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  • 平成7年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第17 九州旅客鉄道株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

旅客車用品リネンサプライ作業の業務委託契約における作業単価の積算を整備作業の実態に適合するよう改善させたもの


 旅客車用品リネンサプライ作業の業務委託契約における作業単価の積算を整備作業の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (款)鉄道事業営業費 (項)運転費
部局等の名称 九州旅客鉄道株式会社本社、長崎、熊本両支社
契約名 旅客車用品リネンサプライ作業ほか2契約(単価契約)
契約の概要 特急列車等の車両に使用するもたれカバー、ひじカバー等の旅客車用品の提供を受けるとともに、これら旅客車用品の運搬、取付け、取外し等の整備作業を委託して行わせるもの
契約の相手方 九州鉄道リネンサービス株式会社
契約 昭和62年4月 随意契約(毎年自動更新)
支払額 887,268,145円(平成6、7両年度)
節減できた委託費 2880万円(平成6、7両年度)
<検査の結果>

  上記の各業務委託契約において、特急列車の車種別の作業単価の積算を整備作業の実態に適合させることにより、委託費を約2880万円節減できたと認められた。
 このような事態が生じていたのは、近年、特急列車において、新型車両の導入や既存車両の改造により、座席にはもたれカバーは付いているがひじカバーは付いていないなどの車両が増加していて、整備作業の内容が変化してきているのに、整備作業の実態に適合した積算の検討が十分でなかったことによると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

  本院の指摘に基づき、九州旅客鉄道株式会社本社では、平成8年10月に、各支社に対して、特急列車の車種別の作業単価の積算を整備作業の実態に適合したものとするよう指示するとともに、本社等では、同年10月までに、業務委託契約を変更し、同年4月に遡及して整備作業の実態に適合した作業単価を適用する処置を講じた。

1 業務委託の概要

 (業務の概要)

 九州旅客鉄道株式会社(以下「JR九州」という。)本社及び長崎、熊本両支社(以下「本社等」という。)では、旅客サービスの一環として、平成6、7両年度に、旅客車用品リネンサプライ作業を九州鉄道リネンサービス株式会社と業務委託契約を締結して実施している。この委託費の支払額は、6年度契約分465,587,604円、7年度契約分421,680,541円、計887,268,145円となっている。

 (旅客車用品リネンサプライ作業)

 旅客車用品リネンサプライ作業は、本社等管内の門司港駅ほか8駅等(注1) の構内(以下「作業箇所」という。)において、特急列車等に使用するもたれカバー、ひじカバー等の旅客車用品の提供を受けるとともに、これら旅客車用品の運搬、取付け、取外し等の整備作業を行わせるものである。

 (特急列車の整備作業費の算定)

 JR九州では、特急列車に使用するもたれカバー、ひじカバーの整備作業費(以下「特急列車の整備作業費」という。)については、JR九州制定の「旅客車用品リネンサプライの予定価格積算標準」に基づいて、作業箇所ごとに、次のとおり算定することとしている。

(ア) 特急列車の車両は、グリーン車、半室グリーン車(注2) 、普通車の車種が同じであっても、車両の形式により、1両当たりの座席数が異なったり、座席にひじカバーが付くものと付かないものがあったりしていることから、形式別の1両当たり整備作業時分(以下「形式別の作業時分」という。)と形式別の1日当たり整備車両数を基にして、車種別の1両当たり整備作業時分(以下「車種別の作業時分」という。)を算出する。

(イ) (ア)の車種別の作業時分を基に車種別の1両当たり作業人工を算出し、これに1人1日当たり労務費を乗ずるなどして、車種別の1両当たり整備作業単価(以下「車種別の作業単価」という。)を算定する。

(ウ) (イ)の車種別の作業単価に車種別の整備車両数を乗ずるなどして、特急列車の整備作業費を算定する。

 そして、本社等では、特急列車の整備作業費について、6年度74,306,981円、7年度62,810,868円、計137,117,849円と算定していた。

2 検査の結果

 (調査の観点)

 特急列車の車両については、民営化以降、車内環境の快適性を向上させるために新型車両の導入や既存車両の改造が積極的に行われているので、これらの車両における整備作業の作業時分が作業の実態に適合したものとなっているかについて調査した。

 (調査の結果)

 調査したところ、特急列車の整備作業費の算定において適用されている車種別の作業時分について、次のような事態となっていた。

(ア) 特急列車の車両については、近年、新型車両や既存車両を改造した車両が増加しており、これら車両の配置両数は、6年度首及び7年度首では、JR九州管内の配置両数それぞれ459両、469両のうち、436両(新型車両217両、改造車両219両)、457両(新型車両255両、改造車両202両)となっている状況であった。
 そして、新型車両は、車内環境の快適性を向上させるために座席が改良され、これに伴って、座席にはもたれカバーは付いているがひじカバーは付いておらず、1両当たりの座席数も既存車両に比べ平均20%程度少なくなっていた。また、既存車両を改造した車両は、1両当たりの座席数は既存車両とほとんど同じであるが、座席のほとんどが新型車両と同様にもたれカバーは付いているがひじカバーは付いていないものとなっていた。

(イ) 特急列車の形式別の作業時分は、座席のひじカバーの取付けの有無や1両当たりの座席数により異なっており、ひじカバー付きでない座席の場合はひじカバー付き座席の場合に比べて半分程度であり、また、1両当たりの座席数が減少するほど少ないものとなっていた。

 そこで、作業箇所において6、7両年度に整備作業を実施した特急列車について、その特急列車の形式別の作業時分及び形式別の1日当たり整備車両数に基づき、車種別の作業時分を算出すると、積算で使用している作業時分に比べ平均で26%程度少ないものとなる。
 したがって、特急列車の整備作業費の算定に当たっては、上記のような整備作業の実態に即して車種別の作業時分を算出し、これにより車種別の作業単価を算定する要があると認められた。

 (節減できた委託費)

 本件業務委託契約における特急列車の車種別の作業単価を整備作業の実態に即して積算したとすれば、特急列車の整備作業費6年度74,306,981円、7年度62,810,868円は、それぞれ57,876,205円、50,359,338円となり、委託費を6年度約1640万円、7年度約1240万円、計約2880万円節減できたと認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、近年、特急列車において、新型車両の導入や既存車両の改造により、整備作業の内容が変化してきているのに、整備作業の実態に適合した積算の検討が十分でなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、JR九州では、次のとおり、特急列車の車種別の作業単価の積算を整備作業の実態に適合したものとする処置を講じた。

(ア) 本社では、8年10月に、各支社に対して指示文書を発し、車種別の作業時分の具体的な算出方法を明示し、特急列車の車種別の作業単価の積算を整備作業の実態に適合したものにするよう指示した。

(イ) 本社等では、同年10月までに、8年度の業務委託契約の変更契約を締結し、同年4月に遡及して整備作業の実態に適合した車種別の作業単価を適用した。

 (注1)  門司港駅ほか8駅等 門司港、吉塚、博多、長崎、熊本各駅、博多、早岐両運転区、南福岡電車区、熊本運転所川尻派出所

 (注2)  半室グリーン車 1両の車両の中に間仕切りを設け、グリーン車用と普通車用の部分に分けた車両