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  • 平成8年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第4 文部省|
  • 不当事項|
  • 予算経理

架空の名目により旅費、謝金等を支出させ、これを別途に経理して目的外の用途に充てるなどしていたもの


(29)−(32) 架空の名目により旅費、謝金等を支出させ、これを別途に経理して目的外の用途に充てるなどしていたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)文部本省 (項)文部本省
(項)教育統計調査費
(項)生涯学習振興費
(項)義務教育教科書費
(項)学校教育振興費
(項)体育振興費
(組織)文化庁 (項)文化庁
部局等の名称 青森、滋賀、和歌山、大分各県
旅費、謝金等の概要 文部省が各都道府県教育委員会に委嘱又は委託して実施する教育関係事業等のために、都道府県が同省から支出負担行為及び支出の事務の委任を受けて支出する出張旅費、講師謝金等
上記の部局に対する旅費、謝金等の示達額
1,556,939,000円 (平成4〜8年度)
不正に支出された旅費、謝金等の額 539件 48,461,581円 (平成4〜8年度)

 上記4県の教育委員会において、架空の名目により関係書類を作成するなどして、文部省から教育関係事業等の経費として示達された旅費、謝金等を各県の出納部局に不正に支出させていたものが、計539件、48,461,581円あった。そして、これら4県の教育委員会では、不正に支出させた旅費、謝金等を別途に経理し、教育関係事業等の実施とは直接関係のない臨時雇用者の賃金、物品購入費、会食費、会議費等の支払に充てるなどしていた。
 このように、上記の4県において実施された教育関係事業等の経理は、著しく適正を欠いていると認められる。

1 事業の概要

(文部省委嘱等事業)

 文部省(文化庁を含む。以下同じ。)では、学校教育、社会教育、学術及び文化の振興並びに普及を図ることを目的として、多数の教育関係事業等を各都道府県教育委員会に委嘱又は委託して実施している。

 これらの事業(以下「文部省委嘱等事業」という。)の内容は、教員が学習指導上の問題を研究協議するための研究集会の開催、教育委員会・学校・PTA等の関係者が生徒指導上の諸問題について情報交換等を行うための協議会の開催、時代の要請に対応した教育方法に関する実践的な調査研究の実施などとなっている。

(事業経費の経理)

 文部省では、文部省委嘱等事業の実施に要する旅費、謝金等の経費(以下「事業経費」という。)を同省所管の歳出予算から直接支弁することにしている。その予算執行手続については、会計法(昭和22年法律第35号)第48条の規定等に基づき、旅費及び謝金の支給決定や、各種契約の締結等の支出負担行為に関する事務を各都道府県教育委員会の教育長に、また、それらの支出負担行為に基づいて行う事業経費の支出に関する事務を各都道府県の出納長に委任している。

 そして、文部省では、毎年度、事業経費として同省所管の歳出予算から一定の額を各都道府県教育委員会の教育長に示達(注) して、その示達を受けた予算額に係る支出負担行為及び支出の事務を各都道府県の教育委員会及び出納部局にそれぞれ行わせている。

(事業経費の示達額)

 青森、和歌山両県の教育委員会において平成6年度から8年度までの3箇年度に、また、滋賀、大分両県の教育委員会において4年度から8年度までの5箇年度に、文部省から事業経費として示達を受けた額は、計1,556,939,000円となっている。

(注)  示達 支出負担行為担当官(本件の場合、各都道府県教育委員会の教育長)に、支出負担行為を行うことができる歳出予算の枠(支出負担行為計画)を通知すること

2 検査の結果

 上記青森県ほか3県の教育委員会において実施された文部省委嘱等事業について、事業の執行及び事業経費の経理処理の状況を検査した。

 その結果、各県の教育委員会において、架空の名目により旅行命令書、旅費請求書、謝金等内訳書、支出負担行為決議書等の関係書類を作成して、出張の事実がないのに出張したこととしたり、謝金を支払う予定がないのに支払うこととしたりなどし、これにより旅費、謝金等を出納部局に不正に支出させていたものがあった。このように不正に支出させたものの支出負担行為決議の件数及び不正支出額は、計539件、48,461,581円である。

 そして、上記4県の教育委員会では、これらの不正支出額のうち、謝金等に係る源泉所得税相当額等を控除した47,089,571円を、各種会議の参加者から徴収した費用の残額等2,231,411円と合わせて別途に経理していた。その使途について、各県の教育委員会が保管していた帳簿、領収証書その他関係資料等により調査したところ、計45,576,722円を、文部省委嘱等事業の実施とは直接関係のない臨時雇用者の賃金、物品購入費、会食費、会議費等に使用するなどし、会計実地検査当時残りの3,744,260円を現金又は銀行預金で保有していた。

 上記の事態は、各県の教育委員会において、会計法令に違反した不正な経理を長期にわたり継続し、ねん出した資金を本来の事業目的とは直接関係のない用途に使用するなどしていたもので、経理が著しく適正を欠いていると認められる。
 これを県別に示すと、別表のとおりである。

(別表)

  事業実施部局名 年度 事業経費の示達額 不正支出額 別途経理額 使用済額
(主な使途別額等)
会計実地検査時の保有残高

(29)

青森県教育委員会

6〜8

171,578,000

123

9,492,716

9,312,916

9,312,916

-
臨時雇用者の賃金
8,520,727
物品購入費
761,400
(30) 滋賀県教育委員会 4〜8 467,685,000 125 6,166,780 7,826,151 5,160,711 2,665,440
会食費
1,404,693
臨時職員に対する謝礼
375,000
(31) 和歌山県教育委員会 6〜8 410,125,000 230 30,744,875 30,145,755 29,066,935 1,078,820
物品購入費
4,761,746
会議費
3,742,207
会食費
3,333,827
(32) 大分県教育委員会 4〜8 507,551,000 61 2,057,210 2,036,160 2,036,160 -
タクシー代、会食費等
2,036,160
(29)-(32)の計
1,556,939,000 539 48,461,581 49,320,982 45,576,722 3,744,260
(注1) 滋賀県の別途経理額には、各種会議の参加者から徴収した費用の残額等2,231,411円を含む。
(注2) 主な使途別額の一部には、その事実を裏付けるに足る資料がなく、会計実地検査終了後に各県の教育委員会が行った調査において関係職員が申告した内容に基づくものを含む。なお、大分県教育委員会については、関係職員の申告によっても使途別内訳までは把握することができなかったので、合計額を記載した。