会計名及び科目 | 港湾整備特別会計(港湾整備勘定) (項)北海道港湾事業費 |
部局等の名称 | 北海道開発局帯広開発建設部 |
工事名 | (1) | 十勝港−8.0m岸壁外一連その2工事 |
(2) | 十勝港−12.0m岸壁外一連工事 |
工事費 | (1) | 585,257,000円 | (当初契約額536,630,000円) |
(2) | 248,071,000円 | (当初契約額246,685,000円) | |
計 | 833,328,000円 |
請負人 | (1) | 拓殖・北興経常建設共同企業体 |
(2) | 拓殖・堀松・濱谷経常建設共同企業体 | |
契約 | (1) | 平成7年3月 指名競争契約 |
(2) | 平成8年8月 指名競争契約 | |
しゅん功検査 | (1) | 平成7年9月 |
(2) | 平成8年12月 | |
支払 | (1) | 平成7年4月〜10月 3回 |
(2) | 平成8年8月、12月 2回 | |
不適切な設計となっている工事費 | (1) | 20,549,000円 |
(2) | 18,547,000円 | |
計 | 39,096,000円 | |
1 工事の概要
これらの工事は、北海道開発局帯広開発建設部が、十勝港の港湾整備事業の一環として、 水深8mを確保する−8m岸壁(延長261.14m)及び水深12mを確保する−12m岸壁(延長250.61m)を築造するため、平成6年度から8年度までに、ケーソン(注) 式岸壁の上部工及び付属工等を工事費計833,328,000円で実施したものである。このうち、上部工は、(1)工事で−8m岸壁の全延長261.14m及び−12m岸壁の延長40.1m、(2)工事で−12m岸壁の延長210.51mについて、現場に据え付けられたケーソンの上部にコンクリートを打設するもので、また、付属工は、一部の上部工に係船柱を取り付けるものなどである(参考図参照) 。
上部工の設計計算書によれば、岸壁に係留されている船舶が係船柱を引張る力(以下「けん引力」という。)は、−8m岸壁では50t、−12m岸壁では70tで、それぞれ係船柱に作用したときに上部工が安定を保つことを設計条件としている。この設計条件に基づき、基本設計においては、係船柱が取り付けられた上部工(以下「係船柱取付部上部工」という。)については、係船柱に作用するけん引力に対して係船柱取付部上部工の重量で抵抗することとし、係船柱取付部上部工の長さをケーソンの横幅(−8m岸壁では15m又は20m、−12m岸壁では20m)と同じとすることとしてその重量を算定していた。
また、細部設計においては、係船柱取付部上部工の長さをケーソンの横幅と同じ長さとするとき裂が生じる恐れがあるとして、係船柱取付部上部工を4.5mから5.1mごとに目地を設けて分割してコンクリートを打設することとしていた。この場合、分割された係船柱取付部上部工の重量だけでは、けん引力に対して抵抗できなくなるため、係船柱取付部上部工とケーソンとを鉄筋で連結させることにした。その結果、係船柱取付部上部工とケーソンとが一体構造となり、これによりけん引力が係船柱に作用した場合において、安定計算上安全であるとしていた。
2 検査の結果
検査したところ、係船柱取付部上部工の配筋図を作成する際に、ケーソンと連結させるための鉄筋を誤って図示しておらず、この鉄筋を施工しなかったため、係船柱取付部上部工とケーソンとは一体構造となっていなかった。
そこで、本件係船柱取付部上部工とケーソンとが一体構造となっていない状態について、改めて安定計算を行うと、けん引力の作用時において、滑動に対する安定の安全率は0から0.125、転倒に対する安定の安全率は0.362から0.483となり、それぞれの許容値1.0及び1.1を大幅に下回る結果となっている(参考図参照) 。
したがって、本件係船柱取付部上部工((1)工事延長45.35m、(2)工事延長39.75m、計延長85.1m)は、設計が適切でなかったため不安定な状態になっており、(1)工事の工事費20,549,000円、(2)工事の工事費18,547,000円、計工事費39,096,000円が不当と認められる。
(注)
ケーソン 岸壁等の工事では、所定の個数の鉄筋コンクリート製の中空の箱をあらかじめ製作し、これを逐次現場にえい航して沈め、中に砂などを詰めて岸壁の主体とする工法が用いられている。この鉄筋コンクリート製の箱をケーソンという。