに主たる手術の所定点数によらず、それぞれの手術の所定点数により算定していた。

(イ) 手足の傷病に対して創傷処理等に該当しない手術を行った場合でも健保点数の1.5倍の点数で算定していた。

イ 入院料に関するもの

 月平均の入院患者数が、病院にあっては許可を受けた病床数に100分の105を乗じて得た数以上の場合、診療所にあっては届出をした病床数に3を加えて得た数以上の場合(以下、これらを「定数超過入院」という。)、翌月分の室料、看護料及び入院時医学管理料については、所定点数に100分の80を乗じて得た点数を用いて算定することとなっている。また、業務上の事由等の労働災害に起因する傷病について特別食を給与した場合には、所定の給食料の点数に特別食の点数を加算して算定することとなっている。
 しかし、北海道労働基準局ほか13労働基準局において、入院料が95医療機関に対し1,777件、28,021,187円不適正に支払われていた。その主なものは次のとおりである。

(ア) 定数超過入院となっているのに翌月の室料等について所定の減額をしないで算定していた。

(イ) 労働災害に起因しない傷病に係る特別食の点数を算定していた。

ウ リハビリテーション料に関するもの

 リハビリテーション料のうち理学療法料には、1人の理学療法士が1人の患者に対して40分以上訓練を行った場合に算定できる複雑な訓練に係るものと、複数の患者に対して15分以上訓練を行った場合に算定できる簡単な訓練に係るものがある。また、特定の施設基準の承認を受けている医療機関においては、入院の日又は初診の日から起算して6月を超えた期間に理学療法を行った場合、6月以内に行った場合の点数よりも低い点数により算定することとなっている。
 しかし、北海道労働基準局ほか11労働基準局において、リハビリテーション料が24医療機関に対し923件、5,527,990円不適正に支払われていた。その主なものは次のとおりである。

(ア) 複雑な訓練でないものについて、複雑な訓練を行った場合に用いることになっている高い点数で算定していた。

(イ) 入院の日又は初診の日から起算して6月を超えた期間に行った理学療法であるのに6月以内に行った場合の高い点数により算定していた。

(労働基準局別の内訳)

 上記の不適正支払額を労働基準局別に示すと次のとおりである。

労働基準局名 医療機関数 不適正支払件数 不適正支払額
千円
北海道労働基準局 32 824 12,241
埼玉労働基準局 24 263 2,247
千葉労働基準局 21 461 2,762
東京労働基準局 36 1,129 19,532
神奈川労働基準局 21 150 3,063
愛知労働基準局 28 666 20,341
滋賀労働基準局 6 31 674
京都労働基準局 14 238 2,594
大阪労働基準局 33 337 6,342
兵庫労働基準局 37 686 6,375
岡山労働基準局 16 281 1,798
福岡労働基準局 41 481 8,030
長崎労働基準局 10 95 1,448
熊本労働基準局 6 72 699
325 5,714 88,150