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労災病院における診療報酬等の請求に当たり、入院時医学管理料等の請求額が不足していたもの


(222)−(225) 労災病院における診療報酬等の請求に当たり、入院時医学管理料等の請求額が不足していたもの

科目 (施設勘定) (項)事業収入
部局等の名称 岩見沢労災病院ほか3労災病院
請求不足額 平成6年度 73,456,508円
平成7年度 62,089,367円
135,545,875円
 上記の4労災病院において、診療報酬等の請求に当たり、退院した患者が同一傷病により再入院した場合の入院時医学管理料等を過小に算定するなどしていて、診療報酬等の請求額が135,545,875円不足していた。

1 診療報酬等の概要

 (診療報酬等の算定及び請求)

 労働福祉事業団が設置、運営している労災病院では、業務災害又は通勤災害により被災した労働者に対する診療(以下「労災診療」という。)を行うほか、保険医療機関として患者の診療(以下「一般診療」という。)を行っている。
 労災診療及び一般診療に要する費用の額(以下「診療報酬等」という。)については、次のように算定することとなっている。

(ア) 労災診療については、労災診療の特殊性などを考慮し、労働省労働基準局長が定めた「労災診療費算定基準について」(昭和51年基発第72号。以下「算定基準」という。)により、「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(平成6年厚生省告示第54号。
以下「厚生省告示」という。)に定められた診療報酬点数表の点数(以下「健保点数」という。)に単価(11円50銭)を乗ずるなどして算定する。

(イ) 一般診療については、厚生省告示により、健保点数に単価(10円)を乗じて算定する。

 そして、労災病院は、診療報酬等を、労災診療については都道府県労働基準局に対して請求し、一般診療については患者負担分を患者に、残りを社会保険診療報酬支払基金等に対して請求することとなっている。

 (診療報酬の構成)

 診療報酬は、厚生省告示により、基本診療料と特掲診療料とから構成されている。
 このうち、基本診療料は、初診、再診及び入院診療の際にそれぞれ行われる診療行為又は入院サービスの費用などを一括して算定するもので、初診料、再診料、入院料、入院時医学管理料及び特定入院料に区分されており、さらに、入院料は入院環境料、看護料等から構成されている。
 また、特掲診療料は、基本診療料として一括して算定することが妥当でない特別の診療行為に対し、個々に定められた点数によりその費用を算定するもので、投薬料、注射料、リハビリテーション料等に区分されており、ぎらに、リハビリテーション料は理学療法料、作業療法料等から構成されている。

 (入院時医学管理料の算定方法)

 入院時医学管理料は、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められており、その点数は、入院期間が長くなるほど逓減するように定められている(次表参照)

 <入院時医学管理料点数>

入院期間

2週間以内 2週間〜
1月
1月〜
2月
2月〜
3月
3月〜
6月
6月〜
1年
1年〜
1年6月
1年6月超

点数

545 355 250 226 155 121 101 98

(注) 一般病棟に入院している患者の場合

 そして、退院した患者が同一傷病により再入院した場合、当該再入院に係る入院時医学管理料の算定における入院の起算日及び入院期間の計算については、「新診療報酬点数表の制定(昭和33年告示の全部改正)等に伴う実施上の留意事項について(通知)」(平成6年保険発第25号厚生省保険局医療課長・歯科医療管理官通知。以下「6年医療課長通知」という。)等により、次のように取り扱うこととなっている。

(ア) 一傷病により入院した患者が退院後、いったん治癒し又は治癒に近い状態までよくなり、その後再発して同一保険医療機関に再入院した場合は、再入院の日を起算日として新たに入院期間を計算する。

(イ) 一傷病により入院した患者が退院後、退院の日の翌日から起算して3月以上(特定の疾患に罹患している患者については1月以上)の期間、同一傷病について当該保険医療機関を含むいずれの保険医療機関にも入院することなく経過した後に再入院した場合は、再入院の日を起算日として新たに入院期間を計算する。

(ウ) (ア)、(イ)以外の場合で、同一傷病により再入院した場合は、初回入院日を起算日として入院期間を計算する。

 (看護料の算定方法)

 看護料は、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められており、入院期間が入院の日から起算して一定の日数を超えた場合の点数は、超える以前の点数より低く定められている。そして、この看護料の算定に当たっても、退院した患者が同一傷病により再入院した場合の入院の起算日及び入院期間の計算については、6年医療課長通知により、入院時医学管理料と同様に取り扱うこととされている。
 また、入院患者の外泊期間中の看護料の算定については、特定の疾患の患者について治療のために外泊を行わせる場合には所定の点数を算定できることとなっている。

 (理学療法料及び作業療法料の算定方法)

 理学療法料及び作業療法料は、それぞれ所定の点数が定められている。そして、算定基準によると、労災診療として四肢の傷病に対してこれらの療法を行った場合には、健保点数の1.5倍の点数で算定できることとなっている。

2 検査の結果

 (検査の対象)

 岩見沢労災病院ほか9労災病院における平成6、7両年度の入院時医学管理料等に係る診療報酬等の請求の適否について検査した。

 (請求不足の事態)

 検査の結果、岩見沢労災病院ほか3労災病院において、入院時医学管理料等に係る診療報酬等の請求額が不足していたものが、6年度1,326件、73,456,508円、7年度1,113件、62,089,367円、計2,439件、135,545,875円あった。これは、上記の4労災病院において、厚生省告示等についての認識が十分でないまま診療報酬等を算定していたことによるものである。
 これを診療報酬別に示すと次のとおりである。

ア 入院時医学管理料

 岩見沢労災病院ほか2労災病院では、患者が退院後、3月以上(特定の疾患に罹患している患者については1月以上)の期間、同一傷病についていずれの保険医療機関にも入院することなく経過した後に再入院したものについて、再入院の日を起算日として新たに入院期間を計算すべきであったのに、誤って初回入院日から通算した入院期間に基づき低い点数の入院時医学管理料を算定していた。このため、入院時医学管理料が過小に算定され、診療報酬等の請求額が、6年度28,774,424円、7年度21,312,198円、計50,086,622円不足していた。

イ 看護料

 岩見沢労災病院ほか2労災病院では、上記の入院時医学管理料の場合と同様に、再入院の日を起算日として新たに入院期間を計算すべきであったのに、誤って初回入院日から通算した入院期間に基づき低い点数の看護料を算定していた。
 また、大牟田労災病院では、特定の疾患の入院患者を治療のために外泊させている期間中の看護料について所定の点数を算定すべきであったのに、誤って算定していなかった。
 これらのため、看護料が過小に算定され、診療報酬等の請求額が、6年度2,029,596円、7年度790,652円、計2,820,248円不足していた。

ウ 理学療法料及び作業療法料

 大牟田労災病院では、労災診療として一酸化炭素中毒に起因する四肢の傷病に対して行われた理学療法や作業療法について健保点数の1.5倍の点数で算定すべきであったのに、誤って健保点数により算定していた。このため、理学療法料及び作業療法料が過小に算定され、診療報酬等の請求額が、理学療法料6年度20,904,065円、7年度19,117,254円、計40,021,319円、作業療法料6年度21,748,423円、7年度20,869,263円、計42,617,686円不足していた。

 上記の事態を労災病院別に示すと次のとおりである。

上記の事態を労災病院別に示すと次のとおりである。