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  • 平成7年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第15 日本電信電話株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

交換機の監視試験装置の設計に当たり、既設の装置を活用することにより購入経費の節減を図るよう改善させたもの


(1) 交換機の監視試験装置の設計に当たり、既設の装置を活用することにより購入経費の節減を図るよう改善させたもの

科目 設備投資勘定
部局等の名称 日本電信電話株式会社
監視試験装置の概要 D70形ディジタル交換機等の監視・試験・制御を行う装置
購入物品 監視試験装置 1,063台
購入価額 11,583,498,244円
節減できた購入価額 1億5250万円
<検査の結果>

  支店の機械棟に導入している交換機の監視試験装置の新設に当たり、既設の装置を効率的に活用する経済的な設計を行えば、同装置14台を新設する必要がなくなり、その購入経費約1億5250万円を節減できたと認められた。
 このような事態が生じていたのは、本社において、監視試験装置の経済的な設計について明確に示していなかったこと、支社及び支店の基本設計を担当する部門と工事の実施を担当する部門との連絡が十分でなかったことによると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

  本院の指摘に基づき、日本電信電話株式会社では、平成8年10月に、各支社に対して指示文書を発し、監視試験装置の経済的な設計について周知徹底を図り、所要数の算定が適切に行われるよう指導し、その経済的、効率的な設置が図られるように改めることとする処置を講じた。

1 交換機の監視試験装置の概要

 (交換機と監視試験装置)

 日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)では、電話加入者に対して、音声、データ、画像等の各通信サービスの高度化、多様化に対応した総合ディジタル通信(ISDN)サービスを提供している。また、簡易型携帯電話(PHS)サービスを提供している他の第一種電気通信事業者の通信回線とNTTの通信回線との相互接続を行っている。

 上記のサービス等は、電話加入者用の回線を接続する交換機であるD70形ディジタル交換機又は改良D70形ディジタル交換機(以下、それぞれを「D70交換機」、「改D70交換機」という。)、及びこれらの交換機への接続装置により行われている。
 そして、上記のD70交換機、改D70交換機及びこれらを中継する交換機である改良D60形ディジタル交換機並びに接続装置(以下「交換機等」という。)の監視・試験・制御(以下「監視」という。)を行うため、交換機等が置かれている各支店の機械棟(以下「ビル」という。)に、監視試験装置(以下「監視装置」という。)を設置している。

 (監視装置への交換機等の収容)

 上記のように監視装置によって交換機等の監視を行うためには、監視装置に交換機等を接続(以下「収容」という。)することになる。そして、このうちD70交換機又は改D70交換機を接続装置を含めて監視する場合には、交換機、接続装置及び監視装置の間で監視情報等を相互にやり取りするLAN(Local Area Network)を構築して収容する必要がある。
 監視装置への交換機の収容については、電気通信技術標準実施方法OE10型交換機保守運用装置(STM)設計編(以下「監視装置設計編」という。)によって行うこととなっている。さらに、ビル内の設備に係るLANの設計については、特に電気通信技術標準実施方法交換機用LAN概要編(以下「LAN概要編」という。)も使用することとなっている。
 これらによると、監視装置には交換機等は最大6ユニットまで収容できることとなっているが、LANを構築して交換機等を収容する場合には、その収容する交換機等は交換機の種類により、次のとおりとなっている。

〔1〕 交換機がD70交換機の場合には、交換機は1ユニット、これに接続する接続装置は最大5ユニットまで収容できる(下図1参照)

〔2〕 交換機が改D70交換機の場合には、これに接続する接続装置の数にかかわらず、交換機は最大6ユニットまで収容できる(下図2参照)

 ただし、D70交換機が処理能力向上のために改造され、かつ、これに接続されている接続装置が改良型である場合には、改D70交換機と同様に交換機は最大6ユニットまで収容できる。

ただし、D70交換機が処理能力向上のために改造され、かつ、これに接続されている接続装置が改良型である場合には、改D70交換機と同様に交換機は最大6ユニットまで収容できる。

 (監視装置の所要数の算定)

 支社及び支店(以下「支社等」という。)では、交換機等の新設を行う場合、その基本設計を担当する部門(以下「基本設計部門」という。)において、必要となる監視装置の所要数を算定することとしている。そして、この基本設計に基づき工事の実施を担当する部門(以下「工事実施部門」という。)において、実施設計及び契約業務を行うこととなっている。
 平成7年度に、東京支社ほか10支社(注1) 管内において新設した監視装置は、計1,063台、その購入価額は計115億8349万余円となっている。

2 検査の結果

 (調査の観点及び対象)

 交換機等の新設に伴う監視装置の設置に当たっては、その交換機等の種類及び既設の監視装置への交換機等の収容の状況によっては、既設の監視装置に新設の交換機等を収容することができる場合がある。そこで、7年度における監視装置の新設に当たり、同装置が経済的、効率的に設置されているかに着目して調査した。
 調査は、前記の監視装置1,063台が新設された東京支社ほか10支社の767ビルのうち、監視装置が複数設置されている138ビルを対象として行った。

 (調査の結果)

 調査したところ、既設の監視装置に交換機等が最大ユニット数まで収容されていなかったり、複数の監視装置に収容している交換機等を組み替えて収容すれば余剰の監視装置が生じることになったりしているのに、監視装置を新設しているものが、東京支社ほか4支社(注2) の14ビルにおいて14台見受けられた。
 これらはいずれも、既設の監視装置を効率的に活用すれば新設の交換機等を収容することが可能となり、新たに監視装置を設置する必要がなかったものである。したがって、監視装置の設置について経済的な設計を行う要があると認められた。

<事例>

 東京支社Aビルにおいては、D70交換機に接続する接続装置の新設に伴い、これを監視するために既設の監視装置(下図、監視装置‐1)に加え、更に1台(同監視装置-2)を新設し、これにD70交換機及び接続装置を収容することとして設計していた。
 しかし、既設の監視装置-1は改D70交換機1ユニットのみを収容していて、収容数が6ユニットに達しておらず、また、上記のD70交換機は既に処理能力向上のために改造され、かつ、これに接続されている接続装置が改良型であったことから、既設の監視装置-1に収容可能なものであった。
 したがって、D70交換機と接続装置を既設の監視装置-1に収容する設計とすれば、監視装置-2を新設する要はなかった(下図参照)

交換機の監視試験装置の設計に当たり、既設の装置を活用することにより購入経費の節減を図るよう改善させたものの図1

 (節減できた購入経費)

 上記の14ビルにおいて監視装置の設置に当たり、既設の監視装置を活用する経済的な設計をしたとすれば、監視装置14台(1台当たりの購入単価10,579,600円)の購入経費を約1億5250万円節減できたと認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のようなことによると認められた。

(ア) 本社において、監視装置の所要数の算定に当たり、監視装置を経済的に設計するために必要な監視装置
設計編とLAN概要編との関連を明確に示しておらず、また、これについての十分な指導を行っていなかったこと

(イ) 支社等の基本設計部門において、既設の設備についての状況を十分把握せずに監視装置の所要数を算定していたり、また、工事実施部門において、基本設計部門との連絡が十分でなかったため、監視装置の所要数を見直すことなく実施設計等を行っていたりしていたこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、NTTでは、8年10月に、各支社に対して指示文書を発し、監視装置の経済的な設計について周知徹底を図り、所要数の算定が適切に行われるよう指導し、監視装置の経済的、効率的な設置が図られるように改めることとする処置を講じた。

 (注1)  東京支社ほか10支社 東京、関東、信越、東海、北陸、関西、中国、四国、九州、東北、北海道各支社

 (注2)  東京支社ほか4支社 東京、関東、関西、九州、北海道各支社