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  • 平成7年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第3 日本道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

トンネル工事における覆工防水工費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの


(1) トンネル工事における覆工防水工費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (項)高速道路建設費
部局等の名称 札幌、仙台、新潟、名古屋、高松、福岡各建設局(平成8年7月1日以降、札幌建設局は北海道支社、仙台建設局は東北支社、高松建設局は四国支社)
工事名 北海道縦貫自動車道洞爺トンネル工事ほか48工事
工事の概要 高速道路建設工事の一環として、NATMで掘進機による掘削を行うトンネル等の工事のうち、トンネルの湧水区間に防水シートを敷設するなどの工事
工事費 146,030,310,000円
請負人 株式会社間組・岩田建設株式会社北海道縦貫自動車道洞爺トンネル工事共同企業体ほか47共同企業体及び株木建設株式会社
契約 平成4年5月〜8年3月 一般競争契約、指名競争契約、随意契約
過大積算額 9800万円
<検査の結果>

  上記の各工事において、NATMによるトンネル工事の覆工防水工費(積算額計32億3308万余円)の積算が適切でなかったため、積算額が約9800万円過大になっていた。
 このように積算額が過大になっていたのは、近年、トンネル掘進機の性能が向上し、この機械により掘削する場合は、爆破による場合に比べて掘削面の凹凸等が少なく、覆工防水工で使用する防水シートのロス率が小さくなっているのに、この実態を積算に反映するための配慮が十分でなかったことによると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

  本院の指摘に基づき、日本道路公団では、平成8年10月に、機械掘削方式の場合の覆工防水工費の積算が施工の実態に適合したものとなるよう積算の基準を改正し、同年12
月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

1 工事の概要

 (工事の内容)

 日本道路公団(以下「公団」という。)札幌建設局ほか5建設局(注1) では、平成7年度に、高速道路の建設工事の一環として、NATM(注2) で掘進機による掘削を行うトンネル等の工事を49工事(工事費総額1460億3031万余円)施行している。
 そして、これらのトンネル工事では、地山からの湧水が覆工コンクリートに浸透して漏水するのを防ぐため、掘削後、トンネル壁面を安定させるなどのために施工する吹付けコンクリートの表面に、防水シート(厚さ0.8mm、裏面に緩衝材を付着したもの)を敷設する覆工防水工を施工している(参考図参照)

 (覆工防水工費の積算)

 公団では、覆工防水工費については、公団制定の「土木工事積算要領」(以下「積算要領」という。)に基づいて積算することとしている。この積算要領によると、覆工防水工費は、〔1〕 防水シート1m2 当たりの単価に材料の割増係数1.2を乗じて材料費を算出し、〔2〕 これに人件費、足場損料等を加えて1m2 当たりの敷設単価を算出し、〔3〕 この敷設単価に防水シートの敷設面積を乗じて積算することとなっている。
 そして、前記の6建設局では、上記により、本件各工事の覆工防水工費を敷設面積計781,266.7m2 で計32億3308万余円と積算していた。

2 検査の結果

 (調査の観点)

 NATMによるトンネル工事において、従来は火薬を使用する爆破掘削方式が主体であったが、近年、トンネル掘進機により掘削を行う機械掘削方式によるものも多数見受けられる状況となっていることから、覆工防水工費における材料の割増係数が、機械掘削方式による施工の実態に適合しているかという観点から調査した。

 (調査の結果)

 調査したところ、防水シートの割増係数1.2は、次のとおり、施工の実態と異なっており、本件各工事における覆工防水工費の積算は適切でないと認められた。
 すなわち、積算要領における防水シートの割増係数は、トンネル掘削で生じる余掘り(注3) や吹付けコンクリートの仕上げ面の凹凸等により生ずる防水シートの損失の割合(以下「ロス率」という。)を考慮したもので、これは公団の調査時における爆破掘削方式によるトンネル工事の実態に基づいたものであった。
 そこで、機械掘削方式によっている本件各工事のうち、覆工防水工を施工中の6件工事について、防水シートの使用実態を確認したところ、防水シートの設計数量360m2 から6,745.9m2 、計29,173.4m2 に対し、使用数量は418.9m2 から7,671.5m2 、計33,495.2m2 となっていた。そして、これに基づくロス率は平均14.8%となっていて、積算要領で定めているロス率20%を下回っている状況であった。
 これは、近年、機械掘削方式はトンネル掘進機の性能が向上して中硬岩程度まで掘削が可能となるなどの理由により施工範囲が拡大し、この機械掘削方式では、爆破掘削方式に比べ余掘りや掘削面の凹凸が少なく、これに伴い掘削後に施工する吹付けコンクリートの仕上げ面も比較的平坦になることによるものである。
 したがって、機械掘削方式の場合の覆工防水工費の積算に当たっては、上記のような施工の実態に適合した材料の割増係数により材料費を算出する要があると認められた。

 (低減できた積算額)

 本件各工事における覆工防水工費について、上記の実態に即して修正計算すると、総額31億3434万余円となり、積算額32億3308万余円を約9800万円低減できたと認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、機械掘削方式の場合は、前記のように爆破掘削方式の場合に比べて防水シートのロス率が小さくなっているのに、これを積算要領に反映させるための配慮が十分でなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公団では、8年10月に、機械掘削方式の場合の覆工防水工費における防水シートの割増係数が施工の実態に適合したものとなるよう積算要領を改正し、同年12月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

 (注1)  札幌建設局ほか5建設局 札幌、仙台、新潟、名古屋、高松、福岡各建設局(8年7月1日以降、札幌建設局は北海道支社、仙台建設局は東北支社、高松建設局は四国支社)

 (注2)   NATM New Austrian Tunnelling Methodの略でナトムと呼ばれる。トンネルを掘削した後、コンクリート吹付け、ロックボルトなどを適宜組み合わせ施工することにより、地山の持っている支持力を最大限に生かす工法

 (注3)  余掘り トンネル掘削において、設計どおり掘削することは困難なため、設計断面より外側にやむを得ず生じてくる掘削部分

(参考図)

(参考図)