会計名及び科目 | 食糧管理特別会計 | (国内米管理勘定) | (項)国内米管理費 |
(輸入食糧管理勘定) | (項)輸入食糧管理費 |
部局等の名称 | 食糧庁 |
業務の概要 | パレットを使用して政府米を運送する業務 |
上記業務におけるパレットに係る費用 | 1,070,555,225円 |
節減できた費用 | 2億0680万円 |
<検査の結果> |
政府米の運送に使用するパレットに係る費用の算定方法を、パレットの回送作業の実態に適合するよう改めることにより、約2億0680万円節減できたと認められた。 このような事態が生じていたのは、パレットに係る費用の算定に用いる単価について、パレットの回送作業の実態が変化し、実際は実施されていない作業があるのに、これを十分考慮せず、業務開始当初に設定した算定方法をそのまま用いて算定していたことによる と認められた。 |
<当局が講じた改善の処置> |
本院の指摘に基づき、食糧庁では、政府米の運送契約を改定し、平成8年9月及び10月に、上記の単価を作業の実態に適合したものに改めて、それぞれの月以降から行う運送について適用することとする処置を講じた。 |
1 業務の概要
(政府米の運送)
食糧庁では、政府米を生産地から消費地へ輸送するため、運送業者と政府所有食糧及び農産物等運送契約(以下「運送契約」という。)を締結し、政府米の運送を運送業者に委託しており、平成7年度において実施した政府米1,996,944tに係る運送費は、175億3207万余円に上っている。
政府米の運送に当たっては、迅速かつ円滑な輸送・荷役等を図るため、パレット(木製の荷台)に政府米(30kg袋及び50kg袋)を積み上げて、そのままこれをフォークリフトにより鉄道コンテナ、トラック等に積み込んで、生産地から消費地まで一貫して輸送する一貫機械荷役輸送(以下「パレット輸送」という。)を3年度から実施している(参考図参照)
。
このパレット輸送については、「政府所有米穀の一貫機械荷役輸送実施要領」(平成3年食糧業第261号(買入)食糧庁長官通達。以下「実施要領」という。)等に基づいて、実施することとなっている。
この実施要領等によると、食糧事務所長は、運送業者に、政府米を搬出する出発地の倉庫(以下「発地倉庫」という。)と搬入する到着地の倉庫(以下「着地倉庫」という。)を指定して、政府米の輸送の実施を指示することになっている。この指示を受けた運送業者は、倉庫業者から借り上げるなどしたパレットを鉄道コンテナ又はトラックを利用して、着地倉庫から発地倉庫まであらかじめ回送し、この回送したパレットに政府米を積み上げて着地倉庫まで輸送することになっている。
(パレットの回送)
食糧庁では、上記のパレット輸送に係る費用の算定に当たっては、そのパレットに係る回送の作業を次のように想定している(下図参照) 。
〔1〕 運送業者は、着地倉庫から出庫したパレットを、いったん、到着地のパレット集約倉庫(以下「着地集約倉庫」という。)に集め、ここから出発地のパレット集約倉庫(以下「発地集約倉庫」という。)へ回送する。
〔2〕 運送業者は、発地集約倉庫に回送したパレットを、政府米の出庫数量に合わせて仕訳しそれぞれの発地倉庫へ回送する。
〔3〕 着地倉庫から出庫するパレットは、その損傷、汚れ、濡れ等について検査を受けたものを使用する。
(パレットに係る費用)
食糧庁では、パレット輸送に使用するパレットに係る費用(以下「パレット費」という。)を次のように算定し、支払っている。
(ア) 上記の回送方法に基づくなどして、〔1〕 パレットを着地倉庫から発地倉庫まで回送するためのパレット回送料等、〔2〕 パレットの検査手数料、〔3〕 パレット使用料をそれぞれ算出し、これを基に政府米1tを単位として適用する単価(以下「適用単価」という。)を算定する。このうち、〔1〕 のパレット回送料等には、着地倉庫及び発地倉庫並びに着地集約倉庫及び発地集約倉庫でのパレットの入出庫に伴う荷役、仕訳の作業及び保管等に要する費用を見込むこととしている。
(イ) 上記の適用単価を運送契約において約定し、これに政府米の運送数量を乗じた金額を運送費に含めて運送業者に支払う。
7年度に北海道食糧事務所ほか46食糧事務所がパレット輸送により実施した政府米1,103,815tの運送に係るパレット費は、25億5614万余円となっている。
2 検査の結果
(調査の観点)
パレット輸送は、導入後既に5年を経過し、その輸送数量も増加していることから、適用単価の算定に当たり想定しているパレットの回送方法が作業の実態に適合したものとなっているかなどの観点から調査を行った。
(調査の対象)
北海道食糧事務所ほか11食糧事務所(注) が、7年度にパレット輸送により実施した政府米452,247tの運送費(これらに係るパレット費10億7055万余円)について調査した。
(調査の結果)
パレットの回送の実態について調査したところ、パレット輸送が導入後5年を経過し、その間運送業者のパレット回送の迅速化・合理化が図られるようになってきたため、実際のパレットの回送は次のように行われていた。
(ア) 都道府県間の輸送においては、着地倉庫でコンテナにパレットをまとめて積み込み、直接、発地集約倉庫に回送していて、着地集約倉庫を経由していなかった。
また、パレットの回送距離が比較的短い同一都道府県内の輸送の場合は、政府米の出庫状況に応じ適宜必要な枚数のパレットの回送ができることから、その都度着地倉庫からトラック輸送により直接、発地倉庫に回送していて、着地、発地いずれの集約倉庫も経由していなかった。
(イ) パレット回送の際の検査の状況については、運送業者のパレットに対する認識が高まり、その適否に関する判断が適切になされるようになってきたことから、実際には、パレットの枚数の確認と記録が行われている程度であった。また、過去のパレット輸送においては、パレットが原因となって政府米に損傷を生じるような事態は発生していない状況となっていた。
したがって、適用単価の算定に当たっては、上記(ア)及び(イ)の作業の実態からみて、経由していない集約倉庫でのパレットの荷役料等の費用及びパレット検査手数料を見込む必要はないと認められることから、パレット費の算定方法を上記の回送の実態に適合した経済的なものとなるよう改める要があると認められた。
(節減できたパレット費)
上記により、パレット回送の実態に適合した適用単価を算定し、これによりパレット費を修正計算すると、8億6369万余円となり、前記のパレット費10億7055万余円を約2億0680万円節減できたと認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、パレットの回送方法が、運送業務の合理化等によりパレット輸送の導入当時に想定したものから変化しているにもかかわらず、その後の作業の実態を把握しないまま、適用単価を算定していたことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、食糧庁では、運送契約を改定し、8年9月に、パレット検査手数料を適用単価の算定の対象に含めないこととし、同年10月に、適用単価を作業の実態に適合したものに改めて、それぞれの月以降から行うパレット輸送について適用することとする処置を講じた。
(注) 北海道食糧事務所ほか11食糧事務所 北海道、宮城、茨城、東京、富山、静岡、三重、大阪、岡山、広島、福岡、宮崎各食糧事務所