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  • 平成5年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第13 日本電信電話株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

電話帳に掲載する情報の確認作業を実施するに当たり、既に確認が行われているものなどを対象から除外することにより、委託費の節減を図るよう改善させたもの


(2) 電話帳に掲載する情報の確認作業を実施するに当たり、既に確認が行われているものなどを対象から除外することにより、委託費の節減を図るよう改善させたもの

科目 営業費用
部局等の名称 電話帳事業推進部北陸、関西両事業推進部
契約の概要 電話の新規加入者等に対し、電話帳に掲載する氏名、電話番号、住所等の情報が加入申込等の内容と一致しているかを確認する作業を委託により行うもの
契約の相手方 北陸電話帳株式会社、エヌ・ティ・ティ・プリコム株式会社
契約 平成5年3月
支払金額 146,824,708円
節減できた委託費 5070万円
<検査の結果>
 上記の契約に当たり、支店において既に情報の確認が行われているものなどを確認作業の対象から除外したとすれば、委託費を約5070万円節減できたと認められた。
 このような事態が生じていたのは、上記の部局において、支店の業務の内容を十分把握していなかったこと、本社において、情報の確認作業の実施方法について適切な指導を行っていなかったことなどによると認められた。

<当局が講じた改善の処置>
 本院の指摘に基づき、日本電信電話株式会社では、本社において、平成6年11月に、各地域事業推部に対して情報の確認作業の実施方法を示し、確認作業の対象の選別を適切に行うよう指示するとともに、上記の部局において、同年12月以降、支店で既に確認が行われているものなどを確認作業の対象から除外することとする処置を講じた。

1 電話帳掲載情報の確認作業の概要

(電話帳の発行)

 日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)では、50音別電話帳(ハローページ)、職業別電話帳(タウンページ)等の電話帳を毎年多数発行しており、平成5年度中の発行部数は約1億1,840万部に上っている。これらの電話帳には、電話加入者の氏名、企業名、電話番号、住所及び職業分類名(以下「本文情報」という。)が掲載されていて、電話利用者の利便に供されている。

(本文情報の登録と編集)

 NTTでは、加入者に関する情報を一元的に登録し管理する顧客サービスシステムを設け、料金請求や電話帳作成等の業務に利用できるようにしている。そして、NTTの各支店では、〔1〕 電話の新規加入や、〔2〕 住所の移転、氏名・電話番号等の変更、加入契約の解除等(以下「移転等」という。)の申込みを受け付けたときは、その都度、申込内容に応じ、同システムに加入者の情報を新規に登録したり、既に登録してある情報を修正したりしている。
 こうして登録されたり修正されたりした情報のうち本文情報は、その後電話帳編集システムに転送されるようになっており、電話帳事業推進部でこれを電話帳に掲載する形式に編集している。

(本文情報の確認作業)

 電話帳事業推進部の北陸及び関西両事業推進部では、正確で検索しやすい電話帳を作成する作業の一環として、顧客サービスシステムから電話帳編集システムに転送されてきた本文情報について、それが加入者の申込みの内容と一致しているかを加入者に確認する作業(複数の電話を所有する加入者について行う電話番号の掲載順の確認作業を含む。以下「本文情報確認作業」という。)を委託により実施している。
 この本文情報確認作業の内容は、上記により転送されてきた本文情報を電話帳編集システムから出力し、加入契約の解除に係る分等を除き、出力した本文情報を加入者別に所定の確認文書に切り張りするなどし、その確認文書を加入者に郵送して確認を求めるものとなっている。
 そして、北陸及び関西両事業推進部では、5年度に本文情報確認作業をそれぞれ北陸電話帳株式会社及びエヌ・ティ・ティ・プリコム株式会社に委託して実施し、計1億4,682万余円を支払っている。

2 検査の結果

(調査の観点及び対象)

 本文情報確認作業は、経済的に実施されているか、特に、本文情報については、支店においても新規加入等の申込受付時などに一定の確認を行っていることから、これら支店の受付業務等と整合したものとなっているかについて調査した。
 調査は、北陸及び関西両事業推進部が5年度の1年間に本文情報確認作業を実施した183,247件の中から、各月ごとに3日ずつ選定した計36日において作業が実施された28,948件を抽出して行った。

(調査の結果)

 調査の結果、次のとおり、本文情報確認作業を行う必要がないと認められるものが16,831件見受けられ、業務の実施が適切でないと認められた。

(ア) 支店では、新規加入の申込みを受け付けたときは、本文情報等を記入した「加入電話等契約申込書(お客様控)」を加入者に手渡して、申込みの内容を確認している。また、移転等の申込みで代金の請求を伴う場合などには、同じく本文情報等を記入した「お知らせ」と称する文書を手渡したり、郵送したりして、申込みの内容を確認している。そして、これら本文情報等の顧客サービスシステムヘの入力については、支店内部で、再三にわたり誤りがないかを点検し、入力誤りを防止している。
 したがって、新規加入のもの、及び移転等で加入者に「お知らせ」を発行したものについては、上記の申込書や「お知らせ」では確認していない複数の電話番号の掲載順を確認する場合を除き、本文情報確認作業を行う必要はないと認められた。そして、これにより同作業を行う必要がなかったと認められるものが、調査した中で11,257件あった。

(イ) 移転等の申込みがあったもののうち、住所又は電話番号の変更があるものについては、支店において、現地又は所内で所要の電話開通工事を実施し、工事完了後に当該電話を使用して通話試験を行っている。そして、これらの電話開通工事や通話試験を行ったときに、住所及び電話番号についてはそれが正しいものであるかを確認しており、誤りがあれば顧客サービスシステムの情報を修正している。これら一連の業務は、本文情報が電話帳編集システムに転送される前に行われている。
 したがって、住所又は電話番号だけが変更になったものについては、「お知らせ」を発行していない場合でも、複数の電話番号の掲載順を確認する場合を除き、本文情報確認作業を行う必要はないと認められた。そして、これにより同作業を行う必要がなかったと認められるものが、調査した中で3,747件あった。

(ウ) 支店では、顧客サービスシステムに登録されている住所について、同一の建物等でありながら異なる名称で登録されている建物名等を統一する作業を実施している。この作業により住所の登録が修正された場合も、その情報が電話帳編集システムに転送されるが、建物名等は電話帳には掲載されないので、この分については本文情報確認作業を行う必要はないと認められた。そして、これにより同作業を行う必要がなかったと認められるものが、調査した中で1,827件あった。

(節減できた委託費)

 北陸及び関西両事業推進部が5年度中に本文情報確認作業を実施した183,247件について、今回本院が行った上記の調査結果に基づき、同作業を実施する必要がなかった件数を推計すると、107,231件となる。
 そして、これらを本文情報確認作業の対象から除外したとすれば、出力した本文情報の中からその除外分を選別するのに要する経費を新たに見込んでも、本件委託費を約5,070万円節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、北陸及び関西両事業推進部において、支店が受付業務や電話開通工事等を行う際に本文情報を確認していることについて十分把握していなかったこと、本社において、本文情報確認作業の実施方法について適切な指導を行っていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、NTTでは、次のとおり、本文情報確認作業を適切に行うこととする処置を講じた。

(ア) 本社では、北陸及び関西両事業推進部のほか、他の地域事業推進部においても今後本文情報確認作業の推進が見込まれることから、6年11月に、すべての地域事業推進部に対して文書を発し、同作業の具体的な実施方法を示して、対象の選別を適切に行うよう指示した。

(イ) 北陸及び関西両事業推進部では、上記文書による指示を受けて、同年12月以降、支店において申込受付時等に既に確認が行われているものなどを本文情報確認作業の対象から除外することとした。