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  • 平成5年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
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  • 貸付金

福祉施設設置整備資金の貸付けが不当と認められるもの


(222)−(226) 福祉施設設置整備資金の貸付けが不当と認められるもの

科目 (一般事業勘定) (項)貸付金
部局等の名称 年金福祉事業団
受託金融機関 株式会社山形しあわせ銀行ほか4金融機関
貸付けの根拠 年金福祉事業団法(昭和36年法律第180号)
貸付金の種類 福祉施設設置整備資金
貸付けの内容 厚生年金保険の被保険者等の福祉を増進するため必要な施設の設置等を行う事業主等に対する資金の貸付け
貸付件数 5件
貸付金の合計額 1,127,000,000円
不当貸付金額 137,966,680円
 年金福祉事業団で行った上記の5件1,127,000,000円の貸付けにおいて、137,966,680円の貸付けがその目的に沿わない結果になっていて、不当と認められる。

1 貸付金の概要

 年金福祉事業団(以下「事業団」という。)は、厚生年金保険の適用事業所の事業主等に対し、厚生年金保険又は国民年金の被保険者、受給権者等の福祉を増進するため必要な社宅、療養施設等の設置又は整備に要する福祉施設設置整備資金を直接又は金融機関に委託して貸し付けている。
 このうち、事業団が金融機関に委託して貸付けを行う場合は、受託金融機関が借入申込書類を審査した後、事業団において、所定の要件を満たしていると認めたものに対し、貸付利率、償還期間等の貸付条件を付して貸付決定を行うこととしている。そして、受託金融機関は、事業完成後、貸付金の使途、貸付対象施設の利用状況などを確認するとともに、貸付金の管理及び回収を行うこととしている。

2 検査の結果

 事業団の貸付けについて調査したところ、5件1,127,000,000円の貸付けにおいて、137,966,680円の貸付けが不当と認められる。これらは、借入申込書類等の審査が十分でなかったり、借入者から事実と相違した内容の事業完成報告がされていたのにこれに対する確認が十分でなかったりなどしたため、資金が過大に貸し付けられるなどしたものである。
 これを貸付先別に示すと次のとおりである。

受託金融機関名 貸付先
(所在地)
貸付対象 貸付年月
(貸付利率)
貸付対象事業費 左に対する貸付金額 貸付金額のうち不当と認める額 摘要
千円 千円 千円

(222)

株式会社山形しあわせ銀行 医療生活協同組合(鶴岡市) 療養施設の増改築 4.9
(年5.5%)
700,000 503,400 69,700 低額実施
 この貸付けは、療養施設(延べ2,249.2m2 )の増改築に必要な資金700,000,000円の一部として、503,400,000円を貸し付けたものである。借入者は、この事業のうち、排水処理施設工事等を333,000,000円で実施したとしていたが、実際はこれより低額な256,652,000円で実施していた。
 したがって、この事業についての適正な貸付金額を計算すると433,700,000円となるので、本件貸付金額との差額69,700,000円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件の不当貸付金残高67,816,214円については、平成6年8月に繰上償還された。

(223)

株式会社常陽銀行 小売業者(北茨城市) 社宅の新築 5.6
(年4.4%)
68,500 28,000 7,000 目的外使用
 この貸付けは、社宅(延べ455.8m2 、世帯用8戸)の新築に必要な資金68,500,000円の一部として、28,000,000円を貸し付けたものである。しかし、借入者は、不動産業者を通じて、社宅のうち2戸を、平成4年8月及び5年6月からそれぞれ第三者に賃貸していた。
 したがって、上記2戸に係る貸付金相当額7,000,000円は貸付けの目的外に使用されていたものである。
 なお、本件の不当貸付金残高6,416,660円については、6年9月に繰上償還された。

(224)

株式会社名古屋銀行 道路旅客運送業者(名古屋市) 社宅の新築 元.5
(年4.85%)
190,210 142,600 18,100 過大貸付
 この貸付けは、社宅(延べ1,136.1m2 、単身用42戸)の新築に必要な資金190,210,000円の一部として、142,600,000円を貸し付けたものである。
 しかし、本件貸付けにおいて、次のとおり適切でない事態が見受けられた。

(ア) 借入者は、貸付金の算定に当たり、中小企業事業主に対する融資率(90%)の適用を受けていたが、実際は、社宅を他の大企業事業主と共同で利用するために設置していて、大企業事業主に対する融資率(80%)の適用を受ける者であった。

(イ) 事業団は、設計監理費の算定(注) に当たり、標準価格である7,548,000円を適用していたが、借入者が実際に要した額は4,699,000円であったため、その差額2,849,000円が過大に計上されていた。

 したがって、この事業についての適正な貸付金額を計算すると124,500,000円となるので、本件貸付金額との差額18,100,000円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件の不当貸付金残高15,686,662円については、平成6年12月に繰上償還された。

(注)  設計監理費は、建築費及び特殊工事費の合算額に100分の5を乗じて得た標準価格と、実際に要した額とのいずれか低い額とすることとされている。

(225)

株式会社東海銀行 自動車部品製造業者
(豊田市)
従業員用福利厚生施設の新築 元.7
(年5.2%)
409,000 368,000 30,666 貸付条件の適用誤り

 この貸付けは、従業員用福利厚生施設(延べ3,072.6m2 )の新築に必要な資金409,000,000円の一部として、368,000,000円を貸し付けたものである。しかし、この事業については、施設の構造が耐火構造以外の構造であることから償還期間を15年以内としなければならないのに、事業団ではこれを誤って償還期間を20年として貸し付けていた。
 したがって、本件貸付けについて、償還期間を15年とした場合の償還金額を計算すると平成2年3月から6年9月までの10回分で計122,666,680円となり、実際に償還を受けた92,000,000円との間に30,666,680円の開差が生じていて過小な償還額となっている。
 なお、本件の不当貸付金残高については、6年9月に繰上償還された。

(226)

株式会社肥後銀行 旅館業者
(阿蘇郡阿蘇町)
社宅の新築 3.2
(年6.6%)
143,392 85,000 12,500 低額実施

 この貸付けは、社宅(延べ716.1m2 、単身用36戸)の新築に必要な資金143,392,000円の一部として、85,000,000円を貸し付けたものである。借入者は、この事業を貸付対象事業費どおりの額で実施したとしていたが、この額は契約額を水増ししていたもので、実際は89,208,000円で実施していた。
 したがって、この事業についての適正な貸付金額を計算すると72,500,000円となるので、本件貸付金額との差額12,500,000円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件の不当貸付金残高11,000,000円については、平成6年6月に繰上償還された。

(222)-(226)の計 1,511,102 1,127,000 137,966