科目 | (項)高速道路建設費 |
部局等の名称 | 仙台、新潟、東京第二、福岡各建設局 |
工事名 | 秋田自動車道仙人トンネル東(その1)工事ほか9工事 |
工事の概要 | 高速道路建設事業の一環として、トンネルを築造するなどの工事 |
工事費 | 38,074,309,033円 (当初契約額 34,278,400,00円) |
請負人 | 株式会社間組・三井建設株式会社秋田自動車道仙人トンネル東(その1)工事共同企業体ほか8共同企業体 |
契約 | 平成3年9月〜5年4月 指名競争契約、随意契約 |
過大積算額 | 5830万円 |
<検査の結果> |
上記の10工事(工事費総額380億7,430万余円)において、コンクリート吹付け作業時に使用する集じん機の損料(積算額計2億9,683万余円)の積算が適切でなかったため、積算額が約5,830万円過大になっていた。 |
<当局が講じた改善の処置> |
本院の指摘に基づき、日本道路公団では、平成6年11月に、集じん機の損料が、その施工の実態に適合したものとなるよう積算の基準を改正し、同年12月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。 |
1 工事の概要
日本道路公団(以下「公団」という。)仙台建設局ほか3建設局(注1)
では、平成5事業年度に、高速道路の建設工事の一環として、NATM(注2)
によるトンネル工事を10工事(工事費総額380億7,430万余円)施行している。このトンネル工事は、トンネルの両端から中心に向かって掘削していくもので、一方向からの掘削延長(以下「片押延長」という。)は1,824mから3,969mとなっている。そして、契約に当たっては片押延長の区間を2区間に分割し、その最初の区間は指名競争契約により、次の区間は随意契約により同一業者に請け負わせ施工させている(参考図参照)
。
NATMは、地山の崩壊を防ぐため、2m程度掘削するごとに壁面にコンクリートを吹き付け、その後、ロックボルト等を施工するなどしてトンネルを築造する工法である。そして、コンクリート吹付け作業時に発生する粉じんを、集じん機を使用するなどして処理することとしている。
公団制定の土木工事積算要領(以下「積算要領」という。)では、工事に使用する機械の損料については、次のように、機械の供用日数に基づいて算出する供用損料と運転時間に基づいて算出する運転損料を合算して算定することとしている。
上記算定式中の、供用1日当たりの損料及び運転1時間当たりの損料(以下、これらを併せて「損料単価」という。)は、建設機械等損料算定表(建設省監修、以下「損料算定表」という。)に定められている。
損料単価は、機械が、損料算定表に定められた耐用年数に達するまで、標準的な供用日数及び標準的な運転時間(以下、これらを併せて「標準供用日数等」という。)により使用されることを前提として設定されている。したがって、請負人が機械を標準供用日数等により使用すれば、機械の調達価格相当額をほぼ回収できるものとなっている。
本件のような片押延長1,500m以上のトンネル工事(以下「長大トンネル工事」という。)において使用されるトンネル掘進機、トラクタショベル、送風機等については、機械を工事途中で更新することなく標準供用日数等を超えて効率的に使用されている。したがって、これらの機械の損料については、損料単価に標準供用日数等を超えたものを乗じて算出すると、調達価格を大幅に超えることとなる。このため、公団では、積算要領において、上記トンネル掘進機等の調達価格を超えないように損料単価を低く設定する補正(以下「長期損料補正」という。)を行うこととしている。そして、この場合には、維持修理費は標準の場合に比べて2割増しすることとしている。
一方、集じん機については、標準的な供用日数(540日)及び標準的な運転時間(2,250時間)を超えて使用した場合、集じん効率の低下が予想されることから、機械を工事途中で更新することとしている。このため、長期損料補正は行っていない。
そして、前記の各建設局では、上記により集じん機の損料を1工事当たり16,932,702円から48,096,761円、10工事で総額296,838,736円と積算している。
2 検査の結果
集じん機を工事途中で更新することとしている積算方法が、長大トンネル工事における集じん機の施工の実態に適合しているかという観点から調査した。
前記の10工事のうち、調査時点において、片押延長が1,500m未満であった工事などを除く4工事について、吹付け作業時における集じん機の使用状況について調査した。
調査したところ、4工事の片押延長は1,824mから3,268mとなっており、この片押延長の区間で使用された集じん機は、更新されることなく、供用日数は930日から1,360日、運転時間は3,200時間から5,400時間となっていて、安定した風量により粉じんを処理するなど正常な状態で使用されていた。
これは、近年、性能の向上した集じん機が使用されていることによると認められた。すなわち、従来、集じん機は人力でフィルターの交換を行う方式であったことから、その交換時期が遅れ、フィルターの目が詰まった状態のまま使用することが多く、機械の寿命が短いものとなっていた。しかし、近年、自動清掃装置を内蔵したフィルターが開発され、人力によりフィルターを交換することなくフィルターの清掃が行われるため、集じん機の寿命が延びているものである。
このため、長大トンネルの場合、集じん機の供用日数540日及び運転時間2,250時間としている標準損料表に基づいて算定しているのは適切とは認められない。
したがって、集じん機の損料の積算に当たっては、上記の施工の実態に基づき、長期損料補正を行う要があると認められた。
現に、損料算定表を使用している他団体では、本件のようなトンネル工事について集じん機の損料を長期損料補正を行って積算している状況であった。
集じん機の損料を長期損料補正を行って修正計算すると、1工事当たり14,297,945円から37,059,001円、総額238,468,341円となり、積算額296,838,736円を約5,830万円低減できたと認められた。
このように積算額が過大になっていたのは、近年、性能の向上した集じん機が普及し、標準供用日数等を超えて使用されているのに、これらの実態を積算に反映するための配慮が十分でなかったことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、公団では、6年11月に、集じん機の損料が、その施工の実態に適合したものとなるよう積算要領を改正し、同年12月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。
(注1) 仙台建設局ほか3建設局 仙台、新潟、東京第二、福岡各建設局
(注2) NATM New Austrian Tunnelling Methodの略でナトムと呼ばれる。