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  • 平成7年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第11 電源開発株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

火力発電所の定期点検工事等における一般管理費の積算を施行の実態に適合するよう改善させたもの


 火力発電所の定期点検工事等における一般管理費の積算を施行の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (汽力発電費) (款)磯子火力発電所 (項)修繕費
(項)固定資産除却費
(款)磯子1号排煙脱硫口 (項)修繕費
(款)磯子2号排煙脱硫口 (項)固定資産除却費
(款)高砂火力発電所 (項)修繕費
(款)高砂1号排煙脱硫口 (項)修繕費
(款)竹原火力発電所 (項)修繕費
(項)固定資産除却費
(款)松島火力発電所 (項)修繕費
(款)松浦火力発電所 (項)修繕費
(款)石川石炭火力発電所 (項)修繕費
(建設仮勘定) (款)磯子火力発電所 (項)機械装置
(款)竹原火力発電所 (項)機械装置
部局等の名称 磯子、高砂、竹原、松島、松浦、石川石炭各火力発電所
工事名 平成7年度磯子火力発電所2号機定期点検工事ほか27工事
工事の概要 火力発電所の発電設備の定期点検、機器の更新、補修等を行う工事
工事費 4,337,566,900円
請負人 開発電気株式会社
契約 平成7年2月〜8年1月 特命見積契約
過大積算額 2100万円
<検査の結果>

 上記の各工事において、一般管理費(積算額計4億1382万余円)の算定が適切でなかったため、積算額が約2100万円過大になっていた。
 このように積算額が過大になっていたのは、定期点検工事及びその付帯工事が一体の工
事として施行されている状況となっているのに、一般管理費の積算について積算の基準にこれに対応した算定方法が定められていなかったことなどによると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、電源開発株式会社では、平成8年11月に、定期点検工事等における一般管理費の積算が工事の施行の実態に適合したものとなるよう積算の基準を改正し、同年8月に遡及して適用することとする処置を講じた。

1 工事の概要

 (発電設備の定期点検等の工事)

 電源開発株式会社(以下「電発会社」という。)磯子火力発電所ほか5火力発電所(注) (以下「各発電所」という。)では、ボイラー、タービン等の発電設備の機能を維持するために、平成7年度に、定期点検等の工事を28工事(工事費総額43億3756万余円)施行している。
 これらの工事は、ボイラー、タービン等の発電設備を停止して分解点検を行う定期点検工事7工事及び定期点検工事と並行して行われる機器の更新、補修等の付帯工事21工事である。そして、各発電所では、それぞれについて請負契約を締結しているが、安全対策、工程管理等を考慮して定期点検工事及びその付帯工事を同一会社に請け負わせている。

 (工事費の構成)

 各発電所では、定期点検工事の工事費及びその付帯工事の工事費は、電発会社本店が制定した「火力部請負工事費積算要領」及び「火力部請負工事費積算資料」(以下「積算要領等」という。)に基づいて積算することとしている。そして、これらによれば、請負工事費は、直接工事費に仮設備費を加えた純工事費と、現場経費に一般管理費を加えた間接費から構成されている。
 そして、これらのうち一般管理費は、本支店経費、金利及び利潤から成り、純工事費に現場経費を加えた工事原価に所定の率(以下「一般管理費率」という。)を乗じて算出する。この一般管理費は、一般に工事規模が大きくなるに伴って工事費全体に占める構成割合が逓減するものであって、電発会社では、工事原価が高額になるに伴って率が逓減する所定の算定式により一般管理費率を算出することとしている。

 (一般管理費の積算)

 各発電所では、定期点検工事及びその付帯工事は、予算区分、設備の管理担当者等が異なることからそれぞれ別途に積算していた。そして、各工事の一般管理費の積算に当たっては、それぞれの工事原価に対応した一般管理費率を適用することとし、前記28工事で一般管理費を総額4億1382万余円と算定していた。

2 検査の結果

 (調査の観点)

 一般管理費率は、上記のとおり、工事原価が高額になるに伴って逓減することとなっており、また、各発電所では、同一会社に並行して施行させている定期点検工事及びその付帯工事の一般管理費率をそれぞれ別途に算定していたので、その算定が工事の施行の実態に即したものとなっているかという観点から調査した。

 (調査の結果)

 調査したところ、定期点検工事及びその付帯工事について、次のような事態が見受けられた。

(ア) 両工事は、工期が発電設備の停止期間に限定されることから、両工事の工期は並行しており、あらかじめ計画して実施するものであった。

(イ) 同一発電所内で施行する両工事は密接に関連しているので、同一会社に請け負わせており、請負業者は作業工程を一連のものとして管理していた。

(ウ) 直接工事費及び現場経費の積算に当たっては、両工事の間で作業や現場代理人等の人員配置が重複することから、工事費低減のため重複する部分の工数をそれぞれ調整する措置を執っていた。

 このように、両工事は限られた期間内に並行して実施するよう計画され、一体の工事として施行されており、また、両工事の積算に当たり、作業等が重複する部分については、調整を図る措置が執られていた。
 したがって、本件各工事の一般管理費の積算に当たっては、上記の施行の実態に即して、定期点検工事の工事原価とその付帯工事の工事原価との合計額に対応する一般管理費率を適用して算出する要があると認められた。

 (低減できた積算額)

 本件各工事について、定期点検工事の工事原価とその付帯工事の工事原価との合計額に対応した一般管理費率を適用して一般管理費を算出したとすれば、総額3億9268万余円となり、前記積算額4億1382万余円を約2100万円低減できたと認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、各発電所において、定期点検工事及びその付帯工事が一体の工事として施行されている状況となっているのに、一般管理費の積算について積算要領等にこれに対応した算定方法が定められていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、電発会社では、8年11月に、定期点検工事及びその付帯工事に係る一般管理費の積算が工事の施行の実態に適合したものとなるよう積算要領等を改正し、これを同年8月に遡及して適用することとする処置を講じた。

 (注)  磯子火力発電所ほか5火力発電所 磯子、高砂、竹原、松島、松浦、石川石炭各火力発電所