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  • 貸付金

農地等取得資金等の貸付けが不当と認められるもの


(218)−(221) 農地等取得資金等の貸付けが不当と認められるもの

科目 貸付金
部局等の名称 岡山、松山、熊本、鹿児島各支店
受託金融機関 広島県信用漁業協同組合連合会ほか2金融機関
貸付けの根拠 農林漁業金融公庫法(昭和27年法律第355号)、過疎地域活性化特別措置法(平成2年法律第15号)
貸付金の種類 農地等取得資金、農林漁業構造改善事業推進資金、振興山村・過疎地域経営改善資金、農林漁業施設資金
貸付けの内容 農林漁業者に対する農地等取得資金等の貸付け
貸付件数 28件
貸付金の合計額 382,409,000円
不当貸付金額 242,017,566円
 上記の4支店で行った28件382,409,000円の貸付けにおいて、242,017,566円の貸付けがその目的に沿わない結果になっていて、不当と認められる。

1 貸付金の概要

 農林漁業金融公庫(以下「公庫」という。)は、農林漁業者に対して、農林漁業の生産力の維持増進等に必要な長期かつ低利の資金で、一般の金融機関から融通を受けることが困難な資金を直接又は金融機関に委託して貸し付けている。
 このうち、公庫が直接貸付けを行う場合は、公庫が借入申込書類を審査して、所定の条件を満たしていると認めたものに対して貸し付け、事業の完成状況、事業費の支払状況等によって貸付金の使途などを確認することとしている。また、公庫が金融機関に委託して貸付けを行う場合は、受託金融機関が借入申込書類の審査を行い、一部の資金については公庫が貸付決定を行うこととしているが、そのほかの資金については受託金融機関が公庫の直接貸付けの場合に準じて貸付け等の事務を行うこととしている。

2 検査の結果

 公庫の貸付けについて調査したところ、28件382,409,000円の貸付けにおいて、242,017,566円の貸付けが不当と認められる。これらの資金の借入者からは、事実と相違した内容の借入申込みや事業完成報告がされるなどしていた。しかし、これに対する審査及び確認が適切でなかったなどのため、貸付金額を過大に算定するなどしていた。
 これを貸付先別に示すと次のとおりである。

支店名
(受託金融機関名)
貸付先
(所在地)
貸付対象 貸付年月(貸付利率) 貸付対象事業費 左に対する貸付金額 貸付金額のうち不当と認める額

摘要

千円 千円 千円
 (農地等取得資金)
(218) 鹿児島支店
(鹿児島県信用農業共同組合連合会)
農業者24名(鹿児島県大島郡徳之島町) 農地の取得25件 61.4〜3.11
(年3.5%5.0%)
404,921 320,800 218,169 低額取得及び貸付目的の不達成

 この貸付けは、鹿児島県大島郡徳之島町の農業者24名が農地合計385,153m2 を取得するのに必要な資金合計404,921,000円の一部として、合計25件320,800,000円を貸し付けたものである。
 しかし、本件貸付けにおいて、次のとおり適切でない事態が見受けられた。

(ア) 借入者22名(23件)は、いずれも、その取得した農地合計367,643m2 について、貸付対象事業費どおりの額(取得額合計384,321,000円、貸付金額合計304,600,000円)で取得したとしていたが、この額は水増ししたもので、実際は合計136,040,000円で取得していた。

(イ) 借入者4名(4件)(注1) は、その取得した農地合計55,293m2 (取得額合計60,900,000円、貸付金額合計48,400,000円)について耕作を行うとしていたが、実際は、その後、営農を放棄していた。

 したがって、(ア)により、借入者22名(23件)の農地の取得についての適正な貸付金額を計算すると合計108,832,000円となるので、上記貸付金額合計304,600,000円との差額合計195,768,000円が過大な貸付けとなっている。また、(イ)のとおり、借入者4名(4件)の農地の取得に係る貸付金(離農時における貸付金残高相当額合計22,401,540円)(注2) はその目的が達成されていないものである。
 よって、これらに係る貸付金相当額合計218,169,540円が不当と認められる。
 なお、本件の不当貸付金残高合計181,567,464円については、平成6年11月に繰上償還の措置が執られた。

(注1)  借入者4名(4件)のうち、2名(2件)、農地合計37,783m2 、取得額合計40,300,000円、貸付金額合計32,200,000円は上記(ア)と重複している。
(注2)  この貸付金残高相当額は、(注1)の重複している2名(2件)の過大貸付分を控除した金額に係るものである。
 (農林漁業構造改善事業推進資金)
(219) 岡山支店
(広島県信用漁業協同組合連合会)
漁業協同組合
(転貸先漁業者転貸先在地大竹市)
海面養殖用漁船の機関換装 3.6
(年3.5%)
16,093 12,800 3,120 低額実施

 この貸付けは、海面養殖用漁船の機関の換装に必要な資金16,093,750円の一部として、12,800,000円を貸し付けたものである。転借者は、この事業を貸付対象事業費どおりの額で実施したとしていたが、実際は値引きを受けていて、これより低額な12,100,000円で実施していた。
 したがって、この事業についての適正な貸付金額を計算すると9,680,000円となるので、本件貸付金額との差額3,120,000円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件の不当貸付金残高1,614,109円については、平成6年4月に繰上償還された。

 (振興山村・過疎地域経営改善資金)
(220) 松山支店 農業者
(愛媛県東宇和郡宇和町)
育成豚舎の新築等 5.3
(年4.3%)
22,740 16,000 8,553 貸付限度額超過

 この貸付けは、育成豚舎1棟(540m2 )の新築等に必要な資金22,740,000円の一部として貸し付けたものである。この貸付金額の算定に当たっては、既に平成2年度に本件の借入者(法人)に対して本資金を貸し付けているので、貸付時におけるこの貸付金残高28,000,000円を本資金の貸付金額の最高限度(注) 44,000,000円から差し引いて16,000,000円としていた。しかし、実際は、法人設立前の昭和57年度にも借入者の各構成員に同資金を貸し付けており、この貸付けで取得した資産及び養豚業が借入者に承継されていたのであるから、既往の貸付金残高は、上記の平成2年度分の貸付金残高に昭和57年度分の貸付金残高8,553,618円を加えた36,553,618円とする要があった。
 したがって、この事業についての適正な貸付金額を計算すると7,446,382円となるので、本件貸付金額との差額8,553,618円が過大な貸付けとなっている。
 なお、不当貸付金残高5,840,336円については、平成6年7月に繰上償還された。

(注)  貸付金額の最高限度は、法人の場合、貸付対象事業費の80%相当額又は44,000,000円(既往の貸付金残高がある場合はその額を差し引いた額)のいずれか低い額とすることとなっている。
 (農林漁業施設資金)
(221) 熊本支店(株式会社豊和銀行) 農業者
(宇佐市)
鶏舎の復旧等 4.6
(年5.5%)
41,012 32,809 12,174 低額実施及び事業の一部不実施

 この貸付けは、災害復旧のための鶏舎8棟(1,192m2 )の建築及びこれに係るケージ、自動集卵機等の内部設備機器の設置に必要な資金41,012,271円の一部として、32,809,000円を貸し付けたものである。借入者は、この事業を貸付対象事業費どおりの額で実施したとしていたが、実際は、鶏舎の建築工事等(貸付対象事業費35,903,471円)についてはその一部を自ら資材を購入して施工するなどして25,793,241円で実施し、自動集卵機の設置(貸付対象事業費5,108,800円)については実施していなかった。
 したがって、この事業についての適正な貸付金額を計算すると20,634,592円となるので、本件貸付金額との差額12,174,408円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件の不当貸付金額については、平成6年10月に繰上償還された。

(218)-(221)の計 484,767 382,409 242,017