土地 | 日本国有鉄道清算事業団の保有する土地 |
土地の概要 | 旧日本国有鉄道の長期借入金等の長期債務等の償還財源として日本国有鉄道清算事業団に帰属した土地 |
平成7年度末現在の保有土地の面積 | 3490万2千m2 |
土地の時価推定額 | 3兆円 |
(ア) 土地区画整理事業等による面的整備や土地を更地化する基盤整備工事が必要な土地については、地方公共団体等との調整に時間を要していることなどから、面的整備や基盤整備工事が進ちょくしていないため、売却に至っていない状況である。
(イ) 地方公共団体等が随意契約により購入を希望している土地については、当該地方公共団体等において、その財政事情や土地の具体的な利用計画が確定していないことなどから、予算措置を講ずることができなかったため、売却に至っていない状況である。
(ウ) 旧日本国有鉄道当時に第三者に貸し付けていたが事業団に帰属した後も返還されていないなどの土地については、その財産整理が遅延しているため、売却できない状況である。
(エ) 土地の面的整備等が行われるなどした売却可能な土地については、不動産市況の悪化等から、公開競争入札等による土地処分や建物提案方式による提案募集を一時見合わせているなどしているため、売却に至っていない状況である。
ついては、土地処分は不動産市況の悪化等の中で極めて厳しい状況にあるが、事業団において、地方公共団体等との折衝を重ね、土地の面的整備等の促進を図ったり、購入希望土地について売却の促進あるいは別途の処分方法の検討をしたり、関係者と積極的に交渉し財産整理の促進を図ったりするなどの施策を行うことにより、適切な土地処分の促進を図ることが緊要である。
また、事業団の土地処分の促進に当たっては、関係地方公共団体等の協力が不可欠であることにかんがみ、関係地方公共団体等において、土地区画整理事業等の促進などについて、さらに積極的な取組みがなされることが望まれる。
1 土地処分の概要
(長期債務等の概要)
日本国有鉄道清算事業団(以下「事業団」という。)では、日本国有鉄道清算事業団法(昭和61年法律第90号。以下「法」という。)に基づき、旧日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)の長期借入金及び鉄道債券に係る債務その他の債務(以下「長期債務」という。)の償還並びに事業団に帰属した土地、株式等の資産の処分等の業務を行っている。
昭和62年度首の国鉄改革時において、事業団に帰属した長期債務19兆86百億円に、事業団が支払うこととされている日本鉄道共済年金負担金等の将来費用を加えた長期債務等の総額は25兆52百億円となっていた。一方、この長期債務等の償還財源は、土地売却収入7兆70百億円、新幹線鉄道保有機構貸付金(平成3年10月以降は鉄道整備基金貸付金)からの収入2兆88百億円、株式売却収入等1兆16百億円、合計11兆75百億円とされ、差し引き13兆77百億円が償還財源不足とされていた。
そして、土地売却収入等の自主財源を充ててもなお残る長期債務等については、法第31条の規定に基づき、政府が定めた「日本国有鉄道清算事業団の債務償還等に関する基本方針について」(昭和63年1月閣議決定)において、最終的には国において処理するものとされている。
事業団の長期債務等の残高は、次表のとおり、62年度首において25兆52百億円であったものが、土地等の資産の処分が計画どおり進展していないことなどから、平成8年度首では27兆58百億円と2兆05百億円増加していて、債務の償還は進んでいない状況となっている。そして、長期債務等から毎年発生する金利等が多額(7年度においては約1兆32百億円)に上っていることから、土地売却収入等が十分に確保されないと、長期債務等が更に増大することとなる。
(単位:百億円)
年度首現在
\
区分
|
昭和62 | 63 | 平成元 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | |
長期債務等残高 | 2,552 | 2,614 | 2,692 | 2,705 | 2,619 | 2,640 | 2,664 | 2,603 | 2,691 | 2,758 | |
長期債務 | 1,986 | 2,107 | 2,220 | 2,208 | 2,147 | 2,187 | 2,241 | 2,200 | 2,288 | 2,375 | |
将来費用 | 566 | 506 | 472 | 496 | 471 | 452 | 423 | 403 | 402 | 382 |
(事業団における土地処分の方法)
長期債務等の償還財源として事業団に帰属した土地は、昭和62年4月に国鉄及び日本鉄道建設公団から承継した土地8808万4千m2
と、その後平成7年度までに日本鉄道建設公団から承継するなどした土地481万5千m2
どの合計9289万9千m2
となっている。
事業団における土地処分の方法は、法第30条の規定等に基づき、土地処分の公正の確保等の観点から、原則として公開競争入札により行うこととされているが、公共用、公用又は公益事業の用に供するため国等と契約を締結する場合等については、随意契約によることができることとなっている。
しかし、事業団では、地価対策の観点から政府が決定した「緊急土地対策要綱」(昭和62年10月閣議決定)の方針に基づき、国土利用計画法(昭和49年法律第92号)に基づく監視区域内での公開競争入札を、その地域の地価の異常な高騰が沈静化するまで見合わせることとしている。そして、地価を顕在化させない処分方法の検討を行い、平成元年度以降に土地信託方式(注1)
等を導入し、その後、地価が沈静化する中で、地価対策に配慮しつつ購入者のニーズに対応した売却方式の検討を進め、建物提案方式(注2)
等を導入するなど、土地処分の促進のため、多様な土地処分方法を導入してきている。また、入札方式についても検討を進め、平成3年度からは地価に悪影響を与えない入札の仕組みとして上限価格付公開競争入札を導入している。
(注1) 土地信託方式 事業団の所有地を信託銀行に信託して建物の建設等の開発を委ねるとともに、事業団の信託受益権を小口に分割し、一般投資家を対象に公募により売却する方式
(注2) 建物提案方式 事業団が落札企業から土地代相当額を借り入れた上で、提案された土地開発プランに沿って事業団の出資会社が建物を建設し、建物完成時に、土地と建物を同時に企業側に引き渡すとともに、借り入れた土地代相当額を土地代として相殺する方式
(土地処分の実施手順)
事業団における土地処分の実施手順は、一般に、次のように行うこととなっている。
〔1〕 国鉄等から事業団への承継登記等の登記の整理、国鉄当時に第三者に使用承認していた土地で事業団に帰属した後も返還されていない土地の返還、第三者による無断占有の排除等の財産整理を行う。
〔2〕 事業団用地内に鉄道施設等がある場合には、鉄道施設等を撤去したり、他の土地に移転、集約したりして、土地を更地化する基盤整備工事を行う。
〔3〕 街区としての規模が大きく、道路等の都市基盤整備を必要とするなどの大規模な土地については、周辺の土地を含めた一体的な土地利用に関する計画(以下「土地利用計画」という。)の策定を、法第20条の規定に基づき設置された資産処分審議会(以下「審議会」という。)に諮問し、これを策定した上で、土地区画整理事業等による面的整備を行う。
〔4〕 土地の面的整備等が行われるなどして売却可能となった土地については、地方公共団体等に対して土地の取得希望の有無を把握した上で、公開競争入札、随意契約、多様な土地処分方法のいずれかの方法により処分する。この際、日本国有鉄道清算事業団法施行規則(昭和62年運輸省令第22号)第1条に定める重要な資産としての土地(注3) については、土地処分の方法について審議会の意見を聴く。
(注3) 重要な資産としての土地 東京都の区域内の市街化区域では2,000m2 以上、埼玉県、千葉県、神奈川県、京都府、大阪府、兵庫県の区域内の市街化区域では5,000m2 以上、その他の区域では10,000m2 以上の土地
(土地処分終了の目標年次)
事業団における土地処分については、長期債務等から発生する金利等による長期債務等の累増が避けられない状況にかんがみ、「日本国有鉄道清算事業団の債務の償還等に関する具体的処理方針について」(平成元年12月閣議決定)において、処分促進のため所要の措置を講じた上で、9年度までにその実質的な処分を終了するものとしている。
(土地処分の実績)
事業団では、前記のとおり、土地信託方式や建物提案方式等の多様な土地処分方法などを導入するとともに、5年10月、6年12月及び8年2月に「国鉄清算事業団の土地処分推進のためのアクションプログラム」を運輸省と共同で策定するなどして、土地処分の促進を図ってきている。
そして、事業団では、次表のとおり、7年度までに、事業団に帰属した土地9289万9千m2
のうち大宮操車場跡地、新宿貨物駅跡地等の土地5799万7千m2
を、計4兆47百億円(公開競争入札で33百億円、随意契約で3兆34百億円、多様な土地処分方法で78百億円)で売却している。しかし、7年度末現在で、なお3490万2千m2
の土地が未処分となっており、その時価推定額(注4)
は約3兆円と見込まれている。
(注4) 時価推定額 事業団が公示価格又は基準地価格を参考にして算定した土地の評価額
(単位:千m2 、億円)
年度
\
区分
|
昭和62 | 63 | 平成元 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 計 |
面積 | 3,102 | 9,662 | 5,192 | 8,100 | 5,928 | 7,579 | 5,092 | 5,462 | 7,875 | 57,997 |
金額 | 1,327 | 2,035 | 2,490 | 8,109 | 7,772 | 8,936 | 6,238 | 3,913 | 3,885 | 44,710 |
(注)1.建物提案方式による収入(借入金)を含む。
2.建物等の償却資産の収入を除く。
これらの未処分となっている土地3490万2千m2 を現況により分類すると、次のとおりである。
〔1〕 操車場跡地、貨物駅跡地等大規模な土地 | 817万7千m2 |
〔2〕 宿舎跡地等駅周辺の土地 | 747万7千m2 |
〔3〕 旧鉄道林及び廃線敷等の土地 | 1562万1千m2 |
〔4〕 第三セクター鉄道事業者への無償貸付地(注5) | 362万7千m2 |
(注5) 第三セクター鉄道事業者への無償貸付地 第三セクター鉄道事業者への無償貸付地は、法附則第13条の規定により、第三セクター鉄道事業者に対し無償で譲渡することができることとなっている。
2 検査の結果
(調査の観点及び対象)
事業団の長期債務等の処理において、長期債務等から発生する金利等が毎年多額に上っていて、長期債務等の累増が避けられないことから、債務償還の主要な原資となる事業団の土地については、その処分の促進を図ることが緊要となっている。しかし、事業団で保有している土地は、7年度末現在でなお3490万2千m2
に上っており、また、これらの土地の実質的な処分の終了目標年次は9年度とされている。
そこで、上記の未処分のまま保有している土地のうち、重要な資産とされている土地418箇所2467万4千m2
(時価推定額2,620,836百万円)について、その現状及び今後の土地処分の見込み等を調査した。
(調査の結果)
調査したところ、上記の418箇所の土地のうち、8年4月から8月末までに51箇所(うち32箇所は土地の一部を売却)で計67万5千m2
が処分されていた。しかし、これらの土地を除く399箇所の2399万8千m2
(時価推定額2,605,077百万円)については、土地区画整理事業等による面的整備や土地を更地化する基盤整備工事が進ちょくしていなかったり、随意契約による購入を希望している地方公共団体等の財政事情等のため売却に至っていなかったりなどしていた。
これらを、本院の調査の結果に基づき、態様別に分類すると次のとおりである。
(1) 土地区画整理事業等による面的整備が必要なもの
30箇所
292万5千m2 (時価推定額 895,798百万円)
(2) 土地を更地化する基盤整備工事が必要なもの
29箇所
66万6千m2 (時価推定額 400,318百万円)
(3) 地方公共団体等への随意契約による売却が遅延しているもの
112箇所
344万9千m2 (時価推定額 299,983百万円)
(4) 第三者に貸し付けられていた土地が返還されていないなど財産整理が遅延しているもの
24箇所
23万9千m2 (時価推定額 232,875百万円)
(5) 公開競争入札等による処分を一時見合わせるなどしているもの
62箇所
195万9千m2 (時価推定額 128,720百万円)
(6) 建物提案方式等の多様な土地処分方法による処分を予定しているもの
13箇所
36万2千m2 (時価推定額 634,262百万円)
(7) 資産価値が低く、土地の位置、形状等の制約があるもの
177箇所
1439万5千m2 (時価推定額 13,118百万円)
さらに、上記の態様を事例を挙げて詳述すると次のとおりである。
(1) 土地区画整理事業等による面的整備が必要なもの
〔1〕 土地利用計画が策定されていないもの
6箇所
129万0千m2 (時価推定額 377,229百万円)
〔2〕 土地区画整理事業等が実施されていないもの
〔3〕 施行中の土地区画整理事業において仮換地の指定(注6) を受けていないもの
6箇所 | 20万4千m2 (時価推定額 272,565百万円) |
計 30箇所 | 292万5千m2 (時価推定額 895,798百万円) |
これらの箇所は、操車場跡地等の大規模な土地で、道路等の都市基盤の整備を必要とするものであり、一般的に、土地利用計画を策定した上で、土地区画整理事業及び市街地再開発事業により面的整備を行い、土地の付加価値を高めて処分することとしている。
しかし、上記箇所では、それぞれ次のような状況となっていて、土地区画整理事業等による面的整備が進ちょくしていなかった。
〔1〕 鉄道施設等の移転先の地方公共団体が移転に同意していないことや、鉄道高架化の要望をもっている地方公共団体との調整に時間を要していることなどから、土地利用計画が策定されていない。
〔2〕 土地区画整理事業等の事業主体となる地方公共団体等と地元住民との間で、事業施行地区の範囲等の調整に時間を要していることなどから、事業が実施されていない。
〔3〕 土地区画整理事業を実施しているが、換地計画について地権者の同意が得られていないことなどから、仮換地の指定を受けていない。
箇所名 | 所在地 | 土地面積 |
梅田駅(北) | 大阪府大阪市 | 20万2千m2 |
本件土地は、大阪駅北口に所在する20万2千m2
の土地であり、現在は日本貨物鉄道株式会社の梅田貨物駅の用地に供されている。そして、この土地は、梅田貨物駅を吹田操車場(昭和59年廃止)跡地に移転させた上で、処分することになっている。
しかし、事業団では、62年から移転先の吹田、摂津両市と貨物駅移転の協議を行っているが、両市では、貨物駅の移転により市民の生活環境が悪化することなどを理由に、移転に同意していないことから、移転計画は進ちょくしていない。このため、本件土地の土地利用計画の策定について審議会への諮問が行われていない状況である。
箇所名 | 所在地 | 土地面積 |
鷲宮貨物ターミナル | 埼玉県北葛飾郡鷲宮町 | 13万4千m2 |
本件土地は、東鷲宮駅の東側に所在する貨物ターミナル跡地13万8千m2
のうち13万4千m2
の土地である。そして、この土地は、鷲宮町の要望により、周辺の民有地を含めて土地区画整理事業により面的整備を実施することになっている。
しかし、同町では、平成元年度から4年度までに、基本計画や事業計画等の作成のため土地区画整理事業調査を実施したが、その後、地元住民との間で事業施行地区の範囲や道路等の公共施設の配置計画の調整などに時間を要している。このため、事業認可の前提となる都市計画決定が行われていないことから、土地区画整理事業が施行されていない状況である。
なお、残りの土地4千m2
については、同町から随意契約による購入希望が出されているが売却に至っていない。
箇所名 | 所在地 | 土地面積 |
汐留駅 | 東京都港区 |
8万4千m2 |
本件土地は、新橋駅の東側に所在する汐留貨物操車場跡地19万6千m2
のうち8万4千m2
の土地である。そして、この操車場跡地は、周辺の民有地等を含めて汐留土地区画整理事業(7年3月事業認可)により、面的整備を実施することになっている。
しかし、本件土地については、6年2月から、事業主体である東京都と周辺の民有地の地権者との間で仮換地の調整を行っているが、その調整が難航していることなどから、仮換地の指定を受けていない状況である。
なお、残りの土地11万1千m2
については、8年3月に、減歩(注7)
により5万2千m2
となった土地の仮換地の指定を受けており、この土地は売却条件等について関係地方公共団体等と調整を行うなどした上で、建築計画誘導方式(注8)
により売却を行う予定となっている。
(注6) 仮換地の指定 従前の土地について、将来、換地として定められるべき土地の位置・範囲を仮に指定するもの。この指定によって元の土地にあった所有権、地役権を除くすべての権利が換地に移り、以後換地処分の公告まで継続してこの仮換地を使用し、収益することとなる。
(注7) 減歩 土地区画整理事業において、道路、公園等の公共施設及び保留地を生み出すため、施行地区内の土地から一定の割合で土地の面積を減じること
(注8) 建築計画誘導方式 土地購入希望者から土地利用及び建物計画案の提出を求め、その内容について地区の一体的な建築計画を誘導するために事業団が提示した売却条件との整合性を確認のうえ、入札参加資格者を決定し入札を行う方式
(2) 土地を更地化する基盤整備工事が必要なもの
これらの箇所は、事業団の所有地内に線路等の鉄道施設や事務所等の建物があるため、これら鉄道施設等を撤去したり、他の土地に移転、集約したりする基盤整備工事により土地の更地化をするなどした上で、処分することになっている。
しかし、鉄道施設等を移設する鉄道高架化事業の完了に長期間を要することなどから、基盤整備工事を行うことができないなどのため、土地が売却できない状況である。
箇所名 | 所在地 | 土地面積 |
姫路駅 | 兵庫県姫路市 | 5万8千m2 |
本件土地は、姫路駅に所在する5万8千m2
の土地であり、現在は姫路駅構内の山陽本線等の線路、姫路駅等の用地に供されている。そして、この土地は、山陽本線等の線路及び姫路駅を鉄道高架化事業(事業主体は兵庫県)により移設した後、更地化した上で、処分することになっている。
しかし、上記の事業は、2年12月に着手されているものの、鉄道高架化の工事区間が駅部を含む6.6kmと事業規模が大きく、事業費も506億円(うち国庫補助金予定額215億円)と多額に上り、事業の完了に長期間を要することから、現在も工事中であり、線路等の移設が完了していないため、土地が売却できない状況である(2万1千m2
は9年度に、3万7千m2
は13年度に更地化の予定)。
(3) 地方公共団体等への随意契約による売却が遅延しているもの
これらの箇所は、事業団が毎年度実施している土地購入希望調査等において、地方公共団体等から随意契約による購入希望が出されているが、地方公共団体等では、財政事情や土地の具体的な利用計画が確定していないことなどから、予算措置を講ずることができなかったため、土地の売却に至っていない状況である。
箇所名 | 所在地 | 土地面積 |
大船工場 | 神奈川県鎌倉市 | 8万0千m2 |
本件土地は、大船駅の南西約2.5kmに所在する車両工場跡地8万0千m2
の土地で、鎌倉市から随意契約による購入希望が出されている。
しかし、同市では、財政事情や、この土地の具体的な利用計画を策定中であることから、8年7月に事業団に提出した土地購入計画書において、事業団の土地処分の目標年次である9年度までに購入することを明確にできない状況である。
なお、同市では、7年度に当該土地に隣接する車両工場跡地の一部(1,910m2
)を購入している。
(4) 第三者に貸し付けられていた土地が返還されていないなど財産整理が遅延しているもの
これらの箇所は、国鉄当時に第三者に貸し付けた土地が事業団に帰属した後も返還されていなかったり、第三者に無断で占有されていたり、土地の境界が未確定であることなどのため国鉄等から事業団への承継登記が行われていなかったりなどしていて、財産整理が遅延していることから、土地の売却ができない状況である。
箇所名 | 所在地 | 土地面積 |
東京駅八重洲(北) | 東京都千代田区 | 1万5千m2 |
本件土地は、東京駅八重洲北口に所在する1万5千m2
の土地であり、このうち3千m2
は、国鉄時代に株式会社国際観光会館に建物敷地等として使用承認により貸し付けていたもので、事業団に承継された後は、原状回復の上で返還されることとなっている。
しかし、上記会社では、土地の継続使用を希望していて返還に応じていないため、事業団では、6年10月に提訴し、現在も係争中であることから、土地の売却ができない状況である。このため、一体として売却することになっている残りの土地1万2千m2
も売却できない状況である。
(5) 公開競争入札等による処分を一時見合わせるなどしているもの
これらの箇所は、公開競争入札等により土地処分を行うこととなっている。しかし、土地の位置、形状、用途地域等の制約や不動産市況の悪化等から、公開競争入札等による土地処分を検討中であったり、公開競争入札において不調等となったため再度の入札を一時見合わせていたりなどしているため、土地の売却に至っていない状況である。
箇所名 | 所在地 | 土地面積 |
高砂工場 | 兵庫県高砂市 | 39万1千m2 |
本件土地は、高砂市に所在する車両工場跡地39万1千m2
の土地で、基盤整備工事により7年3月に更地化されている。
しかし、この土地は、工場群に囲まれていて進入道路がなく、また、用途地域が工業専用地域とされていて用途が限られていることなどの制約があることから、売却に至っていない状況である。
(6) 建物提案方式等の多様な土地処分方法による処分を予定しているもの
これらの箇所は、駅周辺等に所在する中規模な土地であり、建物提案方式等の多様な土地処分方法により土地処分を行うこととなっている。
しかし、不動産市況等の低迷から建物提案方式による提案募集を一時見合わせていたり、土地処分に向けて売却条件等について地方公共団体等と調整中であったりなどしているため、土地の売却に至っていない状況である。
箇所名 | 所在地 | 土地面積 |
湊町駅 | 大阪府大阪市 | 2万9千m2 |
本件土地は、旧湊町駅(貨物駅)の跡地2万9千m2
の土地で、土地区画整理事業において、6年10月に、減歩により2万1干m2
となった土地の仮換地の指定を受けている。
しかし、この土地は、7年6月に、審議会において、建物提案方式により処分することが決定されているが、不動産市況の悪化等から建物計画の提案応募が見込めないため、提案募集を一時見合わせて、売却に至っていない状況である。
(7) 資産価値が低く、土地の位置、形状等の制約があるもの
これらの箇所は、鉄道建設工事を途中で中止した工事保留線跡地、線路改良による廃線敷及び旧鉄道林等である。
しかし、これらの土地は、資産価値が低く、公道への接続条件が悪かったり、形状が帯状であったり、山中の傾斜地であったりなどしているため、売却に至っていない状況である。
3 本院の所見
事業団では、前記で述べたように土地信託方式等の多様な土地処分方法などを導入するとともに、「国鉄清算事業団の土地処分推進のためのアクションプログラム」を策定するなどして土地処分の促進を図ってきている。しかし、上記のように、関係地方公共団体、関係住民等の協力が十分に得られないなどのため土地の面的整備等が遅延していることや不動産市況の悪化等により土地需要が低迷していることなどから、土地処分は計画どおり進ちょくしておらず、多数の土地が未処分のままとなっている状況である。
そして、事業団による土地処分については、実質的な土地処分の終了目標年次である9年度が目前に迫っており、土地の早期処分が図れないまま推移すると、長期債務等から発生する金利等により長期債務等残高が累増し、償還財源不足となる額は事業団発足時の13兆77百億円に比べ相当多額になることが見込まれる状況である。
ついては、土地処分は不動産市況の悪化等の中で極めて厳しい状況にあるが、事業団において、次のような施策を行うことにより、適切な土地処分の促進を図ることが緊要である認められる。
(ア) 面的整備や基盤整備工事が進ちょくしていない前記(1)及び(2)の土地については、関係地方公共団体等と粘り強く協議して早急に土地利用計画の具体化を図ったり、土地区画整理事業等の事業主体となる地方公共団体等に対して、早期に事業が実施されるよう積極的に要請したりなどし、土地の面的整備等の促進を図る。
(イ) 地方公共団体等が随意契約により購入を希望している前記(3)の土地については、当該地方公共団体等に対して、9年度までに購入するよう、なお一層緊密な連絡調整を行う。また、地方公共団体等が9年度までに購入することを明確にしていない土地については、当該地方公共団体等と協議して別途の土地処分の方法を検討するなどし、土地の早期処分を図る。
(ウ) 財産整理が遅延している前記(4)の土地については、9年度までに土地処分が可能となるよう、関係者との間でなお一層積極的に交渉するとともに、交渉による解決が極めて困難なものについては法的措置も念頭に置き、財産整理の早期処理を図る。
(エ) 土地の面的整備等が行われるなどした売却可能な土地については、不動産市況の動向等を常に的確に把握し、弾力的に処分方法の検討を行う。
また、事業団の土地処分の促進に当たっては、関係地方公共団体等の協力が不可欠であることにかんがみ、関係地方公共団体等において、土地区画整理事業等の促進、事業団の保有する土地の公有地としての早期利活用などについて、さらに積極的な取組みがなされることが望まれる。