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  • 平成8年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 建設省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

震災対策として施行する橋脚補強工事において、注入材等の材料費の積算を適切なものとするよう改善させたもの


(4) 震災対策として施行する橋脚補強工事において、注入材等の材料費の積算を適切なものとするよう改善させたもの

会計名及び科目 道路整備特別会計 (項)道路事業費
部局等の名称 中部地方建設局、多治見工事事務所ほか7工事事務所
工事名 21号園戸大橋下部工補強工事ほか37工事
工事の概要 震災対策緊急橋梁補強事業の一環として、既設橋脚の柱部分に鋼板を巻き立て、エポキシ樹脂を注入して一体化させるなどの工事
工事費 8,612,632,000円(平成7、8両年度)
請負人 株式会社西尾土木部ほか30会社
契約 平成8年3月〜9年3月 指名競争契約、随意契約
過大積算額 6200万円(平成7、8両年度)
<検査の結果>
 上記の各工事において、橋脚補強工事のための鋼板の巻立てに使用する注入材等の材料費(積算額6億1790万余円)の積算が適切でなかったため、積算額が約6200万円過大になっていた。
 このように積算額が過大になっていたのは、中部地方建設局において、エポキシ樹脂系の注入材等の材料単価について、刊行物である積算参考資料の公表価格(メーカー希望販売価格)をそのまま採用し、市場における実際の取引価格を反映させていなかったことなどによると認められた。
<当局が講じた改善の処置>
 本院の指摘に基づき、中部地方建設局では、平成9年5月に注入材等の材料費の市場価格について特別調査を実施し、その結果を局統一単価表に定めるなどして、同年7月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。

1 工事の概要

(工事の内容)

 建設省中部地方建設局(以下「局」という。)及び管内の多治見工事事務所ほか7工事事務所(注1) (以下「各工事事務所」という。)では、平成7年度から、震災対策緊急橋梁補強事業の一環として、管内の一般国道等を対象に、橋脚の柱部分に鋼板を巻き立てて補強する工事を実施しており、7、8両年度で計38工事(工事費総額86億1263万余円)を施行している。

 これらの工事は、昭和55年制定の道路橋示方書(社団法人日本道路協会編)より前の設計基準により設計し、施工された鉄筋コンクリート製の橋脚を対象に実施している。そして、その施工は、橋脚の柱部分を鋼板(厚さ9mm又は12mm)で巻き立てた後、柱と鋼板との問にエポキシ樹脂系の注入材を充てんし、シール材により鋼板の端部をふさいで、柱と鋼板とを接着し一体化させる方法により行うこととしている(参考図参照)

(工事費の積算)

 各工事事務所では、上記の各工事に使用する注入材等の材料単価について、刊行物である積算参考資料掲載の公表価格(メーカー希望販売価格)により、1kg当たり、注入材2,750円、シール材2,200円としていた。そして、上記38工事の材料費を注入材6億0069万余円、シール材1721万余円、計6億1790万余円と積算していた。

2 検査の結果

(調査の観点)

 本件各工事は、震災対策の橋脚補強工事という特殊な工事であり、一般土木工事では使用実績の少ない注入材等が大量に使用されていることなどから、その積算が適切に行われているか調査した。

(調査の結果)

 調査したところ、注入材等の材料単価は、次のとおり、市場における実際の取引価格(以下「市場価格」という。)を反映していない割高なものとなっていて、適切でないと認められた。
 すなわち、局では、注入材等の材料単価を局の統一単価表に定めていなかったことから、これらの材料を使用する場合には、積算に当たり、指定した商品の積算参考資料上の単価を採用するよう各工事事務所に通知し、各工事事務所ではこれを受けて前記のとおり積算していたものである。
 しかし、局は、一般土木工事については、毎年「土木工事における材料単価の取扱要領」を定めており、この中で、積算参考資料掲載の公表価格は、メーカー、販売店等の希望販売価格であり、通常、市場価格はこれより低くなることから、特別調査(注2) を実施して市場価格を調査し、公表価格の割引きを行うこととしている。

 そして、同種工事を実施している建設省の他の地方建設局等では、注入材等の材料単価について、毎年特別調査を行い、その結果をそれぞれの局の統一単価表に定めており、その価格は公表価格を10%から20%程度下回るものとなっていた。 
 したがって、本件各工事の注入材等の材料単価について、局において積算参考資料掲載の公表価格をそのまま採用していたのは適切でなく、特別調査を実施し、その結果を局統一単価表に定めるなどして、経済的な積算を行うべきであると認められた。

(低減できた積算額)

 上記の本院の指摘に基づいて、局では、平成9年5月に、注入材等の材料単価について特別調査を実施したところ、その市場価格は公表価格を下回っており、1kg当たり、注入材2,470円、シール材1,980円となっていた。
 これにより、本件各工事の材料費を修正計算すると、総額5億5502万余円となり、前記の積算額を約6200万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、局において、工事実施部門と技術管理部門との間の連絡が十分でなかったり、積算参考資料の公表価格に関し、要領の理解が十分でなかったりしていたことなどのため、注入材等の材料単価について、必要な特別調査を実施していなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、局では、9年5月に実施した注入材等の材料単価に関する特別調査の結果に基づき、局統一単価表に注入材等の材料単価を定めるなどして、同年7月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。

(注1)  多治見工事事務所ほか7工事事務所 多治見、岐阜国道、高山国道、静岡国道、浜松、名古屋国道、三重、飯田国道各工事事務所
(注2)  特別調査 材料単価の決定に当たり、物価調査機関に特定の品目を指定して市場価格の調査を依頼して行うものをいう。

(参考図)

(参考図)