会計名及び科目 | 一般会計 (組織)林野庁 | (項)山林施設災害復旧事業費 (項)山林施設災害関連事業費 |
国有林野事業特別会計(治山勘定) | ||
(項)治山事業費 (項)北海道治山事業費 (項)離島治山事業費 |
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部局等の名称 | 林野庁、北海道、前橋、東京、大阪、高知、熊本各営林局、函館、名古屋両営林支局 | |
事業の根拠 | 森林法(昭和26年法律第249号)、地すべり等防止法(昭和33年法律第30号)、治山治水緊急措置法(昭和35年法律第21号) | |
事業主体 | 営林局6、営林支局2、道府県19、計27事業主体 |
工事費 | 直轄事業 | 水道の沢左岸治山工事ほか53工事(平成7、8両年度) |
補助事業 | 湯浜1号沢地域防災対策総合治山工事ほか751工事(平成7、8両年度) | |
工事の概要 | 荒廃山地を復旧し又は山地の荒廃を防止するなどのため、谷止めなどのコンクリート構造物等を築造する工事 |
工事費 | 直轄事業 | 2,282,560,600円 | (平成7、8両年度) |
補助事業 | 27,344,521,460円 | (平成7、8両年度) | |
(国庫補助金相当額 13,959,037,462円) | |||
過大積算額 | 直轄事業 | 850万円 | (平成7、8両年度) |
補助事業 | 1億0640万円 | (平成7、8両年度) | |
(国庫補助金相当額 5370万円) |
1 工事の概要
林野庁では、森林法(昭和26年法律第249号)等に基づき、国の直轄事業又は地方公共団体が行う国庫補助事業として、渓流の侵食防止等のため、谷止工、床固工等を施工する治山ダム工事を毎年度多数実施している。
この工事は、渓流の地山の土砂や岩等を大型ブレーカ、バックホウ等により計画基礎面まで掘り下げた後、その掘削面を基礎として谷止めや床固め等のコンクリート構造物等を築造するものである。
このうち、基礎面が岩盤で、その上にコンクリート構造物を築造する場合には、基礎の岩盤を乱さないような方法で所定の形状に仕上げなければならないため、岩のき裂等の状況に応じ、必要により、仕上げ作業としてピックハンマ等を使用した人力による岩盤掘削面整形工を施工することとしている。また、構造物と岩盤面とを密着させるなどのため、コンクリート打設に先立って、岩盤面に付着している岩粉等を除去する岩盤清掃工を施工している。
岩盤掘削面整形工費及び岩盤清掃工費について、営林(支)局又は地方公共団体では、林野庁制定の「治山事業設計標準歩掛」(以下「標準歩掛」という。)に基づき、次のように積算している。
(ア) 岩盤掘削面整形工費について
岩盤掘削面整形工費の歩掛かりは、標準歩掛には定められていないため、標準歩掛にある「切土法面の人力による整形歩掛かり」を準用して積算している。
この歩掛かりは、作業箇所の全体が傾斜面で作業時の足場が不安定となることから、高所から安全ロープや安全ベルトを使用して施工するなど制約のある作業が前提となっている。このため、対象面積100m2
当たりの人工は、世話役、特殊作業員及び山林砂防工を合わせ、岩の硬さに応じて11.8人又は15.1人となっている。
(イ) 岩盤清掃工費について
岩盤清掃工費の歩掛かりは、標準歩掛において、岩盤基礎面を空気圧縮機による圧縮空気で岩粉等を除去した後、工事用水中ポンプによる洗浄作業を行うことが前提となっている。このため、対象面積10m2 当たりの人工は、世話役及び山林砂防工を合わせて0.8人となっている。
2 検査の結果
岩盤掘削面整形工費及び岩盤清掃工費について、上記のような積算が作業条件や使用機械の機種などに対応した適切なものとなっているかという観点から調査した。
平成7、8両年度に実施している治山ダム工事のうち、北海道営林局ほか7営林(支)局(注1)
の直轄事業で54工事、工事費総額22億8256万余円、及び北海道ほか18府県(注2)
の補助事業で752工事、工事費総額273億4452万余円(国庫補助金相当額139億5903万余円)を調査の対象とした。
このうち、岩盤掘削面整形工費の積算額、直轄事業で計474万余円、補助事業で計1億4103万余円、及び岩盤清掃工費の積算額、直轄事業で計1802万余円、補助事業で計1億5543万余円について調査した。
上記各工事の施工実態を調査したところ、次のような事態が見受けられた。
(ア) 岩盤掘削面整形工費について
治山ダム工事は、前記のとおり、大型ブレーカ、バックホウ等により渓流の地山を台形状に順次計画基礎面まで掘り下げるなどして施工するため、掘削後の基礎面には、垂直面や傾斜面のほか水平面が相当程度含まれている。
そして、岩盤掘削面整形工の施工実態は、水平面については安全ロープ等を使用しないで施工されており、垂直面や傾斜面についても、順次掘削中の地山を足場とすることができるため、水平面と同様に安全ロープ等を使用しないで施工されていた(参考図1参照)
。
これにより、岩盤掘削面整形工は、標準歩掛で前提としている切土法面の整形作業に比べ作業条件が良好で、より効率的な作業となっていた。このため、対象面積100m2
当たりの世話役、特殊作業員及び山林砂防工の人工は、前記歩掛かりの50%又は60%程度となっていた。
(イ) 岩盤清掃工費について
岩盤清掃工の施工実態についてみると、空気圧縮機及び工事用水中ポンプを使用した作業はほとんどなく、空気圧縮機に比べて安価であり、圧力水で岩粉等の除去と洗浄の作業を同時に行う高圧洗浄機による清掃作業が大半となっていた(参考図2参照)
。
この高圧洗浄機は施工速度が速いため、標準歩掛で前提としている空気圧縮機等による作業に比べ効率的なものとなっていた。このため、対象面積10m2
当たりの世話役及び山林砂防工の人工は、前記歩掛かりの60%程度となっていた。
したがって、(ア)については足場上の制約が少ないなどの良好な作業条件を反映した歩掛かりを定め、(イ)については効率的な機種の使用による作業などを反映した歩掛かりに改めることにより、施工の実態に即した積算を行う要があると認められた。
本件各工事における岩盤掘削面整形工費及び岩盤清掃工費について、上記の各実態に即して修正計算すると、直轄事業分で約850万円、補助事業分で約1億0640万円(国庫補助金相当額約5370万円)低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、林野庁において、岩盤掘削面整形工及び岩盤清掃工の施工実態の調査、検討が十分でなかったこと及び施工の実態に適合した積算の基準を定めていなかったことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、林野庁では、9年10月に、治山ダム工事における岩盤掘削面整形工費及び岩盤清掃工費を施工の実態に適合させるよう積算の基準を改正し、同年12月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。
(注1) 北海道営林局ほか7営林(支)局 北海道、前橋、東京、大阪、高知、熊本各営林局及び函館、名古屋両営林支局
(注2) 北海道ほか18府県 北海道、京都府、岩手、山形、栃木、群馬、埼玉、千葉、岐阜、愛知、兵庫、和歌山、島根、岡山、徳島、高知、長崎、宮崎、鹿児島各県