会計名及び科目 | 一般会計(組織)文部本省(項)公立文教施設整備費 |
部局等の名称 | 文部本省 |
補助の根拠 | 予算補助 |
事業主体 | 市25、特別区3、町41、村9、市町村学校組合1、計79事業主体 |
補助事業 | 小中学校クラブハウス整備事業 |
補助事業の概要 | 公立の小中学校の校舎又は屋内運動場に、これらの学校施設を利用する地域住民のためのミーティング室、更衣室等を備えたクラブハウスを整備するもの |
効果が十分発現していない事業の実施箇所 | 109箇所 |
上記の事業に係る補助対象事業費 | 32億7617万余円 | (昭和58年度〜平成6年度) |
上記に対する国庫補助金交付額 | 10億9203万余円 |
<検査の結果> |
上記の補助事業により整備したクラブハウスが地域住民に全く利用されていなかったり、その利用が極めて低調となっていたりしていて、学校施設の利用促進のため実施した事業の効果が十分発現していないと認められるものが109箇所(補助対象事業費32億7617万余円、国庫補助金交付額10億9203万余円)見受けられた。 このような事態が生じていたのは、市町村において、事業に対する認識が十分でなく、クラブハウスの必要性の検討や利用促進のための対策が十分でなかったこと、また、文部省において、クラブハウスの必要性や利用方策についての審査が十分でなかったことなどによると認められた。 |
<当局が講じた改善の処置> |
本院の指摘に基づき、文部省では、平成8年10月に都道府県に通知を発するなどして、学校開放の実績やクラブハウスの利用計画等に関する資料を提出させて審査の充実を図るとともに、市町村に対し、事業の趣旨の周知徹底を図らせ、クラブハウスの必要性の検討や利用促進のための運営体制の強化等を行わせるなどの処置を講じた。 |
1 補助事業の概要
(事業の目的と補助金の交付)
文部省では、生涯学習活動を積極的に支援するなどの観点から、地域社会において最も身近で利用しやすい活動の場として、学校施設を学校教育に支障のない範囲で地域住民の文化活動やスポーツ活動等に開放(以下「学校開放」という。)する施策を推進している。
そして、その施策の一環として、公立の小学校及び中学校の校舎(音楽室、美術室、図書室、調理教室等の特別教室)又は屋内運動場の開放に当たり、地域住民の利便を図り利用を促進するため、校舎又は屋内運動場にクラブハウスを整備する市町村(特別区及び市町村学校組合を含む。以下同じ。)に対して、昭和57年度から(校舎に整備するクラブハウスについては62年度から)、その整備に要する費用の一部として公立学校施設整備費補助金(以下「補助金」という。)を交付している。この補助金の平成7年度までの交付額は、校舎のクラブハウス285箇所、屋内運動場のクラブハウス2,548箇所の整備に対し、計288億4813万余円となっている。
(補助事業の内容)
このクラブハウスは、校舎又は屋内運動場の一角にミーティング室、更衣・ロッカー室等を備えたもので、地域住民が学校開放の対象となっていない普通教室等の区画に立ち入らなくても出入りできるよう、専用出入口も設けられている。
そして、このクラブハウスの整備に係る補助事業(以下「クラブハウス整備事業」という。)においては、原則として校舎又は屋内運動場の新増改築と同時に行う場合を補助対象とし、補助対象面積は、校舎に整備する場合にあっては150m2
、屋内運動場に整備する場合にあっては200m2
が限度となっている。
(補助事業の採択)
クラブハウス整備事業の採択の手順は、次のようになっている。
〔1〕 市町村は、事業認定申請書に、クラブハウス部分を含む校舎又は屋内運動場の建築平面図等を添えて、これを都道府県に提出する。
〔2〕 都道府県は、上記の事業認定申請書等の内容のほか、当該学校における学校開放の有無、市町村の学校開放に関する条例又は規則の有無等を確認し、その確認調書を添えて事業認定申請書等を文部省に提出する。
〔3〕 文部省は、これらの書類により事業の適否を審査し、事業の採択を行う。
この事業の採択に当たっては、事業の緊急性及び事業効果等を考慮し、従来から学校開放を実施している学校で、クラブハウスの適切な利用が行われるものを優先することにしている。
2 検査の結果
(調査の観点)
学校開放は、生涯学習の機会を提供する施策として、その重要性を増しつつあり、クラブハウス整備事業も今後ますます事業量が増大するものと見込まれる。そして、クラブハウス整備事業は、地域住民による校舎(特別教室)や屋内運動場の利用を促進するために実施されているもので、その利用に伴ってクラブハウスも利用されることになるものである。
そこで、クラブハウス整備事業が地域住民による校舎(特別教室)や屋内運動場の利用に寄与し効果を上げているかなどの観点から、これらクラブハウスの利用状況等について調査した。
(調査の対象)
昭和57年度から平成6年度までの間に、北海道ほか22都府県(注1) の212市町村において実施された560箇所のクラブハウス整備事業を対象として調査した。
調査したところ、学校施設の利用の前提となる学校開放の日数は、3年度から7年度までの5箇年間(3年度以降にクラブハウスを整備した学校については、整備の翌年度から7年度までの間。以下同じ。)の平均で次表のとおりとなっており、開放日数が200日を超えていて、学校の休日や土曜日の午後のほかに平日の夜間も開放されている箇所がほとんどであった。
平均年間開放日数 | 0〜50日 | 51〜100日 | 101〜200日 | 201〜300日 | 301日以上 |
箇所数 | 2 | 5 | 16 | 95 | 442 |
(注) 学校開放の日数は、市町村の学校開放に関する条例又は規則に定める年間開放日数から、学校行事等のため開放することが困難な日数を差し引いた日数である。
これに対して、地域住民によるクラブハウスの利用状況は、5箇年間の平均で次表のとおりとなっており、利用日数が200日を超えている箇所も相当数あったが、一方、利用日数の少ない箇所も相当数に上っており、その中には50日以下のものが144箇所あった。
平均年間利用日数 | 0〜50日 | 51〜100日 | 101〜200日 | 201〜300日 | 301日以上 |
箇所数 | 144 | 94 |
174 | 119 | 29 |
(注) 利用日数は、市町村の学校開放に関する条例若しくは規則に基づく手続又はそれに準じた手続を経て、地域住民が利用した日数である。
そして、特に、上記の144箇所のうちにはいずれの年も50日以下と利用が極めて低調となっている箇所が、北海道ほか18都府県(注2)
の79市町村において109箇所(クラブハウス整備事業の補助対象事業費32億7617万余円、これに対する補助金交付額10億9203万余円)あり、これらについてはクラブハウス整備事業が地域住民による学校施設の利用に十分寄与しておらず、事業の効果が十分発現していないと認められた。
これを主な態様別に示すと、次のとおりである。
(ア) 近隣に同種又は類似の施設があったり、地域のクラブ活動が活発でなかったりして、学校施設の利用に対する地域住民のニーズが乏しいため、全く利用されていなかったり、利用が低調となっていたりしているもの
58箇所 | クラブハウス整備事業の補助対象事業費(補助金交付額) |
16億4654万余円(5億4883万余円) |
県名 | 事業主体 | 学校 | 補助対象事業費 (補助金交付額) |
年間開放日数 | 年間利用日数 |
秋田県 |
|
|
(校舎のクラブハウス) 25,350千円 (8,450千円) |
342日 |
10日〜13日 |
(屋内運動場のクラブハウス) 13,448千円 (4,482千円) |
342日 |
7日〜12日 |
これらの事業は、A町が、平成3年度に、B小学校の校舎及び屋内運動場を増改築するのに併せて、校舎に244m2
(補助対象面積150m2
)、屋内運動場に84m2
(補助対象面積同)のクラブハウスをそれぞれ整備したものである。
しかし、同町では、同校の隣接地に、勤労者体育センター(昭和55年設置)、公民館(昭和56年設置)など、学校施設と同種又は類似の施設を設置していた。その結果、設置当初の4年度から7年度まで、年間300日以上上記の学校施設を開放しているのに、地域住民による利用は10日前後と極めて少ない状況となっていた。
(イ) 学校開放を行うための運営体制が整備されていないため、学校施設が開放されないまま全く利用されていなかったり、利用が低調となっていたりしているもの
8箇所 | クラブハウス整備事業の補助対象事業費(補助金交付額) |
2億7329万余円(9109万余円) |
県名 | 事業主体 | 学校 | 補助対象事業費 |
年間開放日数 | 年間利用日数 |
石川県 | C市 | D中学校 | 34,180千円 (11,393千円) |
0日 | 0日 |
この事業は、C市が、昭和62、63両年度に、D中学校の屋内運動場を新築するのに併せて、クラブハウス232m2
(補助対象面積200m2
)を整備したものである。
そして、同市では、事業の認定申請に当たり、市の学校体育施設の開放に関する規則に基づき、同校を開放校として指定し上記の学校施設を開放するとしていたが、事業実施後、同市が学校開放の前提としている管理指導員の確保ができなかったことなどのため、開放校として指定していなかった。その結果、上記のクラブハウスは、設置当初の平成元年度から7年度まで地域住民に全く利用されていなかった。
(ウ) 学校開放についての広報活動が不足しているなどのため、利用が低調となっているもの
43箇所 | クラブハウス整備事業の補助対象事業費(補助金交付額) |
13億5633万余円(4億5210万余円) |
県名 | 事業主体 | 学校 | 補助対象事業費 (補助金交付額) |
年間開放日数 | 年間利用日数 |
福岡県 | E町 | F小学校 | 18,975千円 (6,325千円) |
309日 | 10日〜20日 |
この事業は、E町が、平成3年度に、F小学校の校舎を増築するのに併せて、クラブハウス150m2
(補助対象面積同)を整備したものである。
しかし、同町では、上記の学校施設の開放について、広報紙等を通じるなどして地域住民に十分周知させていなかったことから、設置当初の4年度から7年度まで、年間300日以上開放しているのに、地域住民の利用は20日以下と極めて少ない状況となっていた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
(ア) 市町村において
〔1〕 クラブハウス整備事業の認定申請に当たり、事業の趣旨に対する認識が十分でなく、学校施設の利用に対する地域住民のニーズや近隣の同種施設等の状況を的確に把握していないなど、クラブハウスの必要性や利用方策についての検討が十分でなかったこと
〔2〕 事業実施後、クラブハウスを整備した学校施設の開放に当たり、運営体制の整備、地域住民に対する広報など、その利用を促進するための方策を十分講じていなかったこと
(イ) 文部省において
〔1〕 事業の採択に当たり、学校開放の実績、クラブハウスの利用計画等に関する資料を提出させることにしていないなど、クラブハウスの必要性や利用方策についての審査が十分でなかったこと
〔2〕 事業実施後において、クラブハウスの利用状況を把握しておらず、学校開放の運営方法等について、市町村に対し十分な指導を行っていなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、文部省では、8年10月に都道府県に対して通知を発するなどして、クラブハウス整備事業の効果の発現が図られるよう次のような処置を講じた。
(ア) 事業の採択に当たり、市町村から学校開放の実績、クラブハウスの利用計画等に関する資料を提出させて、審査の充実を図るとともに、事業の実施後において、クラブハウスの利用状況を定期的に調査把握し、必要に応じ利用促進について指導することとした。
(イ) 市町村に対して、事業の趣旨を周知徹底させるとともに、事業の認定申請に当たり、地域住民のニーズを的確に把握するなどしてクラブハウスの必要性や利用方策について十分検討させ、また、利用が低調なクラブハウスについて運営体制の強化、広報の充実などにより利用の促進を図らせることとした。
(注1) 北海道ほか22都府県 東京都、北海道、京都、大阪両府、宮城、秋田、山形、福島、茨城、埼玉、千葉、石川、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀、奈良、香川、福岡、熊本、大分各県
(注2) 北海道ほか18都府県 東京都、北海道、京都、大阪両府、宮城、秋田、山形、福島、茨城、埼玉、千葉、石川、長野、岐阜、愛知、三重、滋賀、奈良、福岡各県