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  • 平成7年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 運輸省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

公共マリーナ等の管理運営等を適切に行い、その利活用を図るよう改善させたもの


 公共マリーナ等の管理運営等を適切に行い、その利活用を図るよう改善させたもの

会計名及び科目 港湾整備特別会計(港湾整備勘定) (項)港湾事業費
(項)北海道港湾事業費
部局等の名称 第一、第二、第三、第四、第五各港湾建設局及び北海道開発局
補助等の根拠 港湾法(昭和25年法律第218号)、北海道開発のためにする港湾工事に関する法律(昭和26年法律第73号)
事業主体 京都府、秋田、福島、愛知、香川、大分各県及び室蘭市
事業名 本荘港港湾整備事業ほか6港湾整備事業(公共マリーナ等の整備)
事業の概要 港湾整備事業の一環として、海洋性レクリエーションの普及に伴うプレジャーボートの需要の増大に対処し、併せて放置艇の解消を図るため、プレジャーボートを係留・保管する公共マリーナ等を整備するもの
事業費 213億3863万余円
 うち補助事業費
(昭和50年度〜平成7年度)
116億6612万余円
上記の補助事業費に対する国庫補助金交付額 54億9602万余円
有効に利活用されていない保管スペースに相当する事業費 44億3332万余円
 うち補助事業費
(昭和50年度〜平成7年度)
25億6807万余円
上記の補助事業費に対する国庫補助金相当額 11億4107万余円
<検査の結果>

 上記の事業により整備された公共マリーナ等においてプレジャーボートが保管されていない保管スペースがある一方、公共マリーナ等が所在する港湾区域に放置艇が見受けられ、少なくとも521隻分の保管スペースが有効に利活用されていないと認められた。
 このような事態が生じていたのは、プレジャーボートの所有者の意識の問題などもあるが、都道府県等の港湾管理者において、公共マリーナ等の利用を促進するための広報活動等を十分に行っていなかったこと、また、運輸省において、公共マリーナ等の利用状況等の実態の把握及び有効利用を図るための管理運営方策等についての検討が十分でなく、港湾管理者に対し適切な指導を行っていなかったことなどによると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

本院の指摘に基づき、運輸省では、関係省庁間の協議機関を設けるなどして、公共マリーナ等の有効利用による放置艇の解消のための管理運営方策等について検討するとともに、平成8年11月に各港湾管理者に対し通達を発して、公共マリーナ等の利用促進を図るため広報活動等を十分に行い、放置艇等の公共マリーナ等への誘致・保管を図るよう指導するなどの処置を講じた。

1 事業の概要

 (公共マリーナ等の整備事業)

 運輸省では、港湾整備事業の一環として、港湾に、ヨット、モーターボート等のプレジャーボートを係留・保管する公共マリーナ及びプレジャーボートスポット(以下「公共マリーナ等」という。)を整備する事業を推進している。この公共マリーナ等の整備事業は、海洋性レクリエーションの普及に伴うプレジャーボートの需要の増大に対処し、併せて港湾、海岸、河川等に不法に係留されているプレジャーボート(以下「放置艇」という。)を解消しつつ、健全な海洋性レクリエーションの振興を図ることを目的とするものである。
 そして、このうち公共マリーナは、さん橋、泊地、防波堤、船舶の修理施設・陸上保管施設、クラブハウス等から構成され、プレジャーボートの係留・保管のほか、海洋性レクリエーションのための各種サービスを提供することができるものとなっている。また、プレジャーボートスポットは、簡易な係留施設で、さん橋、泊地等から構成される。

 (公共マリーナ等の整備方針)

 運輸省では、公共マリーナ等の整備を推進するに当たり、昭和63年12月に「全国マリーナ等整備方針」を策定している。
 これによれば、公共マリーナは、現状における放置艇及び将来の増加が見込まれるプレジャーボートを適切に収容できる保管施設を確保するため、広く国民に開かれた低廉な利用料金の施設を提供するものとされている。また、プレジャーボートスポットについては、マリーナ整備が多額の資金と多大な時間を要することにかんがみ、緊急的な放置艇対策として、運河・水路等の既存水域や遊休施設を活用した日常型利用の簡易な係留施設を整備するものと位置付けられている。そして、平成11年までに少なくとも新たに約19万隻分(民間マリーナ8万隻分を含む。)に相当するマリーナ等の整備を図ることにしている。

 (公共マリーナ等の整備実績)

 上記のような整備方針の下、運輸省は公共マリーナ等の整備を都道府県等港湾管理者による補助事業等により実施することとしており、その事業費は、第7次(昭和61年度〜平成2年度)及び第8次(3年度〜7年度)の港湾整備五箇年計画期間中に、それぞれ645億円(対象港湾54港)、915億円(対象港湾69港)と多額に上っている。そして、7年度までに整備された公共マリーナ等は全国で52箇所となっている。

2 検査の結果

 (調査の観点)

 運輸省が4年2月に実施したマリーナ等に係るプレジャーボートの利用実態調査によれば、プレジャーボートは約28.5万隻と推計され、このうち放置艇は約10.4万隻となっていて、その過半数の54,276隻が港湾区域にあるとされている。また、放置艇により、港湾施設の損傷、海上交通の航行障害、港湾施設等の建設工事に対する障害、係留場所の私物化と他の利用の阻害、管理不行き届きによる流出・沈廃船化、美観の阻害など、多岐にわたる問題が生じており、社会全般に及ぼす影響が少なくないとされている。
 そこで、港湾整備事業により整備された公共マリーナ等が、有効に利活用され、放置艇の解消にも結び付いているかを調査した。

 (調査の対象)

 北海道ほか17都府県(注1) における公共マリーナ等のうち、7年度末において供用開始後1年以上経過している28箇所(全体事業費660億5442万余円、うち補助事業費300億3034万余円、国庫補助金133億6366万余円)を対象として調査した。

 (調査の結果)

 調査したところ、上記28箇所の公共マリーナ等におけるプレジャーボートの保管スペースは合計7,427隻分で、このうち年間又は月単位の契約などにより使用されていた保管スペースは5,514隻分で、プレジャーボートが保管されていない保管スペース(以下「空き保管スペース」という。)が1,913隻分となっていた。
 これを箇所別にみると、28箇所の保管スペースは17隻分から956隻分で、このうちには満隻となっている箇所も9箇所あったが、残りの19箇所(これらの保管スペース42隻分から628隻分)において10隻分から419隻分の空き保管スペースが生じていた。そして、このうち、保管スペースに対する空き保管スペースの割合が50%以上となっているものが7箇所あった。また、空き保管スペースの数が50隻分以上あるものが10箇所、うち100隻分以上あるものが7箇所となっていて、保管スペースが有効に利活用されていない状況となっていた。

 一方、上記28箇所の公共マリーナ等が所在する港湾においては、港湾区域や港湾に流入する河川等に放置艇があり、空き保管スペースが生じている公共マリーナ等が所在する港湾においても放置艇が見受けられる状況であった。この中には、空き保管スペースが148隻分ある公共マリーナ(保管スペース320隻分)が所在する港湾において、当該港湾区域内に437隻のプレジャーボートが放置されているものも見受けられた。
 そして、放置艇を公共マリーナ等の空き保管スペースに誘致し、保管させることとすれば、前記空き保管スペースが生じている19箇所のうち、公共マリーナ等が所在する港湾区域内だけでも20隻以上の放置艇があるなどしている北海道ほか6府県(注2) における8箇所でみても、その空き保管スペース計799隻分のうち、少なくとも計521隻分(放置艇の総数は1,124隻)の空き保管スペースは有効に利活用できると認められた。
 このように、多額の事業費を投下して整備した公共マリーナ等が有効に利活用されておらず、放置艇の解消にも結び付いていない事態は適切ではなく、事業の効果が十分発現していないと認められた。

 (有効に利活用されていない保管スペースに相当する事業費)

 上記の8箇所(全体事業費213億3863万余円、うち補助事業費116億6612万余円、国庫補助金54億9602万余円)について、それぞれの公共マリーナ等における保管スペース1隻分当たりの事業費を基に、上記の521隻分に係る事業費を計算すると、44億3332万余円、うち補助事業費25億6807万余円、国庫補助金相当額11億4107万余円となる。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、プレジャーボートの所有者の意識の問題などもあるが、次のようなことなどによると認められた。

(ア) 都道府県等の港湾管理者において、公共マリーナ等の利用状況や放置艇の実態を十分把握しておらず、利用を促進するための広報活動等を十分行っていなかったこと

(イ) 運輸省において、公共マリーナ等の利用状況等の実態の把握及び有効利用を図るための管理運営方策等についての検討が十分でなく、港湾管理者に対し適切な指導を行っていなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、運輸省では、次のとおり、公共マリーナ等の管理運営等を適切に行うための処置を講じた。

(ア) 関係省庁間でプレジャーボート対策について調査検討等を行うための協議機関を設けるなどして、公共マリーナ等の有効利用による放置艇の解消のための管理運営方策等について検討することとした。

(イ) 8年11月、港湾管理者に対し通達を発して、公共マリーナ等の利用促進を図るため、地域の実情等に応じた利用方針を定めるとともに広報活動等を十分行い、放置艇等のプレジャーボートの積極的な誘致・保管を図るよう指導し、併せて公共マリーナ等の利用状況等を定期的に運輸省に報告させ、必要に応じて管理運営等について指導することとした。

 (注1)  北海道ほか17都府県 東京都、北海道、京都、大阪両府、青森、秋田、山形、福島、神奈川、福井、愛知、和歌山、鳥取、岡山、徳島、香川、大分、鹿児島各県

 (注2)  北海道ほか6府県 北海道、京都府、秋田、福島、愛知、香川、大分各県