科目 | (住宅・都市整備勘定) | (項)宅地造成費 (項)受託業務費 |
部局等の名称 | 港北開発局 |
工事名 | 港北第一地区タウンセンター(N1)基盤整備(その2)工事ほか6工事 |
工事の概要 | 港北ニュータウン建設事業の一環として、造成中の宅地内に、排水施設、共同溝等の基盤施設を追加発注により設置する土木工事 |
工事費 | 2,396,810,000円 (当初契約額2,299,475,000円) |
請負人 | 五洋・大豊・浅野建設工事共同企業体ほか4共同企業体 |
契約 | 平成4年11月〜6年3月 随意契約 |
低減できた積算額 | 4200万円 |
<検査の結果> |
上記各工事の積算において,共通仮設費の積算(積算額1億3,400万余円)を工事の施行の実態に合わせて行うことにより,積算額を約4,200万円低減できたと認められた。 このような事態が生じていたのは、積算の基準において、先行して発注された土木工事と随意契約により追加発注される土木工事に係る共通仮設費について、減額の調整の取扱いが工事の施行の実態に適合したものとなっていなかったことによるもので、基準を適切なものに改める要があると認められた。 |
<当局が講じた改善の処置> |
本院の指摘に基づき、住宅・都市整備公団では、平成6年10月に、追加発注する土木工事に係る共通仮設費の積算が工事の施行の実態に適合したものとなるよう積算の基準を改正し、同年11月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。 |
1 工事の概要
住宅・都市整備公団(以下「公団」という。)では、大都市地域等において住宅建設用地の造成などのために各種の土木工事を毎年多数施行している。このうち、公団港北開発局では、港北ニュータウン建設事業の一環として、平成4、5両年度に港北第一地区及び港北第二地区のタウンセンター区域において、整地工事等の面的工事と併せて、排水工事、共同溝工事等の各種の基盤整備工事を施行している。
これらの工事の発注に際しては、工期の短縮や現場の地形条件などを勘案して、タウンセンター区域を10の工区に分割し、各工区において宅地造成に必要な工事のうち、まず、整地工事を主体とする面的工事等を指名競争契約により先行して発注している(以下、先行して発注する工事を「先行工事」という。)。そして、先行工事の工期中に、必要に応じて排水工事、共同溝工事等の基盤施設の設置工事を、工事内容が密接に関連していることなどから、各工区の先行工事の請負人に対して随意契約により追加して発注している(以下、先行工事の工期中に追加して発注する工事を「追加工事」という。)。
そして、タウンセンター区域の5の工区では、既に施行中の5件の先行工事(工事費総額32億8,879万円)に追加して7件の追加工事が発注され施行されており、その工事費総額は23億9,681万円となっている。
公団では、先行工事と追加工事とが併せて施行される場合には、公団が定めた「土木工事積算要領及び同参考資料」(以下「積算要領」という。)により、追加工事の積算の際に共通仮設費について所要の減額を行うこと(以下「減額調整」という。)としている。これは、先行工事で設置した仮設物のなかには追加工事でも共用できるものがあることなどから、これに要する費用が追加工事において重複して計上されるのを避けるために行うものである。そして、共通仮設費は、現場事務所、立入防止柵に係る経費など直接工事費等の額に対して所定の率を乗じて算出するものと、所定の額を積み上げて算出するものとからなっている。このうち直接工事費等の額に所定の率を乗じて算出する共通仮設費の減額調整は、追加工事の発注時点において、追加工事の工期が先行工事の工期と完全に重複(先行工事の工期末以前に追加工事の工期末が到来するような場合をいう。以下「工期重複」という。)し、かつ、その工事区域が80%以上重複する場合に限り行うこととされている。
公団港北開発局では、7件の追加工事の共通仮設費の積算に当たり、各追加工事の工事区域はそれぞれの先行工事と100%重複しているものの、工期末はいずれも先行工事の工期末より後となっているため、工期重複には該当しないとして共通仮設費の減額調整を行うことなく、計134,826,999円と算定していた。
2 検査の結果
先行工事と追加工事は、その工事内容が相互に関連しながら実施されるものであることから、なかには先行工事の工期が延長されて工期重複に該当するような事態を生じることがあると想定された。そこで、積算要領では共通仮設費の減額調整は、追加工事の発注時点において工期重複に該当している場合に限って行うこととされていることから、その取扱いが工事の施行の実態に適合したものとなっているかについて調査した。
調査したところ、7件の追加工事で施工する排水工事、共同溝工事等は、工程上、5件の先行工事で施工される整地工事のうちの法面仕上げ工、宅地仕上げ工等の着工前に完了していなければならないものとなっていた。そのため、5件の先行工事については、その工期末を追加工事の工期末より後に変更せざるを得ないものとなっており、現に、その理由からそれぞれ工期延長の契約変更が行われていた。この結果、5件の先行工事と7件の追加工事とは、工事区域の重複に加えて工期重複の状態となっており、また、この工期重複は、それぞれの先行工事と追加工事の工事内容からみて、追加工事の発注時点において当然に予測できたと認められた。
したがって、本件各追加工事は、発注時点における工期重複と同様の状態となっていることから、その積算に当たっては、共通仮設費が重複して計上されることがないように、減額調整を行うべきであったと認められた。
上記により、本件各追加工事の共通仮設費を工事の施行の実態に即して適切に減額調整して積算したとすれば、92,392,102円となり、前記の積算額134,826,999円を約4200万円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、積算要領において、先行工事と追加工事に係る共通仮設費について、追加工事の発注時点において工期重複が当然に予測できる場合に減額調整する取扱いとなっておらず、工事の施行の実態に適合したものとなっていなかったことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、公団では、6年10月に、土木工事の追加工事に係る共通仮設費の積算が工事の施行の実態に適合したものとなるよう積算要領を改正し、同年11月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。