ページトップ
  • 平成8年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 建設省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

特定優良賃貸住宅供給促進事業の実施に当たり、共同施設等整備費の算定を適切に行うよう改善させたもの


(1) 特定優良賃貸住宅供給促進事業の実施に当たり、共同施設等整備費の算定を適切に行うよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)建設本省 (項)住宅建設等事業費
部局等の名称 東京都ほか4府県
補助の根拠 特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律(平成5年法律第52号)
事業主体 都1、府1、県1、市3、計6事業主体
補助事業 特定優良賃貸住宅供給促進事業
補助事業の概要 都道府県知事等から賃貸住宅の建設及び管理に関する計画の認定を受けた者等が当該計画に基づく賃貸住宅の建設等を行うもの
補助対象経費 84億5782万円 (平成5年度〜8年度)
上記に対する国庫補助金交付額 42億2891万円 (平成5年度〜8年度)
節減できた国庫補助金相当額 7300万円 (平成5年度〜8年度)
<検査の結果>
 上記の補助事業において、共同施設等の整備に係る費用の算定に当たり、建物の階数が部分的に異なっている場合の標準主体附帯工事費を階数の異なるそれぞれの部分ごとに算出すれば、国庫補助金相当額約7300万円が節減できたと認められた。
 このような事態が生じていたのは、建設省において、地方公共団体に対し、建物の階数が部分的に異なっている場合の標準主体附帯工事費の算出方法を明確に示していなかったことなどによると認められた。
<当局が講じた改善の処置>
 本院の指摘に基づき、建設省では、平成9年10月に都道府県に対して通達を発し、共同施設等の整備に係る費用の算定に当たり、建物の階数が部分的に異なっている場合の標準主体附帯工事費の算出方法を明確に示すなどの処置を講じた。

1 補助事業の概要

(補助の目的と対象)

 建設省では、特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律(平成5年法律第52号)に基づき、中堅所得者等の居住の用に供する居住環境が良好な賃貸住宅の供給を促進するため、地方公共団体が実施する特定優良賃貸住宅供給促進事業に対して、特定優良賃貸住宅建設費補助金を交付している。
 そして、特定優良賃貸住宅供給促進事業補助要領(平成5年建設省住建第116号)によれば、都道府県知事等から賃貸住宅の建設及び管理に関する計画の認定を受けた民間事業者が、当該計画に基づく特定優良賃貸住宅を建設する場合には、その建設に要する費用のうち、廊下、階段等の共同施設等の整備に係る費用(以下「共同施設等整備費」という。)等を補助の対象とすることとされている。この補助金の額は、当該費用の3分の2を限度として地方公共団体が補助する額に2分の1を乗じて得た額とされている。

(共同施設等整備費の算定方法)

 上記の共同施設等整備費は、共同施設等の費用を個別に積み上げて算定することとなっているが、本体工事と分離して算定することが困難な場合には、事務の簡素化の観点から、次により算定することができることとなっている。

(ア) 建物の階数、構造等別に定められた1戸当たり標準主体附帯工事費(以下「戸当たり標準工事費」という。)に戸数を乗じ建物の標準主体附帯工事費(以下「工事費」という。)を算出する。

(イ) この工事費に中層、高層等の住宅の区分に応じて共同施設等の占める割合を勘案して定められた率(100分の5〜100分の15)を乗じて、共同施設等整備費を算定する。

2 検査の結果

(調査の観点)

 近年、都市部では、制限斜線に合わせて上層階になるに従って階ごとに階段状に後退させた建物など階数が部分的に異なっている建物が特定優良賃貸住宅として多数建設されている(参考図参照)
 また、一般に建物の高さが高くなるほど柱や梁が大きくなることなどから、特定優良賃貸住宅の戸当たり標準工事費は、おおむね階数が高い構造のものほど増大している。
 前記のとおり、本体工事と分離して算定することが困難な場合の共同施設等整備費の算定は、工事費に定められた率を乗ずることとなっているため、工事費の算定が建物の形状を反映して適切に行われているかという観点から調査を行った。

(調査の対象)

 今回、5年度から8年度までの間に、東京都ほか8府県及び札幌市ほか11市において特定優良賃貸住宅供給促進事業により建設された賃貸住宅で、上記の方法により共同施設等整備費を算定しているもののうち階数が部分的に異なっている256団地(補助対象経費122億5999万余円、国庫補助金交付額61億2999万余円)について調査を行った。

(調査の結果)

 調査したところ、東京都ほか2府県及び京都市ほか2市(注) の159団地(補助対象経費84億5782万円、国庫補助金交付額42億2891万円)について、共同施設等整備費の算定に当たり、その工事費を最上階に対応する戸当たり標準工事費に全体の戸数を乗ずることにより算出していた。
 しかし、次のようなことから、階数が部分的に異なっている建物の工事費については、階数の異なるそれぞれの部分ごとに、その階数に対応する戸当たり標準工事費に当該部分の戸数を乗ずるなどして算出し、これにより共同施設等整備費を算定する要があると認められた。

(ア) 戸当たり標準工事費は、階数ごとに区分して定められており、おおむね階数の区分が上階になるに従って増大している。このため、最上階に対応する戸当たり標準工事費に全体の戸数を乗じて工事費を算定するのは不合理であること

(イ) 公営住宅建設事業においては、建物の階数が部分的に異なっている場合には、階数の異なるそれぞれの部分ごとに、その階数に対応する1戸当たりの主体工事費及び附帯工事費に当該部分の戸数を乗ずるなどして公営住宅の建設費を算出していること

 なお、現に、今回調査した団地のうち、80団地については、階数の異なるそれぞれの部分ごとに工事費を算出していた。

(節減できた補助金額)

 建物の階数が部分的に異なっている場合の工事費について、階数の異なるそれぞれの部分ごとに算出することとして修正計算すると、国庫補助金交付額42億2891万円を約7300万円節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、地方公共団体において、工事費を算出するに当たり、建物の階数が部分的に異なっていることについての検討が十分でなかったことにもよるが、建設省において、地方公共団体に対し、建物の階数が部分的に異なっている場合の工事費の算出方法を明確に示していなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、建設省では、9年10月に都道府県に対して通達を発し、共同施設等整備費の算定に当たり、建物の階数が部分的に異なっている場合の工事費の算出方法を明確に示すなどの処置を講じた。

(注)  東京都ほか2府県及び京都市ほか2市 東京都、愛知県、京都府、京都、広島、福岡各市

(参考図)

(参考図)