科目 | (款)建設勘定 | (項)安全対策 |
(款)鉄道事業営業費 | (項)線路保存費 |
部局等の名称 | 北海道旅客鉄道株式会社本社 |
工事名 | 本石倉・石倉間61K720M付近のり面工新設 |
工事の概要 | 函館本線の防災工事の一環として、本石倉駅と石倉駅の間の法面に格子枠等を施工する工事 |
工事費 | 46,401,211円(当初契約額45,628,711円) |
請負人 | 札建工業株式会社 |
契約 | 平成5年9月 随意契約 |
しゅん功検査 | 平成6年2月 |
支払 | 平成6年3月 |
目的を達していない工事の額 | 40,854,383円 |
1 工事の概要
この工事は、北海道旅客鉄道株式会社が、函館本線の防災工事の一環として、本石倉駅と石倉駅の間の法面を保護するため、平成5年度に、場所打ち格子枠工598.5m2
、プレキャスト格子枠工1,857.0m2
等を工事費46,401,211円で施行したものである。
上記の両格子枠工については、設計図書等によると、いずれも在来の法面の整正を行った後、次のように施工することとしていた(参考図参照)
。
(1) 場所打ち格子枠工について
(ア) 格子枠の梁の交差部分となる111箇所のうち46箇所については、格子枠を法面に固定させるための現場打ち鉄筋コンクリートの杭(断面30cmx30cm、埋設深さ70cm又は100cm)を築造する。
(イ) 幅30cm、厚さ30cmの梁192本を格子状(1枠の標準寸法2.5mx3.0m)に築造するため、法面に深さ15cm、幅30cmの溝掘りを行い、これに切込砂利を法面まで敷きならして転圧及び整正し、その上に梁の型枠を建て込み、鉄筋を組み立てた後にコンクリートを打設する。
(ウ) 格子枠内には割ぐり石を中詰めする。
(2) プレキャスト格子枠工について
(ア) 整正した法面にコンクリート製の既製枠材(以下「枠材」という。)3,903本を格子状(1枠の標準寸法1.0mx1.0m)に配置する。
(イ) 枠材の結合部1,964箇所には、格子枠を法面に固定させるために一段おきに異形鉄筋(径22mm、長さ1m)を法面から10cm突出した状態になるまで打ち込む。
(ウ) すべての結合部にモルタルを厚さ10cmに充てんして枠材中から突出している鉄線(径6mm)及び異形鉄筋の突出部分を固定し、これにより、各枠材及び異形鉄筋を一体化させる。
(エ) 格子枠内には客土のうえ張芝を行う。
2 検査の結果
検査したところ、場所打ち格子枠については、法面と密着していないなどの箇所が、また、プレキャスト格子枠については、結合部のモルタルが土砂と見分けがつかないなどの箇所が多数見受けられた。そこで、中詰めの割ぐり石を撤去したり、充てんされたモルタルをはつったりなどして調査したところ、両格子枠工は、次のような施工状況となっていた。
(1) 場所打ち格子枠工について
(ア) 梁総数192本のうち、各梁の下面が著しく不整形な施工となっていて、設計厚の30cmを下回っているものが139本あり、なかには13.4cmと著しく不足しているものもあった。また、鉄筋が露出しているものが103本あり、このうち38本は梁の全長にわたって露出していた。
(イ) 降雨や融雪水の流下により切込砂利が流出して梁と法面の間に空洞が生じているものが140本あり、なかには、その空洞が48cmに達するものもあった。
(ウ) 杭総数46本のうち調査した17本は、そのすべてについてコンクリートが型枠内に十分には行き渡っておらず、このうち15本は鉄筋が露出していた。
これは、施工に当たり、法面の整正が十分でなかったため、型枠の建込み及び鉄筋の組立てが正確でなかったこと、法面に溝掘りを行わず、型枠及び鉄筋を施工した上から切込砂利を投入していたため、敷きならし、転圧及び整正が十分でなかったことなどによると認められる。
(2) プレキャスト格子枠工について
(ア) 結合部総数1,964箇所のうち、998箇所のモルタルについて打撃検査を行ったところ、容易に破砕されるものが934箇所あった。また、その厚さを計測したところ、設計厚の10cmを下回っているものが887箇所(平均厚5.4cm)あり、なかには1 cmと著しく不足しているものもあった。
(イ) 枠材総数3,903本のうち、欠損やき裂が生じているものが389本あった。
これは、結合部に、水を使用しない砂とセメントを混合しただけのものを使用して施工したいという施工業者からの申し出に対し、当該工事の監督部署が、これでは強度の発現が期待できないのに、これを十分に検討しないまま了承していたこと、また、枠材に強い衝撃を与えて配置したことなどによると認められる。
したがって、本件場所打ち格子枠工及びプレキャスト格子枠工(工事費相当額40,854,383円)は、監督及び検査が適切でなかったため、その施工が粗雑で設計と著しく相違したものとなっていて、工事の目的を達していないと認められる。