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  • 平成5年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第4 首都高速道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

高架橋等の基礎工事における現場打ち鉄筋コンクリート杭の工事費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの


高架橋等の基礎工事における現場打ち鉄筋コンクリート杭の工事費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (項)高速道路建設事業費 (項)社会資本整備事業費
(項)高速道路改築事業費 (項)負担金等受入建設費
(項)受託関連街路建設費
部局等の名称 首都高速道路公団本社
工事名 OJ14工区(その2)高架橋基礎構造新設工事ほか26工事
工事の概要 高速道路等の建設工事の一環として、高架橋等の基礎工事において現場打ち鉄筋コンクリート杭等を築造する工事
工事費 34,341,312,400円
(当初契約額33,442,555,000円)
請負人 アイサワ・三菱OJ14(2)基礎特定建設工事共同企業体ほか21共同企業体及び坂田建設株式会社ほか3会社
契約 平成3年2月〜6年2月 指名競争契約、随意契約
過大積算額 6,830万円
<検査の結果>

 上記の各工事において、現場打ち鉄筋コンクリート杭の施工に必要な水道料金の算定及び排出する泥水を現場で薬品処理する場合の泥水処理費の算定(これらの積算額計1億6,123万余円)が適切でなかったため、積算額が約6,830万円過大になっていた。
 このように積算額が過大になっていたのは、水道水の使用量を算定する際の積算基準等で定められている割増係数が実際の使用量を著しく上回るものになっていたり、泥水処理費を算定するための基準がなく、施工の実態とかい離した業者の見積り等によって処理費を算定していたりしていたことによるものである。したがって、施工の実態に適合させるよう積算基準等を整備する要があると認められた。

<当局が講じた改善の処置>
 本院の指摘に基づき、首都高速道路公団では、平成6年10月に、水道水の使用量の算定について積算基準等を適切なものに改定し、また、泥水処理費を算定するための基準を新たに定めて、それぞれ同月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

1 工事の概要

(工事の内容)

 首都高速道路公団(以下「公団」という。)では、首都圏における高速道路等の建設工事を毎年多数実施している。そして、平成5年度にこれらの建設工事の一環として、高架橋等の底版及びリバースサーキュレーションドリル工法による現場打ち鉄筋コンクリート杭(以下「リバース杭」という。)等を築造する工事を27工事(工事費総額343億4,131万余円)施行しており、これらの工事で合計2,444本(杭径1m〜3m、杭長5m〜44m)のリバース杭を施工している。

(リバース杭の施工)

 リバース杭は、大口径掘削機により地中に円筒形の穴を掘削し、その掘削孔にかご状の鉄筋を建て込み、コンクリートを打設して築造するものである。掘削に当たっては、孔壁を保護するなどのため、掘削孔内に注水しながら施工することとなっているが、孔内に注入された水は掘削土砂とともにポンプで排出され、沈殿槽で土砂を沈殿させた後、再び孔内に還流させる。(参考図参照)
 また、掘削完了後のコンクリート打設時等に排出される水は、コンクリートのセメント成分等を含んだ泥水となっていて再び使用できないものであるため、回収し産業廃棄物として処理することになっている。

(リバース杭の工事費の積算)

 公団では、本件各工事のリバース杭の工事費は、本社制定の「工事設計積算基準(土木編)」(以下「積算基準」という。)等によって積算することとしている。そして、このうちリバース杭の施工に当たって使用する水には水道水を使用することとし、この水道料金及び発生する泥水を現場で薬品処理する場合の費用を、次のとおり総額1億6,123万余円と算定していた。

(ア) 水道料金について

 水道水の使用量は、施工中の損失を考慮して、リバース杭の掘削土相当量に割増係数1.6を乗じて算出することとし、また、コンピュータを使用して積算する場合は、積算プログラムにより、同係数を2回乗じることとしていた。そして、本件各工事のリバース杭合計2,444本の施工に必要な水道水使用量を約34万6790m3 と算出し、水道料金を総額1億0403万余円と算定していた。

(イ) 泥水処理費について

 泥水の処理について、積算基準では、原則として、泥水をそのままタンク車に積込み、施工現場から産業廃棄物処理場に運搬して処理することとしている。しかし、本件各工事のうち、産業廃棄物処理場への運搬距離が長いなどの施工現場の制約がある4工事については、施工現場で泥水中のセメント成分等を薬品により凝集沈殿させ、分離した水を中和するなどの処理を行ったうえ公共下水道に放流することとしていた。
 この泥水処理費の積算については、積算基準に定めがなかったため、業者の見積り等により、施工現場に、泥水を受け入れその処理水を貯留するなどのための貯水槽5台、水中ポンプ10台等の処理器材を設置することとし、その処理日数を、杭1本当たりの排出量に応じ5.3日から14.8日程度要することとしていた。そして、上記4工事のリバース杭計86本、泥水排出量約12,760m3 をの泥水処理費を総額5719万余円と算定していた。

2 検査の結果

(調査の観点)

 公団では、高架橋等の基礎杭としてリバース杭を多数施工しており、これに使用する水道水の料金が多額に上っていること、また、施工箇所等からみて泥水を現場で薬品処理する場合が今後増加すると予想されることから、工事費の積算が施工の実態を反映した適切なものとなっているか調査した。

(調査の結果)

 調査の結果、水道水の使用量及び泥水処理について、次のとおり施工の実態が積算と異なっており適切でないと認められた。

(ア) 水道水の使用量について

 本件各工事のうち8工事の545本について、水道料金請求書等を調査したり、専用の水道メータを設置したりして、水道水の使用量を確認したところ、実際の水道水使用量は掘削土相当量の1.14倍程度となっており、積算基準に定められた割増係数1.6は施工の実態とかい離していた。
 また、水道水の使用量の算出に当たり、同割増係数1.6をコンピュータによる積算の過程で2回乗じて掘削土相当量の2.56倍と算定していたのは公団のプログラムミスによるものであった。
 したがって、水道水の使用量の算出に当たっての損失を考慮した割増係数は、施工の実態からみて1.2とし、さらに、上記の誤った積算プログラムを修正して積算する要があると認められた。

(イ) 泥水処理について

 泥水を現場で薬品処理することとしていたリバース杭86本のうち61本について調査したところ、次のような状況となっていた。

〔1〕 泥水の処理については、発生した泥水の受入れは掘削時に使用する循環設備の一部である沈殿槽を利用することができ、薬品処理した後の処理水はセメント成分等を沈殿させた後、直接、公共下水道に放流することができるものである。このため、処理器材において、貯水槽5台のうち受入れ及び貯留に使用することとしていた貯水槽2台及びこれらに係る水中ポンプ10台のうち3台は必要ないものであり、実際にもこれらの器材は設置されていなかった。

〔2〕 泥水の処理日数については、コンクリートの打設作業等に伴って排出される泥水は、直ちに、薬品処理され放流されることから、排出量の多寡に関係なくコンクリート打設及び埋戻しに要する日数2日で処理していた。

 したがって、泥水処理費の積算に当たっては、泥水処理器材を貯水槽3台、水中ポンプ7台とし、リバース杭1本当たりの排出量の処理日数を2日として、施工の実態に即して積算する要があると認められた。

(低減できた積算額)

 上記により、本件各工事におけるリバース杭の水道料金及び泥水を現場で薬品処理することとした4工事の泥水処理費を修正計算すると、積算額を約6,830万円低減できたと認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公団では、6年10月に、水道水の使用量の算定について積算基準及び積算プログラムを適切なものに改定し、また、泥水を現場で薬品処理する場合の泥水処理費を算定するための基準を新たに定めて、それぞれ同月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

(参考図)

(参考図)