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  • 平成7年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

加工原料用果実価格安定対策事業における生産者補給金の交付単価の基となる平均取引価格の算定を適切なものとするよう改善させたもの


(1) 加工原料用果実価格安定対策事業における生産者補給金の交付単価の基となる平均取引価格の算定を適切なものとするよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計(組織)農林水産本省(項)農蚕園芸振興費
部局等の名称 農林水産本省
補助の根拠 予算補助
事業主体 財団法人中央果実生産出荷安定基金協会
実施主体 社団法人岩手県青果物価格安定基金協会ほか8県協会
事業 加工原料用果実価格安定対策
事業の概要 加工原料用果実の取引価格が著しく下落した場合に、実施主体が生産者に生産者補給金を交付する事業
生産者補給金 22億5167万余円 (平成4年度〜6年度)
上記に対する国庫補助金相当額 14億3851万余円 (平成4年度〜6年度)
過大に交付されていた生産者補給金 4億1072万余円 (平成4年度〜6年度)
上記に対する国庫補助金相当額 2億3218万余円 (平成4年度〜6年度)
<検査の結果>
 上記の県協会において、生産者補給金の交付単価の基となる平均取引価格の算定が適切に行われていなかったため、生産者補給金が4億1072万余円(国庫補助金相当額2億3218万余円)過大に交付されていると認められた。
 このような事態が生じていたのは、平均取引価格の算定の基となる取引価格等の内容について農協等の理解が十分でなかったり、取引価格等に対する県協会の審査・確認が十分でなかったりしたことによると認められた。
<当局が講じた改善の処置>
 本院の指摘に基づき、農林水産省等では、平成8年11月に通達を発し、平均取引価格の算定が適切に行えるよう、県協会及び農協等に対して取引価格等の趣旨を周知徹底させるとともに、果実加工業者からも取引価格等を報告させることとするなど県協会が取引価格等を正確に把握するための具体的な措置を定める処置を講じた。

1 事業の概要

 (加工原料用果実価格安定対策事業の概要)

 農林水産省では、果実の需給安定、果実製品の消費拡大等を図ることを目的として、財団法人中央果実生産出荷安定基金協会(以下「中央協会」という。)が実施している果実等生産荷安定対策事業に対して、果実等生産出荷安定対策事業費補助金を交付している。
 そして、中央協会は、上記事業の一環として、加工原料用果実価格安定対策事業(以下「価格安定対策事業」という。)を実施している道府県の果実生産出荷安定基金協会(以下、各道府県協会を「県協会」という。)に対して、交付準備金造成費補助金を交付している。
 価格安定対策事業は、加工原料用果実を安定的に供給する生産者に対し、当該果実の価格が著しく下落した場合に、県協会が生産者補給金(以下「補給金」という。)を交付するものであり、上記の交付準備金造成費補助金は、当該事業を実施している県協会が補給金の財源を造成する際に、その一部として交付されるものである。

 (価格安定対策事業の種類)

 価格安定対策事業には、一般対策事業と特別対策事業の2種類の事業がある。

〔1〕  一般対策事業は、缶詰原料用うんしゅうみかん、果汁原料用りんご(平成5年度までは特別対策事業)などを対象として、果実の加工需要の拡大を期することなどを目的としている。

〔2〕  特別対策事業は、果汁原料用うんしゅうみかん、果汁原料用なつみかんなどを対象として、外国産の果実製品の輸入増大が生産者の経営に及ぼす影響を緩和することなどを目的としている。

 (県協会の補給金交付の仕組み)

 価格安定対策事業への参加を希望する農業協同組合(以下「農協」という。)、及び道府県単位のその連合体である道府県農業協同組合連合会(以下「県農協連」という。)は、その構成員である生産者からの委託に基づいて販売する加工原料用果実について、果実の品目等ごとに補給金の交付対象となる数量を定めて、県協会と補給金交付契約(以下「交付契約」という。)を締結している。そして、県協会と交付契約を締結するのは、道府県及び果実の品目等によって農協又は県農協連のいずれかである。
 この交付契約に基づいて、県協会は、造成した資金の範囲内で、交付単価に交付契約数量又は出荷実績数量のいずれか少ない数量を乗じて補給金を算出し、農協等に補給金を交付し、補給金を受けた農協等は、これを速やかに生産者に交付することになっている。
 この補給金の交付単価は、県協会が定めた保証基準価格(注1) 、目標取引価格(注2) 及び最低基準価格(注3) と取引実績によって算定される平均取引価格を基にして、県協会が次のように算出することになっている(下図参照)

〔1〕  一般対策事業については、保証基準価格と平均取引価格との差額に10分の9を乗じて得た額(通常補給金)

〔2〕  特別対策事業については、目標取引価格と平均取引価格との差額に10分の9を乗じて得た額(通常補給金)、及び保証基準価格と目標取引価格との差額(特別補給金)の合計額

〔2〕特別対策事業については、目標取引価格と平均取引価格との差額に10分の9を乗じて得た額(通常補給金)、及び保証基準価格と目標取引価格との差額(特別補給金)の合計額

 (注1)  保証基準価格 補給金を交付するための基準となる価格で、この価格を平均取引価格が下回った場合に捕給金が交付される。

 (注2)  目標取引価格 特別補給金を交付する際にその交付額の限度を示す価格で、平均取引価格がこの価格を下回る場合には、その差額が通常補給金の交付対象となる。

 (注3)  最低基準価格 この価格を平均取引価格が下回った場合に、この価格が平均取引価格とみなされる。

 (平均取引価格の算定)

 農協等は、加工原料用果実の取引期間の終了後、当該期間中に果実加工業者(県農協連が果実加工工場を所有していて果実加工業を営んでいる場合も含む。)との間で取引きしたすべての加工原料用果実を対象にして、その取引きに係る数量及び取引価格を県協会に報告し、県協会は、この報告に基づき、果実の品目等ごとに平均取引価格を算定することになっている。
 そして、農協等は、販売代金を原料代金と生産者からの委託手数料等とに分けて果実加工業者から受領し、原料代金だけを生産者に支払っている場合があるが、このような場合においても、手数料等を含めたものを取引価格として県協会に報告することになっている。また、農協等は、取引きに付随して、果実加工業者から実質的に生産者の手取りとなる奨励金等を別途に受領した場合には、その内容も県協会に報告することになっている。県協会は、これらの奨励金等及び手数料等を加算して平均取引価格を算定することになっている。

2 検査の結果

 (調査の観点)

 価格安定対策事業については、4年度から6年度の取引期間に係る補給金として、71億8334万余円(国庫補助金相当額46億5238万余円)と多額の補給金が交付されていることから、補給金の算定の基となる平均取引価格が取引実績を反映したものとなっているかなどの観点から調査することとした。

 (調査の対象)

 社団法人青森県青果物価格安定基金協会ほか19県協会(注4) が交付した4年度から6年度の取引期間に係る補給金64億2868万余円(国庫補助金相当額41億6647万余円)について調査した。

 (調査の結果)

 調査したところ、社団法人岩手県青果物価格安定基金協会ほか8県協会(注5) において、次のような事態が見受けられた。

(ア) 奨励金等を加算しないで平均取引価格を算定しているもの

 県農協連が加工原料用果実の取引きに付随して奨励金を果実加工業者から受領していたり、果実加工工場を所有している県農協連が加工原料用果実に係る特別配当金を農協等に配分していたのに、これらの奨励金等が県協会に報告されていなかった。このため、3県協会では、平均取引価格の算定に当たって、これらの奨励金等の額を加算していなかった。

(イ) 適正な取引価格を把握せずに平均取引価格を算定しているもの

 農協等が、果実加工業者から受領した販売代金から手数料等を差し引いて、生産者へ支払った原料代金だけを取引価格として報告していた。このため、9県協会では、適正な取引価格を把握せずに平均取引価格を算定していた。

 このように、農協等が果実加工業者から受領した奨励金等を県協会に報告していなかったり、適正な取引価格を報告していなかったりしているのに、県協会がこれらの報告を基に平均取引価格を算定している事態は適切とは認められない。
 したがって、補給金の交付単価の基となる平均取引価格の算定を適切に行うよう改善する要があると認められた。

 (過大に交付されていた補給金)

 前記の9県協会が交付した4年度から6年度の取引期間に係る補給金計22億5167万余円(国庫補助金相当額14億3851万余円)について、奨励金等及び手数料等を加算して、平均取引価格を算定したとすれば、補給金は、計18億4095万余円(国庫補助金相当額12億0633万余円)となり、4億1072万余円(国庫補助金相当額2億3218万余円)が過大に交付されていると認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、農協等において、報告すべき取引価格等の内容を十分理解していなかったり、県協会において、農協等から報告された取引価格等の審査・確認が十分でなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省及び中央協会では、8年11月に通達を発し、価格安定対策事業における平均取引価格の算定が適切に行えるよう、県協会及び農協等に対して、平均取引価格の算定の基となる取引価格等の趣旨を周知徹底させるとともに、果実加工業者からも取引価格等を報告させることとするなど県協会が取引価格等を正確に把握するための具体的な措置を定める処置を講じた。

 (注4)  社団法人青森県青果物価格安定基金協会ほか19県協会 青森県、岩手県、秋田県各青果物価格安定基金協会、山形県青果物生産出荷安定基金協会、福島県青果物価格補償協会、山梨県果樹経営安定基金協会、長野県、静岡県、三重県、和歌山県、広島県、山口県、愛媛県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、鹿児島県、沖縄県各果実生産出荷安定基金協会、愛知県園芸振興基金協会の20社団法人

 (注5)  社団法人岩手県青果物価格安定基金協会ほか8県協会 岩手県青果物価格安定基金協会、山形県青果物生産出荷安定基金協会、福島県青果物価格補償協会、三重県、和歌山県、広島県、山口県、熊本県、鹿児島県各果実生産出荷安定基金協会の9社団法人