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国民健康保険の療養給付費負担金の交付が不当と認められるもの


(129)−(137) 国民健康保険の療養給付費負担金の交付が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生本省 (項)国民健康保険助成費
部局等の名称 厚生本省(交付決定庁)
北海道ほか3都県(支出庁)
交付の根拠 国民健康保険法(昭和33年法律第192号)
交付先 5市、4特別区(保険者)
療養給付費負担金の概要 市町村等の国民健康保険事業運営の安定化を図るために交付するもの
上記に対する国庫負担金交付額の合計 128,070,915,590円 (平成6、7両年度)
不当と認める国庫負担金交付額 128,200,138円 (平成6、7両年度)
 上記の、9市区において、国民健康保険の療養給付費負担金の交付申請に当たり、一般被保険者に係る医療給付費の算定において一部負担金の減免額を誤って含めていたり、遡及して退職被保険者等となった者に係る医療給付費を誤って控除していなかったり、負担軽減措置の対象となる医療給付費の減額調整を誤っていたりしていた。また、これに対する上記4都道県の審査が十分でなかった。このため、国庫負担金128,200,138円が過大に交付されていて不当と認められる。

1 負担金の概要

(国民健康保険の療養給付費負担金)

 国民健康保険は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)等が保険者となって、被用者保険の被保険者及びその被扶養者等を除き、当該市町村の区域内に住所を有する者等を被保険者として、その疾病、負傷、出産又は死亡に関し、療養の給付、出産育児一時金、葬祭費の支給等の給付を行う保険である。

 国民健康保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村が行う国民健康保険事業運営の安定化を図るため、療養給付費負担金(以下「国庫負担金」という。)が交付されている。

(国庫負担金の交付対象)

 市町村の国民健康保険の被保険者は、一般被保険者と退職被保険者(注1) 及びその被扶養者(以下「退職被保険者等」という。)とに区分されている。

 このうち、一般被保険者に係る医療費については、老人保健法(昭和57年法律第80号)による医療を受けることができる者を除き、国庫負担金の交付の対象とされている。

 一方、退職被保険者等に係る医療費については、国庫負担金の交付の対象とはせずに、被用者保険の保険者が拠出する療養給付費交付金等で負担されている。

(注1)  退職被保険者 被用者保険の被保険者(給付割合9割)であった者で、退職して国民健康保険の被保険者(同7割)となり、厚生年金等の受給資格がある場合に老人保健法による医療を受けるまでの間において適用される資格を有する者である。そして、退職被保険者に対する給付割合は8割となっている。

(国庫負担金の算定方法)

 毎年度の国庫負担金の交付額は、「国民健康保険の国庫負担金及び被用者保険等保険者拠出金等の算定等に関する政令」(昭和34年政令第41号)等により、次により算定することとなっている。

毎年度の国庫負担金の交付額は、「国民健康保険の国庫負担金及び被用者保険等保険者拠出金等の算定等に関する政令」(昭和34年政令第41号)等により、次により算定することとなっている。

(注) 市町村が一般被保険者の属する世帯のうち、低所得者層の負担の軽減を図るため減額した保険料又は保険税の総額について当該市町村の一般会計から国民健康保険に関する特別会計に繰り入れた額の2分の1相当額

 このうち、一般被保険者に係る医療給付費は、療養の給付に要する費用の額から当該給付に係る一部負担金に相当する額を控除した額並びに入院時食事療養費、特定療養費、療養費、訪問看護療養費、特別療養費、移送費及び高額療養費の支給に要する費用の額の合算額であり、その算定については、次のとおり行うものとされている。

(ア) 一部負担金に相当する額(以下「一部負担金相当額」という。)は、被保険者が療養の給付を受ける際に一部負担金として支払うこととされている、療養の給付に要する費用の額に10分の3を乗じて得た額である。
 したがって、市町村が世帯主の申請に基づき災害や失業などにより一部負担金の支払が困難と認めた者に対して、一部負担金の減額又は免除(以下「減免」という。)をする場合においても、一部負担金相当額は、減免後の一部負担金額ではなく、減免額を含めた額である。

(イ) 国民健康保険の被保険者の資格を取得している者が、退職被保険者となるのは、当該被保険者の年金受給権を取得した日(ただし、年金受給権の取得年月日が国民健康保険の資格取得年月日以前の場合は国民健康保険の資格取得年月日。以下「退職者該当年月日」という。)とされている。そして、当該年度において、退職被保険者等の資格が遡って発生することが確認された場合は、一般被保険者の医療給付費から、退職者該当年月日以降に一般被保険者に係るものとして支払った医療給付費を控除して計算することとなっている。

 この計算は、当該被保険者が退職者該当年月日以降に支払った一部負担金のうち、一般被保険者(給付割合7割)と退職被保険者等(本人同8割、被扶養者入院同8割等)との給付割合の差額分を特例療養費として支給されたときだけではなく、申請がなかった場合など特例療養費が支給されなかったときにも同様に行うものである。

(ウ) 都道府県又は市町村が、国の負担金等の交付を受けずに自らの負担で、年齢その他の事由により被保険者の全部又は一部について、その一部負担金相当額の全部又は一部を当該被保険者に代わり、保険医療機関等に支払うこととしている措置(以下「負担軽減措置」という。)を行っている場合がある。

 この負担軽減措置の対象者の延べ人数が一定の規模以上の場合には、負担軽減措置の対象となる医療給付費に、被保険者の負担の軽減の度合いに応じて、0.9863から0.8427(一部負担金相当額の全額を都道府県又は市町村が自らの負担で支払う場合)までの率(以下、この率を「調整率」という。)を乗じて減額調整(注2) をすることとされている。

(注2)  減額調整 被保険者が医療機関等の窓口で支払う一部負担金を軽減させると、一般的に受診が増え医療給付費の波及増が認められるとされている。この波及増により増加した医療給付費を国庫負担対象費用額に含めると、他の市町村との公平を欠くことから、波及増の分を減額して医療給付費を算定することになっている。

(交付手続)

 国庫負担金は、〔1〕 交付を受けようとする市町村は都道府県に交付申請書を提出し、〔2〕交付申請書を受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査のうえ、これを厚生省に提出し、〔3〕 厚生省はこれに基づき交付決定を行い国庫負担金を交付することとなっている。

2 検査の結果

 国庫負担金の交付について検査した結果、札幌市ほか8市区において、適正な交付申請を行っていなかったのに、これに対する北海道ほか3都県の審査が十分でなかったため、国庫負担金128,200,138円が過大に交付されていて不当と認められる。

 これを不当の態様別に示すと次のとおりである。

(1) 一般被保険者に係る医療給付費の算定において、一部負担金の減免額を誤って含めていたもの
3市4区 98,746,980円
(2) 遡及して退職被保険者等となった者に係る遡及期間の医療給付費を誤って控除していなかったもの
1市 23,494,277円
(3) 負担軽減措置の対象となる医療給付費の減額調整を誤っていたもの
1市 5,958,881円

 これらを都道県別に示すと次のとおりである。


都道県名 交付先
(保険者)
年度 国庫負担対象費用額 左に対する国庫負担金 不当と認める国庫負担対象額 不当と認める国庫負担金




千円 千円 千円 千円
(1)一般被保険者に係る医療給付費の算定において、一部負担金の減免額を誤って含めていたもの
(129) 北海道 札幌市 6、7 82,482,571 31,693,112 18,799 7,519
(130) 東京都 品川区 6、7 19,541,712 7,816,685 29,567 11,827
(131) 大田区 6、7 35,568,721 14,227,488 33,232 13,293
(132) 世田谷区 6、7 39,408,081 15,763,232 8,124 3,249
(133) 足立区 6、7 47,007,488 18,802,995 105,212 42,084
(134) 兵庫県 神戸市 6 34,687,342 13,874,936 22,836 9,134
(135) 広島県 広島市 6、7 53,394,693 21,357,877 29,094 11,637
(1)の計

312,090,611 123,536,328 246,867 98,746

 上記7市区では、一部負担金の支払が困難と認めた被保険者に対して、一部負担金を、平成6年度557件、135,586,360円、7年度537件、111,281,084円減免しているのに、国庫負担金の交付申請に当たり、この減免額を、誤って、一般被保険者に係る医療給付費に含めて算定していた。このため、一般被保険者に係る医療給付費が過大に算定され、ひいては国庫負担対象費用額が過大に算定されていた。
 したがって、国庫負担金の適正な交付額は、6年度67,369,798,015円、7年度56,067,783,714円となり、6年度54,234,546円、7年度44,512,434円、計98,746,980円が過大に交付されていた。
(2)遡及して退職被保険者等となった者に係る遡及期間の医療給付費を誤って控除していなかったもの
(136) 広島県 福山市 7 8,310,332 3,324,133 58,735 23,494

 福山市では、国庫負担金の交付申請に当たり、遡及して退職被保険者等の資格を取得した者について、退職者該当年月日以降に一般被保険者に係るものとして支払った医療給付費のうち、特例療養費が支給された者に係る医療給付費だけを控除し、それ以外の者の医療給付費58,735,693円(負担軽減措置による調整後)を控除していなかった。このため、一般被保険者に係る医療給付費が過大に算定され、ひいては国庫負担対象費用額が過大に算定されていた。
 したがって、国庫負担金の適正な交付額は、3,300,638,810円となり、23,494,277円が過大に交付されていた。
(3)負担軽減措置の対象となる医療給付費の減額調整を誤っていたもの
(137) 北海道 滝川市 6、7 3,150,876 1,210,453 14,897 5,958

 滝川市では、一部の負担軽減措置の対象者の一部負担金について、7年1月から被保険者の負担の度合いを軽減したにもかかわらず、国庫負担金の交付申請に当たり、調整率を変更しないまま、負担軽減措置の対象となる医療給付費の減額調整を過小に行っていた。このため、一般被保険者に係る医療給付費が過大に算定され、ひいては国庫負担対象費用額が過大に算定されていた。
 したがって、国庫負担金の適正な交付額は、6年度589,492,162円、7年度615,002,751円となり、6年度665,171円、7年度5,293,710円、計5,958,881円が過大に交付されていた。
(1)〜(3)の合計

323,551,821 128,070,915 320,500 128,200