科目 | (住宅・都市整備勘定) | (項)住宅等建設費 (項)特定再開発整備費 (項)受託業務費 |
部局等の名称 | 東京、関東、中部、関西各支社 |
工事名 | 港南三丁目住宅等エレベーター設備工事ほか81工事 |
工事の概要 | 中高層賃貸住宅等の建設事業の一環として、自動通報装置、故障検出装置等で構成されている自動通報システムを備えたエレベーターを設置する工事 |
工事費 | 4,511,699,600円 |
請負人 | 日本エレベーター製造株式会社ほか8会社 |
契約 | 平成5年5月〜8年2月指名競争契約 |
節減できた装置費 | 6200万円 |
上記の各工事において、自動通報システムの設計に当たり、自動通報装置1台に複数のエレベーターを接続するよう設計したとすれば、自動通報装置の費用(2億3419万余円)を約6200万円節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、自動通報システムの設計について、経済性を配慮した基準が定められていなかったことなどによると認められた。
本院の指摘に基づき、住宅・都市整備公団では、平成8年10月に、エレベーター間の距離が短い場合には、自動通報装置1台に複数のエレベーターを接続するよう自動通報システムの設計の基準を定め、同年11月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。
1 工事の概要
住宅・都市整備公団(以下「公団」という。)東京支社ほか3支社(注)
では、中高層賃貸住宅等の建設事業の一環として、平成7年度に、住宅等にエレベーターを設置する工事を107工事(工事費総額60億4678万余円)施行している。
これらの工事は、いずれも、1団地に所在する1棟又は複数棟の住宅等において、複数のエレベーターを設置するものである。
(自動通報システムの概要)
上記の各工事で設置するエレベーターには、利用者がエレベーター内に閉じ込められたり、エレベーターが起動不能になったりなどした場合の対応を迅速かつ確実に行うため、自動通報システムが備えられている。このシステムは、自動通報装置、故障検出装置、インターホン、電話回線等で構成されており、次の二つの機能を持っている。
〔1〕 故障検出装置からの信号を、自動通報装置によりエレベーター保守会社の監視センターに自動的に送信する。
〔2〕 利用者がエレベーター内のインターホンで管理人等を呼び出しても応答がない場合に、自動通報装置により監視センターを自動的に呼び出す。
(自動通報システムの設計及び自動通報装置の費用)
公団では、エレベーターの機種、基数等については、本社制定の「機械設備設計要領」に基づき決定しているが、自動通報システムの設計については、特に基準を設けていない。このため、前記の4支社では、同システムの設計に当たって、自動通報装置1台にエレベーターを1基接続したり、複数基接続したりしていて、前記の107工事で、エレベーター計421「基」に対して自動通報装置を計355台設置していた。
そして、本件各工事の自動通報装置の機器費、設置費等の費用(以下「装置費」という。)については、1台当たりの単価を算出し、これにそれぞれ設置台数を乗じて、前記107工事の装置費を計2億6113万余円と算定していた。
2 検査の結果
(調査の観点及び対象)
公団では、近年、中高層賃貸住宅等の管理水準の向上を図るため、自動通報システムを備えたエレベーターを多数設置してきていることから、同システムの設計において、自動通報装置を効率的に設置することにより費用の節減を図ることができないかなどの観点から、前記の107工事を対象として調査した。
(調査の結果)
調査したところ、107工事のうち、82工事(工事費総額45億1169万余円)において、自動通報システムの設計が適切でないと認められる事態が見受けられた。
すなわち、82工事の自動通報システムで設置した自動通報装置計319台(装置費計2億3419万余円)については、エレベーター1基と接続しているものが293台、2基と接続しているものが26台となっていた。しかし、これらの自動通報システムの設計については、次のようなことから、自動通報装置1台に3基までのエレベーターを接続することが可能であると認められた。
(ア) 本件各工事で設置した自動通報装置の仕様についてみると、ほとんどの自動通報装置が1台に3基以上のエレベーターを接続できるものとなっていること
(イ) 自動通報装置1台に複数のエレベーターを接続する場合、自動通報装置のあるエレベーターから同一棟又は別棟にある他のエレベーターまでの配線工事等が必要となるが、エレベーター間の配線距離が250m以下であれば、自動通報装置1台にエレベーター1基を接続する場合に比べ、経済的であること
(ウ) 複数のエレベーター内の利用者から同一の自動通報装置を経由して同時に呼び出しがあった場合の利用者に対する監視センターの対応については、公団が設立した研究委員会の報告において、3基までのエレベーターの接続であれば支障なく対応できるとしていること、また、公団等における運用実態をみても別段の支障は生じていないこと
したがって、複数のエレベーターを設置する工事における自動通報システムについては、エレベーター間の配線距離が250m以下の場合には、自動通報装置1台に3基までのエレベーターを接続し、自動通報装置の設置台数を減らすこととして、経済的な設計を行う要があると認められた(参考図参照) 。
(節減できた装置費)
上記により、自動通報システムを設計したとすれば、別途必要となる配線工事費等を考慮したとしても、前記の82工事に係る装置費(計2億3419万余円)を約6200万円節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、自動通報システムの設計について、経済性を配慮した基準が定められていなかったことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、公団では、8年10月に、エレベーター間の距離が短い場合には、自動通報装置1台に3基を標準として複数のエレベーターを接続する経済的な設計を行うよう自動通報システムの設計の基準を定め、同年11月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。
(注) 東京支社ほか3支社 東京、関東、中部及び関西各支社