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  • 平成8年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第11 日本電信電話株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

低圧電力の電気需給契約において、契約電力を適切に見直すなどして、電気料金の節減を図るよう改善させたもの


(1) 低圧電力の電気需給契約において、契約電力を適切に見直すなどして、電気料金の節減を図るよう改善させたもの

科目 営業費用
部局等の名称 日本電信電話株式会社
契約名 電気需給契約
契約の概要 交換機等を設置している局舎6,882箇所における低圧電力の電気需給契約
契約の相手方 東京電力株式会社ほか13電力会社等
契約期間 平成8年4〜9年3月
平成8年度に支払った電気料金 4,300,857,991円
節減できた電気料金 1億1040万円
<検査の結果>
 上記の低圧電力の電気需給契約において、電力設備を撤去するなどした場合に、適切に契約電力を見直して電力会社に電気需給契約の変更等の申し出を行っていたとすれば、電気料金を約1億1040万円節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、本社において、電力設備の管理・運用会社との業務委託契約において適切に契約電力の見直しを行うことを仕様書に明記していなかったことなどによると認められた。
<当局が講じた改善の処置>
 本院の指摘に基づき、日本電信電話株式会社では、平成9年10月に、管理・運用会社との業務委託契約の仕様書に電気需給契約の変更に係る業務を行う旨を明記するとともに、各支社等に対して電気需給契約の適正化のための指示文書を発して、契約電力の見直し等が適切に行われるように改めることとする処置を講じた。

1 電気需給契約の概要

(電気需給契約)

 日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)の東京支社ほか10支社(注) 及び長距離通信事業本部(以下「各支社等」という。)では、東京電力株式会社ほか13電力会社等とそれぞれ電気需給契約を締結し、各種の通信サービスの提供等に必要な電力の供給を受けている。
 この電気需給契約においては、契約上使用できる最大電力(以下「契約電力」という。)を定めており、これは、算定の対象となる電源設備、空調設備等の電力設備の合計容量(以下「契約負荷設備の容量」という。)を基に決定されることとなっている。

(契約電力)

 NTTでは、近年、高度情報化社会の通信基盤を整備するため、電源設備から電力の供給を受ける交換機、伝送装置等の通信設備のディジタル化を図るとともに、従来、通信網の末端の局舎(以下「端局」という。)で行っていた電話交換等を上位の局舎で行う集約化を進めている。
 これに伴い、端局や山間部の無線中継所等では、アナログの通信設備を撤去してディジタルの通信設備を設置するなどしているが、このディジタルの通信設備は、アナログに比べ電力消費量が少なく、かつ大容量であることから、必要となる電力設備の台数、容量等は減少してきている。

 上記の端局等では、契約負荷設備の容量を算定し、これに基づき、低圧電力(動力用50KW未満)を受電している。この契約電力は、契約負荷設備の容量が増減した場合、NTTが電力会社等に申し出ることにより変更できることとなっている。そして、契約電力を減じた場合、電気料金のうちの基本料金がその契約電力に応じて減額されることとなる。

(契約電力の変更手続)

 NTTでは、端局の電力設備については、本社が管理・運用会社と業務委託契約を締結しており、その電力設備が撤去されるなどした場合には、同会社に電力会社等への電気需給契約の変更の申し出を行わせている。また、無線中継所等については、同会社に管理、運用業務を委託せずに各支社等の管内各支店等でその管理、運用業務を行っていて、当該各支店等において、上記の申し出を行うこととなっている。

 また、各支社等において端局等の電力設備の新設、更新工事を実施する場合には、電気工事の請負業者に、電力会社に対する電気需給契約の変更等の申し出を行わせることとしている。

(端局等の電気料金)

 平成8年度に、各支社等において、上記の端局等に係る分として支払った電気料金は、計43億0085万余円となっている。

2 検査の結果

(調査の観点及び対象)

 前記のように、NTTでは、通信設備のディジタル化及び集約化が進み、端局等では必要となる電力設備の台数、容量等が減少してきていることから、端局等における契約電力の見直し等が適切に行われ、電気料金が経済的なものになっているかどうかについて端局等6,882箇所(端局5,128箇所、無線中継所等1,754箇所)を調査した。

(調査の結果)

 調査の結果、上記のうち1,420箇所において、次のように適切とは認められない事態が見受けられた。

(ア) 端局等において、電力設備の撤去等により、契約負荷設備の容量が減少していたにもかかわらず、管理・運用会社又は各支店等において、契約電力の見直しを行わず、電力会社に対する電気需給契約の変更の申し出を行っていなかったもの

1,023箇所

(イ) 電気工事の請負業者が、電力設備の新設、更新工事の際、電力会社への電気需給契約の変更等の申し出に当たり、契約負荷設備の容量を誤って算定していたもの

397箇所

 上記の各事態は、いずれも契約負荷設備の容量を適切に把握し、契約電力を見直すなどして、電気料金の節減を図る要があると認められた。

(節減できた電気料金)

 上記の端局等について、契約電力を適切に見直すなどして、電気需給契約の変更等を行っていたとすれば、電気料金の支払額を約1億1040万円節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のようなことなどによると認められた。

(ア) 本社において、管理・運用会社との業務委託契約に当たり、電力設備の撤去等により契約負荷設備の容量に増減があった際に、契約電力を見直すことを、仕様書に明記していなかったため、管理・運用会社において、適切な契約電力の見直しを行うことについての認識が十分でなかったこと

(イ) 各支社等において、端局等の電力設備の新設、更新工事の際に、契約負荷設備の容量等、契約電力の算定に必要な事項を、電気工事の請負業者に示す指示書等に明記していなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、NTTでは、9年10月に、次のとおり、契約電力の見直し及び電気需給契約の変更の申し出等が適切に行われるように改めることとする処置を講じた。

(ア) 本社において、管理・運用会社との業務委託契約の仕様書を改め、電力設備の増減に伴う電気需給契約の変更に係る業務を同会社が行う旨を明記した。

(イ) 各支社等に対して電気需給契約の適正化のための文書を発し、電気工事の請負業者に示す指示書等には契約電力の算定に必要な事項を明記することなどを指示した。

(注)  東京支社ほか10支社東京、関東、信越、東海、北陸、関西、中国、四国、九州、東北、北海道各支社