科目 | 営業収益 |
部局等の名称 | 日本電信電話株式会社東京、関東両支社 |
支障移転工事の概要 | 土地所有者等からの申請に基づき電柱、線路等の設備を移転する工事 |
移転費用の収納額 | 107,122,190円 |
低額になっていた移転費用の収納額 | 5,440万円 |
<検査の結果> |
上記の支障移転工事において、標準単価をすべての小規模工事に適用して、移転費用を実際に要した費用よりも低く算定していたため、移転費用の収納額が、約5,440万円低額になっていると認められた。 |
<当局が講じた改善の処置> |
本院の指摘に基づき、日本電信電話株式会社東京、関東両支社では、平成6年11月に各支店に指示文書を発し、同年12月から標準単価の適用対象を、小規模な工事のうち、個人住宅の建替えなどに伴う支障移転に限ることとするなど、申請者及び申請事由を考慮したものに改めることとする処置を講じた。 |
1 支障移転の概要
日本電信電話株式会社東京、関東両支社管内の各支店では、電柱、線路等の設備(以下「設備」という。)が設置されている土地又はその隣接地の所有者等から、その設備が土地の利用に支障を及ぼすようになったとして、設備の移転などその支障の除去に必要な措置(以下「支障移転」という。)の申請があった場合には、支障移転工事(以下「工事」という。)を実施している。平成5年度に両支社管内の各支店が実施した工事は57,095件となっている。
支障移転に関する事務は、本社が定めた「土地等の使用及びその補償等に関する取扱いについて」(昭和61年話企シ第120号。以下「取扱い」という。)により処理することとなっている。これによると、支障移転を実施するときには、その移転費用は、請負費、物品費等によりその工事に必要となる額を算定することを原則とし、協定等で定める場合を除き、申請者から次の基準により移転費用の全額又は一部の額を収納することとなっている。
(ア) 設備が設置されている土地の所有者から申請があったときは、申請事由及び土地使用契約の経過期間に応じて、移転費用の一定割合の額
(イ) 設備が設置されている土地の隣接地の所有者等から申請があったときは、移転費用の全額
上記の取扱いによると、多数発生する画一的な工事については、支社においてあらかじめ設定した標準単価を適用して移転費用を算定できることとなっている。このことから、東京支社は昭和62年に、また、関東支社は61年にそれぞれ標準単価を設定し、電柱2本以内、ケーブル3スパン以内の移転を伴う小規模な工事に適用している。
2 検査の結果
標準単価を適用して算定した移転費用は実際に工事に要した費用に見合ったものとなっているか、また、標準単価の適用対象は適切なものとなっているかについて調査した。
調査は、両支社管内の16支店(注)
が平成5年度に請負契約により実施した工事のうち、道路等の公有地に設置されている設備を、隣接地の所有者等からの申請に基づいて、同じく道路等の公有地に移転したもので、標準単価を用いて移転費用を算定して収納した1,051件(移転費用の収納額1億0712万余円)について行った。
上記の1,051件について、請負費等により実際に工事に要した費用を算定したところ、標準単価を適用して算定した移転費用の額を大幅に上回っており、標準単価は、実態に比べて低額なものとなっていた。
これについて、両支社では、標準単価を適用するのは、申請者が従来からその土地で生活している個人で、申請事由が住居の建替えや増改築、車庫の設置などであり、これまでの公道上の建柱に対する協力、移設場所の確保などを考慮すると、この低い標準単価を適用して申請者の負担を軽減することが適当であると判断したとしていた。
しかし、上記の1,051件について、申請者及び申請事由について調査したところ、次のとおり、企業がビルやマンション等を建設するため道路等の公有地に設置されている設備の移転を申請したものなど、上記の理由に該当しないのに、標準単価を適用して移転費用を算定していたものが、306件(移転費用の収納額3,407万余円)見受けられた。
〔1〕 ビル・マンション等の建設に伴うもの | 171件 |
〔2〕 駐車場・資材置場等の設置に伴うもの | 61件 |
〔3〕 宅地造成に伴うもの | 30件 |
〔4〕 下水道工事等の公共事業の実施に伴うもの | 44件 |
計 | 306件 |
上記のような支障移転は、両支社が、申請者の負担を軽減することが適当であるとしていた場合とは異なることから、標準単価を適用して移転費用を低く算定していたのは適切とは認められない。
したがって、これらの工事においては、実際に工事に必要となる額を算定して申請者にその負担を求めるべきであったと認められた。
上記の306件の工事について移転費用を請負費等により算定すると、8,851万余円となり、前記の移転費用の収納額に比べて、収納額が約5,440万円増加したと認められた。
このような事態が生じていたのは、標準単価の適用対象を単に工事の規模によって定めていて、申請者及び申請事由を考慮したものとなっていなかったことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、両支社では、6年11月に各支店に指示文書を発し、同年12月から標準単価の適用対象を、小規模な工事のうち、個人住宅の建替え及び増改築等に伴う支障移転に限ることとするなど、申請者及び申請事由を考慮したものに改めることとする処置を講じた。
(注) 東京支社管内の港、墨田、江東、品川、渋谷、中野、東京北、江戸川各支店及び関東支社管内の横浜、川崎北、横須賀、藤沢、船橋、柏、大宮、浦和各支店