会計名及び科目 | 一般会計 (組織)運輸本省 (項)海岸事業費 |
部局等の名称 | 第三港湾建設局 |
補助の根拠 | 海岸法(昭和31年法律第101号) |
事業主体 | 徳島県 |
補助事業 | 撫養(むや)港海岸(侵食) |
補助事業の概要 | 海岸の侵食を防止するため、平成5、6両年度に、コンクリート被覆式護岸等を施工するもの |
事業費 | (1) | 51,974,830円 | (平成5年度契約分) |
(2) | 67,927,470円 | (平成6年度契約分) | |
計 | 119,902,300円 | ||
上記に対する国庫補助金交付額 | (1) | 25,987,415円 | |
(2) | 33,963,735円 | ||
計 | 59,951,150円 | ||
不当と認める事業費 | (1) | 50,595,457円 | |
(2) | 63,493,843円 | ||
計 | 114,089,300円 | ||
不当と認める国庫補助金交付額 | (1) | 25,297,728円 | |
(2) | 31,746,921円 | ||
計 | 57,044,649円 |
1 補助事業の概要
これらの補助事業は、徳島県が、撫養(むや)港の海岸侵食対策事業の一環として、同港岡崎・里浦地区において、海岸の侵食を防止するため、平成5、6両年度に、老朽化した既存護岸の撤去、コンクリート被覆式護岸(以下「護岸」という。)延長計123.3mの築造等を工事費51,974,830円(5年度契約分、国庫補助金25,987,415円)及び工事費67,927,470円(6年度契約分、国庫補助金33,963,735円)で実施したものである。
このうち、護岸は、基礎コンクリート、表法(おもてのり)被覆コンクリート、波返しからなる高さ3.7mのコンクリート構造物、幅2.7mの水叩き等からなり、その基礎については、鋼管杭(外径500mm、厚さ9mm、杭長12.5mから42.5m)を護岸の延長方向に1列に両工事とも19本ずつ計38本打ち込むこととしていた。そして、鋼管杭の種類については、いずれも、上端から9mの範囲に使用する杭(以下「上杭」という。)をSKK490(注1)
、それより下方に使用する杭をSKK400(注1)
とし、これらを現場で溶接することとしていた(参考図参照)
。
上記の設計に当たって、上杭にSKK400よりも強度の大きいSKK490を使用することとしたのは、地震時に生ずる外力などにより鋼管杭の上部に大きな応力が発生することに対応したものである。そして、これにより地震時において上杭に生ずる最大の圧縮応力度(注2) 2,786kg/cm2 が、SKK490の許容圧縮応力度2,850kg/cm2 を下回ることから、応力計算上安全であるとしていた。
2 検査の結果
検査したところ、両工事とも、鋼管杭の施工に当たり、誤って上杭にもすべてSKK400を使用して施工している状況であった。
このため、地震時において、上杭の許容圧縮応力度はSKK400の2,100kg/cm2
となり、上杭に生ずる最大の圧縮応力度2,786kg/cm2
がこれを大幅に上回っていて、応力計算上安全な範囲を超えている。
したがって、本件護岸(工事費相当額5年度契約分50,595,457円、6年度契約分63,493,843円、計114,089,300円)は、鋼管杭の施工が設計と著しく相違していたため不安定な状態になっており、これに係る国庫補助金相当額5年度契約分25,297,728円、6年度契約分31,746,921円、計57,044,649円が不当と認められる。
(注1) SKK490・SKK400 日本工業規格の鋼管杭の規定によれば、鋼管杭の種類はこの2種類が定められていて、各種の化学成分の含有量が異なり、SKK400に比べてSKK490は強度が大きい。
(注2) 圧縮応力度・許容圧縮応力度 杭の場合の「圧縮応力度」とは、軸方向力及び曲げモーメント(杭を曲げようとする力)により、杭の内部に生ずる圧縮力の単位面積当たりの大きさをいい、その数値が設計上許される上限を「許容圧縮応力度」という。