会計名及び科目 | 一般会計(組織)厚生本省 | (項)老人福祉費 |
(項)国民健康保険助成費 | ||
(項)生活保護費 | ||
(項)精神保健費 | ||
厚生保険特別会計(健康勘定) | (項)保険給付費 | |
(項)老人保健拠出金 | ||
(項)退職者給付拠出金 | ||
船員保険特別会計 | (項)保険給付費 | |
(項)老人保健拠出金 | ||
(項)退職者給付拠出金 |
部局等の名称 | 社会保険庁、北海道ほか23都府県 |
国の負担の根拠 | 健康保険法(大正11年法律第70号)、船員保険法(昭和14年法律第73号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)、老人保健法(昭和57年法律第80号)、生活保護法(昭和25年法律第144号)、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号) |
医療給付の種類 | 健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、老人保健法、生活保護法及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に基づく医療 |
実施主体 | 国、道府県15、市414、特別区23、町570、村95、国民健康保険組合65、計1,183実施主体 |
医療機関 | 120医療機関 |
不当と認める国の負担額 | 372,811,364円 |
1 医療給付の概要
(医療給付の種類)
厚生省の医療保障制度には、老人保健制度、医療保険制度及び公費負担医療制度があり、これらの制度により次の医療給付が行われている。
(ア) 老人保健制度の一環として、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が老人保健法に基づき、健康保険法、船員保険法及び国民健康保険法(以下「医療保険各法」という。)による被保険者(被扶養者を含む。以下同じ。)のうち、当該市町村の区域内に居住する老人(70歳以上の者又は65歳以上70歳未満の者で一定の障害の状態にある者をいう。以下同じ。)に対して行う医療
(イ) 医療保険制度の一環として、医療保険各法に規定する保険者が、医療保険各法に基づき被保険者((ア)の老人を除く。)に対して行う医療
(ウ) 公費負担医療制度の一環として、都道府県、市又は福祉事務所を設置する町村が、生活保護法に基づき要保護者に対して行う医療及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」という。)に基づき精神障害者に対して行う医療
(診療報酬)
これらの医療給付においては、被保険者(生活保護法に基づく要保護者及び精神保健福祉法に基づく精神障害者を含む。以下同じ。)が医療機関で診察、治療等の診療を受け、市町村、保険者又は都道府県(以下「保険者等」という。)がその費用を医療機関に診療報酬として支払う。
診療報酬の支払の手続は、次のとおりとなっている(下図参照)
。
(ア) 診療を担当した医療機関は、診療報酬として医療に要する費用を所定の診療点数に単価(10円)を乗じて算定する。
(イ) 医療機関は、上記診療報酬のうち、患者負担分を患者に請求し、残りの診療報酬(以下「医療費」という。)については、老人保健に係るものは市町村に、医療保険各法に係るものは各保険者に、また、公費負担医療制度に係るものは都道府県、市又は福祉事務所を設置する町村に請求する。
このうち、保険者等に対する医療費の請求は、次のように行われている。
〔1〕 医療機関は、診療報酬請求書(以下「請求書」という。)に診療報酬の明細を明らかにした診療報酬明細書(以下「レセプト」という。)を添付して、国民健康保険団体連合会又は社会保険診療報酬支払基金(以下「審査支払機関」と総称する。)に毎月一回送付する。
〔2〕 審査支払機関は、請求書及びレセプトに基づき請求内容を審査点検した後、医療機関ごと、保険者等ごとの請求額を算定し、その後、請求額を記載した書類と請求書及びレセプトを各保険者等に送付する。
(ウ) 請求を受けた保険者等は、それぞれの立場から医療費についての審査点検を行って金額等を確認のうえ、審査支払機関を通じて医療機関に医療費を支払う。
(国の負担)
保険者等が支払う医療費の負担は次のようになっている。
(ア) 老人保健法に係る医療費については、老人の居住する市町村が審査支払機関を通じて支払うものであるが、この費用は国、地方公共団体及び保険者が以下のように負担している(下図参照) 。
〔1〕 老人保健法により、老人保健施設療養費等を除く老人医療費については、国は10分の2を、都道府県・市町村はそれぞれ10分の0.5ずつを負担することになっており、残り10分の7については各保険者が拠出する老人医療費拠出金が財源となっている。
また、老人保健施設療養費等については、国は12分の4を、都道府県・市町村はそれぞれ12分の1ずつを負担することになっており、残りの12分の6については老人医療費拠出金が財源となっている。
〔2〕 国民健康保険法により国は市町村等が保険者として拠出する老人医療費拠出金の一部を負担している。(平成7年度における国の負担額は老人医療費の約12%)
〔3〕 健康保険法等により国は政府管掌健康保険等の保険者として老人医療費拠出金を納付している。(7年度における国の負担額は老人医療費の約22%)
(注)( )書きは、老人保険施設療養費等に係る費用の負担割合である。
(イ) 医療保険各法に係る医療費については、国は、患者が、〔1〕 政府管掌健康保険等の被保険者である場合の医療費はその全額を、〔2〕 市町村が行う国民健康保険の被保険者である場合の医療費は当該市町村が支払った額の50%を、〔3〕 国民健康保険組合が行う国民健康保険の被保険者である場合の医療費は当該国民健康保険組合が支払った額の47%を、それぞれ負担している。
(ウ) 生活保護法及び精神保健福祉法に係る医療費については、国は都道府県、市又は福祉事務所を設置する町村が支払った医療費の4分の3又は2分の1を負担している。
2 検査結果の概要
前記の1,183実施主体(120医療機関)が行った診療報酬の支払について、医療機関から不適正な診療報酬の請求があったのに、これに対する審査支払機関等の審査点検が十分でなかったことなどのため、医療費644,980,245円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額372,811,364円が不当と認められる。
これを診療報酬の別に整理して示すと、次のとおりである。(複数の診療報酬について不適正な請求があった医療機関については、最も多い診療報酬で整理した。)
229実施主体 | (25医療機関) | 不当と認める国の負担額 | 91,720,839円 |
140実施主体 | (26医療機関) | 不当と認める国の負担額 | 59,927,593円 |
449実施主体 | (13医療機関) | 不当と認める国の負担額 | 55,588,241円 |
257実施主体 | (14医療機関) | 不当と認める国の負担額 | 53,017,548円 |
498実施主体 | (16医療機関) | 不当と認める国の負担額 | 29,424,061円 |
62実施主体 | (3医療機関) | 不当と認める国の負担額 | 27,095,277円 |
93実施主体 | (7医療機関) | 不当と認める国の負担額 | 22,720,595円 |
55実施主体 | (3医療機関) | 不当と認める国の負担額 | 11,946,401円 |
221実施主体 | (13医療機関) | 不当と認める国の負担額 | 21,370,809円 |
3 検査結果の詳細
上記の診療報酬の支払が不当と認められる事態について、診療報酬の別に、その算定方法及び医療機関における実際の算定・請求等の詳細を示すと次のとおりである。
処置料には、一般処置料、皮膚科処置料等があり、それぞれの処置ごとに所定の点数が定められている。そして、外来の患者に対して、緊急のため休日又は時間外に処置を行った場合は、所定の点数に緊急休日加算をすることとされている。
一般処置料の人工腎臓に係る処置については、外来の患者に対して人工腎臓実施中に食事を提供した場合は、所定の点数に食事加算をし、この場合において医療用食品(注)
を提供したときは更に医療用食品加算をすることとされている。また、著しく人工腎臓の実施が困難な障害者等に対して人工腎臓を実施した場合は、所定の点数に障害者等の加算をすることとされている。
そして、人工腎臓の処置に使用される特定保険医療材料及び薬剤の購入価格は、厚生省告示で定められており、このうち特定保険医療材料の購入価格については6年4月に低い価格に変更されている。また、一部の薬剤の費用については、人工腎臓の所定点数に含まれていることから別途に算定できないこととされている。
また、老人病棟等入院患者に対して行う皮膚科軟膏等の処置については、入院期間が1年を超える場合、1年以内の入院患者に対して行う皮膚科軟膏等の処置よりも低い点数の処置料が定められている。
(注) 医療用食品 主として入院患者の食事に用いられることを目的とする食品であって、厚生大臣が指定する検査機関において調理加工後の栄養成分が分析され、かつ、当該栄養成分分析値が保たれている食品
(検査の結果)
検査の結果、北海道札幌市ほか21市町に所在する25医療機関において、処置料等の請求が不適正と認められるものが15,471件あった。その態様は次のとおりである。
(ア) 人工腎臓に係る処置において、休日に行っている定期的な処置について緊急休日加算等を行ったり、人工腎臓実施中に食事を提供した際に、医療用食品を使用した事実がないのに、所定の点数に医療用食品加算を行ったり、障害者でない者に障害者等の加算を行ったりしていた。
(イ) 人工腎臓の処置に使用される特定保険医療材料について、変更前の高い価格の点数で算定していた。
(ウ) 人工腎臓の処置に使用される薬剤について、誤った算定を行ったり、処置料に含まれる薬剤料を別途算定したりしていた。
(エ) 入院期間が1年を超える老人病棟等の入院患者に対して行った皮膚科軟膏等の処置について、1年以内の患者に対して行う高い点数により算定していた。
このため、上記の15,471件の請求に対し北海道札幌市ほか228市区町村等が支払った医療費について149,619,432円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額91,720,839円は負担の要がなかったものである。
これを医療機関の所在する都道府県別に示すと次のとおりである。
都道府県名 |
実施主体 (医療機関数) |
不当と認める医療費の支払件数 | 不当と認める医療費 | 不当と認める国の負担額 | 摘要 |
北海道 |
札幌市ほか4町等(2) |
件 620 |
千円 7,485 |
千円 5,054 |
処置料の支払不適切 |
青森県 | 弘前市ほか64市町村等(4) | 3,644 | 36,955 | 21,411 | 処置料及び看護料の支払不適切 |
岩手県 | 大船渡市ほか4市町等(1) | 30 | 5,998 | 2,790 | 処置料の支払不適切 |
秋田県 | 仙北郡西木村ほか6町等(1) | 139 | 1,268 | 714 | 同 |
東京都 | 板橋区ほか6区等(1) | 317 | 4,890 | 2,142 | 同 |
神奈川県 | 横浜市ほか10市町村等(3) | 726 | 6,792 | 3,459 | 同 |
新潟県 | 燕市ほか8市町等(1) | 279 | 3,884 | 2,451 | 同 |
大阪府 | 大阪市ほか16市町等(3) | 2,369 | 18,681 | 11,684 | 同 |
兵庫県 | 姫路市ほか39市町村等(1) | 1,465 | 1,961 | 1,121 | 処置料及び検査料の支払不適切 |
広島県 | 呉市ほか15市町村(2) | 265 | 4,739 | 3,028 | 処置料及び注射料の支払不適切 |
福岡県 | 粕屋郡古賀町ほか28市町等(3) | 1,676 | 4,175 | 2,625 | 処置料の支払不適切 |
鹿児島県 | 鹿児島市ほか15市町村等(1) | 1,549 | 23,898 | 15,621 | 同 |
沖縄県 | 浦添市ほか19市町村等(2) | 2,392 | 28,889 | 19,615 | 同 |
小計 |
15,471 | 149,619 | 91,720 |
(初診料・再診料の算定方法)
初診料は、患者の傷病について医学的に初診といわれる医師の診療行為があった場合に、再診料はその後の診療行為の都度それぞれ算定できることとされている。
ただし、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム(定員111名以上の場合)及び身体障害者療護施設(以下、これらを併せて「老人ホーム等」という。)に配置されている医師(以下「配置医師」という。)が老人ホーム等に赴いてその入所者に行っている診療については、その診療が別途国の補助事業として実施されている老人福祉施設保護事業等の一環として行われているものであることから、初診料、再診料等は算定できないこととされている。
また、歯科診療においては、著しく診療が困難な障害者に対して初診又は再診を行った場合は、それぞれの所定点数に障害者の加算をすることとされている。
検査の結果、岩手県稗貫郡石鳥谷町ほか24市区町に所在する26医療機関において、初診料、再診料等の請求が不適正と認められるものが25,117件あった。その態様は次のとおりである。
(ア) 配置医師が老人ホーム等に赴いて入所者に行った診療について、初診料、再診料等を算定していた。また、配置医師でない医師が、老人ホーム等の入所者からの往診の求めによってではなく、定期的に老人ホーム等に赴いて入所者の診療に当たっている場合、その医師は実質的には配置医師と認められるのに、初診料、再診料等を算定していた。
(イ) 歯科診療において、障害者でない者に対して行った初診又は再診について障害者の加算を行っていた。
このため、上記の25,117件の請求に対し岩手県稗貫郡石鳥谷町ほか139市区町村等が支払った医療費について111,985,767円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額59,927,593円は負担の要がなかったものである。
これを医療機関の所在する都府県別に示すと次のとおりである。
都道府県名 |
実施主体 (医療機関数) |
不当と認める医療費の支払件数 | 不当と認める医療費 | 不当と認める国の負担額 | 摘要 |
岩手県 |
稗貫郡石鳥谷町ほか2町等(1) |
件 387 |
千円 1,159 |
千円 674 |
初診料・再診料の支払不適切 |
福島県 | 須賀川市ほか4市町(3) | 3,032 | 16,382 | 8,830 | 初診料・再診料等の支払不適切 |
埼玉県 | 大里郡寄居町ほか5市村(3) | 1,577 | 10,392 | 4,737 | 同 |
東京都 | 目黒区ほか10市区(2) | 4,123 | 14,483 | 7,590 | 同 |
神奈川県 | 高座郡寒川町(1) | 488 | 2,820 | 1,530 | 同 |
大阪府 | 大阪市ほか28市町村等(3) | 3,347 | 17,185 | 9,454 | 初診料・再診料、検査料等の支払不適切 |
兵庫県 | 赤穂市ほか4市(2) | 1,667 | 5,000 | 2,681 | 初診料・再診料等の支払不適切 |
広島県 | 広島市ほか25市区町村等(2) | 2,715 | 13,352 | 6,505 | 初診料・再診料及び処置料の支払不適切 |
福岡県 | 飯塚市ほか32市町等(5) | 4,415 | 14,324 | 7,935 | 初診料・再診料等の支払不適切 |
熊本県 | 八代市ほか19市町村等(2) | 1,662 | 7,550 | 3,867 | 同 |
大分県 | 大分市ほか8市町等(2) | 1,704 | 9,335 | 6,118 | 初診料・再診料の支払不適切 |
小計 | 25,117 | 111,985 | 59,927 |
(看護料の算定方法)
看護料は、入院料の一部であり、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められている。この看護料には、都道府県知事への届出を行い、厚生大臣の定める基準に該当する看護を行った場合に算定できる新看護料、基準看護料等と、上記以外の看護を行った場合に算定する看護料(以下「その他の看護料」という。)とがある。
このうち、新看護料については、都道府県知事へ看護補助者の数に関する届出を行い、看護を行った場合は、所定の点数に、新看護料の区分ごとに上限の定められた点数を加算(以下「看護補助加算」という。)することとされている。また、その他の看護料については、都道府県知事へ看護婦等の数に関する届出を行い、看護を行った場合は、高い点数のその他の看護料を算定することとされている。
そして、都道府県知事への届出後に当該看護の所定の要件を満たさなくなった場合には、変更の届出を行うこととされている。
また、各看護料については、都道府県知事へ看護婦等の夜間の勤務体制等に関する届出を行い、夜間の看護を行った場合は、所定の点数に、上記の勤務体制等に応じた点数を加算(以下「夜間看護等加算」という。)することとされている。
このほか、一般病棟に入院している老人の患者については、入院期間が6月を超える場合、6月以内の点数よりも低い点数の看護料が定められている。
(検査の結果)
検査の結果、北海道旭川市ほか11市区に所在する13医療機関において、看護料等の請求が不適正と認められるものが43,814件あった。その態様は次のとおりである。
(ア) 新看護料について、上限を超えた点数により看護補助加算を行っていた。
(イ) 看護婦等の数が、高い点数のその他の看護の要件を満たさず、低い点数のその他の看護に該当することになっているのに、変更の届出を行わないまま高い点数のその他の看護料を算定していた。
(ウ) 都道府県知事への届出を行っていないのに新看護料を算定したり、届け出た区分よりも高い区分の点数により夜間看護等加算を行ったりしていた。
(エ) 入院期間が6月を超える老人の患者について、6月以内の高い点数で看護料を算定していた。
このため、上記の43,814件の請求に対し北海道旭川市ほか448市区町村等が支払った医療費について95,448,017円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額55,588,241円は負担の要がなかったものである。
これを医療機関の所在する都道府県別に示すと次のとおりである。
都道府県名 |
実施主体 (医療機関数) |
不当と認める医療費の支払件数 | 不当と認める医療費 | 不当と認める国の負担額 | 摘要 |
北海道 |
旭川市ほか54市町等(1) |
件 4,175 |
千円 5,692 |
千円 3,614 |
看護料の支払不適切 |
秋田県 | 能代市ほか40市区町村等(1) | 3,746 | 4,053 | 2,646 | 同 |
埼玉県 | 熊谷市ほか62市区町村等(1) | 2,080 | 2,148 | 1,020 | 同 |
東京都 | 中野区ほか95市区町村等(1) | 4,811 | 6,885 | 3,680 | 同 |
神奈川県 | 小田原市ほか50市区町村等(3) | 3,380 | 14,002 | 7,258 | 看護料、入院環境料等の支払不適切 |
愛知県 | 豊橋市ほか120市区町村等(3) | 19,067 | 41,406 | 24,227 | 看護料の支払不適切 |
大阪府 | 茨木市ほか12市(1) | 557 | 3,161 | 1,677 | 同 |
兵庫県 | 神戸市ほか33市区町等(1) | 2,570 | 13,395 | 8,175 | 同 |
広島県 | 福山市ほか50市町村等(1) | 3,428 | 4,702 | 3,286 | 看護料及び注射料の支払不適切 |
小計 | 43,814 | 95,448 | 55,588 |
(入院時医学管理料等の算定方法)
入院時医学管理料及び看護料は、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められている。そして、医療機関において、医師及び看護婦等の数がいずれも標準となる数(以下「標準人員」という。)にそれぞれ100分の80を乗じて得た数以下である場合(以下「医師看護婦不足」という。)の翌月分の入院時医学管理料及び看護料については、所定点数に100分の90を乗じて得た点数を用いて算定することとされている。また、医師の数が標準人員に100分の50を乗じて得た数以下である場合(以下「著しい医師不足」という。)の翌月分の入院時医学管理料についても、所定点数に100分の90を乗じて得た点数を用いて算定することとされている。
そして、一般病棟に入院している患者の入院時医学管理料については、常勤の医師の数が所定の要件を満たす場合、所定の点数を加算して算定することとされている。
また、精神療養病棟入院料等を算定している場合には、入院時医学管理料は別途に算定できないこととされている。
(検査の結果)
検査の結果、秋田県秋田市ほか12市町に所在する14医療機関において、入院時医学管理料等の請求が不適正と認められるものが8,199件あった。その態様は次のとおりである。
(ア) 医師看護婦不足又は著しい医師不足であるのに入院時医学管理料等について所定の減額をしないで算定していた。
(イ) 常勤の医師の数が加算の要件を満たさないのに、入院時医学管理料に加算を行っていた。
(ウ) 精神療養病棟入院料等を算定しているほかに、入院時医学管理料を別途算定していた。
このため、上記8,199件の請求に対し秋田県秋田市ほか256市区町村等が支払った医療費について86,963,751円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額53,017,548円は負担の要がなかったものである。
これを医療機関の所在する府県別に示すと次のとおりである。
府県名 | 実施主体 (医療機関数) |
不当と認める医療費の支払件数 | 不当と認める医療費 | 不当と認める国の負担額 | 摘要 |
秋田県 |
秋田市ほか6市町等(1) |
件 465 |
千円 1,912 |
千円 1,031 |
入院時医学管理料の支払不適切 |
埼玉県 | 浦和市ほか77市区町村等(4) | 2,503 | 28,161 | 15,138 | 入院時医学管理料、看護料等の支払不適切 |
千葉県 | 浦安市ほか14市区町等(1) | 120 | 2,084 | 972 | 同 |
神奈川県 | 横浜市ほか16市町等(1) | 234 | 2,579 | 1,262 | 入院時医学管理料の支払不適切 |
大阪府 | 大阪市ほか10市等(1) | 155 | 4,089 | 2,450 | 入院時医学管理料、看護料等の支払不適切 |
鳥取県 | 岩美郡岩美町ほか23市町村等(1) | 1,074 | 31,675 | 21,094 | 同 |
福岡県 | 筑紫野市ほか50市町等(2) | 2,518 | 12,264 | 8,356 | 同 |
鹿児島県 | 鹿屋市ほか76市町村等(3) | 1,130 | 4,196 | 2,711 | 入院時医学管理料及び検査料の支払不適切 |
小計 | 8,199 | 86,963 | 53,017 |
(検査料の算定方法)
検査料には、血液化学検査等の検体検査料、知能検査等の生体検査料等があり、それぞれの種類ごとに所定の点数が定められている。そして、検査は、治療方針の決定に必要な限度で行うこととし、診療上必要があると認められる範囲内において選択して行うこと、同一の検査はみだりに反復して行ってはならないこととされている。
そして、検体検査料のうち一定の血液化学検査料については、それらの検体について10項目以上の検査を一括して行った場合は、項目の種類によらず、上限として定められた点数で算定することなどとされている。
また、特定集中治療室管理料を算定する場合には、基本的検体検査判断料(I)等の検査料は別途に算定できないこととされている。
(検査の結果)
検査の結果、北海道旭川市ほか13市区に所在する16医療機関において、検査料等の請求が不適正と認められるものが24,277件あった。その態様は次のとおりである。
(ア) 多くの患者について検体検査又は生体検査を毎月画一的に繰り返し実施し、これに係る検査料を算定していた。
(イ) 多くの患者について、毎月、10項目以上の血液化学検査を実施するに当たり、検査を2回に分けて実施することなどにより、上限として定められた点数によらずにその都度血液化学検査料を算定していた。
(ウ) 特定集中治療室管理料を算定しているほかに、基本的検体検査判断料(I)等の検査料を別途算定していた。
このため、上記24,277件の請求に対し北海道旭川市ほか497市区町村等が支払った医療費について51,622,515円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額29,424,061円は負担の要がなかったものである。
これを医療機関の所在する都道県別に示すと次のとおりである。
都道県名 | 実施主体 (医療機関数) |
不当と認める医療費の支払件数 | 不当と認める医療費 | 不当と認める国の負担額 | 摘要 |
北海道 |
旭川市ほか66市町村等(1) |
件 388 |
千円 1,361 |
千円 874 |
検査料の支払不適切 |
岩手県 | 大船渡市ほか5市町(1) | 129 | 1,096 | 666 | 同 |
福島県 | いわき市ほか73市町村等(2) | 1,833 | 5,507 | 3,397 | 同 |
千葉県 | 市原市ほか30市区町等(1) | 1,547 | 1,940 | 827 | 同 |
東京都 | 新宿区ほか87市区町村等(1) | 562 | 1,132 | 596 | 同 |
神奈川県 | 座間市ほか40市区町等(1) | 1,120 | 2,552 | 1,283 | 同 |
富山県 | 富山市ほか18市町等(1) | 2,968 | 1,925 | 1,245 | 同 |
愛知県 | 岡崎市ほか71市区町村等(4) | 13,401 | 27,886 | 15,874 | 同 |
福岡県 | 宗像市ほか16市町等(1) | 669 | 1,417 | 759 | 同 |
熊本県 | 熊本市ほか62市町村等(2) | 968 | 4,333 | 2,293 | 検査料及び画像診断料の支払不適切 |
鹿児島県 | 鹿児島市ほか94市町村等(1) | 692 | 2,468 | 1,607 | 検査料の支払不適切 |
小計 | 24,277 | 51,622 | 29,424 |
(特定入院料の算定方法)
特定入院料には、老人病棟入院医療管理料、精神療養病棟入院料等があり、厚生大臣が定める施設基準に該当しているものとして都道府県知事に届け出た医療機関において、その基準に掲げる区分に従い所定点数を算定することとされている。
このうち、精神療養病棟入院料は、医師、看護婦等の数が標準人員を満たしていない場合には、算定できないこととされている。
(検査の結果)
検査の結果、東京都青梅市ほか2市に所在する3医療機関において、特定入院料の請求が不適正と認められるものが1,685件あった。その態様は次のとおりである。
(ア) 老人病棟入院医療管理料を、都道府県知事に届け出た区分よりも高い区分の点数により算定していた。
(イ) 医師、看護婦等の数が標準人員を満たしていないのに精神療養病棟入院料を算定していた。
このため、上記1,685件の請求に対し東京都青梅市ほか61市区町村等が支払った医療費について49,121,413円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額27,095,277円は負担の要がなかったものである。
これを医療機関の所在する都県別に示すと次のとおりである。
都県名 |
実施主体 (医療機関数) |
不当と認める医療費の支払件数 | 不当と認める医療費 | 不当と認める国の負担額 | 摘要 |
東京都 |
青梅市ほか37市区町村等(1) |
件 630 |
千円 29,136 |
千円 16,150 |
特定入院料の支払不適切 |
福岡県 | 福岡市ほか11市町等(1) | 792 | 11,118 | 6,394 | 同 |
熊本県 | 菊池市ほか13市町村等(1) | 263 | 8,865 | 4,549 | 同 |
小計 |
1,685 | 49,121 | 27,095 |
(注射料の算定方法)
注射料は、静脈内注射、点滴注射等の注射の種類に応じた技術料の点数に、使用した薬剤に係る薬剤料の点数を合算して算定することとされている。
そして、点滴注射に係る薬剤料については、老人病棟の入院患者であって経口摂取が可能な者に対する1日分の注射量が500ccを超える場合は、注射量に応じて減額して算定することとされている。
また、老人病棟入院医療管理料等を算定する場合には、点滴注射に係る注射料等は別途に算定できないこととされている。
(検査の結果)
検査の結果、福島県福島市ほか5市町に所在する7医療機関において、注射料等の請求が不適正と認められるものが4,076件あった。その態様は次のとおりである。
(ア) 入院患者等に対して必要性の認められないビタミン剤等を繰り返し投与し、薬剤料を算定していた。
(イ) 老人病棟の経口摂取可能な入院患者に対して行った点滴注射の1日分の注射量が、500ccを超えているのに、薬剤料を減額しないまま算定していた。
(ウ) 老人病棟入院医療管理料等を算定しているほかに、点滴注射に係る注射料等を別途算定していた。
このため、上記の4,076件の請求に対し福島県福島市ほか92市区町村等が支払った医療費について39,391,070円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額22,720,595円は負担の要がなかったものである。
これを医療機関の所在する府県別に示すと次のとおりである。
府県名 | 実施主体 (医療機関数) |
不当と認める医療費の支払件数 | 不当と認める医療費 | 不当と認める国の負担額 | 摘要 |
福島県 |
福島市ほか27市区町村等(1) |
件 1,852 |
千円 24,861 |
千円 14,270 |
注射料、検査料等の支払不適切 |
滋賀県 | 大津市ほか14市町村等(2) | 177 | 4,874 | 2,476 | 注射料の支払不適切 |
大阪府 | 大阪市ほか46市町等(2) | 1,203 | 4,581 | 2,598 | 注射料及び検査料の支払不適切 |
広島県 | 福山市(1) | 62 | 2,477 | 1,586 | 注射料及び処置料の支払不適切 |
熊本県 | 熊本市ほか5町等(1) | 782 | 2,595 | 1,788 | 注射料の支払不適切 |
小計 | 4,076 | 39,391 | 22,720 |
(入院環境料の算定方法)
入院環境料は、入院中の療養環境を総合的に評価するもので、患者が入院した場合に、1日につき所定の点数が定められている。
そして、厚生大臣が定める施設基準に該当しているものとして都道府県知事に届け出た医療機関において、老人の患者を入院させた場合、所定の点数に老人病棟療養環境加算を、また、重症の患者を入院させた場合は、所定の点数に重症者療養環境特別加算をそれぞれ行うこととされている。そして、都道府県知事への届出後に届出の内容と異なった事情が生じた場合には、遅滞なく変更の届出を行うこととされている。
(検査の結果)
検査の結果、青森県西津軽郡木造町ほか2市に所在する3医療機関において、入院環境料等の請求が不適正と認められるものが4,900件あった。その態様は次のとおりである。
(ア) 都道府県知事への届出を行っていないのに、老人病棟療養環境加算を行っていた。
(イ) 施設基準に該当しない状況になっていたにもかかわらず、変更の届出を行わないまま重症者療養環境特別加算を行っていた。
このため、上記の4,900件の請求に対し青森県西津軽郡木造町ほか54市区町村等が支払った医療費について21,768,650円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額11,946,401円は負担の要がなかったものである。
これを医療機関の所在する県別に示すと次のとおりである。
県名 | 実施主体 (医療機関数) |
不当と認める医療費の支払件数 | 不当と認める医療費 | 不当と認める国の負担額 | 摘要 |
青森県 |
西津軽郡木造町ほか20市町村等(1) |
件 3,642 |
千円 10,299 |
千円 6,082 |
入院環境料の支払不適切 |
埼玉県 | 鳩ヶ谷市ほか28市区町等(1) | 958 | 6,075 | 3,127 | 入院環境料及び処置料の支払不適切 |
福岡県 | 北九州市ほか5市町(1) | 300 | 5,393 | 2,736 | 入院環境料の支払不適切 |
小計 | 4,900 | 21,768 | 11,946 |
(リハビリテーション料、入院時食事療養費、画像診断料、在宅医療料、精神科専門療法料、投薬料の算定方法)
(ア) リハビリテーション料のうち理学療法料には、基本的動作能力の回復訓練の内容に応じて複雑な訓練に係るものと簡単な訓練に係るものがあり、複雑な訓練を実施した場合には高い点数を算定することとされている。
(イ) 入院時食事療養費のうち入院時食事療養(I)は、食堂における食事療養を行った場合、食堂加算をすることとされているが、精神療養病棟入院料又は老人病棟療養環境加算を算定している場合には、食堂加算は別途に算定できないこととされている。
(ウ) 画像診断料のうちコンピュータ断層撮影(以下「断層撮影」という。)は、最初の断層撮影と異なる種類の断層撮影を同一部位について同一月に行った場合、後者の費用について所定点数の100分の50に相当する点数により算定することとされている。また、老人病棟において、入院期間が1年を超える老人の患者に対して断層撮影を行った場合の画像診断料は、特に必要があると認められる場合を除いては、種類及び回数にかかわらず3月に1回限り算定することとされている。
(エ) 在宅医療料のうち歯科訪問診療料は、老人保健施設に赴いて複数の患者に歯科診療を行った場合には、3人を限度として算定することとされている。
(オ) 精神科専門療法料のうち通院精神療法については、精神障害のため社会生活を営むことが著しく困難な通院中の患者に対して、一定の治療計画の下に社会適応能力の向上等を図るための指示等を行った場合などに算定することとされている。
(カ) 投薬料は、老人保健施設の入所者に対して実施した投薬の場合、腫瘍用薬を除いて、算定できないこととされている。
(検査の結果)
検査の結果、山形県鶴岡市ほか12市町に所在する13医療機関において、リハビリテーション料等の請求が不適正と認められるものが10,430件あった。その態様は次のとおりである。
(ア) 複雑な訓練に係る理学療法でないものについて、複雑な訓練を行った場合に用いることになっている高い点数で算定していた。
(イ) 老人病棟療養環境加算等を算定しているほかに、食堂加算を別途算定していた。
(ウ) 同一部位につき、同一月に異なる断層撮影を行っているのに、所定の減額をしないまま画像診断料を算定したり、老人病棟において、入院期間が1年を超える老人の患者の画像診断料を、3月に1回の制限を超えて毎月算定したりしていた。
(エ) 老人保健施設に赴いて複数の患者に行った歯科診療について、3人を超える患者についても歯科訪問診療料を算定していた。
(オ) 通院精神療法について、投薬する際の一般的な指導を行った場合にも算定していた。
(カ) 老人保健施設の入所者について腫瘍用薬以外の投薬料を算定していた。
このため、上記の10,430件の請求に対し山形県鶴岡市ほか220市区町村等が支払った医療費について39,059,630円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額21,370,809円は負担の要がなかったものである。
これを医療機関の所在する都県別に示すと次のとおりである。
都県名 | 実施主体 (医療機関数) |
不当と認める医療費の支払件数 | 不当と認める医療費 | 不当と認める国の負担額 | 摘要 |
山形県 |
鶴岡市ほか10市町村等(1) |
件 258 |
千円 3,002 |
千円 1,684 |
在宅医療料の支払不適切 |
埼玉県 | 熊谷市ほか59市区町村等(1) | 435 | 1,948 | 996 | 画像診断料、検査料等の支払不適切 |
東京都 | 八王子市ほか61市区町等(3) | 3,327 | 5,683 | 2,605 | 精神科専門療法料及び入院時食事療養費の支払不適切 |
神奈川県 | 厚木市ほか35市区町等(2) | 1,587 | 2,282 | 1,165 | 入院時食事療養費の支払不適切 |
福井県 | 鯖江市ほか18市町村等(2) | 567 | 5,081 | 3,202 | 画像診断料及び投薬料の支払不適切 |
愛知県 | 名古屋市ほか24市区町等(1) | 2,039 | 16,678 | 9,198 | リハビリテーション料の支払不適切 |
兵庫県 | 姫路市ほか7市町等(1) | 117 | 1,316 | 782 | リハビリテーション料及び入院時医学管理料の支払不適切 |
鹿児島県 | 姶良郡姶良町ほか9市町等(1) | 1,074 | 1,564 | 907 | 入院時食事療養費の支払不適切 |
沖縄県 | 具志川市ほか17市町村等(1) | 1,026 | 1,502 | 828 | 同 |
小計 | 10,430 | 39,059 | 21,370 | ||
〔1〕 〜〔9〕 の計 | 137,969 | 644,980 | 372,811 |