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  • 平成7年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第12 自治省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

国会議員の選挙等の委託費の算定において、投票所入場券の郵送について郵便料金の割引制度を活用することなどにより、委託費の節減を図るよう改善させたもの


 国会議員の選挙等の委託費の算定において、投票所入場券の郵送について郵便料金の割引制度を活用することなどにより、委託費の節減を図るよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)自治本省 (項)参議院議員通常選挙費
(項)衆議院議員及参議院議員補欠等選挙費
部局等の名称
自治本省

委託費の件名 (1) 参議院議員通常選挙執行委託費
(2) 参議院議員補欠選挙執行委託費
委託の概要
平成7年度において執行された国会議員の選挙に関する事務を地方公共団体に委託するもの

委託費 (1) 472億4433万余円
(2) 9億7647万余円
482億2080万余円
支払 (1) 平成7年7月、11月及び8年1月
(2) 平成7年11月、8年3月及び4月
節減できた委託費
4770万円

<検査の結果>

 上記の委託費の算定において、投票所入場券の郵送について郵便料金の割引制度を活用することなどにより、委託費を約4770万円節減できたと認められた。
 このような事態が生じていたのは、自治省において、郵便料金の割引制度を活用することについての地方公共団体に対する指導が十分でなかったり、委託費の算定において割引制度の利用の実態等を適切に把握できるようになっていなかったりしていたことなどによると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、自治省では、平成8年9月に、都道府県に対して通達を発するなどして、割引制度についての周知を図り、これを活用するよう指導するとともに、割引制度の利用の実態等を適切に把握できるようにするため、委託費の算定に用いる資料の様式を整備するなどの処置を講じた。

1 委託費の概要

 (選挙に関する事務の委託と費用負担)

 国は、国会議員の選挙等に関する事務を地方公共団体に委託しており、これら委託事務の執行に要する経費は、その全額を国が負担することとなっている。
 この国が負担する額(以下「委託費」という。)は、「国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律」(昭和25年法律第179号)により、投票所経費、開票所経費、事務費等の種類ごとに定められており、これを受けて自治省では、選挙執行経費算定資料の様式(以下「算定様式」という。)を定めている。そして、各地方公共団体の委託事務に係る経費の支出状況等を記載した資料(以下「算定基礎資料」という。)を基に、都道府県がこの算定様式に従って選挙執行経費算定資料(以下「算定資料」という。)を作成し、国は、この算定資料に基づき、委託費を算定し地方公共団体に交付することとなっている。
 平成7年度において執行された参議院議員の通常選挙及び補欠選挙に係る委託費の交付額は、計482億2080万余円となっている。

 (投票所入場券の作成と配布)

 上記の委託費のうち事務費には、各市区町村の行う投票所入場券(以下「入場券」という。)の作成及び配布に係る経費が含まれている。
 市区町村では、入場券の作成及び配布を次のように行っている。

〔1〕 入場券は、住民基本台帳のデータを基に作成した選挙人名簿により、投票区ごと、さらに投票区内の街区等ごとの順に、選挙人の住所、氏名等を所定の用紙に印字して作成する。

〔2〕 入場券の配布方法には、選挙人の各世帯へ直接配布する方法とはがき又は封書により郵送する方法があるが、その大部分が郵送によって配布されている。

 (入場券の郵送経費の加算)

 入場券に係る経費のうち配布に要する経費は、原則として、選挙人の各世帯へ直接配布するのに必要な人件費相当額とすることとなっているが、入場券を郵送した場合には、この人件費相当額に「特に要する郵送経費」を加算することとなっている。この加算額は、算定様式において、郵送経費から郵送により不要となる人件費相当額を差し引いた額と定められている。郵送経費は、郵便料金(はがきとして1通当たり50円)に郵送対象とする選挙人の数を乗じて得た額とされているが、この額よりも郵送に実際に要した額が低いときは、実際に要した額を郵送経費とすることとなっている。

 (郵便料金の割引制度)

 郵便料金には、一定の条件に該当するときに通常の郵便料金を割り引くことなどとする種々の割引制度が定められている。そして、これらの割引制度の一つに「利用者区分割引」があり、その要件及び減額率は、次のとおりとなっている。
 すなわち、差し出す郵便物を、あらかじめ受取人の住所又は居所の郵便番号ごとに区分し、同時に2,000通以上差し出すなどの条件を満たして差し出すことにより、料金を一定の割合で減額することとされており、その減額率は差出通数に応じて5%から9%などとなっている。

2 検査の結果

 (調査の観点及び対象)

 入場券は、大部分がはがき又は封書により郵送されており、また、同時に大量の通数が差し出されることから、上記の郵便料金の割引制度を活用して加算額の節減が図られているかなどについて、北海道ほか21都府県(注1) に所在する市区町村のうち、入場券を郵送により配布している1,139市区町村の加算額計1,231,084,871円を対象として調査した。

 (調査の結果)

 調査したところ、北海道ほか20都府県(注2) の110市区町において次のような事態が見受けられた。

(ア) 利用者区分割引を利用することができるのに、これを利用していなかったもの

102市区町 節減できた加算額 4260万余円

<事例>

 北海道A市では、入場券1,326,834枚をはがきとして郵便局へ差し出し、郵便料金として1枚当たり50円計66,341,700円を支払っており、この実績を基にするなどして、加算額54,536,844円の交付を受けていた。
 しかし、同市では入場券を実際に郵便番号ごとに区分して差し出しており、通数等も利用者区分割引の条件を満たしていたため、利用者区分割引を利用することが可能であった。したがって、利用者区分割引を利用したとすれば郵便料金は計60,462,437円で足り、これに基づく加算額が49,076,071円となり5,460,773円節減できたことになる。

(イ) 算定基礎資料の作成に際し、利用者区分割引を利用していたのに、誤って通常の郵便料金に選挙人の数などを乗じて得た額をそのまま郵送経費としたり、入場券の作成経費等を郵送経費に含めたりなどしていて、加算額が過大に算定されていたもの

14市町 過大に算定されていた加算額 740万余円
(ア)、(イ)の計 110市区町 4770万余円
 上記の(ア)及び(イ)には、利用者区分割引を利用できるのにこれを利用しておらず、さらに、郵送経費に入場券の郵送料以外の経費を含めるなどしていて、事態が重複しているものが6市町ある。

 上記のように、入場券の郵送において割引制度が活用されていなかったり、郵送経費が過大に算定されていたりなどしている事態は適切とは認められず、郵便料金の割引制度を活用するなどして加算額を算定することにより、委託費の節減を図る要があると認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、地方公共団体において、郵便料金の割引制度についての理解が必ずしも十分でなかったことなどにもよるが、主として、次の理由によると認められた。

ア 自治省において、郵便料金の割引制度を活用することについて地方公共団体に対して周知するなどの指導が十分でなかったこと

イ 自治省が定めた算定様式が、割引制度の利用の実態や実際の郵便料金の支払額を適切に把握できるようになっていなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、自治省では、8年9月に都道府県に対して通達を発するなどして、国会議員の選挙等に係る委託費の節減を図るよう次のような処置を講じた。

ア 都道府県及び市区町村に対して、割引制度についての周知を図るとともに、市区町村において経済性等を考慮してこれを活用するよう指導を行った。

イ 都道府県が、算定資料を作成する際、割引制度の利用の実態等を適切に把握できるようにするため、加算額の算定についての算定様式を整備した。

 (注1)  北海道ほか21都府県 東京都、北海道、大阪府、青森、宮城、山形、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、石川、山梨、三重、滋賀、鳥取、島根、山口、徳島、福岡、佐賀、宮崎各県

 (注2)  北海道ほか20都府県 東京郡、北海道、大阪府、青森、宮城、山形、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、石川、山梨、滋賀、鳥取、島根、山口、徳島、福岡、佐賀、宮崎各県