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  • 平成8年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

国有農地等の管理等に関する業務に係る事務取扱交付金について、業務に実際に従事する職員数を把握するなどして適切に算定するよう改善させたもの


(6) 国有農地等の管理等に関する業務に係る事務取扱交付金について、業務に実際に従事する職員数を把握するなどして適切に算定するよう改善させたもの

会計名及び科目 農業経営基盤強化措置特別会計 (項)事務取扱費
部局等の名称 農林水産本省、東北、関東、北陸、東海、近畿、中国四国、九州各農政局、沖縄総合事務局
交付の根拠 農地法(昭和27年法律第229号)、地方財政法(昭和23年法律第109号)
交付先 北海道ほか26都県
業務関係事務取扱交付金の概要 都道府県が国有農地等の管理等に関する業務を実施するのに必要な経費を交付するもの
上記に対する交付金交付額の合計 14億8074万余円 (平成7、8両年度)
過大となっていた交付金 1億8739万余円 (平成7、8両年度)
<検査の結果>
 上記の交付金の算定に当たり、国有農地等の管理等に従事する職員数の把握が適切に行われていなかったため、業務関係事務取扱交付金が1億8739万余円過大に交付されていると認められた。
 このような事態が生じていたのは、農林水産省において、交付申請書等の様式が従事職員の業務割合を把握できるようになっていないため、その審査が十分でなかったり、都道府県に対し、従事職員数の算定方法について明確な取扱い方法を示していなかったりしていることなどによると認められた。
<当局が講じた改善の処置>
 本院の指摘に基づき、農林水産省では、平成9年11月に、本件交付金が適切に算定されるよう、交付要綱を改正して、交付申請書等の様式を従事職員の業務割合を的確に把握できるものに改めるとともに、都道府県に対して従事職員数の算定方法の具体的な取扱い方法を示すなどの処置を講じた。

1 交付金の概要

(国有農地及び開拓財産)

 農林水産省では、農地法(昭和27年法律第229号)等に基づき、自作農創設等のため、土地等の買収、管理及び処分を行っている。そして、これらの業務に係る経理は、農業経営基盤強化措置特別会計において一般会計と区分して行われている。
 この特別会計に所属する土地等は、次の国有農地及び開拓財産の2つに区分されている。(以下、これらを「国有農地等」という。)。

(ア) 国有農地は、戦後、自作農を創設するめ、国が不在地主等から買収した農地等である。

(イ) 開拓財産は、戦後、食糧の増産等を目的とする開拓事業を行うため、国が地権者から買収した山林、原野等である。

(国有農地等の管理及び処分)

 国有農地等の管理及び処分については、農地法等に基づき、〔1〕 土地等の管理及び農地等としての売渡しについては都道府県知事等が行い、〔2〕 農地等以外に利用させることを相当として不要地認定した土地の売払いについては農林水産大臣が行うこととなっている。
 都道府県知事等が管理している国有農地等は、平成8年度末現在で、国有農地836万余m2 、開拓財産4921万余m2 、計5758万余m2 あり、その一部は農耕目的に貸し付けられているほか、一時的に住宅用地等の農耕以外の目的にも貸し付けられている。

(交付金の概要)

 農林水産省では、都道府県に対して、国有農地等の管理等の事務取扱いに要する経費として、事務取扱交付金を交付している。そして、この交付金のうちには、都道府県が行っている国有農地等の管理等の業務に従事する職員(以下「従事職員」という。)に必要な経費を国が負担するものとして、昭和58年度から交付している業務関係事務取扱交付金(以下「業務関係交付金」という。)があり、平成7、8両年度の交付額は、いずれも11億4903万余円となっている。

(業務関係交付金の算定)

 業務関係交付金は、農林水産省が定めた「農業経営基盤強化措置特別会計事務取扱交付金交付要綱」(昭和31年農地第3569号。以下「交付要綱」という。)等に基づき、次のように算定することとされている。

〔1〕 都道府県は、国有農地等の管理等の業務に関する事業計画書を作成し、この業務に必要な従事職員の数(以下「計画職員数」という。)を記載して地方農政局(北海道は農林水産省、沖縄県は沖縄総合事務局。以下同じ。)に提出する。その際、国有農地等の業務以外の業務を兼務することとしている職員については、その業務割合により計画職員数を算定することとなっている。

〔2〕 農林水産省は、事業計画書の計画職員数を査定した上で、1人当たりの単価を乗じるなどして、地方農政局ごとの業務関係交付金額を算定し、地方農政局に通知する。そして、地方農政局は、上記の通知を基にして、都道府県ごとの従事職員数及び交付金額を決定し、都道府県に内示する(以下、これに基づく従事職員数を「交付職員数」という。)。

〔3〕 都道府県は、〔2〕 の内示に基づいて、交付職員数を記載した交付申請書を作成し、地方農政局に提出して、交付金の交付を受ける。そして、都道府はは、交付金を受けた翌年度に、実際の従事職員数を記載した精算報告書を地方農政局に提出することなっている。

2 検査の結果

(調査の観点及び対象)

 国有農地等の面積は、業務関係交付金の交付初年度である昭和58年度当初には1億2352万余m2 であったが、その後徐々に減少し、平成8年度末現在では5758万余m2 と、ほぼ半減している。しかし、交付職員数は昭和58年度523人、平成8年度528人となっていて、ほとんど変化がない状況となっていることから、事業計画書の計画職員数、交付職員数等が適切に算定されているかという観点から調査した。
 調査は、北海道ほか26都県(注) に交付された業務関係交付金7年度7億3617万余円、8年度7億4457万円、計14億8074万余円について実施した。

(調査の結果)

 上記の27都道県において、各都道県が配置したとしている職員の職名及びこれらの者の分掌する事務とその業務割合等について調査したところ、次のとおり、交付職員数の算定が適切でなかったものが見受けられた。

(ア) 国有農地等の管理等の業務を直接担当していない総務係などの職員を、その業務割合を考慮せずに交付職員数に含めていたもの

 
7年度10道県、8年度8道県

(イ) 国有農地等を管理していない出先機関の職員を交付職員数に含めていたもの

 
7年度3県、8年度3県

(ウ) 国有農地等の管理等の業務に専ら従事しているとは認められない管理職の職員を、その業務割合を考慮せずに交付職員数に含めていたもの

 
7年度13道県、8年度13道県

(エ) 国有農地等の管理等の業務を担当している係の職員について、実際の業務内容とは異なる業務割合により算定していたもの

 
7年度27都道県、8年度27都道県

 そして、上記の27都道県について、実際の従事職員数の業務割合に応じた適切と認められる交付職員数を算定すると、次表のとおりとなり、交付職員数が7年度157.32人、8年度162.25人過大となっていた。

年度 計画職員数 交付職員数(A) 適切と認められる交付職員数 (B) 過大となっていた交付職員数 (A−B)

7

438.5

338.2

180.88

157.32
8 445.5 342.1 179.85 162.25

 上記の事態は、農林水産省及び地方農政局において、事業計画書、交付申請書及び精算報告書の記載内容について、審査を十分に行わないまま、交付職員数を決定し、業務関係交付金の交付を行っていたもので適切でないと認められた。

(過大に交付されていた業務関係交付金)

 上記の27都道県について、実際の従事職員数の業務割合に応じた適切と認められる交付職員数に基づいて業務関係交付金の交付額を計算すると、据え置かれていた1人当たり単価を見直すこととしても、7年度で9028万余円、8年度で9711万円、計1億8739万余円が 過大に交付されていると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、都道県において、業務関係交付金は実際の従事職員数及び業務割合に応じて交付されるものであるとの理解が不足していたことにもよるが、主として、次のことによると認められた。

(ア) 事業計画書や交付申請書等の様式が従事職員の業務割合を具体的に把握できるようになっていないため、審査が十分でなかったこと

(イ) 農林水産省において、計画職員数等の算定方法について、都道府県に対して明確な取扱い方法を示していないこと、また、都道府県に対する指導が十分でないため、業務関係交付金の趣旨が周知徹底していないこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省では、9年11月に、業務関係交付金が適切に算定されるよう次の処置を講じた。

(ア) 交付要綱を改正し、事業計画書及び交付申請書等の様式を改正して、計画職員数等の内容を的確に把握し審査できるものに改めた。

(イ) 都道府県に対して通達を発し、計画職員数等の算定方法について、具体的な取扱い方法を示すとともに業務関係交付金の趣旨の周知徹底を図った。

(注)  北海道ほか26都県 東京都、北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、群馬、埼玉、千葉、神奈川、静岡、富山、石川、岐阜、愛知、滋賀、兵庫、岡山、山口、香川、愛媛、高知、熊本、大分、沖縄各県