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  • 平成7年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第1 総理府|
  • (防衛庁)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

航空自衛隊のレーダー基地等の光伝送装置に使用する光ファイバケーブルに係る積算を適切なものとするよう改善させたもの


 航空自衛隊のレーダー基地等の光伝送装置に使用する光ファイバケーブルに係る積算を適切なものとするよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)防衛本庁 (項)武器車両等購入費
平成6年度国庫債務負担行為

(組織)防衛本庁 (事項)通信機器購入
部局等の名称 調達実施本部
調達物品 光伝送装置J/FTC−31 1式
調達物品の概要 航空自衛隊のレーダー基地等の光伝送装置として、ディジタル信号を光ファイバケーブルによって伝送する装置
契約金額 204,527,100円
契約の相手方 富士通株式会社
契約 平成7年3月 指名競争後の随意契約
低減できた積算額 3900万円
<検査の結果>
 上記の調達物品の製造請負契約において、光伝送装置に使用する光ファイバケーブルの積算額(7053万余円)について、経済的なテープ形心線を用いた製品を使用することとして積算することにより、積算額を約3900万円低減できたと認められた。
 このような事態が生じていたのは、調達実施本部において、光ファイバケーブルの実際の製造方法、規格や性能の状況を積算に反映させていなかったことによると認められた。
<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、調達実施本部では、平成8年3月以降の光伝送装置の製造請負契約に当たり、光ファイバケーブルメーカーの製品のうち、経済的なテーブ形心線を用いた光ファイバケーブルを使用することとして積算するなどの処置を講じた。

1 契約の概要

 (光伝送装置の概要)

 調達実施本部(以下「調達本部」という。)では、航空幕僚監部の要求に基づき、平成2年度から毎年、光伝送装置の製造請負契約を電子機器メーカー(以下「製造会社」という。)との間で締結しており、6年度の契約金額は204,527,100円となっている。
 この光伝送装置は、航空自衛隊のレーダー基地において、山上のレーダー装置に隣接して設置されていたレーダー運用室を山麓の庁舎地区へ移転するのに伴い、レーダー装置と運用室との間を、光ファイバケーブル(以下「光ケーブル」という。)で結び、情報の交換を行うなどのために導入されているもので、光変換部、光ケーブル等の器材から構成されている。

 (光ケーブルの積算)

 光ケーブルは、光ファイバ心線を多数束ねて1本のケーブルとして製造されるものであるが、その心線の数(心数)は伝送される信号の量などに応じて求められることになっている。そして、本件の光伝送装置の調達に当たっては、航空自衛隊補給本部から提出される調達要領指定書において、光ケーブルの心数が指定されている。
 調達本部では、光伝送装置の調達の初年度(2年度)の契約に当たり、光伝送装置に使用する光ケーブルについては、製造会社において、1本の光ファイバを被覆した心線(単心)を自ら製造した後、ケーブル加工会社に発注して、調達要領指定書に定められた心数ごとに束ねるなどの加工を行って、光ケーブルを製造するものと想定していた(参考図1参照)
 光ケーブルの費用の積算については、この製造方法に基づき、心線(単心)の1m当たりの単価に心数と伝送距離を乗ずるなどして算定した額に外注費を加えるなどして算出することとしていた。そして、調達本部では、3年度以降の契約に当たっても、この積算方法を用いることとし、6年度の光伝送装置の製造請負契約における光ケーブル(ケーブル総延長26.25km)の積算額を、70,532,200円と算出していた。

2 検査の結果

 (調査の観点)

 光ケーブルは、伝送距離による信号の減衰が少ないなどの利点から、近年、その使用量が増大しており、心線の製造からケーブルの加工まで一貫して行う光ケーブルメーカーによる製品も広範に使用されるようになっている。このような状況を踏まえ、光ケーブルメーカーの製品のうち本件の光伝送装置の仕様を満たす製品を使用することにより、経済的な積算を行うことができないかなどの観点から、本件の光ケーブルの実際の製造方法、規格や性能等について調査した。

 (調査の結果)

 調査したところ、本件の光伝送装置の光ケーブルについては、次のような状況となっていた。

(ア) 調達本部が積算において想定していた光ケーブルの製造方法が採られていたのは、初年度の契約のみとなっており、3年度から5年度までの各契約においては、製造会社は心線(単心)を自ら製造することなく、光ケーブルメーカーから心線(単心)を購入し、これをケーブル加工会社に支給して光ケーブルを製造している状況であった。さらに、6年度においては、製品となっている光ケーブルを光ケーブルメーカーから購入してそのまま光伝送装置に使用していた。

(イ) 本件の光伝送装置で要求されている光ケーブルの規格、性能は、一般的なものであり、光ケーブルメーカーの製品で十分満たせるものであった。そして、これらの製品の中には、あらかじめ光ファイバ(主として4本)をテープ状に束ねるなどして経済性等を向上させ、5年に日本工業規格(JIS)において規格化されたテープ形心線を用いた光ケーブルが製造されている(参考図2参照) 。このテープ形心線を用いた光ケーブルは、既に一般に広く使用されるようになっており、その価格は、調達本部が想定している製造方法による場合に比べて相当安価なものとなっていた。

 したがって、光伝送装置の光ケーブルについては、これを心線(単心)から製造することとせず、テープ形心線を用いた製品を使用することとしても支障がなく、これを使用することとして積算することにより、積算額の低減を図る要があると認められた。

 (低減できた積算額)

 6年度の契約において、光ケーブルメーカーの製品のうちテープ形心線を用いた光ケーブルを使用することとして積算したとすれば、前記の積算額7053万余円は3145万余円となり、約3900万円低減できたと認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、調達本部において、光ケーブルの実際の製造方法、規格や性能の状況を十分把握せず、これを積算に反映させていなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、調達本部では、8年3月以降の光伝送装置の製造請負契約に当たり、光ケーブルメーカーの製品のうち、経済的なテープ形心線を用いた光ケーブルを使用することとして積算するなどの処置を講じた。

(参考図1)

(参考図1)

(参考図2)

(参考図2)