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  • 平成8年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 建設省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

国庫補助事業に係る道路改築事業等の実施に当り、再生砕石の利用を促進することにより経済的な積算を行うよう改善させたもの 


(2) 国庫補助事業に係る道路改築事業等の実施当たり、再生砕石の利用を促進することにより経済的な積算を行うよう改善させたもの

会計及び科目 一般会計 (組織)建設本省 (項)住宅建設等事業費
(項)河川等災害復旧事業費
(項)河川等災害関連事業費
道路整備特別会計 (項)道路事業費
(項)地方道路整備臨時交付金
(項)国土総合開発業調整費
部局等の名称 宮城県ほか10県
補助の根拠 (1) 道路法(昭和27年法律第180号)
道路整備緊急措置法(昭和33年法律第34号)等
(2) 予算補助
事業主体 県11、市93、町173、村21、計298事業主体
補助事業 道路改築事業等
補助事業の概要 一般国道及び地方道の道路整備のための道路改良及び舗装新設事業において、車道部の下層路盤工等に砕石を使用するなどのもの
事業費 1426億5985万余円 (平成7、8両年度)
上記に対する国庫補助金交付額 732億4735万余円
再生砕石を使用するとした場合の低減可能な積算額 9億5910万円 (平成7、8両年度)
上記に対する国庫補助金相当額 4億8710万円
<検査の結果>
 上記の補助事業において、道路改築事業等の実施に当たり下層路盤工等に新材の砕石を使用しているが、近年、資源の有効利用、廃棄物の発生の抑制及び環境の保全に資するという「再生資源の利用の促進に関する法律」の制定以来、新材の砕石に比べ安価な再生砕石が本格的に生産されるようになっている。再生砕石は建設工事の副産物を利用したものであるため、常に供給を受けられるとは限らないが、新材の砕石に代えてすべて再生砕石を使用することができたとすれば、材料費の積算額(約38億3690万円)が約9億5910万円(国庫補助金相当額約4億8710万円)低減できたと認められた。
 このような事態が生じていたのは、各事業主体において、建設省が発した公共建設工事における再生資源の利用促進を図るための通達等の趣旨が十分理解されていなかったり、再生砕石の品質に対する認識が十分でなかったりしていたことなどによると認められた。
<当局が講じた改善の処置>
 本院の指摘に基づき、再生砕石の利用の促進を図るため、宮城県ほか10県では、平成9年4月から12月までに再生砕石の利用の指針を改正するなどして管下市町村等に周知・指導等を行うこととした。また、建設省では、9年11月に都道府県等に対して再生砕石の活用について通知し、各事業主体において再生砕石の利用の促進が図られるよう、改めて周知徹底する処置を講じた。

1 事業の概要

(工事の内容)

 建設省では、国庫補助事業により、一般国道及び地方道の道路整備事業を行う地方公共団体(以下「事業主体」という。)に対し、毎年度多額の国庫補助金を交付している。
 そして、宮城県ほか10県(注) (管内市町村を含む。)の計318事業主体が、平成7、8両年度に実施した、道路改良及び舗装新設工事等2,807工事(工事費総額1636億2739万余円、国庫補助金841億4931万余円)においては、車道部及び歩道部の下層路盤材、土木構造物の基礎材等として砕石を大量に使用しており、その設計数量は合計151万9000m3 (材料費の積算額の計43億0662万余円、国庫補助金相当額21億9878万余円)となっている。

(砕石の種類)

 上記の各工事で使用している砕石には、〔1〕 採取した原石を破砕するなどして製造した新材の砕石(以下「新材」という。)と、〔2〕構造物の解体工事や舗装道路の打換工事等から発生するコンクリート塊やアスファルト・コンクリート塊を破砕するなどして不純物を除去して製品化した再生砕石(参考図1参照) とがある。

(リサイクル法)

 再生資源の有効な利用の確保を図るとともに、廃棄物の発生の抑制及び環境の保全に資することを目的として、3年に、「再生資源の利用の促進に関する法律」(平成3年法律第48号、以下「リサイクル法」といういが制定されており、同法において、再生資源の利用について次のように定められている。

(ア) 建設業者等の事業者及び建設工事の発注者は、事業又は建設工事の発注を行うに際して再生資源を利用するよう努めるとともに、建設工事の副産物(同法施行令において、土砂、コンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊又は木材を指定副産物として定めている。)を再生資源として利用促進するよう努めなければならない。

(イ) 地方公共団体は、国の施策に準じて再生資源の利用を促進するよう努めなければならない。

(ウ) 建設大臣は、指定副産物に係る再生資源の利用の促進が著しく不十分であると認めるときは、その判断の根拠を示して必要な措置を執るべき旨の勧告をすることができる。

(公共工事における再生資源の利用促進)

 建設省ではリサイクル法の制定を受けて、次のとおり省令を定め、公共建設工事における再生資源の利用の促進を図ることとしている。
 すなわち、「建設業に属する事業を行う者の再生資源の利用に関する判断の基準となるべき事項を定める省令」(平成3年建設省令第19号)では、コンクリート塊及びアスファルト・コンクリート塊の再生骨材については、主として道路舗装及びその他舗装の下層路盤材料、土木構造物の裏込材及び基礎材、建築物の基礎材の用途に利用することとしている(参考図2参照)
 そして、同省では、この省令を適切に運用するため、次の内容の各通達を各地方公共団体に対して発している。

(ア) 「公共建設工事における再生資源活用の当面の運用について」(平成3年建設省技調発第267−2号)では、次のように定められている。

〔1〕コンクリート塊及びアスファルト・コンクリート塊の工事現場からの搬出については、工事現場から40kmの範囲内に再資源化施設がある場合は、原則として、再資源化施設へ搬出すること

〔2〕再生資材の利用については、工事現場から40kmの範囲内に再資源化施設がある場合、工事目的物に要求される品質等を考慮したうえで、原則として、再生資材を利用すること

(イ) 「コンクリート副産物の再利用に関する用途別暫定品質基準(案)」(平成6年建設省技調発第88号の2、以下「品質基準」という。)では、再生資材の利用に際しての品質基準として、下層路盤等に使用する再生材の品質の規格を定めている。

 さらに、同省では、4年に、「事業執行における積算等の留意事項について」(平成4年建設省技調発第192−2号)の通達において、公共建設工事の積算に当たっては、前記(ア)の〔1〕、〔2〕 に基づき積算することなど、建設副産物に関する適正な積算等の実施を定めている。

2 検査の結果

(調査の観点)

 近年、再生砕石は再資源化施設において本格的に生産されるようになっている。そして、その価格は、新材の原石採取に要する費用が不要であることなどから、新材に比べ安価であるため、前記のリサイクル法及び通達等の趣旨に沿って再生砕石が適切に使用され、経済的な積算が行われているかという観点から調査した。

(調査の結果)

 前記の各工事における再生砕石の使用状況などについて調査したところ、次のような状況となっていた。
 すなわち、前記の11県における2,807工事は、いずれも工事現場から40kmの範囲内に再資源化施設があって、再生砕石の使用が可能な地域において施行されている。しかし、事業主体において、再生砕石の使用対象とする事業や工種を限定していたり、使用についての周知、指導が十分でなかったりしていて、これらの工事における再生砕石の使用割合は著しく低いものとなっていた。これら2,807工事を県別に分けて、再生砕石の使用割合(設計数量)をみると、最高でも33.0%程度となっており、なかには全く使用していない県も見受けられた。

 上記について事例を示すと次のとおりである。

<事例1>  再生砕石の使用を県単独事業に限定していたもの

 A県では、5年に定めた利用指針において、再生砕石の安定的な供給や品質に不安があるなどとして、その使用を県単独事業に限定している。このため、国庫補助事業で実施した421工事においては、下層路盤工などにすべて新材(174,678m3 )を使用していて、新材(1m3 当たり単価2,600円から3,650円)に比べ1m3 当たり最大で1,650円安価となっている再生砕石は使用されていなかった。

<事例2>  再生砕石の利用についての周知、指導が十分でなかったもの

 B県では、建設副産物の処理に係る設計積算要領を5年に定めて、再生砕石を下層路盤工などに使用することとしている。しかし、再生砕石の利用についての周知、指導を十分行っていなかったことなどから、管下の土木事務所及び市町村では、再生砕石の安定的な供給や品質に不安があるとして、新材(1m3 当たり単価2,000円から3,300円)に比べ1m3 当たり最大で1,050円安価となっている再生砕石をほとんど使用しておらず、調査した332工事(砕石の使用量352,480m3 )における使用率は2,1%となっていた。

 しかし、近年、再生砕石の原材料となるコンクリート塊やアスファルト・コンクリート塊の発生量は、全国で、5年度4800万トンに比べ7年度7200万トンと増加しており、これらを処理する再資源化施設の設置状況は、同じく、637施設から1,186施設と増加してきている。また、再資源化施設で製造されたものは、ほとんど前記の品質基準の規格に適合し、これについては、下層路盤工等に新材と同様に使用できるものとなっている。
 そして、前記の2,807工事には、すべて再生砕石を使用している工事もあるが、これらを除く2,480工事(工事費総額1426億5985万余円、国庫補助金732億4735万余円)についてみると、工事現場から40kmの範囲内に再資源化施設が所在し、その供給する再生砕石は前記の品質基準の規格に適合していて、相当量の再生砕石の利用が可能な状況となっていた。
 また、建設省が事業主体となって宮城県ほか10県管内で施行している一般国道の道路改良及び舗装新設工事等においては、下層路盤材などに再生砕石を使用しているが、施工上特段の問題も生じていない状況であった。
 したがって、前記の通達等の再生資材の使用条件を満たしている工事については、原則として、新材に比べ安価な再生砕石を使用することとして、経済的な積算を行うとともに、資源の有効利用に努める要があると認められた。
 再生砕石は建設工事の副産物を利用したものであるため、常に供給を受けられるとは限らないが、前記の2,480工事における新材(設計数量約131万m3 )のすべてについて、再生砕石 の供給を受けることができたものとして計算すると、材料費の積算額約38億3690万円は、約28億7780万円となり約9億5910万円(国庫補助金相当額約4億8710万円)が低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、各事業主体において、リサイクル法及び通達等の趣旨が十分理解されておらず、再生砕石の品質に対する認識が十分でなかったり、再資源化施設の所在や供給量等についての把握が十分でなかったりしていて、経済的な積算に対する配慮が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、宮城県ほか10県及び建設省では、再生砕石の利用の促進を図るため、次のような処置を講じた。

(ア) 宮城県ほか10県では、9年4月から12月までに、再生砕石の利用の指針を改正するなどして、管下市町村等に再生砕石の積極的な利用について周知・指導を行うこととした。

(イ) 建設省では、9年11月、再生砕石の活用について改めて周知徹底させるため、都道府県等に対して、公共建設工事を施行する各事業主体において、再生砕石の積極的な利用の促進に努めるよう通知した。

(注)  宮城県ほか10県 宮城、栃木、埼玉、富山、三重、奈良、島根、山口、福岡、長崎、熊本各県

(参考図1)

(参考図1)

(参考図2)

(参考図2)