会計名及び科目 | 一般会計 | 国税収納金整理資金 | (款)歳入組入資金受入 (項)各税受入金 |
部局等の名称 | 麹町税務署ほか165税務署 |
納税者 | 468人 |
徴収過不足額 | 徴収不足額 | 1,312,517,039円 |
徴収過大額 | 28,410,300円 |
1 租税の概要
源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税、消費税等の国税については、法律により、納税者の定義、納税義務の成立の時期、課税する所得の範囲、税額の計算方法、納付の方法などが定められている。
平成7年度国税収納金整理資金の各税受入金の徴収決定済額は58兆3285億余円に上っている。このうち源泉所得税は17兆1131億余円、申告所得税は4兆1382億余円、法人税は14兆5235億余円、相続税・贈与税は3兆2001億余円、消費税は8兆7252億余円となっていて、これら各税の合計額は47兆7004億余円となり、全体の81.7%を占めている。
2 検査の結果
(徴収過不足の事態)
上記各税の課税内容に重点をおいて検査したところ、麹町税務署ほか165税務署において、納税者468人から租税を徴収するに当たり、徴収額が不足していたものが463事項1,312,517,039円、徴収額が過大になっていたものが5事項28,410,300円あった。
これを、税目別にみると次表のとおりである。
税目 | 徴収不足の事項数 徴収過大の事項数 |
徴収不足額 徴収過大額(△) |
源泉所得税 |
29 |
円 98,422,939 |
- | - | |
申告所得税 | 132 | 312,540,200 |
4 | △27,881,400 | |
法人税 | 214 | 562,286,700 |
1 | △528,900 | |
相続税・贈与税 | 60 | 227,038,900 |
- | - | |
消費税 | 28 | 112,228,300 |
- | - | |
計 | 463 | 1,312,517,039 |
5 | △28,410,300 |
なお、これらの徴収不足額及び徴収過大額については、本院の指摘により、すべて徴収決定又は支払決定の処置が執られた。
(発生原因)
上記の166税務署において、徴収不足又は徴収過大の事態を生じた原因は、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤っているのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったり、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりして、誤ったままにしていたことなどによるものである。
(税目ごとの態様)
この468事項について、源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税及び消費税の別に、その主な態様を示すと次のとおりである。
(1) 源泉所得税に関するもの
源泉所得税では徴収不足となっていたものが29事項あった。この内訳は、退職手当及び給与等に関するもの17事項並びに配当に関するもの12事項である。
ア 退職手当及び給与等に関するもの
退職手当及び給与等(給料、賃金、賞与等をいう。)の支払者は、支払の際に、所定の方法により計算した源泉所得税を徴収し、これを徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければならないこととなっている。そして、この法定納期限までに納付がない場合には、支払者に対して、納税の告知をしなければならないこととなっている。
この退職手当及び給与等に関し、徴収不足となっている事態が17事項あった。その主な内容は、税額の計算に誤りがあり、税額が過小のままとなっていたり、法定納期限を経過した後、長期間にわたって源泉所得税が納付されていなかったりしているのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったり、これを見過ごしたりしたため、納税の告知をしていなかったものである。
イ 配当に関するもの
配当の支払者は、支払の際に、所定の方法により計算した源泉所得税を徴収し、これを徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければならないこととなっている。そして、この法定納期限までに納付がない場合には、支払者に対して、納税の告知をしなければならないこととなっている。
株式会社の利益等の資本組入額は配当とみなされるが、平成3年4月1日(以下「基準日」という。)において現に存する株式会社が、所定の期間内において最低資本金を満たすための利益等の資本組入れ(注)
をした場合、同資本金を満たすまでの額は課税されないこととなっている。
この配当に関し、徴収不足となっている事態が12事項あった。その主な内容は、株式会社が最低資本金を満たすための利益等の資本組入れをした場合のみなし配当について、基準日後に株式会社となっていることなどにより、源泉所得税を徴収し納付しなければならないのに、これを見過ごしたため、納税の告知をしていなかったものである。
(注) 最低資本金を満たすための利益等の資本組入れ 平成2年の商法改正により新たに設定された株式会社の最低資本金1000万円を満たすため、基準日において現に存する株式会社が、基準日から8年3月31日までの間に利益又は準備金を資本に組み入れることをいう。
源泉所得税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例1> 退職手当に関する源泉所得税について納税の告知をしていなかったもの
A会社は、平成6年には退職手当に対する源泉所得税を納付していなかった。
しかし、同会社から提出された5年6月から6年5月までの事業年度分の法人税の申告書等によれば、退職手当222,000,000円が6年5月に支払われていた。したがって、法定納期限の同年6月10日までにこの退職手当に対する源泉所得税が納付されていなければならないのに、上記の申告書等からこの事実を把握していなかったため、源泉所得税額46,450,000円について納税の告知をしておらず、同金額が徴収不足になっていた。
(2) 申告所得税に関するもの
申告所得税では徴収不足又は徴収過大となっていたものが136事項あった。この内訳は、雑所得に関するもの34事項、譲渡所得に関するもの29事項、配当所得に関するもの29事項、不動産所得に関するもの25事項及びその他に関するもの19事項である。
ア 雑所得に関するもの
個人が貸付金の利子(事業所得に該当するものを除く。)などを受けた場合には、その総収入金額から必要経費を差し引いた金額を雑所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。
この雑所得に関し、徴収不足となっている事態が34事項あった。その主な内容は、個人に貸付金の利子による所得があるのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったため、この所得を他の所得と総合して課税していなかったものである。
イ 譲渡所得に関するもの
個人が資産を譲渡した場合には、その総収入金額から譲渡した資産の取得費や譲渡に要した費用の額などを差し引いた金額を譲渡所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。ただし、土地建物等及び株式等(株式、協同組合の組合員の持分などをいう。)の譲渡による所得については、他の所得と分離して課税することとなっている。
この譲渡所得に関し、徴収不足又は徴収過大となっている事態が29事項あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 譲渡所得があるのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったり、これを見過ごしたりしたため、課税していなかった。
(イ) 申告書等で、譲渡に要した費用の額などに誤りがあり、譲渡所得の金額が少なく記載されているのに、これを見過ごしたため、譲渡所得の金額を過小のままとしていた。
(ウ) 申告書等で譲渡所得に対する税額の計算に誤りがあるのに、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりしたため、税額を過小のままとしていた。
ウ 配当所得に関するもの
個人が法人から配当を受けた場合には、源泉分離選択課税(注)
の適用を受けた配当などを除いて、配当所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。
この配当所得に関し、徴収不足となっている事態が29事項あった。その内容は、個人に法人から受けた配当による所得があるのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったため、この所得を他の所得と総合して課税していなかったものである。
(注) 源泉分離選択課税 配当について、その支払を受ける者が法人の発行済株式の総数(又は出資金額)の100分の5以上を有する場合又は法人から支払を受ける配当の金額が1回25万円(年間50万円)以上の場合を除いて、その者の選択により他の所得と分離し100分の35の税率を適用して源泉所得税を課することをいう。
エ 不動産所得に関するもの
個人が不動産を貸し付けた場合には、その総収入金額から必要経費を差し引いた金額を不動産所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。
そして、不動産所得の計算に当たって、貸付料等の収入、建物等の取得などに係る経費の各項目の金額に消費税を含めて経理している場合には、経費に係る消費税額が収入に係る消費税額を超えるときに生じる消費税の還付金は、不動産所得の計算上総収入金額に算入することとなっている。
この不動産所得に関し、徴収不足となっている事態が25事項あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 申告書等で、総収入金額から差し引く必要経費の額を誤って過大としているのに、これを見過ごしたため、不動産所得の金額を過小のままとしていた。
(イ) 申告書等で、収入及び経費に消費税を含めて経理している場合の消費税の還付金が総収入金額に算入されていないのに、これを見過ごしたため、不動産所得の金額を過小のままとしていた。
オ その他に関するもの
上記のアからエのほか、事業所得、給与所得等に関し、徴収不足となっている事態が19事項あった。
申告所得税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例2> 株式等の譲渡に係る譲渡所得について課税していなかったもの
納税者Bは、平成6年分の申告をしておらず、譲渡所得はないとしていた。
しかし、C会社の6年1月から12月までの事業年度分の法人税の申告書等によれば、同人は、6年4月にD協同組合の持分を同会社に150,000,000円で譲渡している。したがって、同人にはこの額から取得費等7,950,000円を差し引いた142,050,000円の譲渡所得があるのに、上記の申告書等からこの事実を把握していなかったため、申告所得税額26,340,000円が徴収不足になっていた。
<事例3> 配当所得について課税していなかったもの
納税者Eは、平成4年分、5年分及び6年分の申告に当たり、配当所得はないとしていた。
しかし、F会社の3年6月から6年5月までの3事業年度分の法人税の申告書等によれば、同会社は利益の配当として4年7月、5年7月及び6年7月にそれぞれ16,000,000円の支払の確定をしており、また、同人は各事業年度とも同会社の発行済株式の総数800,000株のうち771,000株を所有している。したがって、同人には4年分、5年分及び6年分としてそれぞれ15,420,000円の配当所得があるのに、上記の申告書等からこの事実を把握していなかったため、申告所得税額3,855,000円、3,855,000円及び3,622,800円、計11,332,800円が徴収不足になっていた。
(3) 法人税に関するもの
法人税では徴収不足又は徴収過大となっていたものが215事項あった。この内訳は、同族会社の留保金に関するもの28事項、新規取得土地等に係る負債の利子に関するもの28事項、法人税額の特別控除に関するもの25事項、土地等の譲渡等に係る譲渡利益に関するもの20事項及びその他に関するもの114事項である。
ア 同族会社の留保金に関するもの
特定の同族会社(注1)
については、通常の法人税のほか、利益のうち社内に留保した金額が一定の金額を超える場合には、その超える部分の金額(以下「課税留保金額」という。)に対し特別税率(注2)
の法人税を課することとなっている。
この同族会社の留保金に関し、徴収不足又は徴収過大となっている事態が28事項あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 申告書等で特定の同族会社に該当し課税留保金額が算出されるのに、これを見過ごしたため、特別税率の法人税を課していなかった。
(イ) 申告書等で課税留保金額や税額の計算に誤りがあり、特別税率の法人税額が少なく記載されているのに、これを見過ごしたため、特別税率の法人税額を過小のままとしていた。
(注1) 特定の同族会社 発行済株式の総数(又は出資金額)の100分の50以上が、3人以下の株主等(株主等に同族会社でない法人がある場合はその法人を除く。)及びこれらと特殊の関係にある個人・法人によって所有されている会社をいう。
(注2) 特別税率 課税留保金額が年3000万円以下の部分については100分の10、年3000万円を超え1億円以下の部分については100分の15、年1億円を超える部分については100分の20となっている。
イ 新規取得土地等に係る負債の利子に関するもの
法人が、新規取得土地等(昭和63年12月31日以後に取得した土地等)を有する場合は、当該土地等が取得された日から長期間にわたって使用される建物等の敷地(以下「長期使用建物の敷地」という。)の用に供される日まで、また、その用に供されないときは4年間、当該土地等に係る負債の利子は損金に算入しないこととなっている。そして、損金に算入されなかった負債の利子(以下「累積損金不算入負債利子額」という。)は、損金に算入されなかった期間の末日を含む事業年度の翌事業年度から4年間で均等額を損金に算入することなどとなっている。
この新規取得土地等に係る負債の利子に関し、徴収不足となっている事態が28事項あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 申告書等で、長期使用建物の敷地の用に供されていない新規取得土地等があるのに、これを見過ごしたため、当該土地等に係る負債の利子を損金に算入したままとしていた。
(イ) 申告書等で、累積損金不算入負債利子額の全部又は一部の金額を、損金に算入されなかった期間の末日を含む事業年度の損金に算入しているのに、これを見過ごしたため、損金算入額を過大のままとしていた。
ウ 法人税額の特別控除に関するもの
青色申告書を提出する法人のうち中小企業者等(発行済株式の総数の2分の1以上が同一の大規模法人の所有に属しているなどの法人を除く。)が電子機器利用設備を取得し又は賃借した場合には、その設備を事業に使用した最初の事業年度において、次の金額のうちいずれか少ない金額を限度として法人税額から控除する特例を適用できることなどとなっている。
〔1〕 取得価額又は賃借期間中に支払う費用の総額に一定の割合を乗じて得た金額
〔2〕 確定申告書の法人税額の100分の20に相当する金額
この法人税額の特別控除(以下「税額控除」という。)に関し、徴収不足となっている事態が25事項あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 申告書等で、発行済株式の総数の2分の1以上が同一の大規模法人の所有に属していて、中小企業者等に該当しない法人が税額控除をしているのに、これを見過ごしたため、法人税額を過小のままとしていた。
(イ) 申告書等で、設備を事業に使用した最初の事業年度において控除した金額を当期の法人税額から重複して控除しているのに、これを見過ごしたため、法人税額を過小のままとしていた。
エ 土地等の譲渡等に係る譲渡利益に関するもの
法人の所有する土地等の譲渡等については、所有期間に応じて長期所有土地等(注1)
、短期所有土地等(注2)
、超短期所有土地等(注3)
に区分し、収益の額から原価と経費の額を差し引いたそれぞれの譲渡利益金額に対して、通常の法人税のほか特別税率の法人税を課することとなっている。そして、この特別税率の法人税額は、長期所有土地等、短期所有土地等及び超短期所有土地等の譲渡利益金額のそれぞれ100分の5、100分の10及び100分の15に相当する金額(平成7年12月31日までの譲渡に対しては、それぞれ100分の10、100分の20、100分の30に相当する金額など)となっている。
この土地等の譲渡等に係る譲渡利益に関し、徴収不足となっている事態が20事項あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 申告書等で、長期所有土地等、超短期所有土地等の譲渡等による収益の額が記載されているのに、これを見過ごしたため、特別税率の法人税を課していなかった。
(イ) 申告書等で収益又は経費の額に誤りがあり、譲渡利益金額が記載されていなかったり、少なく記載されていたりしていた。しかし、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりしたため、特別税率の法人税を課していなかったり、譲渡利益金額を過小のままとしたりしていた。
(注1) 長期所有土地等 法人が所有する土地等のうち短期所有土地等、超短期所有土地等以外の土地等をいう。
(注2) 短期所有土地等 譲渡した年の1月1日までに所有していた期間が5年以下である土地等をいう。ただし、超短期所有土地等に該当するものを除く。
(注3) 超短期所有土地等 昭和62年10月1日から平成9年3月31日までに譲渡した土地等のうち、譲渡した年の1月1日までに所有していた期間が2年以下である土地等をいう。
オ その他に関するもの
上記のアからエのほか、役員賞与の損金不算入、受取配当等の益金不算入、退職給与 引当金等に関し、徴収不足となっている事態が114事項あった。
法人税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例4> 同族会社の課税留保金額に対し特別税率の法人税を課していなかったもの
G会社は、平成6年2月から7年1月までの事業年度分の申告に当たり、特定の同族会社と判定していたが、利益のうち社内に留保した金額について特別税率による税額計算をしていなかった。
しかし、申告書等によれば、所定の計算をすると課税留保金額71,105,000円が算出される。この課税留保金額に対しては特別税率の法人税を課することとなるのに、これを見過ごしたため、法人税額9,055,600円が徴収不足になっていた。
<事例5> 新規取得土地等に係る負債の利子の課税の特例の適用を誤っていたもの
H会社は、平成6年2月から7年1月までの事業年度分の申告に当たり、4年8月に取得した3,317.32m2
の土地(取得価額216,652,050円)に係る当期の負債の利子について、当該土地が当期中の6年10月に長期使用建物の敷地の用に供されたとして、損金不算入額の計算をしないで損金に算入していた。また、前期までの当該土地に係る累積損金不算入負債利子額18,415,424円についても全額当期の損金に算入していた。
しかし、土地が長期使用建物の敷地の用に供された場合には、累積損金不算入負債利子額はその供された日を含む事業年度の翌事業年度から4年間で均等額を損金に算入することとなっている。そして、この土地については、当期中の長期使用建物の敷地の用に供されるまでの期間(6年2月から9月までの8箇月)に応じた負債利子の損金不算入額8,666,082円が算出されるので、この金額は当期の損金に算入できない。また、前期までの累積損金不算入負債利子額18,415,424円も当期の損金に算入できない。
したがって、当期の負債利子の損金不算入額及び前期までの累積損金不算入負債利子額はいずれも当期の損金に算入できないのに、これを見過ごしたため、法人税額10,073,000円が徴収不足になっていた。
(4) 相続税・贈与税に関するもの
相続税・贈与税では徴収不足となっていたものが60事項あった。この内訳は、相続税については土地建物等の価額に関するもの22事項、相次相続控除に関するもの11事項及びその他に関するもの14事項、贈与税については13事項である。
ア 相続税に関するもの
(ア) 土地建物等の価額に関するもの
個人が相続又は遺贈により財産を取得した場合には、その取得した財産に対し相続税を課することとなっている。そして、取得した財産の価額は、相続又は遺贈により取得したときの時価とされていて、土地建物等の価額については、路線価、固定資産税評価額等を基にして計算することとなっている。ただし、被相続人等が事業又は居住の用に供していた200m2
までの宅地等については小規模宅地等として、所定の計算により算出した金額を減額できることとなっている。
この土地建物等の価額の計算に関し、徴収不足となっている事態が22事項あった。その主な内容は、申告書等で、土地等の価額の計算において、被相続人等の事業又は居住の用に供していない土地等を小規模宅地等であるとして所定の計算により算出した金額を減額しているのに、これを見過ごしたため、土地等の価額を過小のままとしていたものである。
(イ) 相次相続控除に関するもの
個人が相続により財産を取得した場合において、被相続人がこの相続(以下「今回の相続」という。)の開始前10年以内に相続(以下「前回の相続」という。)により財産を取得していたときは、前回の相続の相続税額を基に算出された金額を、今回の相続の相続税額から相次相続控除額として差し引くこととなっている。そして、この場合の前回の相続の相続税額は、今回の相続の相続税の申告期限までに確定した税額によることとなっている。
この相次相続控除に関し、徴収不足となっている事態が11事項あった。その主な内容は、申告書等で、前回の相続の相続税額を今回の相続の相続税の申告期限の後に確定した税額としているのに、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりしたため、相続税額を過小のままとしていたものである。
(ウ) その他に関するもの
上記(ア)、(イ)のほか、有価証券の価額等に関し、徴収不足となっている事態が14事項あった。
イ 贈与税に関するもの
個人が贈与により財産を取得した場合には、その取得した財産に対し贈与税を課することとなっている。そして、同族会社である株式会社が新株を発行する際、従前の株主が新株の引受けをせず、その株主の親族が新株引受権を取得し、有利な発行価額による新株の引受けをした場合には、その親族が従前の株主から新株引受権を贈与により取得したものとみなされることとなっている。
この贈与税に関し、徴収不足となっている事態が13事項あった。その主な内容は、同族会社における従前の株主からその親族が新株引受権を贈与により取得しているのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったため、贈与税を課していなかったものである。
相続税・贈与税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例6> 相次相続控除額の計算を誤っていたもの
納税者Iは、平成5年6月相続分の申告に当たり、相続により取得した財産に係る相続税額から差し引く相次相続控除額を839,320,749円としていた。
しかし、申告書等によれば、相次相続控除額の計算の基とした前回の相続の相続税額895,753,200円は、今回の相続の相続税の申告期限の後に確定した税額であり、申告期限までに確定した税額は879,159,000円である。したがって、これにより計算すると、相次相続控除額は823,771,983円となるのに、これを見過ごしたため、相続税額15,548,700円が徴収不足になっていた。
(5) 消費税に関するもの
消費税では徴収不足となっていたものが28事項あった。この内訳は、仕入れに係る消費税額の控除に関するもの16事項及びその他に関するもの12事項である。
ア 仕入れに係る消費税額の控除に関するもの
事業者は、課税期間(個人事業者は暦年、法人は事業年度)における課税売上高に対する消費税額から仕入れに係る消費税額を差し引いた額を消費税として納付することとなっている。そして、仕入れに係る消費税額の控除に当たっては、課税期間における課税売上割合(注)
が100分の95以上のときは、商品の仕入れや建物(自己の居住の用に供するなど事業用とはならないものを除く。)の取得等に係る消費税額の全額を、また、100分の95未満のときは課税売上高に対応する部分の金額を控除することとなっている。
この仕入れに係る消費税額の控除に関し、徴収不足となっている事態が16事項あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 申告書等で、課税売上割合が100分の95未満でありながら、建物の取得等に係る消費税額の全額が控除されているのに、これを見過ごしたため、仕入れに係る消費税額を過大のままとしていた。
(イ) 申告書等で、建物のうちに自己の居住の用に供していて事業用とはならない部分がありながら、これを含めた建物全体の取得に係る消費税額が控除されているのに、これを見過ごしたため、仕入れに係る消費税額を過大のままとしていた。
(注) 課税売上割合 次の算式により計算した割合をいう。
イ その他に関するもの
上記アのほか、課税売上高の計上、簡易課税制度の適用等に関し、徴収不足となっている事態が12事項あった。
消費税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例7> 建物の譲渡収入を課税売上高としていなかったもの
納税者Jは、平成6年1月から12月までの課税期間分の申告に当たり、駐車場の賃貸料収入1,481,771円を課税売上高とし、これに対する消費税額を44,430円としていた。
しかし、同人の申告所得税の申告書等によれば、課税売上高となるものとして、上記収入のほかに住宅の用に貸し付けていた建物の譲渡に係る収入金額491,935,922円があった。したがって、課税売上高はこれを加えるなどすると493,374,534円となるのに、これを見過ごしたため、消費税額14,630,700円が徴収不足になっていた。
(国税局等別の徴収過不足額)
これらの徴収不足額及び徴収過大額を国税局等別に示すと次のとおりである。