会計名及び科目 | 一般会計(組織)建設本省 | (項)都市計画事業費 (項)北海道都市計画事業費 |
部局等の名称 | 北海道ほか8県 |
補助の根拠 | 下水道法(昭和33年法律第79号) |
事業主体 | 県3、市10、町1、計14事業主体 |
補助事業 | 荒川左岸北部流域下水道整備事業ほか19事業 |
補助事業の概要 | 下水道整備事業の一環として、下水道終末処理場を建設するなどの事業 |
事業費 | 23,036,088,120円 |
上記に対する国庫補助金交付額 | 13,605,602,056円 |
過大積算額 | 1億1880万円 |
上記に対する国庫補助金相当額 | 6940万円 |
<検査の結果> |
上記の補助事業において、下水道終末処理場建設工事における床掘り費の積算(積算額2億0953万余円)が適切でなかったため、積算額が約1億1880万円(国庫補助金相当額約6940万円)過大になっていた。 このように積算額が過大になっていたのは、事業主体において上記工事における床掘りが人力でなく機械を主体として施工されている実態を積算に反映させていなかったことにもよるが、建設省において、各事業主体が適切な積算を行うことができるよう措置していなかったことなどによると認められた。 |
<当局が講じた改善の処置> |
本院の指摘に基づき、建設省では、平成6年11月に、都道府県等に対し、床掘り費の積算を施工の実態に適合したものとするよう通達を発するなどし、同月以降積算する工事から実施することとする処置を講じた。 |
1 工事の概要
建設省では、下水道の整備を計画的に推進するため、下水道整備事業を実施する地方公共団体(以下「事業主体」という。)に対し、毎年度多額の国庫補助金を交付している。そして、埼玉県ほか2県、及び北海道ほか6県管内の11市町、計14事業主体では、平成4、5両年度に、下水道整備事業の一環として、下水道終末処理場を建設するため、荒川左岸北部流域下水道終末処理場5号水処理施設築造土木その2工事ほか20工事を工事費230億3608万余円(国庫補助金136億0560万余円)で施行している。
上記各工事は、下水を処理する沈澱池等を築造するものであるが、これらの施設は、大規模な地下構造物となっており、その築造に当たっては、広い範囲の地盤を掘削することが必要で、掘削土量が多量に上るものとなっている。
前記各工事の工事費の積算に当たっては、建設省が示している「下水道用設計標準歩掛表」を基に都道府県等が定めた基準により積算することとなっているが、この標準歩掛表では、地盤の掘削作業については、人力又は機械により施工するとされているだけで、人力施工と機械施工の適用区分は示されていない。このため、前記の各事業主体では、地盤の掘削費の積算に当たり、社団法人日本下水道協会が建設省の監修により制定した「下水道用設計積算要領」に定める適用区分を準用して、次のような施工方法によることとしていた。
すなわち、〔1〕 現地盤から掘削最下面(以下「床付け面」という。)の上部0.3mないし0.5mまでの掘削については、バックホウ等の機械で施工し、掘削土は直接ダンプトラックに積み込み、また、〔2〕 その下部の床付け面までの掘削(以下「床掘り」という。)については、床付け面を乱さないようすべて人力で施工し、掘削土は別途バックホウ等でダンプトラックに積み込むこととしていた(参考図参照)
。
そして、これにより、上記〔2〕 の床掘り部分に係る掘削費(以下「床掘り費」という。)については、人力掘削の費用に積込費を加えて、前記の21工事で総額2億0953万余円と積算していた。
2 検査の結果
下水道終末処理場の施設は、大規模な地下構造物であるため、床掘りの土量が多量となっており、これに要する費用も多額に上っているが、他の土木工事や建築工事では、床掘りについても機械により施工することとして積算するのが一般的となっている。
このようなことから、下水道終末処理場建設工事においても、床掘りを機械により経済的に施工できないかという観点から、本件各工事の施工の実態を調査した。
調査したところ、本件各工事における床掘りの施工の実態は、次のようになっており、前記の積算で想定した施工方法とは異なっていた。
(ア) 掘削面に土留め矢板を設けない素掘りの場合及び土留め矢板を設けていても矢板を梁で支持しない場合、すなわち機械操作に特段の制約がない場合にあっては、バケット容量0.6m3 級程度の中型のバックホウで施工し、掘削土はバックホウで直接ダンプトラックに積み込んでいた。
(イ) 掘削面に土留め矢板を設け梁で支持する場合にあっては、バケット容量0.1m3 級程度の小型のバックホウで施工し、掘削土は別途クラムシェルでダンプトラックに積み込んでいた。
そして、上記(ア)、(イ)の場合とも、人力で施工していたのは、機械による施工が困難な基礎杭等の周辺部分の掘削や、床付け面の整正に限られていた。
このように機械による施工が行われているのは、近年、バックホウの操作性が向上したことのほか、バックホウのバケットの爪部分に鋼板を取り付けることにより床付け面を乱すことなく掘削できる工夫がなされるようになったこと、小型のバックホウが普及してきたことなどによるものである。
したがって、床掘り費の積算に当たっては、上記の施工の実態に即して、機械による施工を主体として積算すべきであると認められた。
前記21工事について、施工の実態に適合するよう積算することとして床掘り費を修正計算すると、積算額を約1億1,880万円(国庫補助金相当額約6,940万円)低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、事業主体において床掘りの施工の実態を積算に反映させていなかったことにもよるが、建設省において、各事業主体が適切な積算を行うことができるよう措置していなかったことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、建設省では、6年11月に、都道府県等に対し、下水道終末処理場建設工事における床掘り費の積算については実態に適合した機械による施工を主体とするよう通達を発するなどし、同月以降積算する工事から実施することとする処置を講じた。