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  • 平成7年度|
  • 第3章 特定検査対象に関する検査状況

国庫補助事業に係る事務費の執行について


第2 国庫補助事業に係る事務費の執行について

(1) 本院では、昨年、食糧費を巡る問題について社会的関心も高かったことから、農林水産省、運輸省及び建設省所管の公共事業に係る国庫補助事業の事務費のうちの食糧費について検査を実施した。その結果、これら3省では、本院の指摘に基づき、都道府県に対し食糧費の使用及び経理処理を適切に行わせる改善の処置を講じるとともに、非公共事業についてもこれに準じて改善の処置を講じた。しかし、これら3省以外の省庁についても、食糧費の使用及び経理処理に関する所管省庁の対応状況などを把握する要がある。
 また、事務費のうちの旅費等の執行に関し、一部の都道府県において、架空の名目による経理処理が行われていた問題が提起され内部調査が行われるなど、旅費等の執行については、社会的関心が高いものとなっている。

(2) このようなことを踏まえ、本院が実施した検査の状況は、次のとおりである。

(ア) 食糧費については、上記の3省以外の省庁では、昨年の本院の指摘などを踏まえ、食糧費の使用及び経理処理を適切に行うよう都道府県に対し通達を発するなどの処置を執っており、改善の処置が講じられているものと認められた。したがって、本院としては、今後、都道府県においてその徹底が図られているか厳正に見守っていくこととする。

(イ) 旅費等の執行については、47都道府県からの内部調査の取り組み状況などの報告によれば、北海道ほか5県において不適正な経理処理が行われていた。これら6道県については、平成8年10月末現在で、次のような状況となっている。

 北海道については、道及び所管省庁の報告によれば、国庫補助金3億4281万余円が返還又は減額されたほか、698万余円が返還又は減額されることになっている。また、宮城県ほか4県については、各県の報告によれば、国庫補助事業との関連や国庫補助金の返還額を検討している。
 そして、これら6道県については、なお内部調査が継続して行われており、また、他の都府県においても内部調査が行われているものがある。したがって、本院としては、今後、都道府県における内部調査による実態解明の推移を注視するとともに、これに関連する国庫補助事業について、都道府県及び所管省庁から報告を受けその内容を調査検討することとする。

(3) 本院では、食糧費及び旅費等の事務費の執行については、社会的関心が高く、厳正な経理処理が求められているので、今後とも、国庫補助事業に係る事務費の執行について、十分留意して検査に努めることとする。

1 検査の背景

 本院では、昨年、食糧費を巡る問題について社会的関心も高かったことから、農林水産省、運輸省及び建設省の所管する公共事業に係る国庫補助事業の事務費のうちの食糧費について検査を実施した。その結果、食糧費の使用が国庫補助事業の実施のために直接必要であるか否か判然としていなかったり、食糧費の経理処理が明確でなかったりなどしている事態が見受けられたので、上記の3省に対し、食糧費、なかでも懇談会の経費について国庫補助の対象となる範囲を具体的に定め、審査・確認などを十分行うよう指摘した。本院の指摘に基づき、上記の3省では、都道府県に対し通達を発するなどして、原則として懇談会の経費は補助の対象としないこととするなど食糧費の使用及び経理処理を適切に行わせる改善の処置を講じた。そして、これら3省では、所管する非公共事業に係る国庫補助事業の食糧費についても公共事業に準じて改善の処置を講じた。しかし、これら3省以外の省庁の所管する公共事業及び非公共事業に係る国庫補助事業についても、食糧費の使用及び経理処理に関する所管省庁の対応状況などを把握する要がある。
 また、事務費のうちの旅費等の執行に関し、一部の都道府県において、架空の名目で旅費等を支出するなどの経理処理が行われていた問題が提起され、これを契機に当該都道府県による内部調査が行われるなど、旅費等の執行については、社会的関心が高いものとなっている。
 このような状況を踏まえ、本院では、国庫補助事業に係る事務費の執行について、検査を実施した。

2 検査の観点及び範囲

(1) 食糧費については、所管省庁が、国庫補助事業に係る食糧費の使用及び経理処理に関し必要な処置を執っているかという観点から、昨年検査を実施した3省以外の省庁(注1) を対象に、その所管する公共事業及び非公共事業に係る国庫補助事業について、当該省庁における対応状況を把握し検討する。

(2) 旅費等の執行については、国庫補助事業に係る旅費等の経理処理が適正に行われているかという観点から、都道府県における内部調査の取り組み状況などについて報告を求め、国庫補助事業に関連するものについては所管省庁から報告を受けるなどして、旅費等の執行状況を把握する。

3 検査の状況

(1) 食糧費について

 昨年食糧費について検査を実施した3省以外の省庁から、当該省庁が所管する公共事業及び非公共事業に係る国庫補助事業について、食糧費の使用及び経理処理に関し対応状況の報告を受け、各省庁における対応状況が適切なものとなっているかを検討した。その結果、所管省庁では、昨年の本院の指摘などを踏まえ、都道府県に対し、原則として懇談会の経費は補助の対象としないこととするなどを内容とする通達を発したり、会議等において経理処理を明確に行うよう指導したりするなどの処置を執っており、改善の処置が講じられているものと認められた。
 したがって、本院としては、今後、都道府県において、通達等の趣旨に沿った食糧費の適切な使用及び明確な経理処理の徹底が図られているか厳正に見守っていくこととする。

(2) 旅費等の執行について

 47都道府県から、旅費等の執行に関する内部調査の取り組み状況などについて報告を受けた。これらの報告によれば、北海道ほか5県(注2) において旅費等の執行に関して不適正な経理処理が行われていた。
 これら6道県については、平成8年10月末現在で、次のような状況となっている。

(ア) 北海道については、道の報告によれば、4年4月から7年10月までの旅費、使用料及び賃借料等の執行に関して20億3044万余円の不適正な経理処理が行われていた。そして、これに関連する4年度から7年度までの国庫補助事業(事業費6億3567万余円(交付金及び委託費を含む。))について、国庫補助金3億4281万余円が返還又は減額されたほか、698万余円が返還又は減額されることになっている。また、これらの国庫補助事業の所管省庁(注3) からも上記の道の報告と同様の報告を受けた。

 そして、本院が、北海道に対する実地検査の際、実績報告書、経理関係書類等に基づき、上記の不適正な経理処理が行われた国庫補助事業について、その一部を抽出して国庫補助金の返還額等の確認を行った範囲においては、これらの報告について特に指摘する事態は見受けられなかった。

(イ) 宮城県ほか4県については、各県の報告によれば、5年4月から8年7月までの旅費、賃金等の執行に関して計35億7987万余円の不適正な経理処理が行われ、各県においては、国庫補助事業との関連を検討したり、国庫補助金の返還額を検討したりしている。

 そして、北海道ほか5県については、なお内部調査が継続して行われており、また、他の都府県においても旅費等の執行に関して内部調査が行われているものがある。
 したがって、本院としては、このような動向を踏まえ、今後、都道府県における内部調査による実態解明の推移を引き続き注視するとともに、これに関連する国庫補助事業について、都道府県及び所管省庁から報告を受けたうえでその内容を調査検討することとする。

 本院では、食糧費及び旅費等の事務費の執行については、社会的関心が高く、厳正な経理処理が求められているので、今後とも、国庫補助事業に係る事務費の執行について、十分留意して検査に努めることとする。

 (注1)  3省以外の省庁 総理府(総務、防衛(防衛施設)、科学技術、環境、国土各庁)、文部、厚生、通商産業、労働、自治各省

 (注2)  北海道ほか5県 北海道、宮城、秋田、新潟、三重、鹿児島各県

 (注3)  所管省庁 総理府(総務、国土両庁)、農林水産、運輸、建設各省