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  • 平成5年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
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橋りょう架け替え工事の施行に当たり、支承部の施工が設計と相違していて、橋りょう上部工が不安定な状態になっているもの


(234) 橋りょう架け替え工事の施行に当たり、支承部の施工が設計と相違していて、橋りょう上部工が不安定な状態になっているもの

科目 (款)建設仮勘定(項)直接工事費(鉄道事業)
部局等の名称 九州旅客鉄道株式会社本社
工事名 坂ノ市・幸崎間金道川B・PC桁作架
工事の概要 河川の改修に伴い鉄道橋を架け替えるため、橋りょう上部工を施工する工事
工事費 39,675,600円
請負人 株式会社富士ピー・エス
契約 平成5年8月 指名競争契約
しゅん功検査 平成5年12月
支払 平成6年2月
不当と認める工事費 39,675,600円
 上記の工事において、監督及び検査が適切でなかったため、橋りょうの支承部の施工が設計と相違したものとなっていて、橋りょう上部工(工事費39,675,600円)が不安定な状態になっていると認められる。

1 工事の概要

 この工事は、九州旅客鉄道株式会社が日豊本線坂ノ市駅と幸崎駅の間にある金道川橋りょうを、金道川河川改修工事(国庫補助事業、事業主体大分県)のために架け替える必要が生じたので、平成5年度に、鉄道橋(単線、橋長25.4m)の上部工としてプレストレストコンクリート桁(以下[PC桁]という。)の製作及び架設を工事費39,675,600円で施行したものである。
 このうち、PC桁と橋台との接点である支承部については、設計図書等によると、次のように施工することとしていた(参考図参照)

(ア) 橋りょうの左岸側を固定支承部、右岸側を可動支承部とし、PC桁に加わる荷重を円滑に橋台に伝えるなどのため、PC桁と橋台の間にゴム支承を設置する。

(イ) 地震による落橋等を防止するため、橋台とPC桁とを角形鋼管で連結するストッパーを設置する。このうち、右岸側の可動支承部に設置するストッパー2基(上下流側各1基。以下「可動ストッパー」という。)は、PC桁が温度変化等により伸縮し移動して角形鋼管が破損するのを防止するなどのため、角形鋼管にかぶせる鋼製の受箱をPC桁に埋め込む。この場合、その移動量を見込んで、角形鋼管と受箱との間に、橋軸方向に90mm(角形鋼管の両側に45mmずつ)の空間を確保するよう施工する。

(ウ) 可動ストッパーの施工に当たっては、あらかじめ橋台とPC桁に設置孔をあけておき、PC桁を橋台に架設した後、角形鋼管と受箱を落とし込み、角形鋼管の根元部分に、高強度の無収縮モルタル(以下[モルタル]という。)を充てんして橋台に固定する。そして、同様にモルタルを充てんして受箱をPC桁に固定するが、その際、モルタルの漏出を防ぐため、PC桁と橋台の間に型枠を設置する。

2 検査の結果

 検査したところ、可動ストッパーはPC桁が移動できるように施工しなければならないのに、下流側の可動ストッパーは、型枠の設置が適切でなかったため、モルタルが受箱の内部に回り込み、受箱の深さ382mmうち平均163mmの高さまで詰まっていて、PC桁が移動できず、その伸縮に対応できないものとなっていた(参考図参照 )。
  このため、PC桁が温度変化等により収縮した場合、下流側の可動ストッパーの角形鋼管に最大4,990kg/cm2 の曲げ応力度(注) が生じることになり、これは許容曲げ応力度(注) 2,000kg/cm2 を大幅に上回っていて、角形鋼管が破損することになる。そして、この状態で地震が発生した場合、上流側の可動ストッパーの角形鋼管にも、許容曲げ応力度を大幅に上回る曲げ応力度が生じることになる。この結果、上流側の可動ストッパーの角形鋼管も破損して、地震による落橋等を防止できないことになる。
 したがって、橋りょう上部工(工事費39,675,600円)は、監督及び検査が適切でなかったため、橋りょうの支承部の施工が設計と相違したものとなっていて、不安定な状態になっていると認められる。

(注)  曲げ応力度・許容曲げ応力度 「曲げ応力度」とは、材に引張力及び圧縮力がかかったとき、そのために材の内部に生じる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容曲げ応力度」という。

(参考図)

(参考図)